前報では重包装袋用紙としての紙の力学的性質の検討の一つとして, 落下破袋試験における破袋落下回数の分布より, 破袋がどのような確率過程で発生しているかについて検討を行った。
本報では紙が繰返し応力を受ける時に, 繰返し疲労強度と紙の物性の変化がどのような形で結びついているかについて検討するために, 繰返し衝撃試験を行って, 用紙の物性の変化を求めた。
その結果, 紙の繰返し衝撃強度 (破断までの繰返し衝撃回数)
nは, 紙の引張破断までの吸収エネルギー量
Eと, 1回の衝撃で紙の不可逆変形に消費されるエネルギー量
eirr.に関係し, 近似的に次の関係式で示すことができた。
n=
ep [
E/
eirr.-1]
ただし
p : 比例常数,
e : 指数
更にこの1回の衝撃で紙の不可逆変形に消費されるエネルギー
eirr.は, 紙の硬さと関連し, 近似的に紙の引張強度
Tlと伸び率Elの比
Tl/Elの1次式で示されることを見出した。
紙の破断までの吸収エネルギーEは, 上記の
Tl (kgf) と
El (%) の積(
Tl×El) に比例し, 今回検討したプレーンの未晒クラフト紙では, その比例常係は0.0688と得られ, また上記の比例常数
pの値は, 繰返し衝撃による紙質の変化より0.187と推定できたので, これらをまとめ繰返し衝撃強度
nと紙の引張強さ
Tl及び伸び率Elとの関係は, 次の式で示された。
n=
e0.187 [0.688 (
Tl×El) /-
a (
Tl×El) +
b-1]
ここで
a及び
bは1回の衝撃で紙が受ける衝撃エネルギーに依存する常数であり, 今回の繰返し衝撃の条件では, それぞれ0.025及び0.189と得られた (
a, b>0) 。
なお, 上式を展開した近似式を, 繰返し過程の応用の1例として, のりばり重包装用紙袋の落下破袋試験における平均破袋落下回数と用紙の引張強度及び伸び率との関係に適用し検討したが, 良い近似でその関係式が満足されることを見出した。
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