日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
24 巻, 4 号
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総説
  • 梅津 光生
    2015 年 24 巻 4 号 p. 747-753
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/06/05
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:本稿では,筆者が手掛けた3 種類の血液循環系のシミュレータ装置を用いて血管外科領域の医工連携の研究に関して紹介する.まず,大血管を人工血管で置換する際のシミュレータの大動脈血管インピーダンス特性を求めた結果,人工血管置換後は心負荷が増大することを示す.次に,脳外科で使用されている手術ナビゲーションシステムを血管外科に応用し,Adamkiewicz 動脈につながる肋間動脈の位置特定に用いその臨床使用を行い,その有効性を説明する.さらに,CFD(数値流体力学)技術とPC-MRI の臨床データを用いて,大動脈弓部のTEVAR 手術時に使用される3 分岐人工血管の血流配分が適切に確保されるかを数値計算により予測する手法の確立に関して説明する.最後に,基礎研究と臨床応用の間のギャップを埋めるために,医療レギュラトリーサイエンスの“目利き人材”の育成が重要であり,そのために創設した2 大学について概説する.
症例
  • 郡谷 篤史, 松山 歩, 筒井 信一, 松田 裕之, 石田 照佳
    2015 年 24 巻 4 号 p. 754-758
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は67 歳,女性.両下肢跛行を伴う,両側浅大腿動脈(SFA)の閉塞に対し,右大腿-膝下膝窩動脈バイパス(自家静脈),左大腿-膝上膝窩動脈バイパス(ePTFE 6 mm)を施行した.両下肢血流は改善し,退院した.その後,左膝窩部の人工血管周囲に膿瘍形成を認め,鼠径部で人工血管を離断した.SFA の内膜摘除を行い,遺残人工血管にてパッチ血管形成を行った後に末梢より人工血管を抜去した.後日,左SFA のカテーテル治療を施行した.血管形成されたSFA 入口部のガイドワイヤー通過は容易であり,ステント留置後,良好な血流を得た.約2 年経過し,バイパスおよびステントは開存し,跛行症状や感染兆候は認めていない.感染した人工血管の抜去手術時に断端形成を工夫することによって,後のEVT が容易であった症例を経験した.
  • 村上 栄司, 中野 志保, 山川 春樹, 東 健一郎
    2015 年 24 巻 4 号 p. 759-762
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/06/05
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:脳出血発症急性期に合併した急性大動脈解離に対する手術例は極めて稀である.症例は65 歳男性で,右半身麻痺と失語の精査で脳出血(左視床出血)を指摘された.全身検索で,胸部CT 上60 mm を超える上行大動脈の拡大と,entry が上行大動脈のULP 型大動脈解離を認めた.画像所見等から大動脈解離発症は,脳出血発症と同時期と思われたが,可及的早期に手術介入の必要があった.脳出血発症後,降圧安静療法を経て第15 病日に循環停止下に上行大動脈人工血管置換術施行した.脳出血後の脳損傷を考慮し,high flow の恐れのある脳分離体外循環は回避した.術後経過は良好で,神経症状の増悪やCT での脳出血範囲の拡大を認めず,術後2 週間で脳神経外科へ転科となった.脳出血発症急性期に合併した急性大動脈解離に対し手術介入時期に苦慮したが,脳出血発症後第15 病日で上行大動脈置換術を施行し良好な結果を得た.
  • 大内 真吾, 大山 翔吾, 熊谷 和也, 満永 義乃, 田中 良一, 播間 崇記
    2015 年 24 巻 4 号 p. 763-766
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は78 歳,男性.狭心症で近医通院中.冠動脈の精査のために行ったCT 検査で偶然に下行大動脈の囊状瘤を指摘され,当院でステントグラフト内挿術(TEVAR)を行った.手術から2 年後,38度の発熱を認め,近医を受診.WBC,CRP の上昇を認め,抗生剤の処方を受け当院に紹介された.CT 検査で以前に比べ,ステントグラフト外側の大動脈壁が肥厚,拡大し,造影効果が認められた.TEVAR 術後の大動脈壁の感染,あるいは再燃を疑い手術を施行した.手術は,ステントグラフトを除去,同部位の大動脈壁を摘出し,人工血管置換術を行った.術後11 病日独歩退院し,術後半年の現在も感染の再燃を認めていない.囊状動脈瘤にステントグラフトを留置する際,注意深い経過観察が必要であると思われた.
