紙パ技協誌
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50 巻, 6 号
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  • 田原 幸夫
    1996 年 50 巻 6 号 p. 859-864
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    紙は様々な機能を持っている中で, その生産量の半分は「書く」「印刷する」などの情報を記録する用途に使われている。この記録用途において, 最近15年間における代表的な銘柄の数量変遷は, 紙全体の伸び率に比べて大きく伸びている品種が多いが, それと同じ分類に属するものの中でもその数量が減少させている品種が見られる。これはビジネス用の情報化の進展が記録用途の品種を全体的に伸ばしているが, その情報化は顧客が要求する記録の質を変え, それに応じて必要とする紙の品質つまり品種を変えてきている。これらの動きは, これから向かう高度情報化社会においても, 紙品種が今のままでなく, 変化していくことを示している。そして, 最近の高度情報化の進展に伴う印刷・情報用紙の新しい動きとして, 印刷機が固定の印刷版を持たず, 可変情報に対応して電子写真方式やインクジェット方式などで直接印刷するものが出現し, 従来の印刷用紙ではなく, 情報用紙が大量消費化し始めている。さらに, 今後の新社会資本を達成するにはマルチメディア技術の利用が必須であり, これに伴う情報化の広がりが推進力となっていく。このことが直接的に紙に記録することには結びつかないが, 新たな用途・使われ方において適切なハードコピー, つまり情報用紙が展開していくことが期待できる。
  • 竹山 三郎
    1996 年 50 巻 6 号 p. 865-873
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    日本経済の進展と共に過去四半世紀において包装資材・容器の出荷量は約倍増, 出荷金額においては約5倍増となっている。平成4年の出荷金額は6兆7,200億円で紙・板紙製資材・容器はその44% を占め段ボールが24%, 紙器が12%ついで包装紙、製袋原紙5%となっている。
    包装の形態としては, プラスチックの利用増, バリヤー性樹脂の利用, 紙とフィルムの複合化, そして各種高機能化が図られ商品の保護機能, 便利性に関する諸機能, 販売促進機能は大きく伸展した。
    しかし, 一方では包装資材・容器の環境に与える影響がクローズアップされ, 包装材料の減量化及び減容化, リサイクル性, 焼却性, 自然崩壊性等が商品設計の大きな要因として注目され, さらには包装資材が製造され, 使用され, 廃棄処理された後までの一連のライフサイクル環境に与える負荷も考慮され始めている。
    紙・板紙容器素材の開発動向を特許出願から分析すると, 耐水性, 耐油性, 防湿性, 蒸着, ヒートシール性, ガスバリヤー性, 易開封性, 易滅菌性等は継続して研究されているテーマと言える。平成 3 年以降に出願の多い特性は, 防湿性, ヒートシール性のような物理的特性の他, 匂いの移行防止・保香性・味, 美粧性等の感性に関する機能, また易廃棄性, リサイクル性, 自然崩壊性, 脱アルミ等環境に関する特性があげられる。
    今後, 容器・包装リサイクル法また消費者保護の立場に立つPL法などの法律がこれまで以上に包装設計に影響を与えるであろう。また各種の規制緩和と国際化が進む中, 物流形態は流動的で予想しきれない面が有るため柔軟な対応が求められよう。
  • ライトサイジング・システムとDCSソフトウエア
    本間 忠一
    1996 年 50 巻 6 号 p. 874-881
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    前号にひきつづき, 本誌では, ライトサイジング・システムの具備すべき条件に, 米国で納入実績の多いムーア・プロダクツ社のシステムを当てはめてみた。
    さらにDCS用ソフトウエアについて, 国際標準になりつつある「ウインドウズ方式」のエンジニアリングについて紹介する。
  • 飯田 清昭
    1996 年 50 巻 6 号 p. 882-888
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    1970年代に, エネルギー危機からその商品がどれだけエネルギーを消費するかが問題となり, LCA手法が開発された。さらに, 1980年代後半から, ある製品の環境に与える負荷を, その製品の原材料の生成から廃棄物として処理されるまでの一生 (life cycle) にわたる総負荷で評価すべきであるとする考えから, その手法の開発と応用が進められてきた。このような背景から, アメリカの TAPPI, AF &PA, NCASI 共同でそのシンポジュウムを企画し (場所 : Atlanta, U. S. A., 日時 : Jan. 25-26, 1995), U. S. A. を中心に世界各国から85名が参加し, 製紙産業への応用を含め熱心な討議が行われた。
