日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
30 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
講座
  • 隈 宗晴
    2021 年 30 巻 4 号 p. 205-209
    発行日: 2021/07/21
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル オープンアクセス

    慢性腸管虚血(chronic mesenteric ischemia: CMI)は主に動脈硬化により腹腔動脈,上腸間膜動脈および下腸間膜動脈が慢性的に狭窄あるいは閉塞し,それにより消化管の血行障害をきたしたものである.典型的な症状は食後の腹痛と体重減少である.診断は臨床症状とCTやMRI,血管造影を用いた腸間膜動脈系の画像評価により行われる.臨床症状が進行したCMIではQOLの改善と腸管梗塞の予防の目的で血行再建が行われる.血管内治療が第一選択となっており,血管内治療が適応外あるいは不成功例や反復する再狭窄例に外科手術が行われる.

  • 圷 宏一
    2021 年 30 巻 4 号 p. 241-245
    発行日: 2021/08/26
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    昨年,大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインが約10年ぶりに改訂された.そのなかで,「定義・診断・疫学・病理・検査」の領域について,2020年版ガイドラインが,前回のガイドラインと比べ改訂の明らかな点のうち,以下の事項に絞って概説した.(1)用語:Intramural hematoma(IMH), Pentrating atherosclerotic ulcer(PAU), Ulcer-like projection(ULP),に関しての再定義.前回推奨されなかったIMHという用語を臨床用語として容認した.(2)分類:偽腔の状態による解離の分類に関しての再定義.とくにULP型と開存型の境界を数値で示した.(3)囊状大動脈瘤に関してリスク層別化:高リスクの数値としての基準(sac depth/neck width >0.8他)を参考値として示した.

  • 志水 秀行
    2021 年 30 巻 4 号 p. 247-250
    発行日: 2021/08/26
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    2020年改訂版大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインから,非解離性胸部大動脈瘤の診断,治療に関するいくつかのポイントを紹介,概説する.

  • 岡田 健次
    2021 年 30 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 2021/08/26
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    2020年改訂版大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインの「胸部・解離」について解説する.本稿では通常の解離の分類に加え,壁内血腫(IMH),潰瘍様突出像(ULP),穿通性粥状硬化症(PAU)の定義やその扱いについて明確に記載した.また急性A型解離におけるトピックである置換範囲の推奨,frozen elephant trunkの有用性,大動脈基部置換術の術式選択,臓器別malperfusionへの対応にも言及している.また前回のガイドラインから10年を経てB型解離(complicated, uncomplicated)に対する胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)をはじめとする血管内治療の病期別(acute, subacute, chronic)の適応をその間に蓄積されたエビデンスに基づき明快に示している.

  • 坂野 比呂志
    2021 年 30 巻 4 号 p. 259-263
    発行日: 2021/08/26
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    今回本邦の大動脈瘤・大動脈解離ガイドラインが2011年から9年ぶりに改訂となった.本稿では腹部領域に関して旧ガイドラインからの変更点を中心に,最近改訂された欧米の腹部大動脈瘤(AAA)に関する診療ガイドライン(2017年米国血管外科学会,2019年欧州血管外科学会)との比較も含めて解説する.ガイドラインの内容に沿って,スクリーニング,サーベイランスから心血管リスク管理を目的とした内科的治療,EVAR(Endovascular aortic repair)や人工血管置換術(OSR)などの外科的治療までの内容を含めた.今回の改訂に至るこの10年間ほどの間に大動脈領域における血管内治療の進歩は著しく,その適応は拡大してきているが,反面その長期成績の問題点に関する報告も相次いでおり,早期・長期成績を加味して患者への治療方針を吟味しなければならない.

