日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
26 巻 , 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総説
  • 春田 直樹
    2017 年 26 巻 4 号 p. 225-230
    発行日: 2017/08/30
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー

    下肢静脈疾患治療でエポックメーキングな三つの出来事があった.一つ目は,2011年1月よりダイオードレーザーによる血管内焼灼術が保険収載になったことで,二つ目は,2014年4月より内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術(SEPS: Subfascial Endoscopic Perforator Surgery)という術式が保険収載となったことである.従来保険収載された下肢静脈瘤術式は総て表在静脈に対する処置であったが,SEPSは穿通枝静脈に対する治療法である.三つ目は2016年9月より硬化療法時のポリドカスクレロール使用に際し,フォームでの使用が添付文章に記載されたことである.そこで今回の教育セミナーでは,下肢静脈瘤治療の中でも血管内焼灼術,SEPS,フォーム硬化療法を中心に解説するとともに,皆様に是非忘れないで欲しい1症例を提示した.

症例
  • 佐々木 理, 高橋 皇基, 丹治 雅博
    2017 年 26 巻 4 号 p. 195-197
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー

    Ehlers-Danlos症候群(EDS)は結合織に脆弱性を持つ遺伝性疾患である.なかでも血管型(IV型)は血管壁,消化管壁に脆弱性を示し非常に重篤な合併症をもたらす.今回,われわれの経験したEDS IV型が疑われた症例について報告する.症例は30歳男性.突然の右下腿の腫脹,疼痛を主訴に来院した.精査の結果,右後脛骨動脈瘤破裂と診断され,緊急コイル塞栓術を施行された.22歳時に樹状肺骨化症,25歳時に脳梗塞,脳内硬膜動静脈奇形,左内頸動脈–海綿静脈洞瘻,症候性てんかんの既往があり,特徴的な病歴からEDS IV型が疑われた.術後は順調に経過したが,術後23日の早朝に突然の腹痛を訴え,その後ショック状態となった.緊急の造影CTの結果,右後腹膜への造影剤漏出と多量の血腫を認め,外腸骨動脈の破裂が疑われた.直ちに救命のため尽力したが奏功せず死亡した.本症候群は急性に致命的合併症を来す疾患である.今回の症例でわれわれが反省すべき点を含め,文献的考察を加えて報告する.

  • 毛利 亮, 後藤 拓弥, 小松 弘明
    2017 年 26 巻 4 号 p. 199-201
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー

    骨軟骨腫は比較的頻度の高い良性骨腫瘍であるが,まれに仮性瘤形成,循環障害,血栓症など血管系の合併症を生じる.これらの中では膝窩動脈仮性瘤が最も多く,文献上の報告が散見されるが,邦文報告は非常に少ない.症例は41歳女性,学童期より多発性骨軟骨腫を指摘されていた.一カ月前からの右大腿後面の鈍痛,腫脹,皮下出血を主訴に来院,Magnetic resonance imaging(MRI)にて骨軟骨腫による右膝窩動脈仮性瘤と診断された.手術では,体位を半腹臥位とし,内側および後方の両方向からアプローチを行った.この体位を用いることにより,仮性瘤中枢および末梢での血管確保,膝窩動脈損傷部の直接縫合閉鎖,骨軟骨腫切除まで体位変換することなく円滑に手術を行うことが可能であった.まれな大腿骨遠位端骨軟骨腫による膝窩動脈仮性瘤を経験し,半腹臥位による内側および後方アプローチで手術を行い良好な結果を得た.

  • 松村 祐, 八巻 文貴, 東 理人
    2017 年 26 巻 4 号 p. 203-207
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー

    症例は70歳男性.62歳時に冠動脈バイパス術(右内胸動脈–左前下行枝,左内胸動脈–第1対角枝–鈍角枝,胃大網動脈–後下行枝)を受けた.胸部単純エックス線写真にて左第1弓の突出を認め,造影CTを撮影したところ,左鎖骨下動脈瘤(胸腔内型,囊状,60×52 mm)を認め,手術適応と判断した.冠動脈造影では左回旋枝は起始部で閉塞し,左回旋枝の血流は左内胸動脈からのバイパスに依存していた.一部をBare stentに加工したCook Zenith腸骨動脈レッグを上下反転させて左腋窩動脈から挿入し留置することで,左内胸動脈および椎骨動脈が閉塞するリスクを冒すことなく治療し得た.術後に瘤は著明に縮小した.左内胸動脈バイパス術後の胸腔内左鎖骨下動脈瘤に対しステントグラフト内挿術を行うことで,心筋虚血のリスクを最小限に抑えることができたと考えている.

