段ボールの両表面クラフト・ライナ (KL) の引離し強度は, 段ボールの接合強度を明らかにするために必要なものであり, 段ボールの力学的強度を保つための一基本となるものである。そこで, 本報告では, 段ボール中芯の形状を正弦波形であるとして, 両面段ボールの両表面KLに引離し力が働く際の応力状況を明らかにするために, 周知の平面応力と平面ひずみの応力状況の類似性を基にし, 真直はりおよび曲りはりの計算処法にしたがい, KLおよび中芯の弾性応力および変位を求めるための解析法すなわち解析表示を導き出した。そして, KLおよび中芯の縦弾系係数を5.60×10
4N/m
2および 2.80×10
4N/mm
2とし, KL, 中芯の厚さ T
k=0.30mm, T
s=0.24mm, および中芯の波長 L=0.92mm, 波高h=4.6mmの形状のものを中心として, 得られた本解析表示により, 引離し力が働く際の両面段ボールの応力および変位の挙動を議論した。その結果, 以下のようなことが明らかになった。
(1) KL の曲げ応力の絶対値の最大値は KL・ 中芯接合部の内外表面に, 中芯の最大値 σ
smax は内表面にある。
(2) σ
smax は中芯の紙厚 T
s の増加に伴って減少し, 中芯の波高hの増加に伴って増加する。 なお, σ
smax は波長Lの増加に伴ってまず増加を, そして減少を示す。
(3) 中芯の流れ方向および加工方向の変位は, 中芯の厚さ中央位置が波高の中央位置にある位置からの流れ方向距離の増加に伴って, 共に, 零より減少, 増加を示し, その間に変位絶対値の極大値が生じる。そして, その引離し方向の変位はKL・中芯接合部で最大となる。
(4) 中芯の流れ方向および引離し方向の変位の最大絶対値はT
sの増加に伴って強く減少し, L およびhの増加に伴って強く増加する。
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