溶存CH
4およびN
2O(DCH
4、DN
2O)を測ることで、水塊中の過去の酸素環境を評価する手法を提案した。まず、DOレベルと微生物代謝反応に基づき、DO増減とDCH
4、DN
2Oの挙動パターンを作成した。実生活排水処理実験を行いこの挙動パターンと比較したところよく一致した。そこでこの実験結果に基づき、過去の低酸素環境の判定閾値を、DCH
4、DN
2Oについてそれぞれ0.025mg C/L、0.003mg N/Lに試験的に設定した。次いで、実池沼での連続モニタリングにより判定閾値の検証を行ったところ、値自体はフィールド毎に設定の必要があるかもしれないものの、少なくともDCH
4は、絶対嫌気環境の発生を反映しており、DO枯渇に関する要詳細調査サイトのスクリーニング等に使える可能性が示唆された。さらに、必要なデータの存在する既往文献において、上記のDCH
4、DN
2O判定閾値に基づき酸素環境を試験判定したところ、これらの文献事例に関しては妥当であろうと判断された。本手法は、現段階ではDCH
4の瞬時値に基づき過去を含めた嫌気環境を評価できると期待されるものの、さらなる検討課題もある。それは、DN
2Oの取扱いの再検討、判定閾値の精緻化、どの程度過去にどの程度の期間低酸素状態があったかの推定等である。そこで、対象水塊(湖沼)毎に判定閾値をカスタマイズしてはどうかという視点から、検討方法の例も提案した。多様な地域、気候、湖沼規模(広さ、深さ)、富栄養レベル等で、知見を蓄積し、カテゴリー分類できれば、類似した湖沼への適用がしやすくなると期待される。
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