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猪狩 公宏, 工藤 敏文, 葛井 総太郎, 西澤 真人, 内山 英俊, 小泉 伸也, 豊福 祟浩, 地引 政利, 井上 芳徳
2013 年 22 巻 6 号 p.
865-870
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:【目的】腸骨動脈領域においては血管内治療が盛んに行われている一方で,本邦における腹部大動脈病変に対する血管内治療の報告例は少ない.よって,当科で施行した限局性腹部大動脈閉塞性疾患に対する血管内治療,とくにステント留置術を施行した症例について検討した.【方法】当科で施行した腹部大動脈閉塞性疾患に対し,ステント留置術を施行した8 例について検討した.症例は男性が3 例,女性が5 例で,年齢は46〜84 歳(平均68 歳)であった.Fontaine 分類でII 度が3 例,III 度が3 例,IV 度が2 例であった.大動脈病変の形態はTASC II B 型病変が3 例,D 型病変が5 例であった.術前の併存疾患として糖尿病を6 例に,透析例を2 例に認めた.大動脈病変の狭窄率は平均67%(55〜100%)であった.治療は7 例ではバルーン拡張型ステントを,1 例では自己拡張型ステントを留置し,全例で良好な拡張を得られた.しかしFontaine IV 度の1 例には鼠径靱帯以下のバイパス術も追加したが,重症虚血による壊疽のため下腿切断を要した.血管内治療に伴う合併症はいずれも認められなかった.【結論】手術に際しハイリスクの症例に対しては,腹部大動脈閉塞性疾患に対するステント留置術は安全で,かつ有効な治療法であると考える.
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尾﨑 公彦, 荻原 正規, 岩﨑 美佳, 北條 浩
2013 年 22 巻 6 号 p.
871-875
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:【目的】腹部大動脈瘤(AAA)に対する手術では,しばしば腸骨動脈領域に著明な動脈硬化性変性が存在し,末梢の再建方法に苦慮する.AAA 手術に際し病的腸骨動脈の合併症例に対して4 分枝人工血管(InterGard Quadrifurcated)を用い内外腸骨動脈再建を行い,通常Y 型再建例と比較した.【方法】2008 年1 月から2009 年10 月までのAAA 手術連続 41 症例のうち,腹部正中切開経路で手術を施行した28 症例を対象とした.破裂緊急例や他の合併同時手術,tube graft 症例は除外した.人工血管選択は,腸骨動脈病変合併症例,総腸骨動脈径が拡大し内外腸骨動脈分岐部間に距離がある症例,著明な石灰化症例などに4 分枝人工血管を使用しQ群(n=14)とした.対照は Y 型人工血管使用群:Y 群(n=14)で,患者背景および手術成績について比較した.【結果】患者背景ではQ 群で女性(29%)が多かったが,年齢,瘤径,併発症率に差はなかった.手術成績では,両群ともに病院死亡はなく,術後合併症としてY 群で手術創離開を1 例に生じた.手術時間(Q 群162±19 分,Y群140±35 分)はQ 群で長い傾向を認めたが,術中出血量(Q 群1,292±574 ml ,Y 群1,133±825 ml)に差はなく,術後在院期間(Q 群12±4 日,Y 群15±4 日)は,Q 群で短い傾向を示した.【結語】AAA 予定手術において,病的腸骨動脈合併例を対象に4 分枝人工血管を使用し,Y 型人工血管再建と比較検討を行った.4 分枝人工血管使用での初期手術成績は問題なく,手術侵襲も高めることはなく安全に使用可能な選択肢であると考えられた.
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藤井 琢, 尾原 秀明, 田中 克典, 関本 康人, 大田原 正幸, 北川 雄光
2013 年 22 巻 6 号 p.
