日本水処理生物学会誌
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43 巻, 4 号
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報文
  • 張 振亜, 張 之崟, 雷 中方, 杉浦 則夫
    原稿種別: 報文
    2007 年 43 巻 4 号 p. 169-179
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    土壌処理システム(soil infiltration treatment(SIT))では一般的に効果的な化学的酸素要求量(COD)の除去を示すが、適正なCOD除去の数学モデルについての研究例は少ない。本研究では浅土壌処理システム(shallow soil infiltration treatment(SSIT))に対し、総合COD除去モデルを用いて、流入水のCOD濃度(S0)、温度(T)及び生物分解不可のCOD部分(Sn)などのCOD除去への影響要因をEckenfelder Modelに導入したCOD除去のシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、95%の実験データ範囲において、実験データとシミュレーションで得られたデータの誤差は5mg/l以内であった。したがって、SSITシステムにおけるCODの評価、分析、予測、管理にこのモデルを使用することが有効であることがわかった。
  • 田中 伸幸, 国安 祐子, 稲森 悠平, 板山 朋聡
    原稿種別: 報文
    2007 年 43 巻 4 号 p. 181-188
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    浄化槽等の生物学的水処理システムに存在する原生動物が処理システムの有機物分解能に与える影響を解明することは、処理システムの改良や適正管理のために重要な知見をもたらすものと考えられる。そのため本研究では浄化槽から単離された原生動物繊毛虫類Colpidium sp.と細菌Enterobacter ludwigiiを用い、無機栄養塩培地にペプトンを200 mg・l-1となるように加えた改変Taub培地によりE. ludwigii単独培養およびE. ludwigiiColpidium sp.との混合培養を行い、それぞれの個体数密度の経日変化および全有機炭素(TOC)、溶存態有機炭素(DOC)、懸濁態有機炭素(POC)の変化を比較した。その結果、実験開始後の2日間においては単独培養系でE. ludwigiiの平均個体数およびDOC減少量はそれぞれ3.9×108CFU・ml-1、22.3mg-C・l-1、混合培養系ではE. ludwigiiの平均個体数密度およびDOC減少量はそれぞれ2.9×108 CFU・ml-1、32.7mg-C・l-1となり、混合培養系は単独培養系に比べて細菌個体数密度が低いにも関わらずDOC減少量が高くなった。さらに混合培養系における単位POC当たりのDOC減少速度は単独培養系の場合の約130倍であることも示された。これらのことから原生動物は生物学的処理システムにおいて有機物分解能の飛躍的な向上に寄与していることが強く示唆された。
  • カビール ムハムドゥル, 鈴木 雅史, 吉村 昇
    原稿種別: 報文
    2007 年 43 巻 4 号 p. 189-197
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    現在の有機性排水処理として、一般的に活性汚泥法という生物処理法が利用されている。しかし、排水処理の際に余剰活性汚泥が多量に発生してしまうのがこの処理法の欠点であり、経済・環境の両面から余剰汚泥の減容化が急務となっている。そこで、我々は、余剰活性汚泥を減容する方法として、磁気-フェライト処理を行っている。試験管に活性汚泥とフェライト粒子を入れ、外部から永久磁石により作られる磁界を断続的に照射することでフェライト粒子が、磁界内では凝縮運動をし、磁界外では拡散運動をする。これにより凝縮時に局部的な水圧の変化、フェライトと活性汚泥内の微生物との衝突や微生物がフェライトとフェライトによりすり潰されることで微生物が圧迫され、微生物の細胞膜の一部、また、細胞内の増殖因子が破壊されることにより殺菌が行われる。このように、微生物に磁気-フェライト処理を行うことで殺菌・可溶化し、その殺菌された汚泥を未処理の活性汚泥に生物分解させることで汚泥の減容化が可能であると考えている。本研究では磁気-フェライト処理の効果に関わる諸因子を調べた後、2つのミニプラントを用いて汚泥の減容化を評価した。