日本水処理生物学会誌
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45 巻, 1 号
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報文
  • 喬 森, 秦 浩平, 成 英俊, 稲富 泰彦, 西山 孝, 藤井 隆夫, 小山 登一郎, 古川 憲治
    原稿種別: 報文
    2009 年 45 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    近年Anammoxプロセスは従来の窒素除去技術に代わる技術として注目されている。本研究では、新規アクリル繊維性担体(Biofix)とポリエステル不織布をAnammoxプロセスの担体として採用した。不織布リアクタの温度は35℃に設定し、一方でBiofixリアクタは平均25℃で運転した(夏場の最高温度は31.5℃)。約330日の運転で、Biofixリアクタの窒素負荷は3.6kg-N/m3/dに達し、除去率は81.3%に達した。これに対し、不織布リアクタの窒素負荷は4.0kg-N/m3/dに達し、除去率は86.3%に達した。汚泥に含まれるEPSの中では、蛋白質の含有量が最も多く、Biofixリアクタの細胞外ポリマー物質(EPS)量は不織布リアクタの約3倍以上に達した。EPS量と走査電子顕微鏡による観察からBiofixリアクタに形成した粒状汚泥が不織布リアクタより密集していることが明らかとなった。16S rDNAの結果から、KSU-1株が低窒素濃度に適合し、KU2株が高窒素濃度を好むことが推定された。また、溶存酸素を消費する可能性のある細菌も検出されたため、Anammox細菌は溶存酸素の存在する条件下でも生存可能であることが明らかとなった。
  • 西村 修, 増田 周平, 五ノ井 浩二, 原田 茂樹, 水落 元之, 稲森 悠平
    原稿種別: 報文
    2009 年 45 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    豚舎排水処理工程における、N2Oの発生量および発生特性を明らかにするため、実施設処理(AL法)およびパイロットプラント(IASBR法)において調査を行った。その結果、豚1頭1日あたりのN2O発生量は、AL法では1.07×101~2.03×103(mgN2O-N/head/day)、IASBR法では2.83×102~1.12×103(mgN2O-N/head/day)であった。また、N2Oの放出は、曝気工程からの発生が大部分を占め、曝気工程におけるGN2O放出量が全N2O放出量に占める割合は、AL法では80%以上、ISABR法ではほぼ100%だった。AL法において、N2Oは曝気工程の後半に放出速度が増加した。その理由は、硝化能の立ち上がりと、好気脱窒によるものと考えられた。一方、IASBR法では、N2Oの発生は、第一に非曝気工程で脱窒が停滞することによるDN2Oの蓄積、第二に曝気工程に持ち越される有機物に起因する好気性脱窒によってN2Oが発生すると考えられた。IASBR法とAL法を比較した場合、AL法の方がN2Oの発生リスクは高いと考えられた。その理由は、曝気工程において好気性脱窒が起こりやすく、非曝気工程においてDN2Oの蓄積とガス化が起こりやすいためと考えられた。
  • 宮永 政光, 野上 祐作
    原稿種別: 報文
    2009 年 45 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    1963年に児島湾の奥部を締め切って作られた児島湖は,岡山県の水環境の中で最も水質改善が求められている人造淡水湖である。そこに棲息する鯉の血漿中のビテロジェニン濃度を,毎月,5年間にわたってELISA法で測定した。併せて,捕獲された鯉の生殖腺指数(GSI)を生殖腺の重さ/体重で求めた。雄鯉と雌鯉の生殖器官の発達は,晩秋から早春にかけて同じように進行した。雄鯉の血漿中のビテロジェニン濃度の季節変化は,繁殖期を除いて雌鯉のGSIの季節変化と類似していた。児島湖の表層水中の17β-エストラジオールやビスフェノールAの季節変動が見られなかったことから,早春に見られる雄鯉の血漿中のビテロジェニン濃度の上昇は,外因性内分泌攪乱物質によるものではなく,鯉の生殖行動と密接に関係することが明らかとなった。児島湖に棲息する雄鯉の場合,この調査期間中でビテロジェニン濃度が1000 ng/mlを超えた個体数は210匹の1.9%に過ぎなかった。一連の調査結果から,現時点では児島湖の鯉に対するエストロゲン様物質の影響はないものと推定された。
  • 井上 大介, 稲葉 正毅, Rahul R. Upadhye, 清 和成, 池 道彦
    原稿種別: 報文
    2009 年 45 巻 1 号 p. 31-43
