紙パ技協誌
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50 巻, 4 号
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  • 河澄 和夫
    1996 年 50 巻 4 号 p. 639-645
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    平成6年特許法改正は, 工業所有権制度の国際的な調和の潮流に沿うものである。内容上2つに分けて1995年7月1日と1996年1月1日とに施行された。
    改正事項中, 最も重要なものは, 本年1月1日に施行された新しい特許異議申立制度である。従来の特許異議申立制度は, 異議申立と出願公告とを1セットにして特許付与に先立つ公衆審査の性格を持たせていた。改正によって, 出願公告は廃止され, 異議申立は特許付与後となった。新しい特許異議申立制度の最大の特長は, 迅速な特許権付与の実現にある。新制度を特許権者の側から見れば, 異議申立人の主張が審判官の取消理由に形を変えて通知されると共に, 複数の異議申立人がいても取消理由通知は1つになるので, 答弁のための労力はかなり軽減されるはずである。一方, 異議申立人の側からすれば, 特許権者と直接的に論争が出来ないというもどかしさがある。
    次に重要な改正事項は, 特許権の存続期間である。従来は特許出願日から20年, 出願公告日から15年のいずれか短い日までであったが, 特許出願日から20年のみに1本化された。この改正は, 施行日である1995年7月1日現在有効な特許出願, 特許権に適用されるので, 予め他社特許権の満了時期を織り込んで市場参入を計画している場合には, 当然見直しが必要となる。
    上記以外の改正事項としては, 譲渡若しくは貸渡しの「申出」を「実施行為」に追加, 英語による出願の受理, 明細書等の補正の時期的制限の緩和, 明細書の記載要件の見直し, 特許請求の範囲の解釈に際しての発明の詳細な説明の参酌の明文化, 情報提供制度の運用上の制約緩和等があり, 施行日はいずれも1995年7月1日である。
  • (第1報) JISの改正について
    内藤 勉
    1996 年 50 巻 4 号 p. 646-652
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    最近JIS規格が, SI単位化, ISO規格との整合化, JISの新書式への変異などの目的で順次改正されている。特に, ISO規格との整合化は, WTO/TBT (旧姓GATTスタンダードコード) に基づき, 主に貿易上の障害除去の観点から紙パルプも含めた全JISについて行われていたものであり, 最近の閣議決定によりその改正作業を平成9年度までの3年間で完了させることとなった。本報では, 紙パルプ技術協会及び同試験規格委員会で進めている紙パルプ関係のJISの国際規格 (ISO) への整合化作業を紹介し」, 改正内容について解説した。整合化作業は, 工業技術院から提示されている整合化手法により行われているが, これらの手法を用いる上での紙パルプ分野での問題点, 更に, この問題点とISOのメンバーシップとの関連についても概説した。既に改正されたJISにおいて, ISO規格との整合化の結果, 例えば「比破裂強さ」, 「比引裂強さ」などの比強度 (坪量で補正した強度) や「耐折強さ」の定義が, 従来のJISとは異なっていることを示した。
  • (第2報) ISO/TC6参加報告
    内藤 勉
    1996 年 50 巻 4 号 p. 653-655
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    ISO/TC 6 は International Organization for Standardization の紙パルプの製品規格, 試験規格委員会であり, そのメンバーシップは, 議決権を有する P メンバー (Participating) と O メンバー (Observer) に分けられる。現在, P メンバーは 35 ケ国, O メンバーは 25 ケ国で, 韓国, 中国も含め主要な紙パ生産国は P メンバーである。日本は O メンバーであり, 規格原案 (DIS) についての意見は求められるが, 議決権は持っていない。わが国は, 世界有数の紙パルプ生産国であるため, 従来よりISO/TC 6 より P メンバーへの参加を求められている。 ISO/TC 6 の国際会議が平成 7 年 11 月に中国紙パルプ研究所の主催で北京にて 17 ケ国 48 名の参加で開催され, 日本代表として参加することができた。会議は, ISO 規格の改正, 新規制定などについての技術的な考察・討議に始まり, これらに対する各国の意見調整, 審議, 議決が行われた。また TC 6 議長より,この会議を機に P メンバーへの早期登録を要請された。 P メンバー登録後は, 紙パルプ主要生産国として国際活動へのある程度の協力が期待されるが, そのためには代表者, 予算, 他の国内 TC・他の機関との連携などを考慮したサポートシステムの確立が是非とも必要であることもわかった。
  • 遠藤 さおり, 松永 悦子, 海老沼 宏安
    1996 年 50 巻 4 号 p. 656-666