沈殿槽で沈降した活性汚泥を定期的にばっ気槽へ返送する際、系1はなにもせず、系2は1日に12時間、磁気-フェライト処理をかけて返送した。磁気-フェライト処理の有無におけるそれぞれのばっ気槽内のMLSSの変化を定期的に測定し、MLSS値がCASの標準値を超えない様に、必要に応じて、余剰汚泥を引き抜いた。引き抜いた余剰汚泥を乾燥させ、その量を比較することで、磁気-フェライト処理の効果の有無を調べた。その結果、未処理に比べて磁気-フェライト処理で余剰汚泥の発生をおよそ半分に抑制できる事が分かった。また、処理水のCODを測定した結果、未処理と磁気処理の両方とも基準値の20mg/lより低かったため排水処理にも問題はないと思われる。よって、磁気-フェライト処理による余剰汚泥の減容化が可能であることが明らかになった。
  • 塚谷 裕子, 梶原 佑介, 馬場 義輝
    原稿種別: 報文
    2007 年 43 巻 4 号 p. 199-207
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    多環芳香族炭化水素類(PAHs)汚染底質の処理を目的として、福岡県で採取した底質におけるPAHsの分解能の検討を行った。県内18地点の底質のうち、PAHs含有濃度により3地点を選び(No.1 低濃度、No.2 中程度濃度、No.3 高濃度;18地点中)、この3底質に15種類のPAHsを添加し、20度暗室で4週間培養実験を行った。ナフタレン、アセナフテン、フルオレン、フェナンスレン、アントラセン、フルオランテン、ピレン、ベンツ(a)アントラセン及びクリセンにおいて、No.1の底質で最もPAHs含有量の減少が確認された。No.3の底質は、2002~2003年に行われた調査の際13PAHsの汚染が確認され特にナフタレン(19,000μg/g-dry soil)を高濃度含有する汚染地域の河川下流で採取したものであるが、No.3の底質よりもNo.1の底質でより高いPAHsの減少傾向が認められた。また、培養実験開始時と実験後での酸化還元電位を調べたところ、No.1が最も還元状態になりにくく、底質におけるPAHsの酸化的分解に最も適しているものと推察された。No.1の底質における上記9PAHsの半減期は、3~36日であった。
  • 安 明哲, 湯 岳琴, 森村 茂, 木田 建次
    原稿種別: 報文
    2007 年 43 巻 4 号 p. 209-217
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    木質系バイオマスの硫酸糖化液の連続エタノール発酵プロセスから排出された蒸留廃液をメタン発酵により処理した。発酵槽内の上部に微量通気を行ない、硫化水素の抑制を解除することで、最大TOC容積負荷は1.0g/l/dから3.0g/l/dまでに上げられた。通気量がバイオガス発生量の9.0%の条件で、ガス中の硫化水素濃度は50ppmvまで減り、SO42-の除去率は99.5%以上であった。メタン発酵・脱硫リアクターからの処理液は硝化液循環付の生物脱窒・硝化プロセスにより処理された。その結果、メタノールなどの電子供与体を使用することなく、最終処理液中のNH4+-N濃度は5.0mg/l以下になった。
  • 川端 雅博, 藤井 智範, 亀屋 隆志, 小林 剛
    原稿種別: 報文
    2007 年 43 巻 4 号 p. 219-226
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    メダカ活動度を用いた画像解析法による水質連続監視計器の特徴解析を行い以下の事がわかった。メダカ監視水槽(39cmW×45cmL)画像中に5760のドットを設定し、1秒間にメダカ通過により変化のあったドット数を活動度と定義し連続的に計測した。また相対活動度(RA3min,t)は活動度の1日平均値(A24h,t)に対する3分間平均値(A3min,t))の比率と定義した。メダカ活動度を用いた画像解析において、監視水槽内循環流速の制御はメダカを適度に安定して泳がせ、活動度を安定化させるために重要である事がわかった。水温の過渡的な変化試験の結果、毒性物質の流入が無くても、監視水槽内の水温が変化し15℃以下または40℃以上となるような場合は、メダカ活動度の重大な低下が起こることがわかった。界面活性剤LASと農薬であるフェントエートを使った相対活動度低下実験結果に基づくシミュレーションにより、突発的な毒性物質流入時、数時間以内で段階的な警報発信が可能となった。また毒性物質濃度増加により警報発信時間は減少し、濃度減少により警報発信時間が増加する事も確認された。さらに海水に近い塩濃度の検水流入が想定される場合は注意が必要であることもわかった。
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