    例えば, ヨーロッパからは, LCAが具体的な手法として政策決定に使用された諸例が紹介された。U.S.A.では, 1980年代から, 一部の企業で製品仕様を決める際に, 環境負荷も一つの因子として取り上げることをルール化し, LCAを導入してきている。また, AF&PAは, NCASI と協力し, 製紙業界の各プロセスにおける原材料の投入と環境への排出の代表値をまとめだした。さらに, 最近ではISO-TC207 (ISO 14000) の中で環境管理の一つの手法として検討され, 日本でも関心を集めている。
    LCAは環境負荷を考える際の有用な方法であるが, 決して絶対的なものではなく, 専門家の問でいろいろの問題も指摘されている。
    しかし, 日本の製紙産業として, その製品が環境にどのような負荷を与えているのかを知る必要があり, 我々自身の手でそのデータを集めるべきであろう。
  • 加藤 舜陶
    1996 年 50 巻 6 号 p. 889-897
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    日本は焼き物の非常に優れた国である。その歴史をみると8世紀以降, 大体400年周期に焼物の大きな変革がある。即ち, 6世紀から8世紀は中国の唐の文化が朝鮮に伝わり, 朝鮮で須恵器が盛んに焼かれた。この焼き物は, 8世紀頃, 仏教の伝来とともに日本に伝わり, ろくろ (轆轤) の技術が発達した。非常に薄くて堅牢でシャープなろくろの遠心の美を備えた名品が作られ, 今日のろくろ芸術の手本になっている。次の12世紀は, 中国の天目茶碗の釉 (うわぐすり) をかけた焼き物技術が伝わり, 瀬戸焼が誕生。さらに, 常滑 (とこなべ), 信楽 (しがらき), 越前, 丹波, 備前の6古窯と呼ぶ6か所の窯で日本独自の焼き物が沢山焼かれる。続いて, 16世紀は鎌倉時代から安土桃山時代の武家文化が開花。中でも, 千利休による茶の湯の詫び・寂の精神は焼き物にわが国独特の美学を生む。また, 利休なきあと, 秀吉の豪華絢瀾好みのもとで, ペルシャ模様を配し, 歪みの美を追及した利休とは別の美学というべき新しい感覚をもった織部焼が生まれる。そして400年後の今日, 私たちは, 20世紀の美術文化革命時代といって間違いない時代を迎えている。焼き物ばかりでなく, いろいろな分野で, 広い世界に跨がる美術革命時代が来ている。焼き物にしても, 彫刻にしても, 住まいの変化, 即ちコンクリートの広い家や広い空間に調和する新しい芸術が生まれている。オブジェ風で抽象的な焼き物が盛んに作られている。
    先日, フランスで講演をし, 討論したが, 日本の歪みの美や詫び・寂を追及した焼き物, 使い込んで茶渋や人の手の酸により暖か味と潤いのある肌を見せる名品をフランスの大方の人達は否定する。向うでは, シンメトリカルで, まさに真円で, 寸分違わぬ絵付け, 私たちから見ると何とも退屈なものが芸術という。国民による美的精神性の大きい違いを痛感するが, 焼き物は, 使うひとにより名器になる。明日から焼き物を見る目の角度を少し変えて, みなさんの美眼・美意識をもって好きな焼き物を選び, 大事に使って頂きたい。
  • 伊藤 通弘
    1996 年 50 巻 6 号 p. 898
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • Phanerochaete sordida YK-624株の産生する粗酵素処理を導入した非塩素系漂白プロセス
    土川 圭一, 近藤 隆一郎, 坂井 克己
    1996 年 50 巻 6 号 p. 899-905
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    非塩素漂白プロセスによる高白色度パルプの調製を目的として, 広葉樹酸素漂白クラフトパルプに白色腐朽担子菌Phanerochaete sordida YK-624株の産生するマンガンペルオキシダーゼ主体の粗酵素処理と過酸化水素漂白を組み合わせた処理を試みた。2回の酵素処理 (M) とアルカリ抽出 (E) 及び過酸化水素漂白 (P) を順次行ったMEMEPシークエンスにより白色度は約84%に達した。また過酸化水素処理時にEDTA前処理を行うことにより白色度90%以上のパルプの調製も可能であった。即ち, 酵素処理と化学処理を組み合わせることにより, 従来の生菌処理と比較して大幅に処理時間を短縮した非塩素漂白プロセスの可能性が示唆された。