原著
  • 松野 寛子, 渡邉 恒夫, 高田 彩永, 中山 純里, 篠田 貢一, 野久 謙, 渡邉 崇量, 大倉 宏之
    2021 年 30 巻 4 号 p. 213-218
    発行日: 2021/08/06
    公開日: 2021/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】当院における深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis: DVT)と肺血栓塞栓症(Pulmonary Thromboembolism: PTE)および担癌患者との関連性について調査することを目的とする.【方法】2018年1月から2018年12月までの期間に下肢静脈エコーの依頼があった患者668名を対象とした.評価項目は,①血栓の存在部位とPTEの関連性,②血栓の性状とPTEの関連性,③DVTと担癌患者との関連性,④DVTと分子標的薬との関連性とした.【結果】DVT陽性患者31.6%,PTE陽性患者4.6%,担癌患者42.1%,分子標的薬使用患者1.6%であった.血栓の存在部位間の比較では,下腿や大腿と比較して腸骨領域で,血栓性状の検討では慢性期血栓例と比較して急性期および亜急性期の血栓例において有意にPTEの陽性率が高かった(p<0.01).一方,担癌患者かどうか,および分子標的薬使用の有無ではDVTの頻度に差を認めなかった.【結論】本検討において,下肢静脈エコーでの血栓の存在部位およびその性状がPTE発生に関連していることが示唆された.

症例
  • 尤 礼佳, 藤村 直樹, 鈴木 健之, 原田 裕久
    2021 年 30 巻 4 号 p. 195-199
    発行日: 2021/07/21
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル オープンアクセス

    浅大腿動脈(Superficial Femoral Artery; SFA)の長区間病変に対しViabahnステントグラフトは有効だが,1 cmのlanding zoneが必要で,連続した総大腿動脈(Common Femoral Artery; CFA)病変は適応外となる.今回われわれは,CFA病変を伴うSFAの長区間閉塞に対し,CFAからSFA起始部まで血栓内膜摘除(Thrombo-Endarterectomy; TEA)を実施した上で,Viabahnステントグラフトを留置した3例を経験した.症例1は70歳男性.症例2は83歳男性.症例3は60歳男性.主訴は間欠性跛行2例,足趾潰瘍1例で,3例の平均病変長は27.8 cmであった.全例で症状は消失し,現在外来で経過観察中である.CFA病変を伴うSFA病変に対し,TEAの併施によりViabahnステントグラフトを安全に留置できる可能性がある.

  • 三森 義崇, 伊從 敬二, 奥脇 英人, 有泉 憲史, 橋本 良一
    2021 年 30 巻 4 号 p. 201-204
    発行日: 2021/07/21
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル オープンアクセス

    人工膝関節置換術(TKA)は比較的安全な手術であるが,稀に動脈損傷の合併症を生じることがある.症例は73歳女性.左変形性膝関節症に対して,他院整形外科にてTKAが施行された.2週間後から左下肢腫脹が出現し,徐々に悪化したため101日後に当院に紹介された.造影CT検査にて左膝窩から下腿後面に約12×18 cmの巨大血腫を認め,動脈造影検査にて膝窩動脈から後方に造影剤の漏出を認めたため,TKA術後の膝窩動脈仮性瘤と診断した.手術は穿孔部位にVIABAHNを留置し,同時に血腫のドレナージを行った.術後経過は良好で,11日目に退院した.6カ月後の動脈造影検査で穿孔部はシールされ,有意狭窄を認めず,術後36カ月経過した現在まで無症状で経過している.膝窩動脈に対するステントグラフト留置は保険適用外の使用であるが,症例によっては有効な治療手段となりうると考えられた.

  • 神藤 由美, 西巻 博, 西村 潤一, 深田 睦
    2021 年 30 巻 4 号 p. 219-223
    発行日: 2021/08/26
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    感染性動脈瘤に対する基本治療は抗菌薬投与とopen surgeryによる感染組織の広範囲除去と血行再建で,ステントグラフト治療は相対的禁忌とされ,根治術までのbridgeと考えられてきた.しかし近年では感染性動脈瘤に対しステントグラフト治療のみで救命できた症例報告が散見される.症例は73歳男性.胸部大動脈囊状瘤に対する2-debranching+single chimney thoracic endovascular aortic repair施行2年目に感染性仮性腕頭動脈瘤を発症した.VIABAHNを用いdouble D techniqueで破裂予防措置を行い,結果的に救命できた症例を経験したため報告する.