876-880
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
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要旨:【目的】腹部内臓動脈瘤は比較的稀な疾患であるが,破裂した場合致死的となるため,安全かつ的確な治療法の選択が望まれる.当該病変の治療成績を報告する.【方法】1995 年10 月から2011 年9 月までに当施設で治療された37 例39 瘤を対象とした.腎動脈瘤,外傷性の仮性動脈瘤は対象外とした.男性25 例,女性12 例で,平均年齢は59.4 歳であった.【結果】瘤の占拠部位は脾動脈20 瘤,上腸間膜動脈4 瘤,膵十二指腸動脈4 瘤,肝動脈3 瘤,腹腔動脈3 瘤,胃十二指腸動脈3 瘤,腹腔・上腸間膜動脈共通幹奇形が2 瘤であり,瘤径は平均29.3±15.2 mm であった.31 例が無症候性で,破裂例は1 例であった.治療法の内訳は,血管内治療20 例(コイル塞栓術19 例,covered stent 留置術1 例),外科的手術が16 例(脾摘術4 例,瘤切除術2 例,瘤縫縮術1 例,瘤切除術+血行再建術9 例),ハイブリッド手術1 例(コイル塞栓術+血行再建術)であった.周術期に重篤な合併症や死亡例はなかった.経過観察期間中に瘤の再発や拡大などは認めていない.動脈瘤の成因としては粥状動脈硬化症以外にfibromuscular dysplasia が1 例,segmental arterial mediolysis が3 例であった.【考察】今回良好な治療成績を得たことから,腹部内臓動脈瘤に対して,低侵襲な血管内治療を第一選択とし,再建の必要性に応じて開腹手術を考慮することは妥当であると考えられた.デバイスの進歩にともない,さらなる血管内治療の適応拡大が期待されるが,臓器血流温存を考慮した適切な治療方針の決定が必須である.
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森下 清文, 楢山 耕平, 柴田 豪, 佐賀 俊文, 氏平 功祐, 馬場 俊雄, 馬渡 徹
2013 年 22 巻 6 号 p.
881-885
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
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要旨:【目的】急性胸部大動脈症候群に対する従来の治療成績は不良なためステントグラフト留置術への期待が高い.当施設における治療成績を報告する.【方法】2007 年12 月から2013 年3 月までに急性胸部大動脈症候群に対しステントグラフト留置術を行った25 例を対象とした.内訳は胸部大動脈瘤破裂が15 例,外傷性胸部大動脈損傷が7 例,胸部下行大動脈人工血管置換術後の吻合部仮性瘤破裂が2 例,特発性胸部大動脈破裂が1 例であった.アメリカ麻酔学会における術前状態分類は3±0.7 で,手術入室時ショック状態であった患者は5例であった.手術は全例に胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を行った.【 結果】術後30 日死亡を4 例(16%)に認めた.1 例は術中再破裂し台上死した.残り3 例は多臓器不全で死亡した.術後合併症は呼吸不全が12 例(48%),脳梗塞が3 例(12%),腎不全が2 例(8%)であった.ステントグラフトに関連する合併症は挿入部位の動脈損傷3 例,エンドリーク3 例,graft migration 1 例であった.再TEVAR 手術を2 例に施行した.技術的成功は21 例(84%)で術後3 カ月目における臨床的成功は18 例(72%)であった.遠隔死亡を5 例に認め,瘤関連死亡を2 例含んだ.術後1 年目の生存率は61±11%,術後3 年目の生存率は54±12%であった.【結論】急性胸部大動脈症候群に対するステントグラフト留置術の早期成績は術前状態を考慮すると良好であった.ただし適切なサイズのステントグラフトを必ずしも使用できなかったことからエンドリークなどの遠隔期合併症に注意する必要がある.
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岡田 拓, 坂上 直子, 古川 浩, 深田 睦, 小西 敏雄
2013 年 22 巻 6 号 p.
886-889
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:今回われわれは心房中隔欠損症(ASD)閉鎖術後に上大静脈(SVC)狭窄を来し恒久式ペースメーカー留置(PMI)が困難であった患者に対してSVC 再建後にPMI を施行し良好な結果を得た.症例は42 歳,男性.動悸を主訴に来院.Holter 心電図で徐脈頻脈症候群(SSS)を認め経皮的にPMI を試みたがガイドワイヤーがSVC を通過せず断念.造影CT でSVC 狭窄を認めたため開胸下にウマ心膜にてSVC 再建後にPMI を施行した.術後合併症なく良好に経過しており若干の文献的考察を加えてこれを報告する.
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松村 仁, 和田 秀一, 峰松 紀年, 田代 忠
2013 年 22 巻 6 号 p.
