紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
51 巻, 9 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 住本 昌之, 橘 燦郎
    1997 年 51 巻 9 号 p. 1271-1294,053
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    機械パルプ製造時のリグニンの変化を明らかにするため, β-O-4型, コニフェリルアルコール型, フェニルクマラン型など, 多種の合成したモデル化合物を, それぞれセラミックボールミル, 振動ポールミル及びフアイナー中で反応させ, それらのメカノケミカル反応の機構を比較解明した。また, フロログルシンー塩酸反施を利用して, パルプ中のコニフェリルアルデヒド基の定量法を確立すると共に, この定量法を用いて機械パルプ製造時におけるリグニンの変化を推定した。更に, 機械パルプ製造時にリグニンに引き起こされた変化が過酸化水素漂白に及ぼす影響についても明らかにした。
    メカノケミカル反応は, 主としてラジカル反応として進行し, リグニンのCa-Cβ 間の開裂, p-カルボニルフェノールの生成, スチルベンの生成, p-キノン及びp-ハイドロキノンの生成, さらに二量化などの反応が進行することを見出した。特に,・OHラジカルによるCa-Hの引き抜き反応によって生成されるp-がルポニルフェノールは, 更に酸化されてp-ベンゾキノンを生成し得ることを示した。また, フェニルクマラン型化合物からも着色団と成り得るスチルペン型かカルボニルフェノールも生成する。
    機械パルプの過酸化水素漂白により, 着色団としてのp-カルポニルフェノールからは色戻りの原因物質としてのp-ヒドロキノンが切り出され, p-キノンへ容易に転換 (色戻り) することを示した。また, スチルベン型p-がルポニルフェノールも, 過酸化水素漂白ではスチルベン型p-ヒドロキノンが得られるが, 容易に相当するp-キノンへ転換 (色戻り) し得ることを示した。しかし, p-キノンはチオール処理で容易に還元し得ることを示した。また, 機械パルプリグニン中のp-ヒドロキノンをアセチル化することにより, 色戻りが防止できることも示した。
  • 平沢 隆仁
    1997 年 51 巻 9 号 p. 1295-1307,053
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本報文は大きく分けて2つの内容からなる。一つは, 内添用のポリアクリルアミド (PAM) 系紙力増強剤に関するものであり, 他方はPAM系の表面紙力増強剤についてである。
    製紙業界では資源の有効利用を目的とした古紙の使用比率が上昇し, また用水のクローズド化が進展してきている。その一方で抄紙機の高速化と共に紙・板紙の品質要求 (例えば薄物化など) も多様化してきている。このような状況のもとで, 現在乾燥紙力増強剤の主流を占めていて, 技術的な進歩も著しく, 業界からも性能向上要求の強いPAM系乾燥紙力増強剤の動向について述べる。特に今後の主流となる共重合PAMの特徴, 板紙および洋紙用分野での応用について取り上げた。また, 吸着性有機ハロゲン (AOX) の少ないポリアミドエピクロルヒドリン樹脂 (PAE) の湿潤紙力増強剤についても紹介する。
    一方, 1990年頃から, 新聞のオフセット化, 多色化, 超軽量化が急速に進行し, 新聞用紙に対して高度な表面強度が要求されるようになってきている。また, 商業印刷においても印刷方式の多様化, 高速化, 多色化, 高品質化が益々進行し, 印刷用紙に対して高度な紙質 (表面強度, 内部強度, サイズ性等) が要求されるようになって来ている。このような背景から, 今後益々, 表面紙力増強剤の重要性が高まって行くことが予想されることから, 新聞用紙, 印刷用紙, 板紙等のニーズに対応したポリアクリルアミド系表面紙力増強剤の最近の動向を当社のST-481Hを中心にしたSTシリーズの表面紙力剤を例にして紹介する。
  • 木村 進一
    1997 年 51 巻 9 号 p. 1308-1319,054
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    表面塗工薬品は歩留りがほぼ100%であるごと, 紙表面に直接作用することで, 紙製品の多様化と高付加価値化, 印刷方式の多様化, 高速化に対応が可能でその役割はますます重要になってきている。表面塗工剤としては澱粉 (酸化, 自家変性), PVA, ポリアクリルアミド (PAM) が使用されており, サイズプレス, カレンダー系として澱粉/PVA/PAM=20/17/5固形千t/年 (1995年) が使用されている。これらの内でPAMは種々の特性があり, その市場は伸びてきている。