  • 佐藤 哲也, 伊藤 智, 中野 光規, 木村 直行, 山口 敦司, 安達 秀雄
    2015 年 24 巻 4 号 p. 767-771
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:77 歳男性.急性A 型大動脈解離を認め,術前心タンポナーデに伴うショック状態であった.造影CT では,偽腔開存の大動脈解離を認め腹部分枝まで解離が及んでいた.緊急上行大動脈置換術を施行し,術中腸管虚血を疑う所見なく手術を終了した.術後10 時間で下血を認め緊急試験開腹手術を施行した.小腸に虚血を認めず,S 状結腸壊死を認め結腸切除を施行した.帰室後よりアシドーシスの進行と膀胱内圧軽度高値を認め,再度腸管虚血を疑い,2 回目の緊急試験開腹術を施行した.広範な小腸虚血を認めたが,切除範囲が広く切除を断念した.しかし保存的治療で腸管虚血・全身状態の改善を認め退院となった.可逆的な腸管虚血の診断は難しいが,広範な虚血のため虚血部腸管が切除できない症例でもその後虚血が回復することがあり,腸管虚血に対し試験開腹による腹腔内圧の減圧効果が治療に奏功した可能性がある.
  • 木原 一樹, 石田 敦久, 近沢 元太, 坂口 太一, 吉鷹 秀範
    2015 年 24 巻 4 号 p. 772-775
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は60 歳男性.32 歳時,ルーリッシュ症候群に対してaorto-bifemoral bypass(ABF)を施行.55 歳時,人工血管右脚閉塞に対して人工血管置換術,その翌年に中枢吻合部の動脈瘤に対して,ステントグラント内挿術を施行した.今回,右鼠部の拍動性腫瘤を主訴に当科受診.人工血管右脚に生じた仮性瘤に対して手術を施行した.人工血管前面は完全に破綻しており,可能な範囲でePTFE グラフトによる人工血管置換を行った.残存した右脚中枢部は人工血管遮断部位も含めて,今後の瘤化を予防する目的でePTFE グラフトにて被覆した.術後経過は良好で,術後10 日目に独歩退院した.今後とも引き続き,定期的に画像診断による評価を行い,人工血管劣化による動脈瘤発生に留意する必要があると考えられた.
  • 田内 祐也, 山本 淳平, 谷岡 秀樹, 近藤 晴彦, 佐藤 尚司, 松田 暉
    2015 年 24 巻 4 号 p. 776-780
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:馬蹄腎を伴う破裂性腹部大動脈瘤に対して大動脈閉塞用バルーンカテーテル挿入が有用であった症例を経験したため報告する.症例は80 歳,男性.腹痛を主訴に前医受診し,腹部大動脈瘤破裂の診断にて当院搬送となった.造影CT にて馬蹄腎を伴う腎動脈下腹部大動脈瘤の破裂を認め,まず速やかに大腿動脈より透視下に大動脈閉塞用バルーンカテーテルを挿入し,手術室へ搬送した.麻酔導入時に循環動態が破綻したためバルーンを拡張し,循環動態を安定化させ,手術を遂行した.明らかな異所性腎動脈は存在せず,手術は馬蹄腎峡部を温存する形でY 字人工血管置換および下腸間膜動脈再建を行った.術後経過は問題なく第14 病日軽快退院となった.