さらに, MEMP処理により得られた漂白パルプの繊維特性を検討するため, 叩解性, シート物性及び薬品定着性 (紙力増強剤, サイズ剤) を調査した。MEMP漂白パルプの叩解性及びシート強度は従来の漂白法によって得られたパルプ (OCED) にほぼ匹敵した。同一叩解度で調製されたパルプシートの繊維長分布は同じであったが, 微細孔容量の増加が観察された。ポリアクリルアミド添加による強度増加率及びアルキルケテンダイマーやロジン系サイズ剤添加によるサイズ効果の発現はOCEDパルプより優れており, これは粗酵素液処理と過酸化水素漂白の相乗効果によってもたらされた繊維内の微細孔容量の増加による薬品の定着性の増加によるものと考えられた。
  • 武田 和子, 三木田 敦, 山崎 晃, 佐藤 哲夫, 西尾 馨, 熊坂 徹夫, 下野 和久, 田中 宏一
    1996 年 50 巻 6 号 p. 906-914
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    たばこ用巻紙には, 光学特性の向上や通気性保持を目的として, 主に軽質炭酸カルシウムが填料として使用されている。近年種々のカルシウムが開発されたことに着目し, 炭酸カルシウムが, 従来の使用目的に限らない巻紙の諸機能を調節するツールになり得るかの資料を得るため, 本試験を行った。すなわち, 結晶形状の異なる4種類の炭酸カルシウム (カルサイト型の紡錘体, 立方体, 針状絡合体およびアラゴナイト型柱状体) を単粒子径0.05~3.0μmの範囲で合成し, これらを巻紙に配合して, 結晶形状および単粒子径が巻紙の物性と紙層構造に及ぼす影響を調査した。さらに, シガレットの燃焼性や煙成分量と密接に関係する巻紙の通気度および巻紙を通しての低分子量ガス成分の拡散流出と紙層構造との関連を検討した。その結果, 立方体炭酸カルシウムを配合した巻紙は, 密度が高く通気度が低かった。伸びは, いずれの結晶形状においても, 単粒子径の増加に伴って増加した。巻紙紙層内の直径6μm以下の細孔領域では, 細孔比表面積, 細孔容積および平均細孔径は, 炭酸カルシウムの結晶形状および単粒子径の両者に依存した。いずれの結晶形状の場合も, 炭酸カルシウムの炭粒子径の増加に伴う比表面積の減少と共に, 細孔比表面積は減少し, 平均細孔径は増加した。巻紙紙層内の直径6μm以下の細孔容積の増加あるいはこの領域の平均細孔径の増加に伴い, 通気度は上昇した。未燃焼時のシガレットにおいて, 内部から巻紙を通しての低分子量ガスの拡散流出量は, 巻紙紙層内の細孔径1μm以下の領域におけるVρ/δ (細孔容積×見掛け密度/厚さ) の増加に伴い増加する傾向が認められた。
  • 松田 裕司, 尾鍋 史彦
    1996 年 50 巻 6 号 p. 915-922
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    膨潤パルプの微細孔分布を溶質排除法で測定した。溶質排除法で最も重要である糖溶液の濃度測定に旋光度を適用させることで精度および再現性に優れる測定を行うことができた。水によるパルプ膨潤には大きく分けて機械的処理による膨潤と化学的処理による膨潤があり, 両者の膨潤挙動を微細孔構造という観点から比較するため叩解処理, アルカリ処理, セルラーゼ系酵素処理などで膨潤させたパルプを使用した。繊維の部分的構造破壊を伴う叩解による膨潤パルプとヘミセルロースなどの分布的溶解を伴うアルカリ処理による膨潤パルプの微細孔分布は明瞭に異なっていた。叩解処理によって, 直径10~270Åの範囲の空隙量が増加する傾向が観察され, アルカリ処理では, 直径10~36Åの空隙の増加が著しいことが確認できた。この空隙量の変化と染料吸着量の変化の関係を検討した結果, アルカリ処理パルプの場合は, 直径12Å以上の空隙量と染料吸着量の間には高い相関があったが, 叩解処理の場合は, わずかな叩解によって染料吸着量が町しく増加することを確認した。このことからパルプ繊維への染料吸着量は, そのパルプの持っている空隙の大きさや量に依存するが, 叩解のような機械的に作られた空隙とアルカリ処理のような化学的に作られた空隙とはその吸着挙動が異なることが示唆された。
  • 1996 年 50 巻 6 号 p. 923-934
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • チップ水分測定装置および蒸解蒸気制御
    重松 廣次
    1996 年 50 巻 6 号 p. 935-937
    発行日: 1996/06/01
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
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