紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
53 巻, 9 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 藤村 章夫
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1103-1104
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 矢口 時也
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1105-1115,049
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    今日, 化学パルプの製造法はKP法といわれるほどKP全盛時代になっている。KP法は1879年に発明されたもので, 120年を経過して今日の隆盛を迎えたことになる。1998年の統計では, 日本の化学パルプの生産の99.7%がKPとなっている。SP法の発明はKP法より10年早かったが, 蒸解薬品の回収再生が困難であるため, KP法が主流となっているものともいえる。パルプ繊維特性については, 漂白性, 叩解性等, SPにはKPより優れた特性を示すものもあり, SPとKPの差を検討することも, 新しい蒸解薬品を検討する上で必要なことと考えられる。本報では, 木材の化学パルプの蒸解法がどのように変遷してきたか, どのような特殊蒸解法が検討され, 実用化され, 現在どのような研究が進められつつあるかを, 蒸解薬品, 蒸解添加薬品について, 地球環境に優しい技術としての観点もふくめてまとめてみた。
  • 日沖 克彦
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1116-1125,049
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    森林資源の有効利用と省資源・省エネルギーの観点から, アルカリパルプ化法でのパルプ収率向上と脱リグニンの促進を目的に, 多くのパルプ蒸解助剤が検討されてきた。蒸解中の糖安定化 (ピーリング反応の防止) によるパルプ収率向上を達成するための添加剤として, ハイドロサルファイトやホウ水素化ナトリウム等の還元性物質, ポリサルファイドやキノン類化合物等の酸化性物質が検討されてきた。
    これらのうち, キノン蒸解とキノン添加ポリサルファイド蒸解はその経済性が認められ, 既に多くの工場で実施され, その操業実績が報告されている。本報では, 省資源だけでなく低カッパー価操業のような環境対策の面からも今後検討が進むことが考えられるキノン添加ポリサルファイド蒸解についてその歴史や効果について紹介し, あわせてポリサルファイド製造法についても説明する。
  • 紙パルプ工業分野における消泡技術
    安藤 節夫
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1126-1132,049
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    パルプ化工程においては, 木材中から各種樹脂成分やリグニン等の天然の物質が工程水中に溶出し, また, 抄紙工程においては, サイズ剤, 紙力剤, デンプン等の添加薬品が用いられ, それらの物質は非常に発泡し易い性質を有している。それゆえ, 紙パルプ工業において, 泡の影響, 特に原料中に吸着した気泡の影響に対しては重要な配慮が必要になっている。原料中の気泡は, 品質, 操業両面に重大な悪影響をもたらすため, 紙パルプ製造工程における泡対策は極めて重要な項目の一つとされ, 原料, プロセス条件, 装置面等の各方面での努力が払われているが, 満足のいく対策を講じるためには, 消泡剤の使用が不可欠になっている。
  • 林 順之助
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1133-1141,050
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    製紙工程において, ピッチの除去は重要課題である。ピッチの除去方法として各種の方法があるが, 本報では広く一般的に利用されているタルクによるピッチ除去について記述する。
    先ずタルクとはどんなものか。分子構造, 形態, 基本特性および一般特性などを示した。原料の滑石から粉体タルクの製造法の概略も示した。世界における原料滑石の産出量, 日本への輸入量, 世界および日本における用途別使用量を示した。製紙工業においてタルクは内填剤として, またピッチコントロール剤他として多量に使用されている。
    ピッチコントロール性能に関連し, タルクと各種物質との接触角データを引用した。なお, 全てのタルクがピッチコントロール剤として有効とは限らない。タルク原料の産地との関係, また製造条件によって異なることを示した。いずれにせよピッチ吸着能はタルクの比表面積に依存していることを示した。
  • 中島 克明
