日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
21 巻, 2 号
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巻頭言
原著
  • 郡谷 篤史, 山岡 輝年, 岡留 淳, 川久保 英介, 久良木 亮一, 本間 健一, 岩佐 憲臣, 松本 拓也, 岡崎 仁, 前原 喜彦
    2012 年 21 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】組織欠損を伴う重症虚血肢に対する足部バイパスにおいて,術前後の皮膚還流圧変化に与える糖尿病,透析の影響を評価する.【方法】対象は,皮膚還流圧を導入した平成19年11月以降に足部バイパスを受けた,潰瘍を伴う重症虚血肢24肢.皮膚還流圧(SPP)は手術前後に血行再建領域に加え,患側の非血行再建領域(例:足底動脈バイパス後の足背動脈領域)で測定した.患者背景により糖尿病合併群(DM),糖尿病,透析合併群(HD)と非合併群に分け,潰瘍および創傷治癒期間,バイパス開存,救肢およびSPP値について検討した.【結果】観察期間は平均7.3カ月(1~18カ月).血行再建は足背動脈15,足底動脈9肢.バイパスは23肢開存(グラフト修復3肢含む),潰瘍は全例治癒し,大切断なく全例救肢できた.患者背景はDM群9,HD群10と非合併群5例であった.潰瘍の治癒期間は非合併群1.2カ月に対し,DM群2.2カ月,HD群2.5カ月と延長する傾向をみとめた(p=NS).足部バイパス前後のSPP変化(術前SPP-術後SPP)は,血行再建領域はDM群+34.6 mmHg,HD群+25.3 mmHg,非合併群+53.6 mmHgであった.非血行再建領域は,DM群+30.9 mmHg,HD群+21.8 mmHg,非合併群+53.4 mmHgであった.DM群,HD群は非合併群と比較し,SPPの増加が少ない傾向にあった.【結論】組織欠損を伴う糖尿病や透析合併の重症虚血肢では,バイパス後も足部全体で,皮膚還流圧の改善が不十分であり,組織治癒が遷延する可能性が示唆された.
  • 古川 博史
    2012 年 21 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】末梢血管外科手術におけるデンプン由来吸収性局所止血材アリスタAHの使用効果に関して,血液製剤由来フィブリン糊止血材の使用効果と比較検討したので報告する.【方法】症例は2008年1月~2009年12月までの当科における末梢血管外科手術症例25例を対象とした.アリスタAH使用群(A群)10例,血液製剤由来フィブリン糊止血材(ベリプラストP)使用群(B群)15例で,ASOに対する下肢血行再建術がA群6例,B群10例,人工血管シャント造設術がA群4例,B群5例であった.止血材の使用方法は,血管吻合後止血材を吻合部に適量散布し,数分間用手圧迫を行った.両群間で術中,術後成績,合併症に関して比較検討を行った.【結果】術中出血量はA群で平均30.5 ml,B群で平均83.0 mlとA群で少ない傾向にあった.術後の主な合併症はA群で創の発赤1例,滲出液の貯留1例,肝機能障害1例で,B群では誤嚥性肺炎1例,腎機能の悪化1例であった.創傷治癒遅延および創感染は両群で認めなかった.また発熱の遷延化や吻合部仮性瘤の形成,出血による再手術例は認めなかった.末梢血管病変に対する手術症例では,両群とも下肢造影CTにて全例人工血管の良好な開存を確認することができた.人工血管シャント造設症例でも両群ともに穿刺にて問題なく血液透析を行うことが可能であった.【結論】アリスタAHは末梢血管外科手術における血管吻合部への補助的な止血材として従来の血液製剤由来の止血材とほぼ同等の効果が得られ,さらに術後成績に影響を与えず,合併症の少ない十分な効果が期待できる止血材であると考えられた.
  • 佐伯 悟三, 井田 英臣, 河合 奈津子
    2012 年 21 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】腹部大動脈瘤破裂についての臨床研究の多くは手術症例を対象としている.しかし実際には手術に至らず死亡する患者が非常に多く,手術症例のみを対象とした検討では疾患の全体像を反映しているとはいえない.来院したすべての腹部大動脈瘤破裂症例を検討し,全体の救命率を上げる方法を考えた.【方法】2002年5月~2011年5月の期間,腹部大動脈瘤破裂(疑い,切迫を含む)の病名のある患者全員のカルテを確認.その中で画像または手術にて腹部大動脈瘤破裂の診断が確定した79例を対象とした.受診経路,診断に至る過程,治療経過,転帰について検討した.【結果】受診経路は,他院からの転院37例(47%),救急車32例(40%),一般外来7例(9%),入院中3例(4%)であった.診断については,受診時に破裂の診断のある患者34例(43%),AAAの診断のある患者20例(25%),全く診断のない患者25例(32%)であった.当院で破裂の診断の必要な患者45例の診断に要した時間は,1時間以内32例(71%),1~3時間10例(22%),6時間以上3例(7%)であった.治療および転帰については,救急外来で死亡13例(16%),手術希望なく病棟で死亡14例(18%),手術室にて蘇生のみ行い死亡4例(5%).手術施行できた患者は48例(61%).手術中に死亡2例(3%),術後死亡8例(10%),生存退院38例(48%)であった.【結論】腹部大動脈瘤破裂例の手術施行率61%,全体の救命率は48%であった.手術に至らず死亡する患者は多く,破裂前の診断治療が重要である.手術施行率を上げるために,破裂時の早期診断も重要である.
