日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
15 巻, 5 号
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巻頭言
原著
  • 小野原 俊博, 郡谷 篤史, 高野 壮史, 松本 拓也, 古山 正, 胡 海地
    2006 年 15 巻 5 号 p. 487-493
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    片側性腸骨動脈病変に対する血行再建術症例 (全191例), とくに, 大動脈 (腸骨動脈) -大腿動脈 (AF) バイパス (AF群) の長期予後について検討した. 術式は, AF群132例, 大腿動脈-大腿動脈交叉 (FF) バイパス群37例 (FF群), 腋窩動脈-大腿動脈 (AxF) バイパス群22例 (AxF群) であり, AF群でダクロン製, AxF群とFF群でePTFE製人工血管を使用した. 手術適応は, 跛行165例, 救肢26例であり, 病変の形態はTASC分類B型6例, C型17例, D型168例であった. 全症例の一次開存率は, 5年90%, 10年77%であった. AF群では, 56例の浅大腿動脈閉塞があり, 大腿-膝窩動脈 (FP) バイパス術などの浅大腿動脈血行再建術37例および大腿深動脈形成術11例を同時施行した. 経過観察中, FPバイパス術7例が追加, 仮性動脈瘤手術2例が行われ, また, 対側肢の血行再建術11例, 肢切断術1例が行われた. AF群の一次開存率は, 5年92%, 10年77%であり, FF群 (5年97%) と同等で, AxF群 (5年65%) より有意に良好であった. 救肢目的で予後不良であったが, 同側・対側の血行再建の既往やFPバイパス術同時施行は開存率に影響しなかった. 同側の浅大腿動脈および対側動脈病変に対する同時または将来の治療を考慮して, FPバイパス術同時施行も含め総合的に術式を選択する必要があると思われた.
症例
  • Nobuyuki Nakajima, Masahisa Masuda, Mizuho Imamaki, Yoko Onuki, Masaha ...
    2006 年 15 巻 5 号 p. 495-498
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    A 62-year-old man was operated for inflammatory abdominal aortic aneurysm through a median transperitoneal approach and was discharged. He returned 3 months later with signs of graft infection. He was re-explored through a left retroperitoneal approach, the remnant of previously left aneurysmal wall was resected as much as possible with extended debridement of necrotic tissues. The wound was thoroughly irrigated, then packed by sponges soaked with 10% iodine solution. This maneuver was repeated 6 times every 8 hours. After 48 hours, the left dorsal latissimus muscle was removed with the attachment of vascular pedicles and transpositioned to the retroperitoneal space around the graft. Vascular anastomoses were made to the inferior epigastric artery and vein. The wound was closed but drainage tubes were left in place. Although prolonged periods were required for the complete healing, he was eventually discharged with “in-situ” preservation of the original graft with no infectious signs. The recurrence of infection was not observed and he is doing well at over 5 years.
  • 本田 賢太朗, 駒井 宏好, 重里 政信
    2006 年 15 巻 5 号 p. 499-502
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    下肢静脈瘤および閉塞性動脈硬化症は共に末梢動静脈領域において比較的頻度の多い疾患である. 今回われわれは深部静脈弁機能不全と閉塞性動脈硬化症を合併した症例に一期的に手術を行い良好な結果を得たので報告する. 症例は85歳, 女性. 10年前から左下腿静脈瘤と色素沈着を指摘されており, 左下肢倦怠感が増強したため当科を受診した. 左下腿に静脈瘤と色素沈着, 冷感を認め, 大腿部以下で末梢拍動の減弱を認めた. 逆行性深部静脈造影では深部静脈にKistner IV度の逆流を認めた. Ankle brachial pressure indexは右が1.05, 左は0.65と左下肢で低下を認め, 動脈造影で左総腸骨動脈から外腸骨動脈までの閉塞を認めた. 下肢症状に対する両疾患の関与が示唆されたため2004年4月6日硬性内視鏡下左深部静脈弁形成術, 伏在静脈不全交通枝結紮術および右外腸骨動脈-左総大腿動脈交叉バイパス術を行った. 術後15カ月の現在, 弁形成術, バイパス術共に問題なく, 外来通院している.
  • 〓田 俊之, 水口 一三, 亀田 陽一, 森 透
    2006 年 15 巻 5 号 p. 503-506
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は63歳男性. 突然の胸背部痛のため近医を受診し, 大動脈解離を疑われ, 当院に紹介された. CT検査にて血栓閉鎖型急性大動脈解離 (Stanford B型) と診断し, 保存的療法を施行した. 良好に経過していたが第5病日に突然背部から腹部, 左下肢へと移動していく痛みが出現, 左大腿動脈以下の脈拍が消失し, 腹部膨満も認められた. CT検査では偽腔血流が再開し, 解離が右腸骨動脈にまで及んでおり, 左腸骨動脈への血流は偽腔により障害されていた. 緊急手術の方針とし, 腸管虚血が疑われたために開腹し, 腹部大動脈開窓術および末梢側の人工血管置換術を施行した. 術後は腸管の色調および下肢の脈拍も良好となった. その後の経過も良好であり, 現在外来通院にて経過観察中である.