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1142-1146,050
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    ピッチを構成する成分は, 工程全般にわたって存在しており, 最初は無害な状態にあったものが, ある種の条件下で結合し集塊化することによりピッチトラブルを引き起こす。
    ピッチコントロール剤は, ピッチ粒子の表面に作用する界面化学的アプローチであり, 各種の界面活性剤が用いられている。製紙工業に於いても, 多くの各種界面活性剤が使用されているため, 電荷による挙動を良く理解し, 適切に処理することが, ピッチ問題を解くカギとなる。
    有機系ピッチコントロール剤は, 分散, 溶解タイプから吸着タイプの考え方にかわりつつあり, 添加方法についても内添から外添にかわってきている。しかし, 古紙の再利用, 白水のクローズド化に伴いピッチの粘着性を低下させた状態で紙に抄き込むことが最も重要なことと考えMRTシリーズを開発した。MRTシリーズの最大の特徴は, ステアリン酸亜鉛を特殊カチオン界面活性剤で, 微粒子の状態に分散したエマルジョンである。MRTシリーズの使用により, ピッチ粘着性軽減効果, 異物隠蔽性効果等, 様々な効果をもたらす。
  • 下戸 秀聡
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1147-1152,050
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    日本製紙株式会社 (当時十条製紙株式会社) が, リパーゼによるピッチコントロールについて発表してから今年で10年になる。この間日本製紙 (株) を始め, 各社の工場でリパーゼによるピッチコントロールが導入されている。
    本講演では, リパーゼ (商品名, レジナーゼA2X) を使用したGP (Groundwood Pulp) 及びTMP (Thermo Mechanical Pulp) 製造ラインで, ピッチコントロールの工場実験を行った例を紹介した。従来からリパーゼが使用されているGP製造工程だけではなく, TMP製造工程での効果が確認されたことで, リパーゼによるピッチコントロールの応用範囲がさらに広がった。
    今後酵素の利用がますます進み, 製紙産業の発展に貢献できることを期待している。
  • 江草 清行
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1153-1159,051
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    今回は数ある問題点の中から原質・パルプ工程の付着物の洗浄にスポットを当て紹介する。原質・パルプ工程で付着し障害となる物質はスケールとピッチである。スケールは主に蒸解工程, 回収工程, 洗浄工程並びに漂白工程で発生する。この工程で見られるスケールは硫酸バリウム (BaSO4), シュウ酸カルシウム (Ca(COO)2), 炭酸カルシウムが殆どである。硫酸バリウム, シュウ酸カルシウムは木材由来で炭酸カルシウムは蒸解薬品由来である。このようなスケールの元となる無機粒子がスケール化するメカニズムには不明な点が多いが, 実際に付着した物を観察すると緻密な構造をしている物が多く, 無機粒子同士に強い接着力が働いているのが想像される。スケール成分の定性はIR測定によりそのスペクトルパターンから無機化合物を特定できる。又, 蛍光X線測定により各無機物の組成比率が分かる。これらの測定を実施する事により大抵の場合, 原因が特定できる。スケール洗浄剤としては主に, キレート剤, 界面活性剤, 苛性ソーダの組み合わせが使用される。一方, ピッチはクラフト蒸解の場合, 蒸解-洗浄工程では高アルカリの為, 樹脂酸ピッチはナトリウム塩 (R-COONa) として存在するため可溶化している。そのため, この工程での付着物はピッチが少なくリグニンが多い。晒し工程ではC段, D段で酸性となるので, 樹脂ピッチは不溶性のカルボン酸となって析出する。ピッチ凝集の因子としては, 1) 電気的な要因, 2) 物理的な吸着, 3) 温度等が挙げられる。各工程の付着ピッチはアルコール, ヘキサン混合溶剤による溶解率とIRにより容易に分析が可能である。現況, これらのピッチの洗浄剤としては苛性ソーダとカチオン+ノニオン界面活性剤の併用が多様化されている。
  • 薗田 一晴
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1160-1165,051
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    紙パルプ工業の晒プラントは, 各漂白工程後のパルプに残留する漂白液を洗浄除去するために種々のフィルターを使用しているが, 近年エネルギー問題や環境問題に対応して, 晒液の高温化, 高塩素イオン化などが進んできており, 耐食性の観点からフィルター材料の高級化等何らかの防食対策が必要となってきている。
