日本水処理生物学会誌
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56 巻, 3 号
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報文
  • Suphatchai Rujakom, 篠田 健太, Tippawan Singhopon, 中野 麻衣, 亀井 樹, 風間 ふたば
    原稿種別: 報文
    2020 年 56 巻 3 号 p. 33-45
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー

     水素酸化脱窒(HD)反応は亜硝酸還元に重炭酸イオンを炭素源として利用する。本研究は水理学的滞留時間(HRT)最短化に資するため、重炭酸イオン濃度の調整によって、HD反応の亜硝酸還元促進による脱窒性能の強化を検討した。重炭酸イオンを化学量論的に必要量以上添加した場合でも、HRTが短いと、亜硝酸の除去能は低いことが示唆された。添加した重炭酸イオン量により細菌群集は変化し、必要量を添加した場合ではRhodocyclaceae, Alcaligenaceae, Xanthomonadaceae科細菌が、十分量供給した条件ではThauera spp.が、それぞれ優占細菌として存在した。また、後者の条件では、亜硝酸還元遺伝子nirSの存在量が最も多く、さらにThauera spp.の分布率との間に強い相関関係があることがわかった。以上から、本研究より、HD反応においては、nirS遺伝子を持つ細菌の増殖誘導に重炭酸塩が重要な役割を持っていることが明らかになった。

  • 横井 貴大, 野口 暁生, 古田 世子, 池田 将平, 一瀬 諭, 竹本 邦子, 勢川 利治, 小倉 明生
    原稿種別: 報文
    2020 年 56 巻 3 号 p. 47-55
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー

     かび臭は水道水のおいしさに関わる重要な問題であり,かび臭原因物質の1つである2-メチルイソボルネオール(2-MIB)については,2004年に水質基準に設定された。琵琶湖南湖を水源とする京都市蹴上浄水場の着水では,1988年-1994年にかけて,5月-6月にPhormidium tenueによる2-MIB,9月-10月にはOscillatoria tenuisによる2-MIBが発生していた。しかし2007年-2017年については,2013年及び2014年にP. tenueによる2-MIBが発生したのを除き,2-MIB発生期間でも,P. tenueO. tenuisが観察されない状況が続いていた。そこで,溶存態2-MIBの割合についてみると,1988年-1994年は平均60%であったが,2007年-2017年は平均92%と,溶存態の割合が高くなっていた。また,淀川水質汚濁防止連絡協議会による2010年-2017年の南湖調査では,直上水の全量2-MIB濃度が表層水よりも高くなっており,湖底に繁茂する沈水植物上にP. tenueが付着していたと報告されている。そこで,南湖で単離されたP. tenue PTG株を複数の光条件下で培養したところ,南湖湖底と同程度の弱光条件下で,溶存態2-MIB産生能が高くなることがわかった。以上のことから,2007年-2017年に琵琶湖南湖で発生した溶存態2-MIBは,沈水植物上に付着したP. tenueが原因であると考えられた。

  • Le Thai Hang, 森 一博, 遠山 忠
    原稿種別: 報文
    2020 年 56 巻 3 号 p. 57-66
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー

     微細藻類は化石燃料に代わる再生可能なバイオ燃料の原料として注目されているが,その燃料生産の実用化に向けては微細藻類の油脂生産性を高めることと,微細藻類培養コストを削減することが重要課題となっている。そこで本研究では,クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)をモデル微細藻類として実験に供し,下水処理水と有機性廃棄物を利用した混合栄養培養によるクラミドモナスのバイオマス生産性と油脂生産性の向上ついて検討した。合成C培地あるいは下水処理水に市販の有機化合物(グルコース,フルクトース,スクロース,酢酸塩)あるいは有機性廃棄物(廃糖蜜とコーンスティープリカー)を一種類ずつ添加した培養液でクラミドモナスを培養した。その結果,クラミドモナスは合成C培地だけでなく下水処理水を用いた培養においても増殖し,油脂を生産した。この結果から,下水処理水は安価な培養液としてクラミドモナス培養に応用できることが明らかとなった。また,実験に供した有機物のいずれかを添加した混合栄養培養によって,クラミドモナスのバイオマス生産性が向上した。本研究で検討した培養条件の範囲では,合成C培地に廃糖蜜1g/Lを添加したクラミドモナス混合栄養培養において,最高のバイオマス生産速度(86 mg-dry cell/L/d)と油脂生産速度(34 mg/L/d)が得られた。また,下水処理水に廃糖蜜1g/Lを添加したクラミドモナス混合培養においても,高いバイオマス生産速度(73 mg-dry cell/L/d)と油脂生産速度(27 mg/L/d)が得られ,この値は光独立栄養培養や他の有機物を添加した混合栄養培養の結果よりも高くなった。したがって,廃糖蜜はクラミドモナスのバイオマスと油脂の生産性を高める成分を有しているものと示唆された。以上の結果から,下水処理水と廃糖蜜を利用した混合栄養培養は,クラミドモナスを原料とした燃料生産の経済性と生産性を高める有望な培養法であることが示された。

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