ウイルス
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総説
  • メンリン モイ
    2021 年 71 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     デング熱・出血熱は熱帯・亜熱帯地域において公衆衛生上,重要な病原体であり,年間,約4億人が発症すると推定されている.デングウイルスは4つの血清型が存在し,hyperendemic流行地域ではこの4つの血清型が同時に流行するという特徴がある.しかし,有効なワクチンおよび治療薬がいまだに実用化されていない.デング熱ワクチンや有効な治療法開発にはウイルス感染における免疫応答を理解することが不可欠である.世界的なCOVID-19の流行は,特にデング熱が流行する発展途上国で,公衆衛生上の大きな問題となっている.本稿では,ポストコロナのデング熱の流行状況,ワクチン開発の現状と発症メカニズムについて述べる.
  • 古瀬 祐気
    2021 年 71 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     エボラウイルス感染症など,アフリカにはさまざまなウイルス性出血熱が存在しており,その高い致死率から公衆衛生的な脅威となっている.自然宿主がヒトでないためウイルスの根絶を目指すことは難しく,予防や治療法の確立は早急の課題であると同時に,ヒトでの感染制御やワン・ヘルスの概念を含めた公衆衛生的な対策の重要性も高い.また,公衆衛生的な対策と疫学的な知見の蓄積は表裏一体でもある.私は世界保健機関の感染症コンサルタントして国際保健活動に関わっており,実際にアフリカに赴き,公衆衛生活動の一環として診療ガイドラインの作成,検査体制の構築,感染制御の指導,対策予算案の作成,疫学データの解析などをこれまでに行ってきた.疫学的な解析により,2014~2015年のエボラウイルス感染症や2018~2019年のラッサ熱アウトブレイクにおける流行状況を報告し,疾病罹患や死亡の疫学的危険因子を明らかにした.
特集:新型コロナウイルス感染症 COVID-19 
  • 助川 明香, 武内 寛明
    2021 年 71 巻 1 号 p. 19-32
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因病原体であるSARS-CoV-2は,世界各地において多様な変異株が感染拡大を続けている.WHOは,これら変異株を懸念される変異株(Variants of Concern; VOCs)または注目すべき変異株(Variants of Interest; VOIs)に分類しそれらの動向を注視している.特にVOCに分類されているB.1.1.7系統株に加え,新たにVOCに加えられたB.1.617.2系統株は,感染伝播性の増大や免疫逃避への関与が示唆される変異株として各国での流行が懸念されている.本邦ではB.1.1.214/B.1.1.284系統株に加え,2021年1月以降,B.1.1.7系統株による市中感染事例が急速に増加している.更には2021年4月以降では「L452R」変異を有するB.1.617系統株の国内検出事例が報告される中,5月上旬にはB.1.617.2系統株の市中感染事例が確認された.本稿では「病原体と宿主とのせめぎあい」により出現している様々なSARS-CoV-2系統株の特徴および本邦における市中流行株の遷移について概説したい.
  • 高島 謙, 押海 裕之
    2021 年 71 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
トピックスⅠ:ワクチン
  • 新城 雄士, 鈴木 忠樹
    2021 年 71 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発・導入が,国内外で未曾有のスピードで進んでいる.本稿では,世界と日本における新型コロナワクチンの開発と接種状況,今後の課題についてまとめた.本領域は,日々新たなエビデンスが蓄積し,状況がめまぐるしく変わるため,概念的な事項や最新の情報が記載・更新されているリソースも可能な限り組み込んだ.最新の情報には,これらや世界保健機関(WHO),各国政府・自治体のウェブサイト等を参照されたい.
  • 今福 信一
    2021 年 71 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は初感染では水痘,その後脳脊髄の神経節の細胞に潜伏感染し,数年〜数十年後に帯状疱疹を生じる.VZVはヒトに感染するヘルペスウイルスの中で唯一流行性に感染し,また唯一ワクチンで予防が可能なウイルスである.帯状疱疹は造血幹細胞移植,血液悪性腫瘍,Jak阻害薬内服,SLEなどを有する患者と高齢者で顕著にその頻度が上昇する.新たに登場した帯状疱疹の成分ワクチンはアジュバントとVZV糖タンパクgEの混合物で,高齢者でも高い予防効果がみられる.本稿では水痘,帯状疱疹の臨床的知見から発症機構を考察し,成分ワクチンの臨床効果について主に臨床的な事実をまとめる.
