日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
27 巻 , 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
総説
  • 駒井 宏好
    2018 年 27 巻 6 号 p. 507-512
    発行日: 2018/12/27
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    閉塞性動脈硬化症は重症化すると下肢の予後はもちろんのこと生命予後も悪化するため重症下肢虚血(CLI)は早期から正確な診断,適切な治療を行わなければならない.そのためには血管外科医師のみならず多くの他科医師,メディカルスタッフの協力が必要である.CLIの治療にはまずその正確な診断が不可欠であるが,近年この領域のガイドライン上の定義が見直されてきており,これをしっかり把握しておかなければならない.CLIの集学的治療には足の治療における集学的治療,生命予後改善における集学的治療,重症化しないための集学的治療があり,それぞれ専門家の協力によるチーム医療が必須である.専門医には自身の専門領域の深い造詣のみならず他科,他職種の能力を知り,協調できる能力が求められる.重症虚血肢においては人間ピラミッドのように多くの専門医の力を結集する集学的治療が不可欠である.

原著
  • 草川 均
    2018 年 27 巻 6 号 p. 461-466
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    【目的】いわゆるDodd, Boyd, Cockettのような定型的な穿通枝以外の非定型的な不全穿通枝(IPV)による下肢静脈瘤症例について,今回手術経験症例をまとめた.【方法】2014年1月から2018年6月に,下肢静脈エコーで診断し,患者の希望で治療した43肢の非定型的な位置のIPVに起因する下肢静脈瘤につき,局在,症例像,症状,治療とその結果を分析した.【結果】原因のIPVは筋肉のコンパートメント間を走行していた.局在は,大腿下部後外側が16肢と最も多く,続いて膝窩付近9肢,下腿下部後外側7肢と続いた.42肢に不全穿通枝直接結紮切離と関連側枝静脈瘤切除を,1枝には硬化療法を行い,40肢では筋膜下の閉塞を得たが,3肢では筋膜レベルでto and froの血流が遺残し,stamp側枝からの再発に注意して経過観察中である.【結論】下肢静脈瘤の原因となる非定型的IPVは大腿下部後外側に多く,正確なエコー診断のもと,筋膜外に断端,関連側枝を残さない結紮切離が重要である.

  • 仁田 淳, 赤井 隆文, 宮原 和洋, 花田 和正, 保科 克行
    2018 年 27 巻 6 号 p. 467-472
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    【目的】独自の自作Off-the-Job Training(以下Off JT)システムの効果と有用性を,医学生および医師を募って施行して得られたデータにより評価した.【方法】当科での安価で簡便な独自のOff JTシステムを考案した.このシステムの特徴として実際の開腹手術における深部での術野を想定し,プラスチック製の鉢の底で血管吻合のトレーニングを行った.(A)吻合時間,(B)半自動的に画像解析・評価した“バイト”および“ピッチ”の変動係数,(C)Operative Performance Rating System(OPRS)に基づき指導医が評価した総合的な血管吻合・縫合手技のスコア,(D)これら(A)~(C)の相関関係の4項目を評価した.【結果】トレーニング後に吻合時間,バイトおよびピッチの変動係数は減少した.またOPRSによるスコアは高くなった.これら3項目間には強い相関を認めた.【結論】吻合時間の短縮,バイト・ピッチの均一性やOPRSの改善がトレーニング後に認められ,当科独自の自作Off JTシステムの効果が示された.(本稿は,下記論文を日本語訳したものです.Annals of Vascular Diseases, doi: 10.3400/avd.oa.18-00075)

  • 重盛 林太郎, 戸谷 直樹, 福島 宗一郎, 伊藤 栄作, 西江 亮祐, 秋葉 直志, 大木 隆生
    2018 年 27 巻 6 号 p. 485-489
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    【はじめに】今回,破裂性腹部大動脈瘤(RAAA)に対するステントグラフト内挿術(EVAR)において中枢追加処置を要した症例の解剖学的リスク因子について検討した.【方法】当院でRAAAに対して行われたEVAR 28例について,解剖学的因子と中枢追加処置の関連を解析した.【結果】 Fitzgerald(F)分類はF-1: 11例,F-2: 2例,F-3: 11例,F-4: 4例であった.中枢追加処置は9例(32.1%)に行った.中枢追加処置の有無とネック長に関して有意差を認めた(42 mm vs 14 mm; p=0.013).また中枢ネック長15 mm以下の症例で有意に中枢追加処置が多かった(p=0.001).周術期死亡は5例(17.9%)に認めたが中枢追加処置を行った群に死亡例は認めなかった.【結語】中枢ネックが短い場合は補助デバイスを準備するなど的確な手術戦略を立てることが重要と考えられた.