  • 前田 俊之, 栗本 義彦, 伊藤 寿朗, 小柳 哲也, 柳清 祐洋, 田淵 正樹, 仲澤 順二, 村木 里誌, 川原田 修義, 樋上 哲哉
    2012 年 21 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】胸部大動脈疾患に対する血管内ステントグラフト内挿術(TEVAR)は低侵襲治療として各施設で行われている.当院の治療方針は,胸部下行大動脈病変に関してはTEVARが第1選択である.しかし,弓部分枝を巻き込む病変に対してはopen surgeryが第1選択で,遠位弓部大動脈病変に対するTEVARは80歳以上の高齢者を含むhigh risk症例に限って解剖学的な適応を満たせば選択している.今回,当院における高齢者に対するTEVAR早期治療成績を検討した.【方法】2007年1月から2010年6月までに当院にて施行したTEVAR施行症例119例を対象とし,80歳以上の高齢者群(H群)38例と80歳未満の対照群(C群)81例の2群間における術前,術中,術後因子に対し比較検討を行った.【結果】平均年齢はH群82.4±2.5歳,C群69.7±9.3歳であり,男性はH群28例(73.6%),C群67例(82.7%)であった.術前因子は糖尿病,高血圧症,高脂血症,閉塞性肺疾患,慢性腎不全,冠動脈疾患に有意差を認めなかったが,担癌症例はH群に多かった(p<0.001).術中因子は使用デバイス,アプローチ部位に有意差を認めなかった.手術時間,麻酔時間はH群でそれぞれ151.9±69.4分,243.2±77.4分であり,C群で159.9±109.7分,243.2±113.1分であった.H群に在院死亡は認めなかったが,C群では5例(6.2%)に認めた.術後因子においても主要合併症,術後在院日数,退院形式に有意差を認めなかった.【結論】TEVARは高齢者においても安全で有効な治療手段と考えられた.
  • 佐村 誠, 善甫 宣哉, 池田 宜孝, 金田 好和, 鈴木 一弘, 壷井 英敏
    2012 年 21 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】胸部,腹部重複大動脈瘤または胸腹部大動脈瘤に対するTEVAR+EVAR一期的手術の早期ならびに中期成績より,その安全性を検討すること.【方法】2007年12月から2010年9月までに,当院で施行したTEVARは57例であり,そのうち一期的にTEVAR+EVARを施行した9例について検討した.年齢中央値は78歳(57–83)で,男7例,女2例,観察期間中央値は19.8カ月(10.5–29.6)であった.胸部,腹部重複大動脈瘤6例(遠位弓部,腹部3例,近位下行,腹部1例,慢性解離性,腹部2例),胸腹部,腹部大動脈瘤2例,急性B型大動脈解離,腹部大動脈瘤1例であった.【結果】使用ステントグラフトは胸部ではTAG 8例,Najuta 1例,腹部ではExcluder 8例,Powerlink 1例であった.Debranchingは右鎖骨下-左総頸-左鎖骨下動脈バイパス,左総頸-鎖骨下動脈バイパス各1例,右外腸骨-右腎動脈,左外腸骨-上腸間膜-左腎動脈バイパス1例であった.第8から12胸椎間にあると思われるAdamkiewicz動脈を閉塞した症例は4例,左鎖骨下動脈を閉塞した症例は2例,一側内腸骨動脈を閉塞した症例は3例で,左鎖骨下動脈,一側内腸骨動脈の同時閉塞症例はなかった.全例で脳脊髄液ドレナージは行わなかった.全例術後脳梗塞,脊髄虚血による対麻痺はなかった.観察期間中,Type II endoleak残存を3例認めるが,瘤径の拡大は認めず,全例生存している.【結論】胸部,腹部重複大動脈瘤に対する,TEVAR+EVAR一期的手術は安全かつ有用で,術後対麻痺を発生させなかった.
