日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
26 巻 , 3 号
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症例
  • 小林 卓馬, 松濱 稔, 後藤 智行
    2017 年 26 巻 3 号 p. 149-152
    発行日: 2017/05/25
    公開日: 2017/05/19
    ジャーナル フリー

    当院において2010年6月から2016年12月の間に血管内治療を施行した腸骨動脈瘤を含む腹部大動脈瘤は66例であった.術後瘤径の拡大を6例に認め,そのうち10 mm以上の拡大を来たし,開腹移行した症例は3例あった.Type II endoleakを疑い開腹移行したが,2例はステントグラフトのfabricに欠損を認めた.術後経過よりtype II endoleakと考えられたが,実際はfabricに欠損を生じたtype IIIb endoleakと腰動脈,正中仙骨動脈からのtype II endoleakのmixed typeであった.Type III endoleakはグラフトの継ぎ目から生じるtype IIIaの報告はしばしば見受けられるが,遅発性に生じるtype IIIb endoleakの報告は依然として稀である.術後遠隔期に開腹移行し,type IIIb endoleakと診断した症例を2例経験したので報告する.

  • 吉村 幸祐, 小林 平, 濱本 正樹, 小澤 優道
    2017 年 26 巻 3 号 p. 153-156
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

    症例は72歳男性.他院で本態性血小板血症に対してヒドロキシカルバミド内服による治療が行われていたが,血小板数は150×104/µL前後で推移していた.右第4趾壊死の精査加療で当科を受診し,下肢動脈造影検査で右前脛骨動脈,腓骨動脈,足底動脈の閉塞が指摘された.適切な血小板数管理の後に下肢血行再建術を予定していたが,壊死が進行しつつあったため手術を行った.術前からのヒドロキシカルバミド,アピキサバン,アスピリン内服に加えて,術後はヘパリン持続点滴,クロピドグレル内服追加による血栓症対策を行った.グラフトの血栓閉塞は認めなかった.趾切断は不可避であり創治癒に時間を要したが下肢大切断は回避することができ,術後第124病日に軽快退院した.血小板数管理は不良であったが,2剤の抗血小板療法と1剤の抗凝固療法の3剤併用により術後グラフト閉塞を起こすことなく救肢し得た.

  • 田中 陽介, 溝口 和博, 安宅 啓二, 金森 大悟, 山本 浩詞, 谷村 信宏
    2017 年 26 巻 3 号 p. 157-160
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー

    腹部大動脈瘤や腸骨動脈瘤の静脈穿破は稀な病態であるが,重篤化することが多いため,早急な治療が必要となる.従来から開腹手術により動静脈瘻の閉鎖および人工血管置換術が行われてきたが,その手術成績は必ずしも良好とはいえない.そのため,近年,低侵襲な血管内手術での治療報告がなされるようになってきた.症例は70歳,男性.当院受診時に進行性の心不全を呈しており,造影CT検査で右総腸骨動脈瘤の静脈穿破と診断,緊急手術を施行した.手術は右内腸骨動脈のコイル塞栓および腹部大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行した.術後,血行動態の急速な改善を得たが,術後CT検査で少量のエンドリークによる残存短絡を認め,経皮的コイル塞栓術による追加治療を行った.動脈瘤の静脈穿破に対するEVARは,血行動態の改善には極めて有用であるが,術後エンドリークによる残存短絡には注意し,適切な対処を行う必要がある.

  • 小渡 亮介, 谷口 哲, 渡邊 崇人, 千代谷 真理, 鈴木 保之, 福田 幾夫
    2017 年 26 巻 3 号 p. 161-164
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は81歳男性.腹痛と嘔吐を主訴に受診した.CTでは十二指腸水平脚が上腸間膜動脈(SMA)と腹部大動脈に挟まれて閉塞しており,その直下に最大径60 mmの腹部大動脈瘤(AAA)を認めた.AAAが原因の上腸間膜動脈症候群(SMAS)と診断し,動脈瘤切除,人工血管置換術を行った.患者には胆囊摘出術の既往があり,開腹すると腸間膜癒着によってSMAの可動性が制限されていた.それに加えて,十二指腸の水平脚はAAA直上でSMAと腹部大動脈に挟まれている複合的要因で閉塞を来たしていた.これらを解除することで,速やかにSMAS症状は改善し,良好な経過が得られた.AAAによるSMASの報告は稀に見られるが,腸間膜癒着との複合的要因で発生した報告はないため,ここに報告する.

  • 山本 直樹, 田中 哲文, 大上 賢祐, 籏 厚, 三宅 陽一郎
    2017 年 26 巻 3 号 p. 165-169
    発行日: 2017/06/12
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

    症例は74歳,男性.診断は下行大動脈瘤であった.下行大動脈置換術直後より脳脊髄液ドレナージを開始し,術当日の覚醒後に対麻痺症状のないことを確認した.しかし,術後1日目に対麻痺が出現した.脳脊髄液ドレナージの排液はなく,閉塞も考えられたため新たに脳脊髄液ドレナージチューブを挿入した.脳脊髄液の流出が確認されたが,脳脊髄液初圧10 cmH2Oと上昇はなかった.すぐにD-マンニトールと副腎皮質ホルモンの点滴を併用し,血圧維持管理を開始した.また,フェンタニルによる疼痛管理を中止しナロキソン持続静注を開始した.対麻痺発症から4時間後より徐々に症状は改善し,発症から24時間目で歩行器歩行が可能となった.下行大動脈置換後に遅発性対麻痺が出現したが,ナロキソン持続静注と血圧維持が著効した症例を経験したので,文献的考察を踏まえ報告する.