症例
  • 野中 謙太朗, 岡留 淳, 末松 延裕, 松本 俊一, 伊東 啓行
    2018 年 27 巻 6 号 p. 431-435
    発行日: 2018/11/10
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル フリー

    症例は37歳女性.12歳時にSLE・ループス腎炎の診断となり,17歳時より維持透析中であった.28歳時に最大短径約60 mmのAAAを指摘され,瘤の形状やアクセスの高度石灰化,右外腸骨動脈閉塞などのため,数施設でopen repairを勧められたが,本人の同意を得られず経過観察となっていた.今回瘤径が短径90 mm大にまで達したため,当科を紹介受診.EVARでの治療が可能と判断し,EVARおよび右外腸骨動脈血管内治療を施行した.術後造影CTでエンドリークのないことを確認し,経過良好で自宅退院となった.術後2年,現在に至るまでエンドリークは認めず,瘤も縮小傾向で,跛行症状の再燃も認めてない.今回SLE若年女性に発症した巨大な腹部大動脈瘤に対し,手技的工夫を加えたEVARにて治療を完遂し得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 大住 幸司, 関本 康人, 長崎 和仁
    2018 年 27 巻 6 号 p. 457-459
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    膝窩静脈静脈性血管瘤はまれな疾患であるが,肺血栓塞栓症の原因となる可能性があるため,外科的治療が一般的に推奨されている.膝窩静脈静脈性血管瘤の症例報告は散見されるが,術後再発をきたした症例は非常にまれである.今回われわれは術後再発症例を経験したので報告する.症例は64歳,女性.56歳時右膝痛の精査中に右膝窩静脈静脈性血管瘤(囊状)を指摘され,瘤切除,縫縮術を施行された.その後症状なく経過していたが,術後1年目の下肢造影CT検査で右膝窩静脈は軽度,囊状に拡張しており経過観察とした.その後静脈性血管瘤は徐々に増大し術後7年7カ月目に再手術を施行した.前回と術式を変更し,小伏在静脈グラフトによる置換術を施行した.膝窩静脈静脈性血管瘤の術後には再発の可能性もあることを念頭に置き,フォローアップを行うことが重要であると考えられた.

  • 安宅 亮, 植木 力, 佐藤 博文, 平野 雅大, 秋本 剛秀, 恒吉 裕史
    2018 年 27 巻 6 号 p. 473-476
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    症例は25歳男性.工場で作業中に鉄パイプで両下肢を挟まれて受傷した.搬送時,左膝関節周囲の腫脹を認め,左足背動脈は触知困難,かつドップラー血流計で聴取困難であったが,左後脛骨動脈は微弱に聴取可能であった.左下腿の疼痛,冷感,感覚障害などの虚血症状はなかった.X線検査では左膝関節脱臼を認めた.脱臼整復後の造影CT検査では,膝窩部約2.5 cmの左膝窩動脈の閉塞を認めたが,左下腿動脈3枝は側副血行路により微弱な造影効果を認めた.来院5時間後より虚血症状出現したため緊急手術の方針とした.左大伏在静脈をグラフトとした膝上–膝下膝窩動脈バイパス術を施行した.虚血症状出現から血行再建までの時間は約8時間であった.術後,左足背動脈触知良好で虚血症状も消失した.外傷性膝窩動脈損傷は稀な病態であり,救肢には迅速かつ適切な診断,治療が要求される.初期症状が顕著でない場合でも,慎重な経時的評価が重要である.