    PAM塗工剤:
    従来のPAM系塗工剤の分子量は30-50万程度であったが, 分子量をアップさせることで強度向上が確認されている。最近では分子量30-50万の従来品, 80-100万の中間品, 200-300万の高分子量品の3種が市販されており, 用途, 機種に合わせて使い分けが実施されている。また新聞対象として紙力と同時にサイズ性も付与出来る塗工剤の開発も進められている。
    インクジェット (IJ) 適性向上剤:
    パソコンの普及に伴いカラーIJプリンターが急激に増加している。一方, 記録媒体としての用紙についてはモノクロのIJプリンター共用紙, PPC用紙, 専用紙が混合使用されている。カラーIJ記録用紙としては専用紙が使用されるが, コストが高く, 嵩のはった紙となり使用しづらい欠点があり, フルカラーIJ適性を持った普通紙の開発が望まれている。
    当社では, 種々の検討を実施し, インキの浸透を適度にコントロールし, 画像濃度を向上させることの出来る塗工剤CJ-1100を開発した。
    CJ-1100を塗工することで染料が紙に固着され, 再溶解しないことで画像の耐水性が良く, 発色性にも優れた結果が得られるものと考えている。
  • 戴 清華
    1997 年 51 巻 9 号 p. 1320-1332,054
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    歩留まり向上剤を使用せずにピッチ分散剤を導入すると製紙工場ヘッドボックスでピッチ分が増加した。この様な条件下に製造された紙は通常のシリンダーの印刷機 (CIC) 様式のマンローランド (Man Rowland) オフセット機使用の印刷工場で悪い成績を示した。CIC機のロールには50-70%の木材樹脂成分を含む繊維片が付着した。ピッチ除去のため促進剤 (エンハンサー) Aを併用するポリエチレンオキサイド (PEO) 歩留まり向上剤を導入した。これによりオフセットプレス機に付着する繊維屑, 粘着物の点から見て新聞紙の印刷性がすっかり改善された。
    歩留まり向上率 (ファースト・パス・リテンション: FPR) を高めるために, ダイナミックジャーで新しい促進剤を評価した。提進剤の1つを選び, 抄紙機試験を行い, 非常に有望な結果となった。
    しかしながら, 1995年後期の脱墨パルプの採用により, 不純物が移行することにより, 製紙における化学的な問題が発生した。最初のPEO歩留まり向上試験は不成功で, 再循環する白水中に繊維屑および粘着物が高積する結果となった。成形用ワイヤーおよびプレス用フェルトに粘着物のためにクラム生成 (Crumbling) の問題や紙料の不充分な脱水のため, 結局ウェットエンドで紙切れが起こった。1996年にベントナイト/促進剤/PEOに基づく新しい歩留まり向上方式の採用を開始した。これは画期的な進歩と考えられ, これにより抄紙機の操業効率が相当改善された。
  • 紙パルプ技術協会木材科学委員会
    1997 年 51 巻 9 号 p. 1333-1346,055
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    平成9年 (1997年) 6月19日 (木)-20日 (金) の2日間, 東京都北区「北とぴあ」の「つつじホール」において, 約350名参加のもとに第64回紙パルプ研究発表会を開催した。
    最初に, 今回の発表会の実行委員長である王子製紙 (株) 製紙技術研究所岩崎誠氏から開会の言葉があり, 続いて, 当協会を代表して副理事長である日本製紙 (株) 黒澤易彦副社長からご挨拶があった。
    研究発表は, 口頭発表のみ34件計画したが, 3件のキャンセルがあり, 31件の口頭発表となった。
    特別講演は, 東京工業大学生命理工学部相澤益男教授の「超生物機能を目指すバイオテクノロジー」と題するご講演を聴講した。また, 当協会で取り組んでいるJISのISO規格への整合化の内容を研究に携わる会員に周知徹底するため, 紙パルプ試験規格委員会を代表して日本製紙 (株) 中央研究所内藤勉室長が「紙パルプ試験規格に関するJISのISO規格への整合化について」と題する特別講演を行った。
