新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因病原体であるSARS-CoV-2は,世界各地において多様な変異株が感染拡大を続けている.WHOは,これら変異株を懸念される変異株(Variants of Concern; VOCs)または注目すべき変異株(Variants of Interest; VOIs)に分類しそれらの動向を注視している.特にVOCに分類されているB.1.1.7系統株に加え,新たにVOCに加えられたB.1.617.2系統株は,感染伝播性の増大や免疫逃避への関与が示唆される変異株として各国での流行が懸念されている.本邦ではB.1.1.214/B.1.1.284系統株に加え,2021年1月以降,B.1.1.7系統株による市中感染事例が急速に増加している.更には2021年4月以降では「L452R」変異を有するB.1.617系統株の国内検出事例が報告される中,5月上旬にはB.1.617.2系統株の市中感染事例が確認された.本稿では「病原体と宿主とのせめぎあい」により出現している様々なSARS-CoV-2系統株の特徴および本邦における市中流行株の遷移について概説したい.
ムンプスウイルス(MuV)は小児の代表的なウイルス性感染症である流行性耳下腺炎(おたふくかぜ,ムンプス)の原因ウイルスである.他のウイルス感染と同様に,MuVの増殖過程には多くの宿主タンパク質が関与している.これまでに我々はMuV感染に関わる宿主因子として,シャペロンタンパク質であるHeat shock protein 70 (Hsp70)およびHsp90がポリメラーゼ複合体を形成するPタンパク質およびLタンパク質と相互作用し,それらウイルスタンパク質の品質管理を通して,ウイルスRNA合成に必須の宿主因子であること,R2TP複合体がウイルスRNA合成における転写/複製バランスを正確にコントロールし,宿主の免疫応答を最小限に留めることで効果的なウイルス増殖に寄与する宿主タンパク質であること,Rab11がウイルスのリボ核タンパク質複合体の細胞膜への輸送に関わる宿主因子であることを明らかにしてきた.本稿では,それらの知見を中心にMuV感染に関わる宿主因子の機能について紹介する.