われわれは,腹部人工血管感染に対し自家大腿静脈をグラフトとしin-situ血行再建を施行し良好な経過を得た.症例は59歳男性,閉塞性動脈硬化症に対し11年前に大動脈-両側大腿動脈間バイパス術,2年前に右大腿動脈吻合部瘤にて人工血管置換術の既往がある.右鼠径部の創部感染で当科に紹介となった.CTで右外腸骨動脈位人工血管から創部に連続した液体の貯留を認めた.創部培養よりMethicillin sensitive
Staphylococcus aureus(MSSA)が検出されグラフト感染と診断した.術中所見で,グラフト周囲の膿は中枢吻合部まで達していたが,感染は限局的であった.感染グラフトを全抜去し,洗浄を行った後に自家大腿静脈を用い大動脈-左外腸骨動脈間バイパス,大伏在静脈にて左外腸骨動脈-右大腿動脈間バイパスを施行した.大動脈吻合部には大網充填を行った.術後引き続き抗生剤を投与し感染の再発はなく良好に経過した.
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