ウイルス
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71 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • 松野 啓太
    2021 年71 巻2 号 p. 117-124
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー
     2019年,北海道でマダニ刺咬後に発熱を呈した患者より新規ウイルスが発見された.エゾウイルスと命名されたこのウイルスの感染者は,後方視的調査の結果を含めると,2014年から2020年までの間に7名発生していた.遺伝子系統解析の結果,エゾウイルスはナイロウイルス科オルソナイロウイルス属に分類され,ルーマニアでマダニから発見されたSulinaウイルスと同じ遺伝子群に属することが分かった.また,エゾウイルスは,近年中国で熱性疾患の原因ウイルスとして報告されているTamdy遺伝子群のウイルスに比較的近縁である一方で,クリミア・コンゴ出血熱ウイルスなどの既知の病原オルソナイロウイルスとは遺伝的に離れていた.エゾウイルス感染症を含む新興オルソナイロウイルス感染症の情報は極めて少なく,今後の発生動向に注視が必要である.
  • 2021 年71 巻2 号 p. 125-136
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー
     Bウイルスは,マカク属サルを宿主とするヘルペスウイルスである.ヒトに感染すると非常に強い神経病原性を示す.これまでの患者報告は,北米及び英国のマカク属サルを用いた研究従事者及び飼育者に限定されており,稀な感染症と言える.1997年以降,その患者報告は途絶えていたが,2019年に日本で,また2021年に中国でそれぞれ初となるBウイルス病患者が報告された.20年以上報告がなかったBウイルス病であるが,その潜在的脅威はずっと存在していたことになる.Bウイルスが示す,ヒトへの強い神経病原性に関わるウイルス因子はほとんど明らかになっていない. また,野生のマカク属サルとの接触による感染の報告は未だ無いが,その可能性は否定されていない.本稿では,そのウイルス学的性状,患者報告例から得られたBウイルス病に関する知見及びBウイルスの遺伝子型に関して述べる.
  • 2021 年71 巻2 号 p. 137-150
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー
     2013-2016年に発生したエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)の流行は,ギニアを発端として西アフリカ全土に広がり,最終的に2万8000人以上の感染者を出す過去最大規模のEVDアウトブレイクとなった.本稿では,本流行の原因となったエボラウイルスMakona variantに関する研究結果を概説するとともに,Makona variantが有する特徴的なウイルス性状について紹介する.また,流行終息から5年を経てギニアにて再燃したEVDアウトブレイクと,EVD生存者体内に存続するエボラウイルスとの関連について論じる.さらに,最近報告されたEVD回復患者の再発症例などを踏まえ,明らかになりつつある新たなエボラウイルスの生態ならびにEVDアウトブレイクの形態について考察する.
特集:新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 臨床、治療法等
  • 2021 年71 巻2 号 p. 151-162
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー
     医療関連施設において,COVID-19を含む新興・再興感染症の初期対応は組織的な管理が必要である.チェックリストによるトリアージおよび臨床的評価を併用した,受診患者の初期リスク評価とその後の対応フロー構築が第一歩となる.スクリーニング検査は,初期評価で低リスクと判断された無症候患者の早期診断を目的に実施される.しかし,検査結果に関わらず,入院時の初期評価および入院後の症状経過観察や感染対策が不十分にならないよう留意する.基本は標準予防策であり,特に手指衛生の遵守を重視する.無症候性・発症前患者からの伝播,飛沫の放出と吸入減少を目的としたユニバーサルマスキングが,新たな基本予防策となっている.COVID-19の疑い・確定患者対応は,サージカルマスクまたはN95マスク,手袋,ガウン,眼の防護,キャップ着用を基本とし,各施設の医療環境を踏まえて判断する.陰圧環境は常に必要なものではないが,高リスク環境において可能であれば検討する.標準的な医療提供体制における環境表面からの伝播リスクは限定されている一方,換気の重要性を踏まえた施設環境の継続した見直しが期待される.
  • 2021 年71 巻2 号 p. 163-168
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー
     我々はこれまでに2人のCOVID-19回復期患者よりプロトタイプのSARS-CoV-2を強力に中和する5つのモノクローナル中和抗体を分離した。中でも9-105はreceptor-binding domain(RBD)への親和性が高く、変異株B.1.1.7(α株)、 ミンク cluster 5 variant、 B.1.351(β株)、 P.1(γ株)、 C.37(λ株)、 B.1.617.1(κ株)、 B.1.617.2(δ株)、 B.1.621(μ株)にも有効であった。また、RBDのK417の変異により9-105の中和活性は低下した。これはホモロジーモデルから9-105軽鎖がRBDのK417を含む領域にACE2と同じ結合角で結合する為と考えられる。
  • 2021 年71 巻2 号 p. 169-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー
    SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合ドメインに対する抗体は,中和抗体として感染防御に重要な機能を担っている.ところが,スパイクタンパク質のN末端ドメインの特定の部位を認識する抗体は,ACE2と結合性が高くなる開いた受容体結合ドメインが誘導し,SARS-CoV-2の感染性を高める.さらに,この感染増強抗体が存在すると中和抗体の中和能が低下する.従って,新型コロナウイルスに対する抗体応答を考える場合,中和抗体ばかりでなく,感染増強抗体とのバランスを考慮する必要があることが明らかになってきた.そこで,本稿では,これまでに判明してきた感染増強抗体について紹介する.
トピックス:宿主とレセプター
  • 2021 年71 巻2 号 p. 175-184
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー
     インフルエンザウイルスはシアル酸を含む糖質を受容体とする.細胞表面の糖鎖の構造はインフルエンザウイルスの宿主向性を規定する主要な因子であり,したがって,インフルエンザウイルスの自然界における生態や異種宿主間伝播機構の解明を目的として,多くの生物種で標的組織における受容体の分布が調べられてきた.一方,受容体である糖鎖の認識プローブとして汎用されてきたレクチンは,抗体とは異なり,その結果の解釈には注意が必要である.特に,インフルエンザウイルスの鳥型レセプターと呼ばれるSiaα2-3Gal認識プローブとして用いられてきたイヌエンジュ(Maackia amurensis)由来レクチンについては,その糖結合に関する特性を十分に理解しないまま汎用されており,これが混乱を招いている.我々は,宿主動物における鳥型レセプターの分布についてどの程度正確に把握できているのであろうか.本稿では,イヌエンジュ由来レクチンにまつわる諸問題の解説を通じて,インフルエンザウイルスレセプターについて再考する機会を提供したい.
  • 2021 年71 巻2 号 p. 185-190
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/05/27
    ジャーナル フリー
     ムンプスウイルス(MuV)は,耳下腺炎,睾丸炎,卵巣炎,髄膜炎,脳炎,難聴などを引き起こす重要なヒトの病原体である.流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)はワクチンで予防できる疾患だが,世界中で散発的に発生しており,ワクチン接種率の高い地域でも発生が確認される.MuVは全身に感染するだけでなく,腺組織や中枢神経系に特異的なトロピズムを持っているが,そのメカニズムは未解明な部分が多く残されている.本トピックスでは,糖鎖受容体,特に最近同定された三糖コア受容体構造,及び,糖鎖受容体とウイルス受容体結合蛋白質の相互作用に焦点を当て,MuVによる柔軟な糖鎖受容体認識機構および糖鎖分布とトロピズムとの相関性についてまとめ,MuVの病原性について考察する.
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