  • 鈴木 脩平, 加藤 香, 竹久保 賢, 大関 一, 酒井 剛
    2017 年 26 巻 4 号 p. 209-212
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー

    症例は13歳の女児.右上腕の腫瘤に気づき,当科を紹介された.右上肢に虚血や塞栓症は認めなかったが,右上腕に3×5 cm大の腫瘤を認め上腕動脈瘤と診断された.12歳時,足首の捻挫で短期間松葉杖を使用したことはあるが,明らかな外傷の既往はなく,膠原病や血管炎は否定的だった.上肢の動脈造影では動脈瘤以遠への順行性の血流はほとんどなく,末梢血流は発達した上腕骨回旋動脈や上腕深動脈からの側副血行で保たれていた.手術は局所麻酔下に上腕動脈を結紮し,瘤切除のみ行った.瘤の病理組織学的検査では瘤壁に中膜の消失所見や動脈壁の三層構造が不明瞭なところがあり,仮性動脈瘤と診断された.術後半年経過し,右上肢の血圧低下や虚血症状は認めていない.

  • 赤岩 圭一, 古野 哲慎, 尾田 毅, 中村 克彦, 田中 啓之
    2017 年 26 巻 4 号 p. 213-216
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー

    症例は60歳男性.突然の腰痛と下肢のしびれを自覚し,その後路上で倒れているところを発見され,救急車にて当院に搬送となった.単純CTで腹部大動脈瘤破裂と重複下大静脈の診断となり,緊急手術の運びとなった.手術は左腎動脈上での大動脈遮断による腹部大動脈瘤切除および直管型人工血管による人工血管置換術を施行した.大動脈瘤頸部の前面を左下大静脈が斜走しており,テーピングした左下大静脈を頭側,尾側に牽引し展開することで,中枢側吻合を行った.術中に静脈損傷はなかった.術後経過は良好で術後20日目に自宅退院となった.重複下大静脈を伴った腹部大動脈破裂の一例を経験したので報告する.

  • 福本 行臣
    2017 年 26 巻 4 号 p. 217-220
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/07/29
    ジャーナル フリー

    日常の診療において下肢の腫脹はよく見かけるが,股関節から発生したガングリオンによる外腸骨静脈圧排が原因であった稀な症例を経験した.症例は64歳,男性.左下肢の腫脹,疼痛を主訴に近医を受診し,エコー検査にて腸骨静脈の高度狭窄を指摘されたため当院へ紹介された.造影CT検査にて左後腹膜腔に左外腸骨静脈を外側より圧排する約2.5 cm大の囊胞性腫瘤を認めた.エコーガイド下に穿刺吸引を行い症状は改善したが,6日後には再度同様の所見となっていたため切除術の適応と判断し,手術を施行した.病理検査にてガングリオンと診断された.穿刺吸引は再発率が高く摘出術が推奨されるが,同様の症状を呈する異なる原因疾患も報告されており,手術時には注意を要すると考えられた.

  • 田内 祐也, 三井 秀也
    2017 年 26 巻 4 号 p. 221-224
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー

    大腿深動脈瘤は稀な疾患であり,その発症様式は多様である.今回われわれは大腿神経圧迫による歩行障害を契機に診断された大腿深動脈瘤の1例を経験したので報告する.症例は80歳男性.約1カ月前から左下肢筋力低下を自覚し徐々に歩行困難となったため前医を受診した.左鼠径部腫瘤を認め,CTにて左大腿動脈瘤が疑われたため当院へ紹介となった.造影CTにて左大腿深動脈に最大径54 mmの瘤を認め,主訴は瘤による大腿神経圧迫症状と考えられた.手術の方針とし,人工血管置換術を施行した.術後大腿神経圧迫症状は改善し,独歩可能となり,術後9日で軽快退院した.高齢者において比較的頻度の高い歩行障害において,大腿深動脈瘤も鑑別疾患として挙げる必要性があると考えられた.

  • 出津 明仁, 待木 雄一, 広松 孝, 高良 大介, 柴田 耕治, 原 圭吾
    2017 年 26 巻 4 号 p. 231-234
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,男性で,農作業中に事故に遭い,耕運機の刃が右大腿遠位内側から膝窩に向かって突き刺さり,膝窩動静脈を完全断裂した.挫滅組織を切除した上で,端端吻合し,損傷した膝窩動脈,膝窩静脈は再建された.事故から7カ月後,右足底のしびれと右下腿浮腫のため当院を受診された.足関節上腕血圧比は右1.21/左1.12で正常であった.造影CTで右膝窩動脈第2部に4.5 cm大の囊状動脈瘤を認めた.後方アプローチで動脈瘤切除,同側小伏在静脈グラフトで置換術を受けた.術後4年2カ月時点では,追加治療を行うことなくグラフトは開存している.

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