症例
  • 古川 博史
    2012 年 21 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は82歳,女性.約1週間前より続く背部痛を主訴に来院.胸腹部造影CT上,偽腔開存IIIa型大動脈解離と中枢側高度蛇行を伴った最大径約6.5 cmの腎動脈下真性腹部大動脈瘤(AAA)を認めた.降圧療法にて解離発症急性期を回避し,発症後40日目にAAAに対してY字型人工血管置換術を行った.IIIa解離は偽腔が血栓閉塞せず開存し,術後約2年まで最大径約4.7 cmと著変なく経過していたが,術後2年1カ月後に逆行性解離により突然死した.IIIa型急性大動脈解離発症により発見されたAAAに対して,降圧療法にて解離発症急性期を回避し,安全に手術を行うことができた.AAA中枢側高度蛇行によりIIIa解離の末梢への進展が抑えられたが,偽腔開存による逆行性解離を発症したと推測された.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 東 理人, 川尻 英長, 笹生 正樹, 三宅 武史, 高 英成
    2012 年 21 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    今回,われわれは上大静脈症候群患者に血栓除去および上大静脈の人工血管置換術を施行し良好な結果を得たためこれを報告する.症例は53歳男性,上腹部不快感の精査入院中に頭頸部から両上肢の腫脹,頸静脈怒張,頭重感,のぼせ感等の上大静脈症候群症状が出現した.肺癌の上大静脈浸潤による上大静脈症候群と診断のうえ,症状緩和目的に腫瘍の部分廓清,左右腕頭静脈の血栓除去および人工血管置換術(J-graft 18 mm)を施行した.術後に症状は速やかに改善し,半年が経過したが人工血管の閉塞なく良好に経過している.上大静脈症候群に対して血栓除去および人工血管置換術を用いた本術式は有効であった.
  • 宮武 司, 大場 淳一, 吉本 公洋, 安達 昭, 増田 貴彦, 青木 秀俊
    2012 年 21 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    連続3例の感染性胸腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を施行し良好な成績を得た.症例1は74歳男性.血液培養で黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性)検出.胸腹部大動脈瘤に対してリファンピシンに浸漬した分枝付き人工血管で置換術を施行.人工血管吻合部周囲に大網充填.術後約3年で肺炎のために死亡したが経過中人工血管感染などの問題は生じなかった.症例2は75歳女性.下部消化管内視鏡後に胸腹部大動脈瘤が出現.分枝付き人工血管により置換術施行.瘤壁から肺炎球菌検出.術前に感染を疑わなかったためリファンピシン浸漬は間に合わず,結腸手術後大網萎縮のため大網充填もできなかった.術後約5年,合併症なく生存中.症例3は75歳男性.急激に胸腹部大動脈瘤が拡大.血液培養でStaphylococcus capitis検出.症例1と同様の手術施行.術後約2年半,合併症なく生存中.感染性胸腹部大動脈瘤に対する治療戦略は,大動脈瘤に対する手術を低侵襲に確実に遂行し,感染を制御する方策を集学的に実行することである.
  • 捶井 達也, 大竹 裕志, 木村 圭一, 森山 秀樹, 鷹合 真太郎, 渡邊 剛
    2012 年 21 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は54歳,男性.急激な上腹部痛を認め近医を受診し,腹部CT検査にて上腸間膜動脈(superior mesenteric artery; SMA)の解離と診断された.偽腔の大部分は血栓化していたが,第3空腸枝分枝起始部レベルにて偽腔を認めた.SMA末梢の血流は良好で腸管虚血を疑う所見はなかった.2カ月間で偽腔の拡大(18.5 mmから27.0 mm)を,さらに内腔の圧排による真腔の高度狭窄を認めた.腸管虚血を疑う所見はなかったが,今後も偽腔は増大すると考え,動脈瘤の中隔切除・縫縮術を施行した.術後18カ月経過し施行したCT検査にて,縫縮部の拡張もなく狭窄の解除と,すべての分枝動脈の良好な血流が確認された.現在多くのSMA解離症例に対して保存的治療が行われているが再発の危険性が伴う.また外科的治療においてもバイパス術,ステントグラフト内挿術では分枝動脈を温存できない場合が多い.自験例で内膜切除および瘤縫縮術が有効であった.
  • 橋本 亘, 谷口 真一郎, 柴田 隆一郎
    2012 年 21 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    感染性腹部大動脈瘤は腹部大動脈瘤の1~3%程を占め,手術法についてはin situ再建かextra-anatomical bypass(EAB)か今なお議論が分かれる.われわれは術前に脊椎炎・椎間板炎の合併を診断できなかった感染性腹部大動脈瘤に対しリファンピシン浸潤グラフト(rifampicin-bonded gelatin-impregnated Dacron graft; RGG)を使用しin situ再建と大網充填を施行した症例を経験した.感染性動脈瘤と脊椎炎・椎間板炎の合併の報告は少なく,その手術法にはEABも考慮されるが,感染性腹部大動脈瘤でも脊椎炎・椎間板炎においても背部痛があり,さらに脊椎炎・椎間板炎の初期には画像にも描出し難く手術前の診断が困難であった.しかしながら椎体炎の合併は手術方針にも影響を与えるため念頭に置く必要がある.
