日本水処理生物学会誌
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41 巻, 3 号
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報文
  • 金 虎, 川越 保徳, 藤本 綾, 丸山 繁, 浦上 貞治, 古川 憲治
    2005 年 41 巻 3 号 p. 113-119
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    生分解性プラスチックの一つであるポリヒドロキシ乳酸 (PHB) を充填した下降流式土壌カラムリアクター内での硝酸脱窒挙動と、それに関与する土壌中の細菌叢を解析した。
    PHBが充填されているリアクター中部では、リアクターの運転開始60日後に硝酸性窒素 (以下NO3-Nと略す) 除去率が98%以上となり、それ以降も安定した硝酸除去がみられたのに対し、電子供与体の供給が乏しい上部でのNO3-N除去率は75日経過時においても約15%にとどまった。また、リアクター中部と下部の土壌では、全菌数および脱窒菌数がともに経時的に増加した。以上の結果から本リアクターのNO3-N除去能がPHBを電子供与体や炭素源として利用する脱窒細菌によるものであることが明らかとなった。さらに、16S rDNAのPCR-DGGEによる細菌叢解析結果から、5種類以上の細菌の存在が示され、中でもNO3-N還元能を有するRalstonia pickettiiに近縁な細菌が、主に本リアクターのNO3-N脱窒能に寄与しているものと推定された。
  • 鈴木 理恵, 清水 康利, 蛯江 美孝, 稲森 悠平, 須藤 隆一
    2005 年 41 巻 3 号 p. 121-128
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    本研究では、長時間ばっ気法における活性汚泥法および生物膜にしばしば大量に出現する微小貧毛類を二者培養下で培養し、最適培養条件を見出すための実験的検討を行った。増殖に対する最適水温はAeolosoma hemprichiで33℃、Nais sp.で30℃、Pristina sp.で25℃であること、増殖に対する適正塩濃度の上限は、リン酸緩衝液濃度としてA. hemprichiで1/375M、Nais sp.で1/375M、Pristina sp.で1/150M、Dero sp.で1/7, 500Mであり、pHについてはすべての微小貧毛類においてpH5.6~8.2の間で増殖の低下は認められなかった。攪拌強度については、A. hemprichiの方がNais sp.に比べて耐性を有していたこと、有機物濃度はCOD500mg/lまで増殖は低下せず、培養する場合にはそれほど大きな影響因子とはならないこと、さらに特定の細菌群および汚泥成分の存在により増殖が上昇し、特にA. hemprichiでは細菌相、Nais sp.等では細菌相と汚泥成分が増殖を支配する大きな因子であり、すべての微小貧毛類において40,000mg/lという高い汚泥濃度条件下で増殖できることが明らかになった。これらの成果は排水処理施設で微小貧毛類を優占的に増殖させるための基礎的知見となるといえる。
  • 森 一博, 遠山 忠, 清 和成
    2005 年 41 巻 3 号 p. 129-140
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    ウキクサ根圏における各種界面活性剤分解作用を検討した。ウキクサの根には高密度に多くの微生物が付着しており, 1010 CFU/g-roots d.w. もの生菌数が得られた。また, これら微生物集団は多様性に富み, 環境水中の優占種とは異なるものが優占化していることが示唆された。ウキクサ―微生物共生系を各種界面活性剤で馴化すると, 根に付着する微生物の作用によりいずれも速やかに分解除去され, この作用は連続バッチ栽培においても安定に維持できることが示された。さらに, このような根圏における分解作用は, 植物からの酸素供給により活性化されることが明らかとなった。このように, 浮遊生の水生植物栽培系においても根圏に高い化学物質分解能力が備わっており, 微生物相あるいは植物と微生物の相互作用を制御することにより高い浄化活性を発揮できることが示唆された。
  • DOAN THU HA, 楠本 良一, 小山 登一郎, 古川 憲治
    2005 年 41 巻 3 号 p. 141-152
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    高濃度のアンモニア性窒素に汚染されたハノイ地下水の揺動床処理システムによる硝化処理の有効性を明らかにすることを目的に研究を行った。研究には、バイオフリンジを1本装着したリアクタと2本装着した2つのリアクタを使用した。それぞれのリアクタで、流入水のアンモニア性窒素濃度を30mg/lに設定し、アンモニア性窒素容積負荷、水理学的滞留時間をそれぞれ0.24kg-N/m3/d、3.0時間、0.48kg-N/m3/d、1.5時間に維持して連続運転した結果、95~100%のアンモニア性窒素除去率を達成することができた。バイオフリンジ担体の最大汚泥保持能力を明らかにするとともに、バイオフリンジを装着したリアクタの硝化特性に及ぼすpH、DO、アルカリ度などの影響を検討した。流入水のアンモニア性窒素はバイオフリンジに付着生育した硝化菌の働きで硝酸性窒素に酸化され、流出水中に亜硝酸性窒素が検出されることはなかった。アンモニア性窒素容積負荷が0.48kg-N/m3/dの高負荷域でも、リアクタ内のDO濃度は3.0mg/lを超えていた。リアクタ内のpHは安定して6.9~7.5であり、1 mgのアンモニア性窒素を硝酸性窒素に酸化するのに必要なアルカリ度は6.5~7.5mg CaCO3であった。揺動床処理システムを用いることにより、生育速度の遅い硝化菌を効果的にリアクタ内に保持でき、流出中のSS濃度も3-5 mg/l以下に安定して維持できた。
ノート
  • 藤本 尚志, 今野 紗綾香, 吉野 由貴, 大西 章博, 鈴木 昌治, 水落 元之, 稲森 悠平
    2005 年 41 巻 3 号 p. 153-158
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/07
    ジャーナル フリー
    藍藻類Cylindrospermopsis raciborskiiを窒素が豊富な条件ならびに窒素制限の条件において回分培養を行い、窒素固定ならびに肝臓毒cylindrospermopsin (CYN) 産生特性について検討を行った。C. raciborskiiは初期NO3-N濃度が低い条件下においても、窒素固定により増殖し、それにともないCYN濃度が増加することが明らかとなった。全CYNの最大値は初期NO3-N濃度16.5mg・l -1で1.26 mg CYN・l -1、初期NO3-N濃度1 mg・l -1で0.45 mg CYN・l -1であった。初期NO3-N濃度が1/10以下であっても、全CYNは約1/3程度であることが明らかとなった。初期NO3-N濃度1 mg・l -1の条件において全CYN濃度と全窒素濃度との間に正の相関が見られ、窒素固定量が増加するにつれて、CYN濃度が高まることが明らかとなった。このことからC. raciborskiiが窒素が制限因子となっている湖沼や貯水池に存在し、増殖に好適な条件となった場合、窒素固定を行うことにより増殖量が高まり、それにともないCYN濃度が高まる可能性が示唆された。
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