本研究では,試料採取から分析に至る溶存ガスの定量法のうち,特にガス採取法の迅速化を試み,構築した手法を用いて,浅い富栄養化池沼におけるN
2O,CH
4生成・放出ポテンシャルの基礎的評価を行った。その結果,以下に示す知見が得られた。PE容器に,試料水と現場大気を体積比が1:1になるように封入し(微生物活性阻害剤の添加は不要),振とう後直ちに気相部分をガス保存容器に移して保存,これらの操作と同時に試料水温の計測とバックグラウンド補正用の現場大気の採取を実施,という手順のオンサイトでの迅速な溶存ガス採取法が構築できた。また,窒素制限環境下にあると考えられる浅い富栄養化池沼では,植物プランクトンとN
2O生成微生物の無機態窒素利用の競合の結果,植物プランクトンが優占化するとともに,N
2Oの生成・放出が抑制されている可能性が高いこと,かつ,植物プランクトンによるDOの供給と風による池沼水の混合作用により,全層が好気化し,CH
4の生成・放出が抑制されている可能性が高いことがわかった。すなわち,植物プランクトンの存在は,浅い富栄養化湖沼におけるN
2O,CH
4の生成・放出に大きな影響を及ぼす一方で,これらの抑制にも貢献している可能性が高く,今後さらに,幅広いデータ蓄積とメカニズム解明が求められることがわかった。
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