  • 仲澤 順二, 伊藤 寿朗, 渡邊 俊貴, 黒田 陽介, 原田 亮, 川原田 修義
    2017 年 26 巻 3 号 p. 171-174
    発行日: 2017/06/12
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

    症例は80歳男性.慢性腎不全により維持透析が行われており,5年前に腹部大動脈ステントグラフト内挿術が施行された.1週間前より左側胸部違和感が出現し,CT検査にて最大径98 mmの囊状の胸腹部大動脈瘤(Modified Crawford分類5型)が認められた.術前検査にて重症大動脈弁狭窄症の合併を認めたが,胸腹部大動脈瘤切迫破裂の診断で,準緊急的に人工血管置術を施行した.術中,重症大動脈弁狭窄症による循環動態破綻に備えて,右腋窩動脈送血,大腿静脈脱血の部分体外循環で手術を行った.術中予期せぬ出血があったが,循環動態が破綻することなく,胸腹部大動脈瘤人工血管置換術を施行した.術後経過は良好で,術後21日目に自宅退院し,術後6カ月後に大動脈弁置換術を施行した.

  • 磯田 竜太郎, 森田 一郎, 平林 葉子, 杭ノ瀬 昌彦, 猶本 良夫
    2017 年 26 巻 3 号 p. 175-178
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/06/15
    ジャーナル フリー

    不適切な血管内治療(EVT)で重症虚血肢(CLI)を生じる可能性がある.今回,総大腿動脈にステント留置されCLIに至った症例を経験したので報告する.症例は81歳男性で閉塞性動脈硬化症のため他院でバイパス術およびEVTを受けたが,右第2趾潰瘍が生じ当科を受診した.造影CTで右外腸骨–総大腿動脈ステント閉塞,右浅大腿–膝窩動脈バイパス閉塞を認め,症状増悪し手術方針とした.残存する自家静脈が限られたため人工血管で左外腸骨–大腿動脈バイパスの人工血管–右大腿深動脈交叉バイパス術,前述したバイパスの人工血管–膝下膝窩動脈バイパス術を行った.創傷治癒進まず,血管造影で右後脛骨動脈が限局性に閉塞していたため,自家静脈を用いた右後脛骨–後脛骨動脈バイパス術および第2趾切断を行い創傷治癒した.non-stenting zoneへの不適切なステント留置はCLIに至る危険性がある.

  • 秋月 光, 堀江 弘夢, 石黒 眞吾
    2017 年 26 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 2017/06/21
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    気管腕頭動脈瘻は気管切開の稀ではあるが死亡率の高い合併症である.症例は76歳女性で3年前に外傷性くも膜下出血後に気管切開を施行された.療養型病院に転院となり,気管チューブの交換時に気管切開孔から大量出血を来し当院に救急搬送となった.気管チューブのカフを膨張させている間は止血が可能であったため造影CTを施行した.気管腕頭動脈瘻と診斷し緊急で腕頭動脈離断術を施行した.術後,局所での感染を併発したが開創ドレナージにて治癒した.術前後での意識レベルや神経学的所見に変化はなく救命できた.気管腕頭動脈瘻は適切な対応による一次止血と外科的治療が重要である.腕頭動脈離断術は術中での総頸動脈断端圧を測定することにより脳虚血の予測が可能であり,気管腕頭動脈瘻に対する簡便で再発が少ない術式である.

  • 井上 秀範, 赤坂 純逸, 岩堀 晃也, 内山 裕智, 本橋 慎也, 進藤 俊哉
    2017 年 26 巻 3 号 p. 185-188
    発行日: 2017/06/23
    公開日: 2017/06/21
    ジャーナル フリー

    症例は67歳男性.65歳時に横行結腸癌および腹部大動脈瘤を指摘され,動脈瘤径が小さいことから横行結腸切除術を先行した.以後,腹部大動脈瘤に関しては経過観察となっていたが,横行結腸切除術後1年経過した時点で急速に腹部大動脈瘤が拡大してきたため,手術適応とされた.開腹後であるためステントグラフト内挿術を選択して行ったが,術後1病日目に粘血便が認められたため,緊急内視鏡検査を施行した.虚血性大腸炎と診断し,直ちに,絶食や補液による保存的加療を行い,重篤化することなく軽快退院となった.ステントグラフト内挿術は,開腹による人工血管置換術よりも比較的虚血性腸炎の合併が少ないとされているが,腸管切除術後および広範囲リンパ節廓清後の症例では,術後合併症として発生する可能性があるため考慮して治療する必要があると考えられた.

  • 神藤 由美, 深田 睦, 西巻 博, 寺田 仁
    2017 年 26 巻 3 号 p. 189-194
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー

    稀な疾患である咽頭後間隙血腫(RH)診断後に続発したStanford B型急性大動脈解離(AAD(B))の本邦報告例はないため,文献的考察を加えて報告する.症例は66歳男性.背部より2 m転落2時間後に呼吸苦が出現し前医を受診,CTでRHおよび血腫圧迫による気管狭窄を認め当院転送となった.搬送中呼吸不全となり,緊急気道確保後にCTを再検するとAAD(B)・偽腔閉塞型を認めた.内科治療を行うも治療抵抗性の疼痛・高血圧が持続し,偽腔再開存および瘤径拡大を認めた.RHの増大が治まると痛み・血圧とも制御可能となったが,偽腔開存部瘤径拡大は続くためRH縮小を確認した後,AAD(B)に対しステントグラフト内挿術(SG)を行い軽快退院し得た.RHに続発したAAD(B)であっても致死的合併症を来した場合の外科治療は,時期を問わずに文献上SGが人工血管置換術よりも成績が良く第一選択と考える.

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