890-893
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:症例は51 歳,男性.20 年前に当科で胸腹部大動脈瘤に対して,胸腹部大動脈人工血管置換術施行された.以後近医で経過観察されていた.しかし5 年前頃より,通院を自分の判断で中止していた.今回,腹痛のため近医受診し,CT 検査にて切迫破裂の疑いで当科紹介となった.当科では,人工血管置換術後吻合部多発仮性動脈瘤の切迫破裂と診断し,緊急手術を行った.手術は左開胸,左心バイパス下で施行した.所見は腹腔動脈・上腸間膜動脈とグラフトとの吻合部および腹部大動脈の末梢側吻合部に離断を認め,仮性瘤を形成していた.Gelweave
®(Coselli graft 20 mm)を使用し,再置換術を行い手術を終了した.術後経過良好で,術後13日目軽快退院した.術後20 年を経て発症した吻合部仮性動脈瘤は極めて稀であり,破裂以前の診断は困難な症例が多く,手術成績は不良である.その治療戦略においてさまざまな工夫が必要とされる.文献的考察を含めて報告する.
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猪狩 公宏, 工藤 敏文, 豊福 崇浩, 地引 政利, 井上 芳徳
2013 年 22 巻 6 号 p.
894-897
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
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要旨:腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm; AAA)に対し,ステントグラフト内挿術(EVAR)の適応が増加する中,従来の開腹術の適応となる症例は中枢側ネックの解剖学的に複雑な症例である.同部位には左腎静脈(LRV)が腹部大動脈の前面を走行しており,この処理が重要となってくる.今回,われわれの経験した症例では,LRV の断端圧が高値のため分枝を処理することによって傍腎動脈腹部大動脈の露出,確保を容易にした.また中枢側吻合,両側腎動脈再建に際し,一時的LRV 切離を施行せずに,吻合部の背側にLRV を置くことにより良好な視野を確保し吻合することができた.本術式の問題点に術後のnutcracker syndrome の発生が挙げられるが,中枢側の吻合に際し,人工血管が腹側に向くようにしてLRV を圧迫しないようにすることで,nutcracker syndrome の発症を防ぎ得た.
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山根 吉貴, 打田 裕明, 平岡 俊文, 森元 博信, 尾畑 昇悟, 向井 省吾
2013 年 22 巻 6 号 p.
898-901
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:症例は70 歳男性.平成18 年に腎動脈下腹部大動脈瘤破裂によりY 型人工血管置換術を受けた.平成24 年9 月に腹部膨隆感および下血を認めたため当院を紹介された.CT にて右内腸骨動脈瘤破裂および内腸骨動脈瘤-S 状結腸瘻と診断した.大量下血は来しておらず,Herald bleeding の状態であると考えられたため,治療に関しては右内腸骨動脈瘤への血流遮断および大量下血の予防としたステントグラフト内挿術および動脈瘤末梢の内腸骨動脈分枝のコイル塞栓を行った.術後造影CT では瘤拡大,内腔の濃染は認めなかった.下血も改善し,術後30 日目に独歩退院した.大量下血を来していないHerald bleading の状態にある動脈瘤-結腸瘻においてはステントグラフト治療にて大量下血を予防できると考えられた.
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池谷 佑樹, 荻野 秀光
2013 年 22 巻 6 号 p.
902-906
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:腹部大動脈瘤に対してステントグラフト内挿術後,下腸間膜動脈および腰動脈からの持続性タイプ2 エンドリークによる瘤径拡大がみられた症例に対し,血管造影ガイド下に腹腔鏡下下腸間膜動脈および腰動脈結紮術を施行した1 例を経験したので報告する.症例は85 歳男性で51 mm の腹部大動脈瘤に対し,2008 年エクスクルーダーを用いたステントグラフト内挿術を施行した.術後定期検査CT にて下腸間膜動脈,腰動脈からの持続的タイプ2 エンドリークを認め術後36 カ月の時点で63 mm まで瘤径拡大を認めたため追加治療を行うこととした.まずは経動脈塞栓術を試みたが,不成功であったため血管造影ガイドにてエンドリーク血管を同定しながら腹腔鏡下に結紮した.血管造影にてエンドリーク消失を確認し終了した.追加治療術後12 カ月のCT でエンドリーク消失と瘤径縮小を確認している.この方法は低侵襲かつ効果的であったと考えられる.
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井上 武彦, 坂口 秀仁, 金森 太郎
2013 年 22 巻 6 号 p.
