日本水処理生物学会誌
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50 巻, 3 号
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報文
  • 李 彦, 遠山 忠, 田中 靖浩, 湯 岳琴, 呉 曉磊, 森 一博
    原稿種別: 報文
    2014 年 50 巻 3 号 p. 95-103
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,ウキクサ,コウキクサ,アオウキクサ,ミジンコウキクサの4種類のウキクサ類が環境水中でのフェノール分解に及ぼす影響を検討した。フェノールを添加した環境水に各ウキクサ類を植栽しフェノール濃度の経時変化を連続バッチ栽培系で調べたところ,非植栽対照系に比べて顕著な除去速度の向上が確認された。また,無菌化したウキクサ類を滅菌処理した環境水に植栽した場合にはフェノールの除去は観察されなかったことから,ここで観察されたフェノール除去は,ウキクサ類による吸収等の直接的な作用ではなく微生物による分解作用によるものであり,ウキクサ類によりその作用が大きく促進されることが示唆された。そのような促進作用は,各除去速度の比較から,特にウキクサとミジンコウキクサで優れていることが示された。供試ウキクサ類から微生物を回収し解析した結果,Pseudomonas spp., Delftia spp., Azospirillum spp., Acinetobacter spp., and Zoogloea spp.を含む多様なフェノール分解微生物が分離された。これらの分離株をその分離源となった各ウキクサ類の破砕抽出物を添加したフェノール無機栄養塩培地で培養した結果,破砕抽出物を含まない対照系に比べて増殖あるいはフェノール分解作用の増進が観察された。以上の結果より,ウキクサ類はフェノール分解微生物の増殖やフェノール分解を促進しており,その栽培系はフェノール汚染水の浄化に優れた効果を示すことが結論づけられた。
  • 康 彩霞, 郝 愛民, 井芹 寧, 久場 隆広
    原稿種別: 報文
    2014 年 50 巻 3 号 p. 105-112
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    富栄養化した中国の太湖においては、水生植物が消滅しており、その消滅の機構を解明するために、太湖の富栄養化の現況を背景に、20日間の水槽実験を実施し、適切な中濃度の栄養塩(NO3-N 1.50mg・l-1、PO43--P 0.10mg・l-1)および高濃度のNH4-N 3.50mg・l-1、高濃度のPO43--P 0.60mg・l-1が沈水植物のセキショウモの抗酸化防御機構に及ぼす影響を検討した。中濃度の栄養塩の場合、セキショウモの代謝は促進された。一方、高濃度のNH4-NあるいはPO43--Pの場合、セキショウモの葉の中のクロロフィルa(Chl.a)とタンパク質含量は低下し、カタラーゼ(CAT)活性は増加したことから、酸化ストレスが生じていたと示唆された。さらに、3.50mg・l-1 NH4-Nと比較して、0.60mg・l-1 PO43--PはCAT活性の増加が敏感であり、酸化ストレスによる障害が生じやすいと考えられる。これらのことから、セキショウモが高濃度のNH4-NあるいはPO43--Pに遭遇した場合、抗酸化防御機構が活性化されるが、代謝系の損傷も避けられなく、太湖におけるセキショウモの生物帯の回復のためには、窒素およびリンの両者の制御法の確立が必要であることが示された。
  • 小暮 元輝, 大竹 赳, 角野 立夫
    原稿種別: 報文
    2014 年 50 巻 3 号 p. 113-120
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    高濃度アンモニア含有合成廃水で包括固定化活性汚泥担体を馴養し,アンモニア濃度非感受性菌群(AH菌群)が優占棲息する担体を得た。この担体の馴養過程での硝化特性と,低濃度アンモニア廃水処理での限界負荷および水温の影響を検討した。高濃度アンモニア含有廃水処理では,その馴養過程では亜硝酸型硝化となることを確認した。水温と硝化速度の関係よりアンモニア酸化反応における活性化エネルギーとして44.8 kJ/molを得た。得られたAH菌群集積担体を用いて低濃度アンモニア含有合成廃水NH4-N 40 mg/lを処理した結果,低温耐性があることを明らかにし,10℃でのNH4-N除去率95%以上を得るための限界負荷として0.36 kg-N/m3/dを得た。さらに四季を想定した水温変動試験を行った結果,夏季を想定した水温30℃条件を経ると硝酸型硝化に遷移した。その後,冬季を想定した水温10℃,負荷0.32 kg-N/m3/dの条件で,処理水NH4-Nが1.0 mg/l以下となり安定した硝酸型硝化が行えることを明らかにした。
  • 木持 謙, 田中 仁志, 徐 開欽, 稲森 隆平, 稲森 悠平
    原稿種別: 報文
    2014 年 50 巻 3 号 p. 121-131
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,試料採取から分析に至る溶存ガスの定量法のうち,特にガス採取法の迅速化を試み,構築した手法を用いて,浅い富栄養化池沼におけるN2O,CH4生成・放出ポテンシャルの基礎的評価を行った。その結果,以下に示す知見が得られた。PE容器に,試料水と現場大気を体積比が1:1になるように封入し(微生物活性阻害剤の添加は不要),振とう後直ちに気相部分をガス保存容器に移して保存,これらの操作と同時に試料水温の計測とバックグラウンド補正用の現場大気の採取を実施,という手順のオンサイトでの迅速な溶存ガス採取法が構築できた。また,窒素制限環境下にあると考えられる浅い富栄養化池沼では,植物プランクトンとN2O生成微生物の無機態窒素利用の競合の結果,植物プランクトンが優占化するとともに,N2Oの生成・放出が抑制されている可能性が高いこと,かつ,植物プランクトンによるDOの供給と風による池沼水の混合作用により,全層が好気化し,CH4の生成・放出が抑制されている可能性が高いことがわかった。すなわち,植物プランクトンの存在は,浅い富栄養化湖沼におけるN2O,CH4の生成・放出に大きな影響を及ぼす一方で,これらの抑制にも貢献している可能性が高く,今後さらに,幅広いデータ蓄積とメカニズム解明が求められることがわかった。
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