    そこで今回は, 防食対策の一つとして, 大機エンジニアリング (株) がCANADAのPAPURICANより導入した電気防食によるフィルター防食システム (PUPRITECTION) の概要及び特長について報告すると共に, 電気化学的に見た場合の腐食のメカニズムや, 電気防食の基礎的な考え方について紹介する。
  • 渡辺 満, 磯部 伸夫
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1166-1169,052
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    地球温暖化が進行している中, 製紙業界では古紙の再利用が注目されている。弊社は, 長年家庭紙 (トイレット・タオル等) の古紙処理を手がけて来たが, 年々印刷・コーティング技術の進歩, 並びに増産による用水原単位の低下により, 現状設備での異物 (インキ・クレー等) 除去率が非常に悪くなっている。そこで, 製造工程の洗浄工程を見直してみると, 現状の洗浄機は紙料をマット状に形成させてしまうことにより, フィルターの効果が生まれ, 紙料内部の異物を除去出来にくくさせている。紙料の洗浄効果を高めるには, 効率よく紙料を金網に接触させる必要があり, 最終脱水を完了するまで, 紙料をいかに流動化し, マット形成させないで金網への接触回数を増やすかが課題である。フォール・ウォッシャーは強力な高速撹拌羽根でこの課題をクリアーしたので, 紹介させて頂きます。
  • 山下 満
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1170-1173,052
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    古紙利用においては, 原料に含まれるピッチ・タール・ホットメルト等の粘着性物質を除去することは, 古紙再生技術の一つとして重要なことであり, ドライパートの汚れを防止する上でも一定の効果があることがわかっている。しかしながら, 古紙の配合率・リサイクル数が増加してくると, ドライヤー・カンバスが汚れやすくなる。古紙利用を進める製紙工場では, カンバス汚れの防止対策として高圧洗浄装置やワイヤブラシを用いて操業しており, 一定の成果は得られているものの, 運転中は, ある程度の汚れや通気度の低下は許容せざるを得ないのが現状である。汚れたカンバスで抄紙を続けることは, 製品の品質を低下させるだけではなく, 洗浄作業の発生等操業上多くの問題を引き起こす。従って「汚れないカンバス」の実現は, 古紙のリサイクルを進めていく上での重要課題の一つである。
    当社ではr汚れないカンバス」を実現する方法として, 汚れの発生原因を抑え, カンバス表面の剥離性被膜を維持するシステムを開発した。このシステムでは, 表面処理剤をカンバス表面に常時スプレー散布し, 紙表面に影響を与えない数ミクロンの薄い被膜を形成することにより, 湿紙上のピッチ・タール等のカンバス面への付着を防止し, さらに表面処理剤のカンパス繊維への浸透効果によって汚れにくい表面へと改質する。また, 防汚効果が操業中常に維持される点が特長である。
    本システムの導入効果の具体例として,
    1) カンバス及びアウトロールの汚れが激減したことにより, 洗浄作業の軽減と乾燥効率の向上が図られた。
    2) 当社ドライヤー汚れ防止システムとの併用により, 紙切れ回数が採用前の1/3-1/5程度に減少し, 生産性が3-4%向上した。
    3) 紙粉発生量の激減とピッチ・タール等の付着がなくなったことにより製品の品質が向上した。等が挙げられる。
    これらの効果は, 板紙から印刷紙まで適用した実績により確認されており, カンバスの汚れ防止は勿論のこと, 生産性や, 製品の品質向上にも有効であることがわかった。
  • 梅田 康, 渡部 繁雄, 高瀬 祐美子, 片山 正治
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1174-1178,053
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    重質炭酸カルシウムは塗工液流動性の改善および原料コストの低減などを目的として塗工液中に配合されており, 生産性向上や品質向上を目的とした塗工液の高濃度化および塗工速度の高速化の動きに伴い, その使用量は現在においても急速に伸びている。
    過去に, 塗工液に配合される重質炭酸カルシウムの微粒除去を施すと光沢度や不透明度などの特性が向上するものの, 塗工液流動性が若干低下するとの報告がなされている。塗工液流動性は高速塗工適性および塗料の高濃度化に関する重要な因子であるため, 我々は塗工紙物性の向上とともに塗工液流動性の改良を図るべく, 別の観点から重質炭酸カルシウムの微粒除去の検討を行った。その結果, 新しく開発した重質炭酸カルシウムスラリーを用いる事により, バインダー量が同じ場合において塗工液流動性の向上効果が見られた。また, 同じ塗膜強度においても塗工液中へのバインダー添加量を低減させることが可能となり, 白色度・不透明度・透気度・白紙光沢・印刷光沢などの塗工紙適性が向上することが分かった。
