水環境学会誌
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39 巻, 6 号
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総説
  • 伊藤 禎彦
    原稿種別: 総説
    2016 年 39 巻 6 号 p. 187-196
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー
    下水処理水の間接・直接飲用再利用に関する世界的動向をふまえた上で, 化学物質と微生物によるリスクの取り扱い方法を論じた。はじめにリスクの定義を記した上で, 飲用水摂取にともなう健康リスク定量上の特徴を要約した。有害化学物質の水道水質基準設定方法と, 今日的な予防原則の手順を示した後, 飲用再利用システムにおける適用例を示した。まず, 下水に含まれる化学物質から, 対象とすべき少数の物質を選定した結果を示した。ついで, 再生処理プロセスにおける必要十分な除去性能を見積もるとともに, 過剰処理も回避できることを指摘した。病原微生物リスクの特徴を述べた後, 障害調整生存年数 (DALYs) の意義を論じた。DALYsを用いた化学物質と微生物リスクの大きさの比較例を示すとともに, 必要な水処理レベルとの関係を論じた。さらに, 許容リスクレベルを議論するに当たっては, 人々のリスク認知上の特性も考慮する必要があると指摘した。
  • 夏池 真史, 菊地 哲郎, Lee Ying Ping, 伊藤 紘晃, 藤井 学, 吉村 千洋, 渡部 徹
    原稿種別: 総説
    2016 年 39 巻 6 号 p. 197-210
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー
    食物連鎖の根底を担う藻類を含め生物にとって不可欠な微量元素である鉄は, 陸域から河川や地下水を経て下流に移行し, 沿岸域での基礎生産に貢献していると考えられている。本総説では, このような流域における鉄の生物地球化学動態について既往研究を整理した。鉄の化学的特性として, 中性pHでは無機第二鉄の溶解度はサブナノモーラーであること, 溶存有機物が鉄の溶解度を上昇させること, 種々の熱力学・光化学的反応が鉄の生物利用性と密接に関係することが明らかにされている。また, 微細藻類による鉄の生物利用性は鉄の化学種に強く依存するため, 陸域由来鉄が沿岸域の基礎生産に及ぼす影響を適切に評価するには, 鉄の化学種に着目して研究を進めていく必要がある。森・川・海のつながりにおける鉄と有機物の動態研究では, 陸での有機鉄の溶出から沿岸域生態系への移行までをカバーした総合的な研究が重要と考えられる。
技術論文
  • 小林 憲弘, 鈴木 俊也, 小杉 有希, 菱木 麻佑, 加登 優樹, 金田 智, 植田 紘行, 河相 暢幸, 北本 靖子, 土屋 かおり, ...
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 39 巻 6 号 p. 211-224
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー
    水道水中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドを迅速・簡便に分析するために, DNPHで誘導体化した試料をLC/UVあるいはLC/MS/MSにより測定する方法を検討した。検討の結果, 水道水に塩化アンモニウムを加えて残留塩素を除去した後, リン酸とDNPHを加えて誘導体化した試料を測定した。いずれの測定機器を用いた場合も両誘導体のピークは短時間で良好に分離し, ホルムアルデヒドの基準値の1/10の濃度 (0.008 mg L-1) まで高精度に分析できた。さらに, 本研究で確立した分析法が全国の水道水質検査に適用できるかどうかを検証するために, 15機関において水道水を用いた添加回収試験を行った結果, いずれの測定機器を用いた場合も両物質について「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の真度, 併行精度および室内精度の目標を満たした。以上のことから, 本分析法は水道水の標準検査法として利用可能と考えられる。
調査論文
  • 山崎 正夫, 野澤 亜紀, 森 育子, 清水 一志
    原稿種別: 調査論文
    2016 年 39 巻 6 号 p. 225-232
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー
    荒川および多摩川の延長線の交点に位置する東京湾の環境基準点St.35において深さ1 mの底質コアを採取し, 137Csおよびダイオキシン類の鉛直分布を明らかにした。137Cs分布から, 深さ約50 cmまでの堆積速度 (0.78 cm 年-1) と各層の堆積年代が推定された。ダイオキシン類は, 深さ約50 cm (推定1946年) から増加し, 30~32.5 cm層 (推定1968~1971年) で最大濃度となり, その後顕著に減少するという鉛直分布を示した。このようなダイオキシン類濃度の変化は推定年代における環境関連法の整備や, ある種の農薬類の使用履歴などから合理的に説明された。また, 荒川および多摩川河口域の7地点の表層底質中のダイオキシン類組成から, St.35の底質は主として荒川の影響下にあることが示唆された。
  • 大久保 慧, 小野 健, 中野 和之, 宇城 真, 藤原 建紀
    原稿種別: 調査論文
    2016 年 39 巻 6 号 p. 233-240
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー
    大阪湾をはじめとする閉鎖性海域では, 夏季の底層水の貧酸素化が問題となっている。貧酸素が環境や底生生物に与える影響には, 貧酸素の持続時間が重要な指標となる。国土交通省近畿地方整備局が公開している大阪湾水質定点自動観測データ配信システムの毎時データを用いて, 大阪湾の底層貧酸素の変動状況及び貧酸素状態の持続時間を2011年から2013年まで整理した。その結果, 多くの地点で夏季の底層DO (溶存酸素) の日変動幅は平均1 mg L-1以上, 月内での標準偏差は1 mg L-1以上を示した。大阪湾南東側の地点では, 強風時に貧酸素から回復する事例が多くみられ, 貧酸素が最も強くなる8月を除き, 貧酸素状態から頻繁に回復し, 貧酸素の持続時間は24時間未満となることが多かった。一方, 大阪湾北側の地点では, 強風に対する応答が南東側の地点より弱く, 貧酸素の持続時間も長い傾向にあった。
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