日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
24 巻, 5 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
症例
  • 荒木 大, 佐藤 一義, 本橋 雅壽, 石原 和明
    2015 年 24 巻 5 号 p. 805-808
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は49 歳男性.草刈り作業中に使用していた刈払機の回転鋸が石に接触し破損,破片が右膝上の大腿部内側に当たり受傷した.レントゲン検査,血管造影検査,CT 検査など施行したところ,破片が右大伏在静脈から静脈内を移動し奇静脈に迷入したと診断.全身麻酔下に異物摘出術を施行した.術後経過は良好で感染兆候もなく軽快し退院した.大伏在静脈から奇静脈まで静脈内を移動した飛来性異物除去手術という非常に稀と考えられる症例を経験したので報告する.
  • 山下 洋一, 阪本 浩助, 北本 昌平, 堀井 泰浩
    2015 年 24 巻 5 号 p. 809-813
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は61 歳男性.52 歳時に山林での作業中に事故に遭い,他院で左総腸骨動脈損傷と診断され左総腸骨動脈-左総大腿動脈バイパス術が行われた.術後7 年目に人工血管感染を合併し,グラフト除去と左腋窩-左大腿動脈バイパスが行われた.その後経路を変えながら2 度にわたる再手術が行われたが感染は完全に制御されず治療は断念されていた.長期の抗生剤投与により腎機能も廃絶し,維持透析を行っていた別の病院から当科紹介となった.3 カ所に皮膚瘻が形成され,膿が排出しており,造影CT ではバイパス以外からの左下肢への血流は乏しく,一期的な血行再建と感染グラフと除去を予定した.手術は右総大腿動脈-左膝上膝窩動脈バイパス術と感染した人工血管の除去を行った.左大腿部においては新たな人工血管を薄筋下の経路を通し,感染創から隔離するようにした.現在感染の再発は認めず外来通院中である.
  • 溝口 高弘, 善甫 宣哉, 永瀨 隆, 宮﨑 健介, 金田 好和, 須藤 隆一郎
    2015 年 24 巻 5 号 p. 814-817
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:感染性大動脈瘤と大動脈食道瘻は致命率の極めて高い疾患である.今回われわれはTEVAR後,二期的に食道切除・消化管再建術のみを施行し大動脈瘤壁の切除を行うことなく救命し得た症例を経験したので報告する.症例は74 歳,男性.嚥下困難,発熱,頸部皮下血腫を認め,CT で胸部下行大動脈瘤破裂と診断し,Gore TAG ステントグラフト内挿術を施行した.来院時血液培養からCampylobacter fetusが検出され感染性胸部下行大動脈瘤破裂および大動脈食道瘻と確定診断し,抗生剤投与を開始した.抗生剤治療を継続し感染のコントロールが良好な状況で,TEVAR 術後36 日目に食道切除・再建,大網充填術を施行した.その後も抗生剤点滴を1 カ月間継続し,炎症反応の上昇もなく入院67 日目に退院となった.TEVAR 術後1 年が経過した現在も感染の再燃はなく経過良好である.
  • 景山 聡一郎, 大橋 壮樹, 只腰 雅夫, 古井 雅人, 内野 学, 小谷 典子
    2015 年 24 巻 5 号 p. 818-821
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:大動脈解離に合併する臓器虚血は,肋間動脈,腹腔動脈,上腸間膜動脈,腎動脈,下肢などが一般的であるが食道壊死の報告はきわめて稀である.今回,急性B 型大動脈解離の保存的加療中に,急性食道壊死を合併した症例を経験した.症例は78 歳の女性で,背部痛を主訴に受診しCT 検査にて急性B型大動脈解離と診断された.入院時の画像検査では偽腔閉塞型で大動脈径の著明な拡大はなく,明らかな臓器虚血症状はきたしていなかった.しかし第4 病日から呼吸苦が出現し,再度のCT 検査および上部消化管内視鏡検査にて食道壊死に伴う縦隔炎,ARDS と診断された.敗血症性ショックとなったため,外科的ドレナージを行い感染症の治療を続けたが,縦隔食道瘻を合併し,第22 病日に失った.急性食道壊死は非常に稀であるが,発症すると非常に重篤な疾患であり,急性大動脈解離に合併する可能性があることを常に念頭に置いた管理が必要と思われる.