  • 伊從 敬二, 有泉 憲史, 神谷 健太郎, 三森 義崇, 橋本 良一
    2012 年 21 巻 2 号 p. 141-143
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    腹部限局型大動脈解離は稀な疾患である.今回,既存の腹部大動脈瘤に腹部限局型大動脈解離が発症し急速に拡大した症例を経験したので報告する.症例は79歳の女性で2006年9月に最大径3.6 cmの腹部大動脈瘤が発見され経過観察していた.2008年5月に突然の腹痛と腰痛が出現した.CTで腹部限局型大動脈解離を認め,最大径は4.0 cmであった.5カ月後のCTで瘤径が5.5 cmまで拡大したため手術目的で当院に紹介された.手術は腎動脈下で大動脈を遮断し動脈瘤切除,Y字型人工血管置換術を行った.
  • 古川 博史
    2012 年 21 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は83歳,男性.約50 mの間欠性跛行と右下肢の安静時痛を認め,下肢血管造影にて右総腸骨動脈~浅大腿動脈末梢~下腿3分枝以下まで完全閉塞,左総腸骨動脈75%狭窄,左浅大腿動脈99%狭窄を認めた.入院時,RBC 761万/μL,Hb 17.1 g/dl,Ht 56.1%,WBC 13730/μL,PLT 115.7万/μLと多血症を認めた.平成21年11月にハイブリッド下肢血行再建術を行った.局所麻酔下に左総腸骨動脈と左浅大腿動脈に対し血管内治療を行い,同日全身麻酔下に左総大腿動脈-右大腿深動脈バイパス術を行った.左浅大腿動脈に対する下肢カテーテル治療の際に,末梢への血栓形成を認め,カテーテル的血栓吸引により改善した.術後下肢造影CT上ステントおよび人工血管は良好に開存し,症状の改善を認めた.多血症を合併した高齢者下肢末梢血管複合病変に対し,ハイブリッド下肢血行再建術を行い良好な結果を得た.
  • 溝口 裕規, 榊 雅之, 芝本 愛, 白川 岳, 政田 健太, 大竹 重彰
    2012 年 21 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は35歳女性,統合失調症.団地の4階から墜落しショック状態で当院へ救急搬送,全身性多発骨折の診断にて入院となった.全身管理のため右内頸静脈より中心静脈カテーテルを留置,第12病日に39度の発熱がみられ,カテーテル感染症を疑い抜去した.また,血液培養よりEnterococcus faeciumが検出された.第19病日,右頸部のカテーテル抜去部より血性膿の流出がみられ,頸胸部造影CTを施行したところ,右内頸静脈から右腕頭静脈,右鎖骨下静脈にかけて血栓を認め,感染性血栓症と診断した.肺塞栓を併発する可能性が高いことや感染コントロールが必要なため,手術による血栓除去術の適応と考え手術を施行した.手術アプローチは右頸部および胸部の2方向からのアプローチを選択し,右腕頭静脈の血栓除去術および右内頸静脈切除術を施行した.術後,特記すべき臨床症状はなく感染徴候は軽快した.抗生物質投与に抵抗性の感染性血栓症には手術療法が有用であると考えられた.
  • 高松 正憲, 古川 浩二郎, 蒲原 啓司, 田中 厚寿, 岡崎 幸生, 森田 茂樹
    2012 年 21 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は79歳女性.8年前に胸部下行大動脈瘤に対して,人工血管置換術後.慢性閉塞性肺疾患と慢性腎不全の合併あり.造影CTで人工血管吻合部末梢の下行大動脈と腎動脈分岐後腹部大動脈の拡大を認め,手術となった.最初に,開腹下にYグラフトによる腹部大動脈人工血管置換術を施行,その左脚に4分枝管グラフトを吻合して,腹部分枝動脈のdebranchingを行った.術後の血管造影で上腸間膜動脈(SMA)の結紮部より大動脈側に分枝の残存を認めた.SMAからのエンドリークを回避させて,残存分枝の虚血がないように,経カテーテル的にSMA中枢部の塞栓術を行った.二期的に遠位弓部から胸腹部大動脈にかけてステントグラフト(SG)内挿術を施行,術後に対麻痺などの合併症なく退院した.Debranching法によるハイブリッド手術はハイリスク症例に対して有効であるが,腹部大動脈の屈曲例や動脈瘤の腹側への突出例では,腹部分枝の根部結紮が困難な場合があり,注意を要する.
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