成長に伴うホルスタイン種乳牛の心電図計測値の正常値を得ることを目的とし,東京大学農学部附属牧場にけい養されている仔牛,育成牛,経産牛,36頭,のべ85例について出生後1日齢より12歳にいたる心電図を追跡記録した。A-B誘導心電図よりRR間隔,PQ間隔,QT間隔とP波,QRS群,T波の持続時間および各棘波の電位を計測するとともに標準肢誘導によりQRS群の平均電気軸を算出した。成績は次のようである。
1) RR間隔,PQ間隔,QT間隔およびP波,QRS群の持続時間はいつれも成長に伴って漸次延長した。
T波の持続時間は終始安定した値を示した。
2) P波の電位には成長に伴う変化はほとんど観察されないがQRSの波形についてみると30日齢まではrS型を示し,その後はほとんどの場合QS型に移行して安定した。S棘の電位は3~4カ月齢まで減少を続け,その後はほぼ0.8mVで安定した。T波の電位は0~0.5mVの範囲で変動した。
3)QRS群の平均電気軸は100~200日齢を境として左頭側から左尾側へ変移した。
4)4産以上の経産牛ではpQ間隔とQT間隔の延長ならびに平均電気軸の頭側への偏倚が観察され,経産による心臓負荷の増大が示唆された。
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