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    水利用に係る潜在的な生物学的健康リスクを評価するためには、水環境中における病原菌の出現を網羅的に理解することが重要である。本研究では、ヒト、動物、植物および魚介類に感染する1012種/グループの病原性細菌(バイオセーフティレベル2、3の全病原性細菌及び日和見感染菌を含む)の16S rDNAを標的としたオリゴヌクレオチドプローブを搭載したDNAマイクロアレイを用いて、近畿地方を流れる淀川及び北川の表層水中に存在する病原性細菌を調査した。採水は、淀川では4地点、北川では2地点から、季節ごとに行った。24試料に対するDNAマイクロアレイ解析の結果、合計87種/グループの病原性細菌が検出され、その約半数が両河川に存在した。また、河川水中の病原性細菌プロファイルは主として季節の影響を受けて変化することが示唆された。下水処理場の上流及び下流に位置する採水地点における病原性細菌プロファイルの比較から、病原菌の潜在的な排出源と考えられる下水処理場の処理水は、本研究の調査河川では病原性細菌の出現に重大な影響を及ぼしていないことが示唆された。さらに、複数の試料で検出された病原性細菌30種について、大腸菌群数(現在の衛生学的指標)との関連性を検討した結果、7種の非糞便性病原性細菌を含む11種の病原性細菌が大腸菌群数と正の相関を示さないことが確認された。このことから、現在用いられている糞便汚染のための衛生学的指標では、河川水における病原性細菌汚染に係る健康リスクの包括的評価には不十分であり、新たな指標群の体系化が必要であると示唆された。
  • 清水 和哉, 岡野 邦宏, 間世田 英明, 雨宮 崇, 倉島 巧, 内海 真生, 杉浦 則夫
    原稿種別: 報文
    2009 年 45 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    Microcystin分解菌のmicrocystin分解酵素遺伝子mlrA遺伝子、mlrB遺伝子、mlrC遺伝子は広く知られている。我々は、microcystin分解菌であるSphingopyxis sp. C-1株を用いてこれらの遺伝子の転写誘導機構を明らかにした。本研究ではmlrA遺伝子, mlrB遺伝子, mlrC遺伝子の転写が、microcystin-LR (MCLR)により誘導されるとともにmlrA遺伝子とmlrB遺伝子はMCLRの分解生成物 (鎖状microcystin, H-Adda-Glu-Mdha-Ala-OH (tetra peptide)と2S, 3S, 8S, 9S-3-amino-9-methoxy-2, 6, 8-trimetyl-10-phenyldeca-4E, 6E-dienoic acid (Adda))により誘導されることが証明できた。すなわちAddaは、mlrA遺伝子とmlrB遺伝子の転写の誘導に直接、関与する物質であり、microcystin-LRの環状構造はmlrC遺伝子の転写の誘導に重要なものであることがわかった。これらの解析結果から、MlrA酵素、MlrB酵素、MlrC酵素の発現に対してmicrocystin分解菌はMCLRとその分解生成物に応答しその連鎖反応を通してMCLRを分解することがわかった。
ノート
  • 林 紀男, 稲森 隆平, 尾﨑 保夫
    原稿種別: ノート
    2009 年 45 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    大型水槽(容量1トン)に沈水植物19種を種別に1年間栽培した。各沈水植物が代謝した他感作(アレロパシー)物質が包含された水槽表層水(沈水植物19種および対照系1)の濾液を小型水槽に湛水し、ミジンコの休眠卵からの飼育試験を実施した。各系ミジンコ休眠卵100個からの孵化率(%)は、タヌキモ2%、ホザキノフサモ3%であり、無植栽の対照系4%よりも低かった。一方、ガシャモク85%、ヒロハノエビモ73%、インバモ62%、センニンモ58%などは著しく高い孵化率が達成された。これらの相違は、水生植物の代謝した物質にミジンコ休眠卵が反応し、ミジンコの孵化が促進・阻害されたものと考えられる。孵化後のミジンコ個体数の推移に着目すると、ホザキノフサモ、リュウノヒゲモ、ヤナギモ、タヌキモ、オオトリゲモの5種では、実験開始7週目までにミジンコが全て死滅。孵化率の高かったガシャモク、ヒロハノエビモ、インバモ、センニンモでは400個体/l-1以上のミジンコ生息密度が維持された。次いでセキショウモ、コウガイモ、エビモ、ササバモの4種において100個体/l-1程度の高いミジンコ生息密度が確認された。対照系(植栽無し)におけるミジンコ個体密度30~40個体/l-1よりも明らかに低い密度を示したのが、シャジクモ、ヒメフラスコモの2種であった。対照系と同等のミジンコ密度だったのはハゴロモモ、ツツイトモ、イトモ、クロモの4種であった。これらの事実から、自然水域におけるミジンコの生息個体密度には、水質・底質・水流などのさまざまな環境要因の他にも、同地に繁茂する沈水植物が直接影響を及ぼしうることが明らかとなった。
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