  • 藤井 健一郎, 水元 亨, 庄村 遊, 藤永 一弥, 澤田 康裕, 寺西 智史
    2015 年 24 巻 5 号 p. 822-826
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は73 歳男性.以前膀胱癌に対し経尿道的膀胱腫瘍切除術,BCG 膀胱内注入療法を受け無再発で経過していた.1 カ月前より夜間発熱を認め腹部腫瘤を自覚するため当院を受診した.CT 検査にて感染性胸部および腹部大動脈瘤が疑われ入院となった.入院4 日目のCT にて腹部大動脈瘤の拡大を認め手術を施行した.手術はリファンピシン浸透人工血管を使用し人工血管置換,大網充填術を施行した.術中組織培養よりガフキー陽性,その後Mycobacterium bovis と診断され抗生剤治療を開始した.術後2週間目のCT 検査にて胸部下行大動脈瘤の拡大を認め手術を追加した.手術はリファンピシン浸透人工血管にて下行大動脈置換術を施行した.術後経過良好で10 日目に軽快退院した.現在術後14 カ月が経過するも炎症反応の再燃および動脈瘤の再発は認めていない.BCG 療法後の結核性動脈瘤の合併は極めて稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 澤田 雅志, 星野 竜, 平本 明徳, 小柳 俊哉
    2015 年 24 巻 5 号 p. 827-831
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は68 歳女性.呼吸困難を主訴に当院へ救急搬送された.入院時,循環・呼吸不全を呈し,造影CT にて,急性肺血栓塞栓症と診断された.緊急カテーテルによる血栓吸引は困難で,PCPS(経皮的心肺補助装置)を導入,血栓溶解療法を施行した.しかし直後から,PCPS 刺入部からの出血が続き,流量を維持するために大量の輸血を要した.それでも出血傾向が続き,循環不全・呼吸不全は悪化していた.第2 病日の造影CT にて,肺血栓は右主肺動脈に残存していたため,外科的治療の適応と判断し,緊急手術となった.出血合併症の助長を回避するために,通常の人工心肺は用いず,PCPS 下での血栓摘除術を施行した.手術室でPCPS を抜去し,術後15 日目に人工呼吸器から離脱でき,術後45 日目独歩退院となった.
  • 親松 裕典, 中山 雅人
    2015 年 24 巻 5 号 p. 832-835
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:コントロール不能な出血を伴う血管外傷では迅速な止血処置が救命に必要である.また,四肢の血管外傷では機能的予後についても考慮すべきである.症例は43 歳男性,就労中に金属棒により右大腿部杙創を受傷した.救命処置を施されながらドクターヘリで搬送された.当院到着時,出血は続いておりショック状態であるため緊急手術を行った.浅大腿動静脈が離断されていたため,大伏在静脈グラフトでそれぞれ血行再建を行った.術後に下肢腫脹はなく,リハビリにより歩行機能をとり戻して,独歩で退院となった.バルーンカテーテルを用いた早急な止血と比較的短時間で自家血管グラフトを用いて浅大腿動静脈の血行再建を行ったことで,術後にコンパートメント症候群などの合併症なく,救命と良好な機能的予後を得ることができた.四肢血管外傷では患者の生命と機能的予後を守るためには,迅速な止血,血行再建かつ術後の合併症の予防が重要である.
  • 中村 制士, 若林 貴志, 曽川 正和
    2015 年 24 巻 5 号 p. 836-840
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:感染性心内膜炎に合併した感染性左結腸動脈瘤の報告は稀である.80 歳女性.左片麻痺と発熱で,脳梗塞と診断された.心エコー検査にて僧帽弁閉鎖不全症と僧帽弁両尖に可動性のある疣贅を認め,感染性心内膜炎と診断した.僧帽弁置換術を緊急に行い,抗生剤を継続していたが,発熱が続いた.CT にて下腸間膜動脈領域の動脈瘤を認め,経時的に急速な増大傾向を示したため,感染性動脈瘤と診断し,さらに,大腸癌も合併していたため,同時手術を行った.
  • 小野田 幸治, 竹歳 秀人, 高見 正成
    2015 年 24 巻 5 号 p. 841-844
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は71 歳,女性.右下肢の間歇性跛行および右足趾の色調変化と冷感を主訴に来院.造影CT 検査にて右膝上部と膝窩部に2 つの膝窩動脈瘤を認め,膝上部の動脈瘤は内転筋腱裂孔の近傍から瘤化しており,膝窩部の巨大な瘤は血栓化し膝窩動脈3 分岐まで血栓閉塞していた.右血栓化膝窩動脈瘤に起因した下肢虚血と診断し手術を施行した.手術はまず内側アプローチにて内転筋腱切開を加えて浅大腿動脈末梢にテーピング後,腹臥位として後方アプローチを併用して動脈瘤切除と膝窩動脈3 分岐の血栓除去および大伏在静脈による血行再建術を行った.術後8 カ月が経過するが合併症なく良好に経過している.