  • 榊原 賢士, 中島 博之, 白岩 聡, 本田 義博, 葛 仁猛, 加賀 重亜喜
    2018 年 27 巻 6 号 p. 477-480
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR: Thoracic Endovascular Aortic Repair)は,侵襲度の低さから,リスクが高い症例に対して積極的に行われるようになった.通常TEVARのアクセスルートは大腿動脈が使用され,比較的口径の大きいシースを挿入する必要がある.今回,動脈硬化性変化が高度のため大腿動脈をアクセスルートとして使用できず,腹部大動脈をアクセスルートとせざるをえなかった緊急TEVARの2例を経験したので報告する.症例1: 86歳女性,大動脈食道瘻の患者.腹部大動脈は著しく蛇行しており,両側総腸骨動脈径は細く大腿動脈からのアプローチは困難,腹部大動脈をアクセスルートとした.症例2: 89歳男性,胸部大動脈瘤破裂の症例.右大腿動脈からアプローチしたが屈曲,外腸骨動脈の狭窄が強く22 Frシースが通過しないため,腹部大動脈へアクセスルートを変更した.腹部大動脈をアクセスルートとする方法は,緊急手術であっても比較的容易にアプローチできるため,他のアクセスルートが選択できない場合,有用な方法と考えられた.

  • 室町 幸生, 伊藤 茂樹, 橋本 雅史, 雨宮 正, 波多野 靖幸, 荻野 均
    2018 年 27 巻 6 号 p. 481-484
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    症例は74歳,男性.1年前に右下肢閉塞性動脈硬化症に対し,人工血管を用いて右大腿動脈–膝窩動脈バイパス術を施行.半年後にバイパスグラフトの閉塞を来たし,その数日後にグラフト中枢側吻合部に仮性動脈瘤を形成したため,血栓除去と仮性動脈瘤の修復術を施行.その後外来にて経過観察中,同部に仮性動脈瘤の再発を認めた.徐々に瘤の拡大を認め手術適応と判断.しかしながら,患者および家族が手術は希望せず,過去3回の手術で重度の癒着が予想され,仮性動脈瘤も巨大で直達手術は困難と思われたため,Vein-covered stentによる血管内治療を選択した.術後経過は良好で,仮性動脈瘤は縮小した.冠動脈ステントと大伏在静脈によるVein-covered stentを用いた血管内治療の報告は極めて稀であり,有用な一手段と考え報告する.

  • 吉尾 敬秀, 丸山 雄二, 太田 恵介, 高橋 賢一朗, 井村 肇, 新田 隆
    2018 年 27 巻 6 号 p. 491-494
    発行日: 2018/12/27
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    72歳男性.胸部大動脈瘤にて紹介となり,当院施行のCTで腹部大動脈瘤・左総腸骨動脈瘤・両側内腸骨動脈瘤・右大腿深動脈瘤を指摘された.上行弓部大動脈置換術を先行し,1年後に腹部大動脈ステントグラフト内挿術と同時に大腿深動脈瘤切除・人工血管置換を行った.術後CTやその後の経過観察にても良好な開存が得られている.無症状で発見される大腿深動脈瘤は,本症例のように他部位の動脈瘤を合併する場合が多い.動脈拡張に加え動脈瘤の多発する病態はarteriomegalyと呼ばれる.大腿深動脈瘤は破裂症例では視野不良のため血行再建が困難であり,胸部・腹部大動脈瘤や腸骨動脈瘤の症例ではarteriomegalyも考慮し,末梢まで検索することが肝要と考える.

  • 小川 辰士, 須田 久雄, 中井 洋佑, 在國寺 健太, 神谷 信次, 水野 明宏
    2018 年 27 巻 6 号 p. 495-498
    発行日: 2018/12/27
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    静脈性血管瘤(Venous Aneurysm: VA)は稀な疾患である.大伏在静脈VAが原因となり,肺血栓塞栓症(Pulmonary Embolism: PE)を発症し心肺停止を来した症例を経験したので報告する.症例は81歳女性.立位にて増悪する左鼠径部の腫瘤を主訴に消化器外科受診.鼠径ヘルニアの診断で手術を施行するもヘルニアは認めず,左大伏在静脈VAの診断で当科コンサルトとなった.外来での下肢血管超音波検査直後に意識レベル低下を認め心肺停止となった.蘇生後の造影CTでPEとVA内に多量の血栓を認め,入院16日目に手術を施行.術中所見と諸検査から,診療行為により血栓遊離を来しPEを発症したものと推察された.心肺停止を来した表在静脈VAはわれわれが調べた限り報告はなく,早急な外科的治療介入に加えて,PE発症を念頭に置いた慎重な診察が必要であると反省させられた一例であるため,警鐘を兼ねて報告する.

