1. イヌの心臓機能診断の一手法として,心エコー図法の応用を試みた。使用した機器は表示方式がMモードのAloka Echocardiograph(日本無線医学研究所・フクダ電子製,Model SSD-110)で記録にあたり,トランスデューサーを第3~5肋間の左・右胸骨縁に設置した。
2. 体重1.8~28kgの健康犬ならび患犬119頭に応用した結果,僧帽弁,大動脈弁,三尖弁,肺動脈弁ならびに心室のUCGを記録することができた。しかし,小型犬の場合,市販品のままでは記録が難かしく,映像倍率,掃引速度,超音波周波数およびトランスデューサーの大きさの点で改良を加える必要があった。
3. トランスデューサーを左胸骨縁においた場合,僧帽弁エコーはもっとも記録しやすくヒトの場合と同様,波形は二峰性のM型であった。大動脈弁については2本の平行エコーの間に,拡張期は1本の直線エコー,収縮期にはそれが分離した長方形エコーとして記録された。三尖弁および肺動脈弁エコーを連続して記録することは難しかった。
4. 右胸骨縁においても僧帽弁および大動脈弁エコーを記録することができた。三尖弁ならびに肺動脈弁エコーは右室拡大や肺動脈の突出を示す症例において比較的容易に記録された。
5. 僧帽弁閉鎖不全症あるいはvena cana syndromeなどの症例についてもUCGの記録ならびにその解析を試みた。その結果,UCGは心電図,心音図と同様にイヌの心臓機能検査法として有用な手法であると考えられた。
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