日本水処理生物学会誌
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53 巻, 4 号
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報文
  • 木持 謙, 田中 仁志
    原稿種別: 報文
    2017 年 53 巻 4 号 p. 95-109
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    溶存CH4およびN2O(DCH4、DN2O)を測ることで、水塊中の過去の酸素環境を評価する手法を提案した。まず、DOレベルと微生物代謝反応に基づき、DO増減とDCH4、DN2Oの挙動パターンを作成した。実生活排水処理実験を行いこの挙動パターンと比較したところよく一致した。そこでこの実験結果に基づき、過去の低酸素環境の判定閾値を、DCH4、DN2Oについてそれぞれ0.025mg C/L、0.003mg N/Lに試験的に設定した。次いで、実池沼での連続モニタリングにより判定閾値の検証を行ったところ、値自体はフィールド毎に設定の必要があるかもしれないものの、少なくともDCH4は、絶対嫌気環境の発生を反映しており、DO枯渇に関する要詳細調査サイトのスクリーニング等に使える可能性が示唆された。さらに、必要なデータの存在する既往文献において、上記のDCH4、DN2O判定閾値に基づき酸素環境を試験判定したところ、これらの文献事例に関しては妥当であろうと判断された。本手法は、現段階ではDCH4の瞬時値に基づき過去を含めた嫌気環境を評価できると期待されるものの、さらなる検討課題もある。それは、DN2Oの取扱いの再検討、判定閾値の精緻化、どの程度過去にどの程度の期間低酸素状態があったかの推定等である。そこで、対象水塊(湖沼)毎に判定閾値をカスタマイズしてはどうかという視点から、検討方法の例も提案した。多様な地域、気候、湖沼規模(広さ、深さ)、富栄養レベル等で、知見を蓄積し、カテゴリー分類できれば、類似した湖沼への適用がしやすくなると期待される。
  • 藤村 葉子, 木内 浩一, 天野 佳正, 町田 基
    原稿種別: 報文
    2017 年 53 巻 4 号 p. 111-118
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    最近日本で普及し始めた窒素除去型小規模合併処理浄化槽の排水水質と処理効率を実態調査した。窒素除去型合併処理浄化槽は従来型合併処理浄化槽よりもBODと窒素の除去性能が良好であり,調査対象放流水75サンプルにおいてBODはその80%,全窒素(T-N)は75%が15mg/L以下であった。窒素除去型浄化槽における処理水循環による脱窒効果が認められた。また,窒素除去に伴いBOD濃度が低下したが,処理水の循環によりNO3-Nが脱窒されるだけでなく放流水中の溶存性ケルダール態窒素(DKN)も減少し,DKNの減少がN-BOD(試料の硝化により生じるBOD)を低下させ,結果としてBOD低下をもたらしたと考えられた。処理水の循環比は流入流量Qに対し1Q以下に低下すると脱窒能が低下したが,2Q-15Qにおいては放流水T-Nはおおむね20mg/L以下に維持された。調査施設のT-Nと全リン(T-P)の平均的な除去率はそれぞれ67%と58%であった。
  • 永田 貴丸, 花里 孝幸
    原稿種別: 報文
    2017 年 53 巻 4 号 p. 119-128
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、植食性の小型動物プランクトン群集に及ぼす藻類密度とケンミジンコの捕食の複合影響をメソコスム実験で評価した。実験の結果、藻類密度が低い場合には、小型動物プランクトンはケンミジンコの捕食影響を強く受けた。一方、藻類密度が高い場合には、ケンミジンコの捕食の有無にかかわらず、小型動物プランクトンのうち、特にワムシ類は高密度になった。これは、餌が十分にあったため、ワムシ類の増殖率が高まり、その高い増殖率でケンミジンコの捕食による個体群損失を補えた結果と考えられた。また、ワムシ類と餌の競合関係にあるミジンコ類が、ケンミジンコの捕食によって優先的に抑制されたことも、ワムシ類にとっては好適に作用したと考えられた。本研究は、富栄養湖における小型動物プランクトンの群集構造の決定には、餌藻類量だけでなく、群集内の生物間相互作用(捕食と競争)が大きく関与することを明らかにした。本結果は、動物プランクトン群集内におけるワムシ類への他生物の干渉を抑え、水処理システム等でワムシ類の摂餌能力を効率的に活かすための重要な情報となるだろう。
資料
  • 相子 伸之, 中西 博隆, 平 大輔
    原稿種別: 資料
    2017 年 53 巻 4 号 p. 129-137
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    海面埋立処分場の管理型区画から排出される浸出水には、アンモニア態として高濃度の窒素が含まれている。著者らのこれまでの研究では、水量を調節する調整池において滞留期間中に浸出水の窒素が低下することが明らかになっており、浸出水の窒素処理に適した硝化菌が関与していることが推察された。一方で、海面埋立処分場浸出水には塩分が含まれ、その濃度は埋立の工程で短期的にも長期的にも変化するため、本研究では揺動床を用いた連続処理槽で、堺7-3区処分場および泉大津沖処分場の2つの処分場から採取した底泥の硝化作用と浸出水の塩分濃度の関係を調べた。0.5%あるいは3.0%の塩化ナトリウムを含む合成浸出水で処理した4つの試験区では、いずれの処理槽でも速やかにアンモニア酸化が起こった。一方、亜硝酸酸化の起こるまでに要する期間は、泉大津処分場の底泥を入れた3.0%の試験区で長く、塩化ナトリウムによる阻害が確認された。
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