  • 中村 峻輔, 藤本 竜平, 谷口 裕一, 中西 浩之
    2018 年 27 巻 6 号 p. 499-501
    発行日: 2018/12/27
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    自動釘打機による右大腿動脈損傷の1例を経験した.症例;56歳男性.既往歴;とくになし.現病歴;仕事中,自動釘打ち機で誤って長さ85 mmの釘を右大腿部に打ち込んだ.レントゲン検査では骨折は認めなかったが,造影CTではArtifactで大腿動脈の損傷の評価は困難であった.血管エコーで釘は右浅大腿動脈を穿通しており,緊急手術を施行した.右総大腿動脈よりFogartyカテーテルを挿入し,大腿動脈の出血をコントロールした.受傷した浅大腿動脈を剝離,遮断後,釘を抜去した.損傷部位を切除後,浅大腿動脈端端吻合を行った.術後経過は良好であり,術後造影CTでも有意狭窄は認めなかった.感染の合併なく,術後11日目に退院した.非医原性の大腿動脈損傷の報告は稀である.血管エコーを行い,動脈損傷を速やかに診断,治療し良好な結果を得た.

  • 児玉 渉, 西村 謙吾, 浜崎 尚文, 山本 修一, 河合 剛, 吹野 俊介
    2018 年 27 巻 6 号 p. 503-506
    発行日: 2018/12/27
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    肝動脈瘤は稀であり,近年血管内治療が積極的に行われているが,外科治療と併用して行われた例は少ない.われわれは巨大総肝動脈瘤に対して,血管内治療を併用して外科的治療を施行した.症例は79歳女性.食欲低下があり,上部内視鏡検査にて胃体部後壁の腫瘤を指摘され,腹部造影CT検査で最大径10 cmの腹部内臓動脈瘤を認めた.腹腔動脈造影検査では脾動脈分岐部の腹腔動脈末梢に巨大動脈瘤を認め,瘤から右肝動脈と胃十二指腸動脈が分岐したため,総肝動脈瘤と診断した.手術は,出血コントロールが不能になることを危惧し,開腹前に瘤背側の脾動脈をコイル塞栓した.胃結腸間膜を切開して瘤に到達し,瘤を切開後に瘤内で腹腔動脈からのinflowを縫合閉鎖した.Outflowの胃十二指腸動脈と右肝動脈を剝離して端端吻合し,肝臓の血流を維持した.現在,再燃はない.血管内治療を併用して外科的治療を行うことで,治療を安全に施行できたと思われた.

血管外科手術アニュアルレポート2012年
  • 日本血管外科学会データベース管理運営委員会, NCD血管外科データ分析チーム
    2018 年 27 巻 6 号 p. 437-456
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    2012年に日本で行われた血管外科手術について,日本血管外科学会データベース管理運営委員会が集計結果を解析し,アニュアルレポートとして報告する.【方法】NCDの血管外科手術データに基づき,全国における血管外科手術動向およびその短期成績(術死,在院死亡)を解析した.【結果】2012年にNCDに登録された血管外科手術は95,979例であり,1,043施設からの登録があった.このデータベースは,7つの血管外科分野即ち動脈瘤,慢性動脈閉塞,急性動脈閉塞,血管外傷,血行再建後合併症,静脈疾患,その他の血管疾患からなっており,それぞれの登録症例数は,19,600, 13,141, 4,600, 1,623, 1,973, 30,725, および24,332例であった.腹部大動脈瘤(含む腸骨動脈瘤)は15,745例で,その47.6%がステントグラフトによって治療されていた.1,704例(10.8%)の破裂例を含んでおり,手術死亡率は破裂,非破裂で,それぞれ17.8%,0.8%であった.慢性動脈閉塞症は,重複を含み13,141例登録され,open repair 7,859例(うちdistal bypass 1,173例),血管内治療5,282例が施行された.静脈手術の内訳は,下肢静脈瘤30,088例,下肢深部静脈血栓症395例などであった.その他の手術として,バスキュラーアクセス手術22,654例,下肢切断1,390例などが登録された.全分野において手術死亡率に大きな変動はないが,下肢大切断が減少しておらず,また,その死亡率も高止まりしていることに問題を残している.【結語】2011年と比較して,全領域において血管内治療が増加しており,とくに動脈瘤に対するステントグラフト内挿術や静脈瘤に対するレーザー焼灼術の増加が目立った.

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