  • 胡 海地, 高野 壮史, 小野原 俊博, 古山 正, 前原 喜彦
    2006 年 15 巻 5 号 p. 507-511
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は77歳, 女性. 近医で右肺癌と胸部下行大動脈瘤を認め, 当科を紹介された. 下行大動脈に左側へ嚢状に突出する径45mmの動脈瘤を認め, 内腔の大部分は血栓で占められていた. また, 右肺下葉には径31mmの腫瘍を認めた. 総腸骨動脈の瘤様拡張と外腸骨動脈の狭小化を認めたため, 通常のアクセスが困難と考え, 開腹下に, 腹部大動脈に吻合した人工血管からアクセスし, ステントグラフトを内挿した. 右肺癌に対しては, 二期的に右下葉切除術を施行した. 腹部大動脈に吻合した人工血管からアクセスし, ステントグラフトを内挿する方法は, 本症例のような通常の動脈アクセスが困難な患者に対して有用と考えられた.
  • 寒川 顕治, 青木 淳
    2006 年 15 巻 5 号 p. 513-516
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    交通外傷による腹部大動脈閉塞の1例を経験した. 症例は72歳, 男性で, 軽トラックを運転中に対向車と衝突した. 腹部にシートベルトによると思われる斑状皮下出血を認めた. 両鼠径部以下の動脈拍動が消失していたため血管外傷を疑われ, 腹部造影CTにて腹部大動脈閉塞と診断された. 開腹したところ, 消化管穿孔や実質臓器の損傷は認めなかった. 腎動脈下腹部大動脈から両側総腸骨動脈まで大動脈解離を生じ, 右腸骨動脈は閉塞していた. Fogartyカテーテルで末梢側の血栓除去を行った後, Yグラフト置換術と下腸間膜動脈の再建を行った. 術後造影CTで解離腔は消失していた. 鈍的腹部外傷後の大動脈閉塞は稀な疾患であるが, 腹部打撲の際には考慮すべきである.
  • 星野 正道, 大木 聡, 高橋 徹, 森下 靖雄
    2006 年 15 巻 5 号 p. 517-519
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    頸部動脈瘤の中でも下甲状腺動脈瘤は稀である. 症例は52歳, 男性で, 左頸部の腫脹と左肩の運動麻痺を主訴に来院した. CTで左頸部に6.5×4.5cm大の拍動性腫瘤があり, 3D-CTで下甲状腺動脈瘤と診断した. 手術は動脈瘤の流入・流出血管を剥離・結紮後瘤を切開し, 内部の壁在血栓を除去, 瘤の余剰部分を切除, 縫縮術を行った. 組織学的には弾性板の不明瞭な血管壁で, 壁内に膠原線維の増生と硝子化があり, 動脈硬化性の真性瘤と診断した. 術前の三角筋の筋力低下も改善し, CT上も残存瘤はなく順調に経過した. 頸部の拍動性腫瘤の鑑別において, 下甲状腺動脈瘤は頻度は少ないが考慮すべき疾患の一つである.
  • Hiroo Shikata, Katsuto Miyazawa, Yoshimichi Ueda, Takashi Kobata, Kenj ...
    2006 年 15 巻 5 号 p. 521-524
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    A 73-year-old man consulted our cardiology department for hypertension and post-myocardial infarction angina pectoris. After the examination, early gastric cancer was discovered at the lower gastric confines. Preoperative examination (abdominal CT scan) revealed an abdominal aortic aneurysm 7 cm in diameter and a left renal tumor. Simultaneous nephrectomy and repair of the abdominal aortic aneurysm were performed with a median retroperitoneal approach. Immediately after the operation, the white blood cell count increased transiently. At that time, the level of granulocyte colony stimulating factor (G-CSF) in the blood was high (81 pg/ml). The histopathological diagnosis of the tumor was renal cell carcinoma and immunohistochemical staining with an anti G-CSF antibody demonstrated cancer cells producing G-CSF. The postoperative course was uneventful. The patient underwent endoscopic resection of the gastric cancer 38 days after the first operation.
  • 松本 三明, 中井 幹三, 末廣 晃太郎, 久保 裕司
    2006 年 15 巻 5 号 p. 525-528
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    74歳男性のAdamkiewicz動脈起始部を含む胸部下行大動脈瘤に対し, ステント内挿術を施行した. 腹部大動脈瘤手術の既往があり, 対麻痺のリスクが懸念されたが, 術後の合併症は認められなかった. 術後の造影CT検査で肋間動脈の側副血行よりAdamkiewicz動脈への血流が確認された. Adamkiewicz動脈起始部を含むステント内挿術において, 術後, 本動脈への血流を造影CTで確認した初めての報告である.
  • 神原 篤志, 上山 克史, 津田 祐子, 上山 武史
    2006 年 15 巻 5 号 p. 529-532
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/08
    ジャーナル オープンアクセス
    49歳男性. 突然の胸痛, 腰痛および両下肢痛で発症. CTでStanford A型急性大動脈解離と診断された. 入院時, 上肢血圧に左右差はなかった. 両側大腿動脈以下を触知しなかったが, 術前造影CTで腹部臓器血流は保たれ, 両側大腿動脈も造影されていた. 心タンポナーデによるショックとなり, 緊急上行大動脈置換を施行. 術後下肢血圧は安定せず, 尿排泄も少なかった. 翌日には無尿となり尿素窒素, クレアチニン, カリウムが上昇, AST, ALT, アミラーゼも高値を示したため腹部臓器虚血を考え, 左腋窩-左大腿動脈バイパスを作製した. バイパス後は上下肢間の血圧差は消失し, 尿排泄も回復した. その後は順調に経過し, 初回手術後40日で退院となった. 急性大動脈解離に対し上行大動脈置換を行った患者で腹部臓器, 両下肢虚血をきたし, 腋窩-大腿動脈バイパスが有効であった症例を報告した.
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