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    近年の産業の発達に伴い地球規模での様々な環境破壊が引き起こされ, 環境保全が社会全体での課題となってきている。そして, この問題は, 原材料の大半を森林に依存している紙パルプ産業においても, 根幹にかかわる重要な問題であり, 環境保全と産業の発達の調和が, 次世代への持続的な発展への重要な鍵となっている。
    様々な産業分野において, バイオテクノロジーを用いた技術が, 次世代における産業の発達を可能とする環境保全技術として注目を集めている。紙パルプ産業においても, 植林事業の推進に代表されるように, 環境保全と産業の発達の両面からの事業展開が繰り広げられている。しかし, 次世代において, 企業に対する環境保全の圧力はさらに増大すると推測され, 植林事業においても原材料としてだけではなく, 社会的にも付加価値の高い樹木の植林をおこなうことが必要となると考えられる。バイオテクノロジーの進歩により, 生物に新たな遺伝子を導入することにより, 生物に新たな能力を付加することが可能となってきている。そして, この技術を用い植林木の改良・開発をおこなうことにより, より社会的に付加価値の高い植林事業が可能となると考えられる。
    本報告では, バイオテクノロジーの中でも, 特に紙パルプ産業と関りの深い, 植物のバイオテクノロジーの環境問題への取り組みとして, 植物の汚染物質の浄化, 解毒に関した研究を紹介する。
    当研究室において遺伝子組換え技術を用い, 解毒能力を強化した環境ストレス耐性樹木の作成を行っている。遺伝子導入された樹木は, 大気汚染・除草剤などの環境ストレスに対し, 強い耐性を示すことが明らかとなっている。この結果も合わせて報告するとともに, 樹木における遺伝子導入技術の可能性と, 有用性に関し考察する。
  • 樋口 隆昌
    1996 年 50 巻 4 号 p. 667-682
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    木部細胞壁の主要成分であるリグニンの生合成については, 反応経路, 反応を触媒する酵素の性質などが解明され, 細部を除けばほぼ明らかになった。ヘミセルロース (キシログルカン, グルコマンナン, ペクチン) などの生合成も解明されつつある。セルロースについては微生物 (Acetobacter xylinum, 酢酸菌) で生合成機構の外貌が解明されたが, 植物のセルロース合成酵素はカロース合成酵素と密接な関係があり, 不安定で抽出精製が難しく, まだほとんど解明されていない。多様な化合物からなる抽出成分の生合成については, フラボノイド, スチルベン, タンニン (加水分解型タンニン), テルペンなどで, 生合成に関与する酵素が解明され, リグナンの生合成についても最近酵素レベルの研究が進展している。
    これら細胞壁成分の合成 (二次代謝) は形成層細胞の分化に伴って発現する。従って木部形成の機構を解明するためには, 木部の形態分化の機構と, 木部分化に伴う成分合成酵素発現の機構の解明が不可欠である。最近, 百日草 (Zinnia elegans) の単一葉肉細胞から管状要素への形態分化の培養系が確立され, 分化機構の遺伝子レベルでの解明が進んでいる。細胞壁成分 (リグニン, セルロース, フラボノイド, スチルベンなど) 生合成についても最近になって遺伝子レベルの研究が進み, その成果が挙がりつつある。近い将来形態形成と細胞壁成分生合成の同調的発現の機構が遺伝子レベルで明らかにされ, 遺伝子工学による目的に適した (特定成分を多く含み, 成長が早く, 材質の良い) 樹木の生産が期待される。
  • トンプソン C. B., ガーナー A.
    1996 年 50 巻 4 号 p. 683-690
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    抄紙機における腐食問題について回収水の使用方法と進歩的な白水系の密閉化という面で再調査した。本論では抄紙機の腐食問題について最新の知識を述べる。抄紙機に使用される材料についての過去の経験を再調査し, さらに, 腐食の性能についての機械的な理解について概説した。ネットウォーターの使用量が新水使用量の低下により減少した場合, 腐食の水準は増加し, 即座に分類された物質は限界の状態となる。白水系化学での予想された変化の詳細を述べる。 Cl- や S2O3- のようなクリティカルアニオンの大幅な濃縮, 温度上昇, 溶解, コロイド状の物質の高い水準, 残留漂白剤, そして微生物学上の腐食現象は現在の腐食条件を変化させる。抄紙機の構成要素と材料の期待された性能についてその変化に照らして述べる。潜在する腐食問題についての情報の不足が回収水利用と白水系の進歩的な密閉化の障害となってはならない。
  • 伊藤 通弘
    1996 年 50 巻 4 号 p. 691
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • ワラ類の灰分の性状およびアルカリ蒸解中の挙動
    中野 準三, 津田 祐子, 北仲 由美子
    1996 年 50 巻 4 号 p. 692-696
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    ワラ類には灰文, とくにシリカ分が多く含まれる。したがって, ワラ類の化学パルプ化, たとえばソーダ蒸解において黒液に抽出した灰分は, 濃縮工程においてスケール生成を起こして回収工程を困難にする。
