【目的】シャント閉塞に対しては従来,血栓除去をフォガティカテーテルにて施行していたが,再開通させるだけで,閉塞の原因に対する治療は置き去りにされていた.そこで,われわれは血栓除去と閉塞に至った責任病変の解除,ならびに術後の透析までを1期的に施行し,切らずに日帰りを可能とした血管内治療を考案したので,本治療法の現状を報告する.【対象】われわれは,2007年1月より経皮的血栓除去術用カテーテル(ハイドロライザー)とPTAにて(ハイドロPTAと呼んでいる)グラフト閉塞(とくに人工血管)に対応しており,2009年9月までに59例経験した.治療成績ならびに高圧バルーン(コンクエスト)導入前後での再狭窄期間を比較検討した.【結果】初期成功率は97%で,9例に再閉塞を認めた.そのうち7例はハイドロPTAにて再開通に成功した.1カ月,3カ月,6カ月,12カ月の1次開存率は,コンクエスト群で91.9%,59.4%,29.7%,16.2%,非コンクエスト群で75%,40%,15%,5%であり,コンクエスト群で有意に良好であった(p<0.05).静脈吻合部の高度狭窄症例に再狭窄・閉塞を早期に来す可能性が高かった.合併症は4例,透析後のシース圧迫時出血を1例,過拡張による軽度血管破裂を1例,リコイルによる再閉塞を2例認めたが,最も危惧された,肺塞栓は1例も認めなかった.高圧バルーン導入前と導入後での再狭窄までの平均日数は,前で79.3日,後で146.7日と導入後で有意に延長した(p<0.05).【結論】人工血管シャント閉塞に対して,ハイドロPTAは有用であった.現段階では患者の満足度も高く,シャント閉塞の1治療法として成り立つと思われた.今後は再狭窄までの期間をより延長できるように検討する.
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