    さらに, 当協会飯田清昭専務理事から「産・官・学交流に対する紙パルプ技術協会の取組み」と題し, 海外の研究機関の動向を交えながら, 当協会の最近の取組みについて報告した。
    19日の発表会終了後「飛鳥ホール」で開催した恒例の懇親会は, 約170名が参加し, 懇親会には, 北区から北本正夫区長はじめ関係者, 特別講演をしていただいた相澤教授がご多忙の折にもかかわらず来会された。
    発表会の最後に, 次回実行委員長である九州大学農学部田中浩雄教授から, 次回発表会は平成10年6月15日 (月)-6日 (火) の2日間「北とぴあ」で開催することを紹介し, 閉会した。
    本文には, 黒澤副理事長のご挨拶を掲載し, 続いて例年通り研究発表及び相澤教授の特別講演の講演概要・質疑応答の内容・感想について座長をお務め頂いた諸先生からのご寄稿を掲載する。
  • 伊藤 通弘
    1997 年 51 巻 9 号 p. 1347-1348
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 寺尾 知之, 山本 真之, 福井 照信
    1997 年 51 巻 9 号 p. 1349-1355,055
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    塗工紙の塗工層構造はインキセットに影響を与え, 塗工層がポーラスなほど, すなわち細孔容積が大きい方がインキセットが速いことが知られている。しかしながら, 細孔径については, どの程度の大きさが最もインキセットを速めるかは, 明らかになっていない。
    本報告では, 顔料の粒子径だけが異なる7種の塗工紙を作成し, まず, 塗工紙のインキセット速度および塗工層の細孔構造を定量化した。すなわち, インキセット評価における裏移り濃度の経時による低下を, 塗工紙に印刷されたインキの受紙への転移面積率の減少によると仮定し, 転移面積率と経過時間の平方根の関係を調べた結果, 良好な直線関係が得られたことから, この直線の傾きをインキセット速度とした。さらに, 塗工紙から原紙部分をテープ剥離により除去して水銀圧入法に供することで, 塗工層の細孔構造を定量した。
    次いで, 各塗工紙について得られたインキセット速度と塗工層細孔構造の関係を検討した。インキ中の溶剤を分離吸収してインキセットに寄与する細孔経を0.20μm以下, 0.18μm以下というように, 0.20-0.08μmの間で分割し, それぞれについてLucas-Washburnの式より得られた溶剤の浸透速度とインキセット速度との相関関係を調べた結果, 0.12-0.15μmの範囲のものが最もインキセット速度との相関が高く, この範囲の細孔を多く有する塗工層がインキセットを速くすることが示された。
  • 両面異材のクラフト・ライナーをもつ両面段ボール
    松島 理, 松島 成夫
    1997 年 51 巻 9 号 p. 1356-1365,056
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    異なるクラフトライナー (KL) をもつ両面段ボールの一様曲げ (モーメント軸が流れ方向に直角な向き) についての改良応力表示を導出することを試みた。そして, この表示によって異材KLをもつ両面段ボールの応力を求め, 応力強度と形状および縦弾性係数との関係を議論した。その結果, つぎのようなことが明らかになった。(1) KLの曲げ応力の絶対値の最大値は厚さまたは縦弾性係数の低い側のKL外表面に生じる。中芯の曲げ応力の最大値δsmaxはKL・中芯接合部の厚さまたは縦弾性係数の大きいKL側の内表面に生じる。(2) KLの曲げ応力 (KL1: 正値応力およびKL2: 負値応力) の絶対値の最大値 δk1max およびδk2max は中芯の厚さTsの増加に伴って緩やかに減少し,δsmaxは大きく増加する。δk1max,δk2maxおよび,δsmaxは中芯の波高hおよびKLの厚さTk1の増加に伴って減少する。(3)δk1maxおよびδk2maxは中芯の波長Lの増減によらず一定であるが,δsmaxはLの増加に伴って大;きく増加する。
  • 1997 年 51 巻 9 号 p. 1366-1373
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 斉藤 靖夫
    1997 年 51 巻 9 号 p. 1398-1402
    発行日: 1997/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
feedback
Top