トピックスⅡ 宿主とウイルスの相互関係
  • 錦織 雅樹
    2021 年 71 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     真核生物を宿主とするプラス鎖RNAウイルスは,一部の例外を除いて,細胞小器官の膜上でゲノム複製を行う.膜結合性ゲノム複製複合体のこれまでの研究から,その構造と機能にはウイルスの分類を超えた多くの共通性が見えてきた.著者らは,プラス鎖RNAウイルスの主要なグループのひとつであるアルファウイルススーパーグループに属するウイルスがコードする,ゲノム複製に必須な非構造タンパク質 (複製タンパク質)が,「ビロポリン (viroporin)」として機能し,複製複合体が形成された膜の透過性を亢進することを見いだした.これにより,真核プラス鎖RNAウイルスの三大スーパーグループ(ピコルナ,フラビ,アルファ)の代表的なウイルスが,共通してビロポリンを複製タンパク質としてコードすることが明らかとなった.真核生物は,主に生体膜を用いて様々な細胞内化学環境の並存を可能としている.一例として,細胞質基質における還元的な環境と小胞体内腔における酸化的な環境の並存が挙げられる.アルファウイルススーパーグループの一部では,ビロポリンは小胞体内腔の酸化力を細胞質へ放出し,複製タンパク質の酸化依存的な酵素活性化を促進した.この知見は,分類を超えて認められつつも,断片的であった3つの事象―ビロポリン・酸化依存性・ゲノム複製―を1つの線で結ぶものであった.ビロポリンが関与する分子経路はウイルス特異的であると想定されることから,プラス鎖RNAウイルスの生活環の中核を標的としつつも,人体への副作用が少ない,チャネル遮断剤および抗酸化剤等を含む,非ヌクレオチド系新規抗ウイルス剤の開発への可能性が広がった.
  • 藤田 龍介
    2021 年 71 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     昆虫では様々な微生物の感染によりオスのメス化, 単為生殖の誘導, 細胞質不和合, オス特異的な致死などが引き起こされ, 性比異常を示す例が知られている. その中で, オス殺しを引き起こす原因としてはスピロプラズマやボルバキアなどの共生細菌の感染がよく知られているが, ウイルス感染によってもオス殺しが発生する事例が存在する. 本稿ではチャハマキにおいて発見されたオス殺し因子であるオスゴロシウイルス (Osugoroshi virus) の事例を紹介する.
2020年度杉浦奨励賞論文
  • 加藤 大志
    2021 年 71 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     ムンプスウイルス(MuV)は小児の代表的なウイルス性感染症である流行性耳下腺炎(おたふくかぜ,ムンプス)の原因ウイルスである.他のウイルス感染と同様に,MuVの増殖過程には多くの宿主タンパク質が関与している.これまでに我々はMuV感染に関わる宿主因子として,シャペロンタンパク質であるHeat shock protein 70 (Hsp70)およびHsp90がポリメラーゼ複合体を形成するPタンパク質およびLタンパク質と相互作用し,それらウイルスタンパク質の品質管理を通して,ウイルスRNA合成に必須の宿主因子であること,R2TP複合体がウイルスRNA合成における転写/複製バランスを正確にコントロールし,宿主の免疫応答を最小限に留めることで効果的なウイルス増殖に寄与する宿主タンパク質であること,Rab11がウイルスのリボ核タンパク質複合体の細胞膜への輸送に関わる宿主因子であることを明らかにしてきた.本稿では,それらの知見を中心にMuV感染に関わる宿主因子の機能について紹介する.
  • 小林 進太郎
    2021 年 71 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     ヒトやウマなどに重篤な脳炎を惹起するウエストナイルウイルスは,神経細胞に感染し,細胞死を誘導する.ウイルス感染による神経細胞死は,様々な炎症反応の誘導につながることから,神経細胞死の分子機構を明らかにすることは,未だ開発されていないウエストナイル脳炎の特異的な治療法の開発のために重要である.本項では,ウエストナイルウイルスに感染した神経細胞の病理学的変化について解析し,その発生機序と脳炎病態の形成との関連についての知見を紹介する.
  • 山本 浩之
    2021 年 71 巻 1 号 p. 87-96
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/03
    ジャーナル フリー
     免疫不全ウイルス感染症 対し防御能を呈する適応免疫応答の性質を解明することは,ウイルス持続感染の成立機構の理解とヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染症克服の手法の作出に重要である.HIV-1及び病原性サル免疫不全ウイルス(SIV)感染においてはCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答がウイルス抑制に中心的な寄与を果たす一方で,中和抗体(NAb)応答は高度に障害されている.特にHIV・SIV感染早期におけるNAb応答の欠失状態は,発揮されるべき本来のNAb防御機序の解明を逆に求めるものであるとも捉えられ,その一つのアプローチとして受動免疫実験が挙げられる.筆者らは高病原性SIVであるSIVmac239株感染サルエイズモデルの解析を行い,感染急性期における単回のSIV特異的ポリクローナルNAbの受動免疫が,ウイルス特異的T細胞応答の質的な亢進を連鎖的に惹起することにより,持続的なSIV制御状態を作出できることを見出した.このSIV感染モデルにおけるNAbとT細胞の相乗的な抗ウイルスin vivo防御機構は,HIV・SIVの持続感染成立機構の一端を明らかにすると共に,HIV制御手法にも見地を与える基礎的知見であると考えられる.
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