  • 大久保 由華, 竹久保 賢, 島田 晃治, 保坂 靖子, 大関 一, 岡本 竹司
    2015 年 24 巻 4 号 p. 781-785
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:超高齢者の胸部大動脈瘤破裂(rTAA)に対してステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行し良好な結果を得ることができた.症例は96 歳女性.胸痛が持続し救急搬送され,当院救急外来にて造影CTを施行した.遠位弓部瘤破裂,左胸腔に多量の胸水および血腫を認めた.準緊急でTEVAR を施行し,同時に左胸腔にトロッカー挿入しドレナージを行った.第16 病日に小開胸による血腫除去術を行うことで呼吸状態も良好となり,第41 病日にリハビリ目的に転院となった.超高齢の開胸手術が高リスクの症例に対してTEVAR は救命において有効な治療戦略の一つである.
  • 高松 昌史, 吉田 博希, 稲葉 雅史
    2015 年 24 巻 4 号 p. 786-789
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/06/12
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:腹部大動脈瘤に対し,endovascular aneurysm repair(EVAR)が有効な治療手段となってきたが,両側腸骨動脈瘤合併例では,その治療に難渋することが少なくない.今回,両側腸骨動脈瘤合併例に対し,外腸骨-内腸骨動脈バイパスにて一側の内腸骨動脈血流を温存したEVAR を行い,良好な結果が得られたので報告する.症例は68 歳男性で,直腸癌の精査中,CT 検査で腹部大動脈瘤(最大短径34 mm)と両側総腸骨動脈瘤(右径56 mm,左径47 mm)を認めた.直腸癌,多発肝転移を合併しており,開腹による人工血管置換術では体力回復に時間を要し,また,直腸癌手術時には腹腔内癒着,人工血管感染のリスクがあると考え,直腸の虚血を回避する意味からも,一側の外腸骨-内腸骨動脈バイパスを併置したEVARを一期的に施行した.術後,腸管虚血などを含めた合併症は認めず,術後6 カ月の現在,良好に経過している.
  • 池添 亨, 細井 温, 布川 雅雄, 窪田 博
    2015 年 24 巻 4 号 p. 790-793
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/06/12
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:Popliteal venous aneurysm はまれな疾患であるが,肺塞栓症の原因となり致死的となることがある.今回,再発性肺塞栓症を契機に発見されたpopliteal venous aneurysm を経験したので報告する.症例は2005 年に肺塞栓症の既往を有する68 歳の男性.2007 年11 月に山登り中に呼吸苦を自覚し,翌日の起床時に呼吸困難と胸痛が出現したため救急車で当院に搬送された.CT 検査で肺塞栓症の診断となり入院加療となった.抗凝固療法と血栓溶解療法を施行し,症状は徐々に改善していたが入院7 日目に肺塞栓症再発をきたした.同時期に施行したCT 検査,超音波検査で深部静脈血栓症とpopliteal venous aneurysmを認め,下大静脈フィルター留置後に後方アプローチにて瘤切除,パッチ形成術を施行した.
  • 在國寺 健太, 新本 春夫, 乗松 東吾, 加藤 泰之, 柳原 孝章, 高梨 秀一郎
    2015 年 24 巻 4 号 p. 794-798
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/25
    [早期公開] 公開日: 2015/06/12
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は82 歳女性.最大短径50 mm の腹部大動脈瘤に対し,ステントグラフト内挿術を施行した.最終造影でエンドリーク(endoleak; EL)を認めたがType 4 と判断した.退院3 カ月後に倦怠感が出現し,高度貧血,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation; DIC),右大腿筋肉内血腫の診断で再入院となった.造影CT では瘤径の拡大はないもののEL は残存していた.DIC に対する薬物治療を行ったが血小板減少が進行する状態であり,瘤内における消費性凝固障害を疑いEL の完全消失を目的に再治療を行う方針となった.血管造影でType 1a EL と判明し,バルーンやステント追加で中枢圧着を試みたが完全な消失は得られず,そのまま開腹手術に移行した.バルーン遮断下に瘤を切開しY 型人工血管置換術を施行した.術後DIC は改善し現在まで再燃なく経過している.
学会開催報告
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