    以上の問題に関連して, 本報では稲, 小麦および大麦ワラの灰分組成およびアルカリ蒸解中のシリカの挙動を検討した。以下に, 結果を要約する。
    (1) ワラ類の水抽出物は多い。シリカ残存量は水抽出後の稲および大麦で元のシリカの約70%であり, 小麦のそれは約40%である。稲ワラを水抽出した後の灰分を構成する元素はSiとCaで, その大部分はSiである。
    (2) 市販シリカの苛性ソーダに対する溶解度は, 稲ワラのそれに比較して著しく少ない。これは両者のシリカの形態構造の相違に基づく。すなわち, 市販シリカはQuartz型であるが, 稲ワラ・シリカはOpal-CT型またはクリストバーライト型と推定される。
    (3) ソーダ・サルファイトおよびソーダ・メタノール蒸解したパルプのシリカ分は, ソーダ蒸解のそれよりも多い。これは興味ある結果であり, 今後の検討事項はシリカの多いパルプのシート物性の解明である。
  • マンガンペルオキシダーゼによる漂白
    原園 幸一, 近藤 隆一郎, 坂井 克己
    1996 年 50 巻 4 号 p. 697-706
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    高活性リグニン分解菌である白色腐朽担子菌 Phanerochaete sordida YK-624 株の産生するマンガンペルオキシダーゼ (MnP) を用いた広葉樹未晒クラフトパルプの漂白のための処理条件を検討した。MnP はリグニン生分解に関与するヘム酵素であり, H2O2 による Mn2+ の Mn3+ への酸化を触媒し, Mn3+ がリグニンを攻撃する。 MnP によるパルプ漂白にはMn2+, Mn3+ 錯体形成試薬の有機酸, H2O2, 界面活性剤の添加を必要とする。最適 pH は 4.4 であり, 45℃ で処理したとき白色度の上昇が最大であった。 Mn3+ 錯体形成試薬としてはマロン酸やグルコン酸が効果的であり, キレート能のないコハク酸存在下では漂白効果は観察されなかった。また, 有機酸の濃度も重要であり, シュウ酸は低濃度で漂白効果がみられた。 Tween 20 や Tween 80 などの界面活性剤は重要な因子であり, Tween 80 に含まれる不飽和脂肪酸の過酸化による非フェノール性リグニン部分の酸化も起こっていることが考えられ, この反応により漂白効果がさらに促進されていることが推察された。 in vivo で H2O2 の供給を行っていると思われるグルコースオキシダーゼを用いても, また MnP 活性を含む精製を行っていない培養ろ液を用いても部分精製 MnP と同様の漂自効果を示した。さらに広葉樹酸素漂白クラフトパルプも Mnpにより漂白可能であった。
  • (第1報) 両面段ボールの応力および変位状況
    松島 理, 松島 成夫
    1996 年 50 巻 4 号 p. 707-716
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    段ボールの両表面クラフト・ライナ (KL) の引離し強度は, 段ボールの接合強度を明らかにするために必要なものであり, 段ボールの力学的強度を保つための一基本となるものである。そこで, 本報告では, 段ボール中芯の形状を正弦波形であるとして, 両面段ボールの両表面KLに引離し力が働く際の応力状況を明らかにするために, 周知の平面応力と平面ひずみの応力状況の類似性を基にし, 真直はりおよび曲りはりの計算処法にしたがい, KLおよび中芯の弾性応力および変位を求めるための解析法すなわち解析表示を導き出した。そして, KLおよび中芯の縦弾系係数を5.60×104N/m2および 2.80×104N/mm2とし, KL, 中芯の厚さ Tk=0.30mm, Ts=0.24mm, および中芯の波長 L=0.92mm, 波高h=4.6mmの形状のものを中心として, 得られた本解析表示により, 引離し力が働く際の両面段ボールの応力および変位の挙動を議論した。その結果, 以下のようなことが明らかになった。
    (1) KL の曲げ応力の絶対値の最大値は KL・ 中芯接合部の内外表面に, 中芯の最大値 σsmax は内表面にある。
    (2) σsmax は中芯の紙厚 Ts の増加に伴って減少し, 中芯の波高hの増加に伴って増加する。 なお, σsmax は波長Lの増加に伴ってまず増加を, そして減少を示す。
    (3) 中芯の流れ方向および加工方向の変位は, 中芯の厚さ中央位置が波高の中央位置にある位置からの流れ方向距離の増加に伴って, 共に, 零より減少, 増加を示し, その間に変位絶対値の極大値が生じる。そして, その引離し方向の変位はKL・中芯接合部で最大となる。
    (4) 中芯の流れ方向および引離し方向の変位の最大絶対値はTsの増加に伴って強く減少し, L およびhの増加に伴って強く増加する。
  • 1996 年 50 巻 4 号 p. 717-723
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 森江 正博, 油井 康二
    1996 年 50 巻 4 号 p. 724-728
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
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