カチオンパルプ(CP)はプラスのゼーター電位をもち,樹脂酸,粘土,ピッチや高分子エマルジョンのような酸性のコロイド粒子をよく吸着するから,紙パルフ工業でも興味がある。そこでカルバモイルエチルパルプ(CBP)のホフマン分解でCPを試作し,その特性についても検討した。
CBPのホフマン分解は,反応をつぎのように2つに分けて行なった方が有利である
1) Cell-CONH
2+NaOCl→Cell-CONHCl (塩素化反応)
2) Cell-CONHCl→[Cell-NCO]→Cell-NH
2 (アミノ化反応)
1)の塩素化は低温で行なうがよい。反応後は過剰のNaOClを洗浄し去ることが必要である。NaOClが残存すれば,つぎの工程でパルプをいためるからである。塩素化反応とアミノ化反応の活性化エネルギーは,それぞれ17kcal/molと30kcal/molで,均一系におけるでんぷんについてえられた値とよく一致した。これは,塩素化はパルプの巨視的な表面にだけおこる反応であり,アミノ化は本来が一次的な分解反応であることに基因するのであろう。アミノ化の反応条件としては,アルカリ濃度3~5%,反応温度60~70℃,反応時間30~120分が適当である。
アミノ化率はアミド基の置換度(DS)によって変化する。DS0.01の場合のアミノ化率は約70%であるが,DSが0.04に増大すれば,アミノ化率は50%に低下する。CPはDSが0.01のように小さいものでも,粘土やピッチエマルジョンに対し強い親和力をもっている。
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