要旨:【目的】J Graft SHIELD NEO
®(J Graft)を用いた腹部大動脈手術で臨床経過および術後の炎症反応についてこれまで使用した人工血管で比較検討した.【対象および方法】2002 年1 月から2012 年3 月までの腹部大動脈瘤手術例のうち,動脈瘤破裂,炎症性動脈瘤,全身性炎症性疾患合併例などを除いた連続112 例(72.4±9.7 歳,男/ 女92/20)を対象とし,臨床経過および術後の炎症反応について検討した.【結果】使用した人工血管はIntergard
® 56 例(72.1 歳,男/ 女49/7),UBE SHIELD
® 13 例(73.6 歳,男/ 女11/2),Gelweave
® 23 例(70.0 歳,男/ 女17/6),J Graft 20 例(75.2 歳,男/ 女15/5)で患者背景に差を認めなかった.後腹膜アプローチは6 例,ほかは全例開腹アプローチで,分岐型人工血管を106 例に用い術式に有意差を認めなかった.手術時間,出血量も差はなかった.術後の発熱,白血球数,CRP 値は術後2日までにピークを迎え,J Graft 以外の人工血管では発熱,白血球数は術後7 日目には正常値に復したが,J Graft では発熱,CRP 値は術後約7〜10 日で再上昇し,37˚C 以上の発熱およびCRP 高値は有意に遷延した(38˚C 以上の発熱持続期間:p0.001,CRP1 の期間:p0.01).【結論】J Graft では術後炎症反応が遷延する傾向にあったが,出血量や術後合併症に関しては他の人工血管と差を認めなかった.今後症例を重ね,本結果の臨床的意義を検討する必要がある.
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