  • 浦山 博
    2015 年 24 巻 5 号 p. 845-847
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:腹腔腸間膜動脈共通幹の出現頻度は3.4%とされており,また,腹腔内臓動脈瘤の中で腹腔動脈本幹の瘤の頻度は4%とされている.稀な腹腔腸間膜動脈幹に伴う腹腔動脈瘤に対して手術を行った.症例は76 歳,男性である.CT にて上腸間膜動脈と腹腔動脈は共通幹を形成し,その共通幹より分岐する膵後面の腹腔動脈に最大径23 mm の囊状動脈瘤が見出された.手術はこの腹腔動脈瘤を空置し,腹腔腸間膜動脈共通幹より分岐する腹腔動脈起始部を離断,縫合し,上腸間膜動脈末梢から腹腔動脈末梢分岐部まで大伏在静脈を用いてバイパスした.術後1 年の現在元気である.解剖学的異常に伴う腹腔内臓動脈瘤では症例に応じた治療の選択が必要と思われた.
  • 千田 佳史, 田中 郁信, 山本 浩史
    2015 年 24 巻 5 号 p. 848-852
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は72 歳,男性.腹部大動脈瘤に対しステントグラフト(ENDURANT IITM)内挿術を施行された.術後は炎症反応の遷延なく経過し,外来で経過観察となった.術後5 カ月目から腰痛,下腹部痛が出現し,6 カ月目には発熱および腰痛の増強があり,近医を受診した.造影CT でマントルサインを認め,感染性大動脈瘤として加療されたが,改善が得られず当科に紹介となった.血液生化学検査で炎症反応の上昇を認めたものの,血液培養が陰性であり,血清プロカルシトニンも基準値内であったことから炎症性大動脈瘤と診断し,ステロイド投与により炎症の消退を得た.ステントグラフト内挿術後の合併症として稀な炎症性大動脈瘤を経験したので報告する.
  • 土肥 正浩, 白方 秀二, 奥村 悟
    2015 年 24 巻 5 号 p. 853-856
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨: 症例は68 歳男性.2004 年に腎動脈下の腹部大動脈瘤に対してDacron 製Y 型人工血管(Hemashield 16×8 mm)を用いた人工血管移植術を受けた.2010 年にMRI にて人工血管周囲の44 mm の腫瘤を認めたが経過観察されていた.瘤径の急速な拡大(2012 年:最大短径56 mm,2013 年:最大短径69 mm)と,造影CT にてY 型人工血管の脚分岐部より造影剤の漏出を認めたため再人工血管置換術の方針となった.後腹膜腔に初回手術時にラッピングされた動脈瘤壁の拡張を認めた.動脈瘤壁を切開し人工血管を露出,人工血管脚分岐部より漏出する出血を認めた.脚分岐部の破綻が腫瘤拡大の原因と判断し同部位を含む人工血管を切除し再人工血管置換術を行った.2000 年代に移植されたDacron 製人工血管の破綻例は稀で,かつ10 年以内という比較的早期で脚分岐部の破綻による再手術例であり報告する.
  • 小谷 真介, 南村 弘佳, 石川 巧, 村上 忠弘, 生田 剛士, 清水 幸宏
    2015 年 24 巻 5 号 p. 857-860
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/25
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:今回われわれは非常に稀な遺残坐骨動脈とLeriche 症候群の合併例に対する1 手術例を経験したので報告する.症例は60 歳,女性.両下肢の間欠性跛行を認めていた.Ankle-brachial pressure index(ABI)は右0.49,左0.48 であった.造影CT 検査,血管造影検査で腎動脈直下大動脈から両側総腸骨動脈の閉塞病変を認めLeriche 症候群と診断した.末梢はさまざまな側副血行路から造影されたが左側に遺残坐骨動脈を認め,この動脈から膝窩動脈および下腿3 分枝が造影されており,大腿動脈は低形成であった.手術は腹部大動脈-両側大腿動脈バイパス術に加え,左大腿動脈-膝窩動脈バイパス術を行った.術後は症状の著明な改善を認め,ABI は右0.97,左0.98 と改善した.
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