907-910
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:スタンフォードB 型急性大動脈解離破裂例に対しては一般的には緊急手術を行うが,成績は不良である.今回われわれは同症例に対し保存的治療が有効であった症例を経験したので報告する.症例1:40 歳,男性.突然の背部痛を主訴に近医受診,B 型急性大動脈解離破裂で当院紹介,救急搬送.血行動態安定.降圧・安静療法で経過良好,第24 病日退院.1 年半年後,経過良好.症例2:79 歳,男性.突然の背部痛で近医受診.同診断で紹介入院.血行動態安定.降圧・安静加療で経過良好.第21 病日軽快退院.血行動態の安定したスタンフォードB 型急性大動脈解離破裂例のなかには保存的治療が有効な例がある可能性が示唆された.
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西島 功, 上門 あきの, 池村 綾, 宮城 和史, 伊波 潔
2013 年 22 巻 6 号 p.
911-914
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:外傷性仮性腋窩動脈瘤破裂に対し,エコーガイド下トロンビン注入療法(US-guided thrombin injection;UGTI)にて治癒した症例を報告する.症例は83 歳女性.右上腕骨近位端骨折後2 カ月目に右肩周囲の腫脹が出現し,精査の結果,外傷性仮性腋窩動脈瘤破裂と診断した.UGTI にて瘤内を血栓化することで治療を行った.合計4 回のトロンビン注入にて完全に動脈瘤は消失した.文献的考察を加えて報告する.
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荻野 秀光, 池谷 佑樹, 向山 尚子, 三宅 克典
2013 年 22 巻 6 号 p.
915-918
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:大動脈十二指腸瘻に対する緊急手術中に発症した出血性ショックを,ダメージコントロールを用いたことで改善でき,患者を救命することができた.症例は79 歳の男性で,12 年前に腎動脈下腹部大動脈瘤にて人工血管置換術を受けている.今回,大量の吐血にて救急搬送された.造影CT 検査と内視鏡検査にて腹部大動脈十二指腸瘻と診断され,緊急手術が行われた.手術開始より4 時間,低体温,アシドーシスに加えて凝固障害を来し,剝離面や吻合部針穴からの出血がコントロールできなくなり,手術続行は不可能と判断してガーゼパッキングを行い,手術を一時中断して仮閉腹した.ICU に移動して復温と共に血小板製剤や新鮮凍結血漿などを投与したところ循環動態が徐々に安定した.24 時間後に再開腹すると,止血が確認できたので十二指腸の損傷部を修復して手術を終了した.術後創感染と肺炎を合併したが治癒し第62 病日退院となった.
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本田 朋, 大久保 博世, 平田 光博, 田村 幸穂, 美島 利昭, 内田 泰至, 南谷 菜穂子, 渡邊 昌彦
2013 年 22 巻 6 号 p.
919-922
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:症例は77 歳男性.健康診断の超音波で腹部大動脈瘤を指摘され当院を受診した.CT 検査で腹部大動脈瘤(最大径66 mm)と右総腸骨動脈瘤(最大径46 mm)と診断し,ステントグラフト内挿術を施行した.しかし,術後11 日目に突然の右下肢痛と冷感が出現し,CT でステントグラフトの早期脚閉塞に伴う急性下肢虚血と診断した.原因は,腸骨動脈の極度の捻じれや蛇行に起因したものと考えられるが,術後の体位についても関係が示唆された.治療は,血栓摘出術と屈曲部への自己拡張型ステントを内挿した.ステントグラフト内挿術後の脚閉塞は下肢切断にもつながる重篤な合併症であり,迅速で適切な血行再建が必要である.腸骨動脈の屈曲が強い症例では,術後にステントグラフトの脚とlanding zone の形態的変化があることを認識し,画像診断による慎重な観察が必要であると考えられる.
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久貝 忠男, 摩文仁 克人, 盛島 裕次, 阿部 陛之, 山里 隆浩, 西岡 雅彦
2013 年 22 巻 6 号 p.
