日本水処理生物学会誌
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42 巻, 4 号
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報文
  • HOA TRAN THI HIEN, KHANH LUONG NGOC, ZHIJUN LIU, 藤井 隆夫, 木下 宗茂, 岡本 裕行, ...
    原稿種別: 報文
    2006 年 42 巻 4 号 p. 159-168
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    この研究は、モルトセラミックス(MC)を生物担体として活用した嫌気性アンモニウム酸化(anammox)リアクタの処理性能について検討したものである。直径3~5mmのMC担体を適用した固定床リアクタ(リアクタ1)は368日間、直径10~15mmのMC担体を適用したリアクタ(リアクタ2)は280日間それぞれ連続運転した。リアクタ1においては、水理学的滞留時間(HRT)を3時間に設定し、流入水のNH4-NとNO2-Nの濃度を階段的に150~225mg N/lに高めて運転した。この時のNH4-NとNO2-N除去率はそれぞれ81%、90%だった。その後、NH4-NとNO2-Nの濃度を階段的に250~275mg N/lまで高めて運転を継続した結果、NH4-NとNO2-N除去率はそれぞれ75%、85%に低下した。リアクタ1のT-N除去速度は187から315日目において、0.6 kgN/m3/dayから3.1kgN/m3/dayに徐々に上昇した。リアクタ1におけるNH4-N除去量に対する、T-N除去量、NO2-N除去量、NO3-N生成量の比率はそれぞれ1.98:1.15:0.17だった。リアクタ2も、HRTを3時間に設定し、流入水のNH4-NとNO2-Nの濃度を階段的に100~225mg N/lに高めて運転した。この時のNH4-NとNO2-N除去率はそれぞれ80%、93%だった。しかし、その後、流入水のNH4-NとNO2-Nの濃度を階段的に250mg/l~275mg N/lに高めて運転を継続した結果、NH4-NとNO2-N除去率はそれぞれ72%、84%に低下した。リアクタ2のT-N除去速度は、運転開始146から230日目において、0.7~3.1kgN/m3/dayでリアクタ1と同程度だった。リアクタ1において、NH4-N除去量に対するT-N除去量、NO2-N除去量、NO3-N生成量の比率はそれぞれ2.03:1.2:0.17だった。特有の赤色を呈するanammox汚泥のグラニュールは、両リアクタの運転において、リアクタ底部で旺盛に成長した。リアクタ2のanammox汚泥のDNA解析の結果、anammox汚泥中にはKSU-1株とKU-2株の2種のanammox菌が存在し、KSU-1菌株が優占するanammox細菌であることが明らかになった。
  • 鈴木 理恵, 徐 開欽, 大内山 高広, 山崎 宏史, 山海 敏弘, 稲森 悠平, 佐竹 隆顕
    原稿種別: 報文
    2006 年 42 巻 4 号 p. 169-176
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    都市部の集合住宅で設置が増加しているディスポーザ排水処理システムについては、流入負荷量と好気反応槽の微小動物相と浄化機能との関係解析は過去になされていない。本研究では、農村地域へ設置された分散型ディスポーザ排水処理システムの流入負荷量と処理性能、および、微小動物相と浄化機能との関係を評価することを目的として検討を行った。その結果、一人あたりの流入BOD負荷は22.0g・人-1・日-1であった。ディスポーザの有無により、BOD負荷は大きく異なり、ディスポーザの使用により、BOD負荷は2倍に増加することがわかった。また、処理水水質は、全体の75%はBOD 30mg・l-1以下と良好であった。なお、微小動物相と浄化機能との関係については、ディスポーザの流入負荷の増大により活性汚泥性生物・中間活性汚泥性生物および非活性汚泥性生物等の割合は変化する傾向にあり、従来型の生物処理システムで浄化能の高い時に出現する微小動物が出現すればBOD除去能は高まり、これまでの生物指標の活用できることが示唆された。
  • 首藤 征男, 鈴木 陽志, 長濱 一弘, 松岡 正佳, 小川 隆平, 古川 憲冶
    原稿種別: 報文
    2006 年 42 巻 4 号 p. 177-184
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)が生態系や人類の将来を脅かすものとして懸念されている。現在、有機スズ・トリフェニルスズ(TPT)は、環境ホルモンとして知られている。本報では、自然界からの分解菌のスクリーニング、有望菌株によるTPT分解生成物の検出、及び同菌株の同定を行うことを目的とした。TPT分解菌のスクリーニングには、分離用として炭素源を含まない完全合成培地(無機塩培地)法、菌株の純化用として栄養培地(NB培地)法、有望菌株による分解生成物の検出法には、炎光光度検出型ガスクロ(GC-FPD)法、及び同菌株の同定には、一般微生物同定試験法並びに16S rDNA塩基配列解析法を用いた。まず、TPT分解生成物の検出法として、TPTをトロポロン錯体に変換後、プロピル化してGC-FPDで測定する方法を検討した。この方法は、TPTを錯体化することにより有機溶媒相への抽出効率を高め、また、プロピル化による揮発性の向上を高めることにより、高精度で高感度のTPT分解物の検出が期待された。