日本水処理生物学会誌
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44 巻, 1 号
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報文
  • 市成 剛, 大坪 朗生, 小澤 哲徳, 長谷川 宏治, 手塚 圭治, 小口 達夫, 木曽 祥秋
    原稿種別: 報文
    2008 年 44 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、小規模浄化槽へ適用可能な汚泥削減技術として好気性消化法に着目し、浄化槽生汚泥(RS)とその汚泥に標準生ゴミを混合させた生ゴミ混合汚泥(GMS)の分解特性ならびに間欠ばっ気運転による生物学的窒素除去特性について検討を行った。槽内水を遠心分離機で上澄水と濃縮汚泥に分離し、HRTが10日となるように上澄水を処理水として排出した後、排出量に相当する供試汚泥を反応槽に投入する回分操作を1~3日間隔で行う好気性消化を試みた結果、経過150日以降、槽内SS濃度が約20,000mg/lで安定する傾向が認められた。RSの連続ばっ気条件では72.8%の高い汚泥分解率が得られたが、GMSの汚泥分解率は、連続ばっ気条件(64.7%)、間欠ばっ気条件(53.3%)ともにRSより低かった。これは、GMSの無機成分の分解率がRSより低かったことと、GMSのBODがRSに比べ約2倍高かったことが影響していると考えられた。間欠ばっ気条件におけるTN除去率は、RS、GMSともに約95%と極めて高く、槽内pHが5.2まで低下したRSの連続ばっ気条件においても72.4%のTN除去率が得られた。
  • MD SHAFIQUZZAMANN, 見島 伊織, 中島 淳
    原稿種別: 報文
    2008 年 44 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    鉄酸化バクテリア(Leptothrix spp.)を利用した地下水からのヒ素除去について検討した。ヒ素と鉄の初期濃度をそれぞれ500μg/lおよび5mg/lとした条件で、バッチ試験とカラム試験を行なった。バッチ試験では、2価鉄の生物学的および物理化学的な酸化過程において、3価ヒ素はそれぞれ60%および51%除去され、5価ヒ素はいずれも96%除去された。他方、水酸化鉄生成後24時間経過後にヒ素を添加した場合には、5価ヒ素の除去率は50%で、3価ヒ素はまったく除去されなかった。バッチ試験結果から、鉄酸化バクテリアによる2価鉄の酸化過程において3価ヒ素は5価に酸化され吸着除去されるといえるが、これが鉄酸化バクテリアによるものとはいえないと考えられた。鉄酸化バクテリアを用いた砂ろ過カラム試験によって、3価ヒ素の除去効果を検討した。流量が7.2l/dおよび3.6l/dのいずれにおいても、流出水中のヒ素濃度は50μg/l未満であった。本試験においては、リンの除去も良好であった。ろ層中の汚泥を分析したところ、鉄およびヒ素の酸化とヒ素の吸着除去は、主としてろ層上部で進行していたといえる。本法は、汚染が進んだ地下水の安価なヒ素除去に応用が可能と考えられた。
  • 立田 真文, レ デュック・チュン, フィン ティ・ミン・ハン, 池 道彦, 藤田 正憲
    原稿種別: 報文
    2008 年 44 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    静置通気型コンポストリアクター用いて下水汚泥のコンポスト処理の実験を行った。15回のバッチ運転を行い、温度分布解析よりコンポパイルの温度暴露状態を考察し、送気と含水率による温度暴露への影響を検証した。送気と放熱がコンポストパイルの含水率の低下を引き起こす大きな原因であり、この急激な含水率の低下は微生物反応を低下させコンポストパイルの温度低下を招き、有機物の適正な分解を妨げ、さらに病原菌の適切な死滅をも妨げる。適切な送気量と含水率はコンポスト運転に多大な影響を与え、それら相互関係を明らかにした。
  • 山岡 洋介, 竹野 健次, Napavarn Noparatnaraporn, 佐々木 健
    原稿種別: 報文