923-926
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:症例は2 歳11 カ月の女児.検温時に右腋窩の腫瘤を指摘され,当初はリンパ節腫大と診断されていた.経過中に血管エコーで数珠状に連なる2 個の紡錘状の右上腕動脈瘤を認めた.血管造影では右上腕動脈瘤とともに左腋窩動脈から上腕動脈まで高度に狭窄する所見が確認された.手術は右上腕動脈瘤を切除し,大伏在静脈にて再建した.病理組織では内弾性板から外膜にかけての中膜の著明な粘液腫状肥厚と弾性線維の断裂,リンパ球浸潤を認めた.小児では上肢の発育を考慮した上腕動脈の血行再建は必須であり,グラフトは開存性,柔軟性,ねじれへの耐久性の観点から自家静脈が最もよい.患児は生後10 カ月のとき,原因不明の炎症の既往があり,血管造影所見と合わせると高安動脈炎が強く疑われる.本症例は上腕動脈瘤に対し,血行再建を行った本邦の最年少と思われる.
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久貝 忠男, 摩文仁 克人, 盛島 裕次, 阿部 陛之, 山里 隆浩
2013 年 22 巻 6 号 p.
927-930
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:症例は59 歳の男性.両側腸骨動脈閉塞に対してDacron 製グラフトによる腹部-両大腿動脈Y グラフトバイパス術を施行した.術後8 年目に左鼠径部の吻合部仮性瘤破裂のため,修復術を施行したが,術後人工血管感染をきたした.バイパス左脚の中枢吻合部を残して摘出し,EPTFE グラフトを用いて浅大腿動脈へ閉鎖孔バイパスを施行した.感染巣は治癒した.今回,術後2 年経過し,歩行中に突然に左大腿内側部痛が出現した.同部位に拍動性の腫瘤を触知し,人工血管の非吻合部断裂を認め,緊急手術を行った.EPTFE グラフトが完全に断裂し仮性瘤を形成していた.断裂した人工血管を切除し,同じEPTFE グラフトにてinterpose して,部分置換した.EPTFE グラフトの完全断裂はまれで,原因はグラフトの構造上の特殊性に股関節屈曲時のグラフトへの過伸展,解剖学上大腿内側部が外力を受けやすいことが相乗効果となったものと推測される.
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山本 剛, 大谷 悟, 桒田 憲明, 山田 有紀, 松本 泰一郎
2013 年 22 巻 6 号 p.
931-934
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
オープンアクセス
要旨:症例は61 歳男性.急激な背部痛を自覚し,当院に救急搬送になった.胸腹部造影CT で急性大動脈解離DeBakey IIIb を認め,腎動脈下腹部大動脈瘤(最大短径45 mm)にまで解離が及んでいた.保存的降圧療法を施行したが,翌日右下肢のしびれを自覚し,疼痛に変化したため造影CT を施行.腎動脈下腹部大動脈瘤内で真腔,偽腔とも血流が途絶し,両側総腸骨動脈は閉塞していた.Entry 閉鎖と真腔血流を確保するために緊急で胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行.続いて腹部大動脈瘤内の血流確保のため腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行し下肢血流は改善した.術後の造影CT で下行大動脈の偽腔にわずかに順行性の血流を認めたが,真腔は拡大しており,腹部分枝の血流は良好に保たれていた.腹部大動脈瘤内にエンドリークは認めず,経過良好にて自宅退院となった.
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白川 岳, 榊 雅之, 政田 健太, 北林 克清, 大竹 重彰
2013 年 22 巻 6 号 p.
935-939
発行日: 2013年
公開日: 2013/10/25
ジャーナル
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要旨:異所性右鎖骨下動脈(ARSA)は先天性の弓部分枝異常である.交差する食道や気管の通過障害,近傍の大動脈瘤や解離,ARSA 自体の瘤化や破裂を合併することがあり,さまざまな術式が報告されてきた.症例は68 歳女性.造影CT でARSA を伴う解離性胸部大動脈瘤(DeBakey IIIb)を指摘された.広範囲の人工血管置換を要するため,まず胸骨正中切開より弓部大動脈全置換術とARSA の血行再建を施行し,2 期的に下行大動脈置換術を行った.将来的なARSA の瘤化や周囲の圧迫を防ぐため,起始部を大動脈内腔より閉鎖し,右腋窩動脈に端側吻合した8 mm 人工血管と4 分枝付き人工血管の第1 分枝を前縦隔で吻合再建した.術後CT で,ARSA は起始部から右椎骨動脈分岐直前までが血栓で閉塞しており,ARSA 合併症例に対して胸骨正中切開からの弓部置換と起始部閉鎖,前縦隔経路再建が有効な手法であると考えられた.
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