  • 角野 聡
    2021 年 30 巻 4 号 p. 225-228
    発行日: 2021/08/26
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術施行2年後にIgG4関連炎症性腹部大動脈瘤を発症し,ステロイドによる内科治療が奏功した1例を経験した.患者は82歳,男性.他院で腹部大動脈瘤に対しEVARを施行され,以後当院外来でフォロー中,2年後のCTフォローにおいてMantle signを認め,炎症性大動脈瘤と診断,IgG4陽性であった.CT上EVAR後2 mmの瘤径拡大を除いてEndoleak, Migrationなどの異常所見は認めず,外科治療の適応なく,ステロイド投与による内科治療を選択した.ステロイドは30 mgから開始し,血液生化学検査での炎症所見とCT所見を指標に漸減した.CT上の瘤周囲肥厚所見はステロイド開始2カ月後にほぼ消退した.ステロイドは6カ月後に5 mgまで減量し,血清IgG4値も正常化した.1年経過した時点で炎症性大動脈瘤の再発はない.文献的考察を加え報告する.

  • 大山 詔子, 阿部 陛之, 山里 隆浩, 木下 亮, 我那覇 文清, 宗像 宏
    2021 年 30 巻 4 号 p. 229-232
    発行日: 2021/08/26
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    大動脈解離におけるTEVARの役割は増しつつあるが,破裂例では偽腔血流の制御が必要でTEVARによるエントリー閉鎖のみでは十分な治療にならない場合がある.今回,慢性解離性胸腹部大動脈瘤破裂に対し,TEVARおよびリエントリー閉鎖術を行い偽腔血流の完全制御が得られた症例を経験したので報告する.71歳女性.10年前にStanford B型大動脈解離を発症,肥満低換気症候群,慢性腎臓病の既往あり.1週間前からの胸痛があり,造影CTにて破裂性胸腹部大動脈瘤を認めた.挿管後も呼吸状態が悪く左開胸での人工血管置換術は断念した.TEVARにてエントリーを閉鎖し,次に右腎動脈起始部のリエントリーの閉鎖をVIABAHNにて行い,さらに肋間動脈起始部のリエントリーからNBCA-Lipiodolを用いた偽腔塞栓を追加した.偽腔血流は完全に停止し,1年後のCTで大動脈リモデリングが得られ,現在外来観察中である.

  • 船越 薫子, 米倉 孝治, 豊福 崇浩, 菅野 範英
    2021 年 30 巻 4 号 p. 233-236
    発行日: 2021/08/26
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    われわれは今回特発性大網血腫の1切除例を経験したので,多少の文献的考察を加えて報告する.症例は,60歳男性.突然の右側腹部痛にて受診し,同日施行した腹部CTにて大網血腫が疑われたため精査加療目的に入院となった.血管造影検査にて右胃大網動脈の分枝からの出血が疑われたが,当該動脈の塞栓術が困難であったため,開腹し,血腫を含めた大網部分切除を行い,破綻していた右胃大網動脈の分枝を結紮して止血した.術後腸閉塞で再入院を要したが,保存的加療を行い,術後64日目に軽快退院となった.

  • 渋川 貴規, 谷岡 秀樹, 岩田 圭司
    2021 年 30 巻 4 号 p. 237-239
    発行日: 2021/08/26
    公開日: 2021/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は全身倦怠感,両下肢の脱力を主訴とする68歳男性.救急外来受診,CTで心囊液を伴う急性A型大動脈解離と診断された.喉頭癌に対する喉頭全摘術の既往,永久気管瘻あり,縦隔との交通を回避するため胸骨部分切開によるアプローチで上行置換術を施行した.永久気管瘻を有する急性A型大動脈解離に手術を行い良好な結果を得たので,文献的考察を加えて報告する.

訂正
feedback
Top