    2008 年 44 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    光合成細菌Rhodobacter sphaeroides S(S株)を用いて、合成人工下水中の油分解を検討した。Glutamate-malate(GM)培地にサラダ油を添加して純粋培養を行うと、嫌気明条件下においては油分解がさほど確認されないものの、好気暗条件下において、6日で60%の油を分解した。また、トリグリセリドをグリセリンおよび脂肪酸に加水分解するリパーゼを菌体外に放出していることが明らかになった。S株のリパーゼはPseudmonusBacillusと比較すると劣るものの、S株がGMやグルコースのような資化が容易な基質で生育すると生産された。しかしながら、S株による油分解はリパーゼ生産よりも、菌を高濃度にすることで油分解が促進した。さらに、S株はサラダ油などに含まれているパルミチン酸(C16:0)、オレイン酸(C18:1)、エルカ酸(C22:1)などの長鎖脂肪酸およびグリセリンをよく資化した。
  • 神保 有亮, 岡野 邦宏, 内海 真生, 杉浦 則夫
    原稿種別: 報文
    2008 年 44 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    近年、多くの富栄養化湖沼では、有毒藍藻類(アオコ)が異常増殖し、大きな問題となっている。その中でも特に問題となっているのが強力な肝臓毒microcystinであり、WHO(世界保健機構)においても暫定基準が設けられている。今後も湖沼における長期的なアオコの発生が予想されることから、microcystin産生藍藻の初期スクリーニング技術の開発を目的として研究を行った。本研究では迅速性、簡便性の高いwhole-cell PCRを用いて、分子生物学的なmicro-cystin産生藍藻の検出ならびに定量を試みた。まず、純粋培養株のMicrocystis viridisを用いてwhole-cell PCRを行った結果、DNA抽出を行ってPCRを行った系と同じDNA配列の増幅産物が確認された。また、有毒株と無毒株を用いてのwhole-cell PCRでは、有毒株のみを検出することに成功した。検出感度においては、細胞濃度が104 cells/ml(およそ60 cells/PCR reaction)という濃度でも検出可能であった。また、whole-cell PCRはHPLCによるmicrocystinの検出と比較し、およそ3分の1の時間でmicrocystin産生藍藻を検出可能であった。次に、環境サンプルを用いて実験を行った。実際にアオコが発生している湖沼から採水したサンプルのwhole-cell PCRを行った結果、純粋培養株を用いて行った実験と同様に増幅産物が確認され、対象湖沼にはmicrocystin産生藍藻が存在することが明らかとなった。さらに、whole-cell PCRとcompetitive PCRを組み合わせたcompetitive whole-cell PCRを用いてmicrocystin産生藍藻の定量を行ったところ、簡便に定量が可能であることが明らかとなった。これら実験の結果から、whole-cell PCRおよびcompetitive whole-cell PCRは迅速性、簡便性、高感度、経済性を持ち合わせた技術であることが証明された。したがって、whole-cell PCRおよびcompetitive whole-cell PCR は、microcystinリスクアセスメントの初期段階で行われる、microcystin産生藍藻の初期スクリーニング技術として利用できることが証明された。
  • 藤本 尚志, 作内 祐太, 大西 章博, 鈴木 昌治, 岩見 徳雄
    原稿種別: ノート
    2008 年 44 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    藍藻類および産生する毒素の分解の効率化を図る上での基礎的知見を得ることを目的としてMicrocystis属を食物源とした原生動物鞭毛虫類Monas guttulaの増殖におよぼす粒状担体およびガラスビーズの影響について検討を行った。粒状担体およびガラスビーズの存在によりM. guttulaの比増殖速度が高まり、M. viridisの減少が速まることが明らかとなった。ガラスビーズの存在により、M. guttulaの最大個体数が著しく高まることが明らかとなった。担体は固着性の原生動物を高密度に保持する上で有用と考えられていたが、M. guttulaのような遊泳性の性質を有する原生動物の増殖を促進する効果があることが示唆された。
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