有望菌株の探索では、1998年から2002年にかけて行ったサンプリングで、崇城大学構内で採取した土壌中から、単離、純化した菌株が有望とされた。この菌株は、完全合成培地(無機塩培地)中で、唯一の炭素源として0.16%濃度のエタノールの存在下で最もよく生育し、TPTを最大50%まで分解した。この培地から、48.5%のトリフェニル、38%のジフェニル、12%のモノフェニル、1.5%の無機スズを検出した。また、この菌株は栄養培地(NB培地)では、生育はするが、分解は起きなかった。このことから、この分解菌は、共代謝(co-metabolism)を利用してエタノールを資化して生育し、増殖した菌がTPTを分解するものと推定された。16S rDNA分析の結果、この菌株は、Pseudomonasに帰属する菌株と推定された。
  • 稲森 隆平, 徐 開欽, 桂 萍, 蛯江 美孝, 稲森 悠平, 松村 正利
    原稿種別: 報文
    2006 年 42 巻 4 号 p. 185-197
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    "本研究では、生態工学技法としての植物・土壌浄化システムにおける有機物・栄養塩類除去、温室効果ガス発生特性について解析・評価を行った。その結果、有機物としてのBOD等に関しては、90%以上の除去能(BOD除去速度 3.7g・m-2・日-1)が得られること、栄養塩類としての窒素、リン等に関しては、低濃度系のアシ・マコモを植栽したポットに関しては除去能が有機物と同じく90%の除去能(窒素除去速度0.9g・m-2・日-1、リン除去速度0.09g・m-2・日-1)が得られること、高濃度系のアシ・マコモを植栽したポットでは除去能が50%にまで特にアシ系の冬期の場合には、除去能が低下すること、温室効果ガスに関しては、アシを植栽した系の方はメタンガス発生量が低くマコモを植栽した系の方はCH4発生量が高いことなどが明らかとなり、エコエンジニアリングの一つの手法の特性を解明できた。すなわち本研究で得られた成果を総括すると以下に示すとおりである。1)アシ、マコモ植栽系のいずれにおいても90%以上のBOD除去率が得られたが、植物の生長からみると、植栽初期のアシに対してBOD 200㎎・l-1は高負荷であることがわかった。2)アシ、マコモ植栽系とも夏季から秋季にかけて窒素除去能は、ほぼ安定していたが、冬季では硝化反応が律速となり除去能はやや低下する傾向を示すことがわかった。3)メタンガスの発生速度はBOD 50、100、200㎎・l-1のいずれの流入濃度においてもアシ植栽系よりマコモ植栽系が高いことがわかった。4)水生植物植栽・土壌浄化法は、低水温域においても流入BOD 50㎎・l-1程度の低負荷条件では高い浄化機能を有していることがわかった。"
  • 安平 健吾, 武尾 正弘, 根来 誠司
    原稿種別: 報文
    2006 年 42 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    活性汚泥から、アルカリ性ナイロンオリゴマー分解菌、Agromyces sp. KY5Rを分離し、ナイロンオリゴマー分解酵素の性質について検討した。同株はpH 9以上でも良好に増殖し、ナイロンオリゴマー微結晶を含むLB寒天培地(pH 10)で速やかにハロを形成した。KY5R株の6-アミノカプロン酸オリゴマー加水分解酵素(A-EIII)の遺伝子を大腸菌へクローン化後、高発現させ、精製酵素を用いて熱安定性及び活性に及ぼすpHの影響を測定したところ、同酵素の最適pHは7.5-8.0であり、中性域で増殖するArthrobacter sp. KI72のプラスミドpOAD2にコードされるEIII(P-EIII)よりもアルカリ側へ約0.5ポイントシフトしていた。また、A-EIIIはP-EIIIよりも熱安定性が約10℃高いことも明らかとなった。アミノ酸配列を比較すると、両者は355アミノ酸残基中5箇所で異なっており、これらのアミノ酸残基の少なくとも1個が、最適pHと熱安定性に影響を与えると推定できた。
ノート
  • 祝部 大輔, 森本 稔, 松本 健治
    原稿種別: ノート
    2006 年 42 巻 4 号 p. 207-213
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    "近年,水に対する関心が高まり,水に水質の安全性はもとより,おいしさ,健康によいこと等が求められている。今回,ミネラルウォーター市場で高いシェアを確保している「六甲のおいしい水」,「天然水阿蘇」,「森の水だより」と「よなごの水」について,橋本らが提唱するおいしい水指標(O-index),健康によい水指標(K-index)を用い,水に含まれる成分からおいしい水,健康によい水を数値による客観的な評価を行った。さらに,水道水としての「おいしい水の目安」,「おいしい水の要件」と比較し評価した。おいしい水指標,健康によい水指標により,「六甲のおいしい水」,「天然水阿蘇」は,O-Index≧2.0,K-Index≧5.2で,「おいしく,健康によい水」に分類された。また,「よなごの水」,「森の水だより」は,O-Index≧2.0,K-Index<5.2で,「おいしい水」に分類できた。今回の調査結果より,4種類のミネラルウォーターは,それぞれに特徴を持ち,いずれもおいしい水に該当していた。
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