    これらの結果からは, 塗工紙の品質向上のほか, 高速塗工に適した塗工液の調成, オフセット輪転印刷時における作業性や塗工時の乾燥効率向上, バインダー添加量低減による塗工液コストの削減などの効果が期待できる。
  • 潤滑剤の役割と高性能化
    竹下 和宏
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1179-1185,053
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    塗工紙製造の操業性や塗工紙の品質向上を目的として, 塗工液には分散剤, 消泡剤, 潤滑剤, 耐水化剤, 保水・流動性改良剤などの各種の添加剤が配合されている。これらの添加剤のうち潤滑剤は, 塗工紙製造時のカレンダー, ドラムドライヤーなどのダスティング防止やキャストドラムから塗工紙の離型性向上を目的に使われる。その他印刷時のダスティング防止, 紙の摩擦低減, 紙のブロッキング防止, 平滑性や光沢の向上の目的でも使用される。また非塗工紙においても, 潤滑剤を表面サイズ液に添加し塗工することにより摩擦係数の調整を目的に使用される。
    塗工紙用の潤滑剤としては, 金属石鹸系, ポリエチレン, エステル系, パラフィンワックス系およびポリグリコール系などがある。これらのうち従来は, 弊社が30年前に日本に導入したステアリン酸カルシウム分散液が主として使用されている。しかし近年, グラビア印刷用塗工紙のダスティング防止効果の向上, キャストコート紙製造の高速化や連続操業時間の延長, ソフトニップカレンダーによるカレンダー温度の高温化への対応, あるいはコストダウンのための使用量の低減などの要望が高くなっている。これらの対応として, より潤滑・離型効果の高い, 高性能の潤滑剤の開発と置き換えが進んでいる。
    本文は, 潤滑剤の役割, 作用機構および弊社で開発してきた高性能の潤滑剤について紹介する。
  • 宮西 孝則
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1186-1196,054
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    埋め立て地が不足するという危機感から, 米国では1990年前後に多くの外販古紙パルプ工場が建設された。しかし, 抄紙機で粘着物トラブルが発生したこと, 消費者が古紙パルプを配合した紙を高い価格で購入しなかったこと, バージルパルプの価格が低下したこと, 外販古紙パルプが過剰になったことなどにより, 古紙パルプの価格が低下し, 工場の倒産が続き, 紙, 板紙への古紙配合率は低迷している。一方, 高品質DIPを生産するためにますます機器の数は増え, DIPプラントは複雑になってきた。デスパージョン, ニーダー, フローテーション, 漂白は多段になり, 設備, 保守, 運転エネルギーの費用が増加している。技術論文の多くは理論ではなく, トライアンドエラーの経験に基づいて書かれており, 機器を増やす傾向がある。そこで機械設備だけでなく, 界面化学の観点から, 白水中のインクと粘着物の挙動についての基礎的な理解が求められている。DIP工程から抄紙機ウエットエンドへのアニオントラッシュのキャリーオーバーを防ぎ, DIP工程とウエットエンドにおいて界面化学の観点から最適な処方を行うことが肝要である。
  • 太田 節三
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1197
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • スパッタエッチングによる紙の微細な粗面化とその光学的利用 (第3報)
    福井 里司, 山内 龍男
    1999 年 53 巻 9 号 p. 1198-1202,054
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    直接染料で赤色に染めたパルプ繊維から手抄きシートを作製し, それを種々の条件でスパッタリングして, 濃色化とその条件との関係を検討した。色の変化はL*a*b*表色系により明度差 (ΔL*), クロマ差 (ΔC*ab), 色相差 (ΔH*ab) それぞれ別個に検討した。これら表色系のパラメータはいずれもスパッタリング条件, とくにガス圧力とスパッタリング仕事量により大きく変化する。明度差に及ぼすスパッタリング処理の影響をガス圧力で大別すると, 圧力10Paでは仕事量約20J/cm2で明度差は極小値約-1を示した後仕事量の増加とともに次第に正に転じ, 一方ガス圧力1Pa以下でのスパッタリングでは仕事量の増加とともに負の明度差は増大する。クロマ差に及ぼすスパッタング処理の影響は, ガス圧力100Pa以外では仕事量にかかわらず正の値を示すが, 圧力10Paでは仕事量約20J/cm2で最大値+3を, ガス圧力1Paでは仕事量約50J/cm2で最大値+2.5を与える。色相差に及ぼすスパッタリング処理の影響はガス圧力10,100Paでは仕事量にかかわらず極くわずかの値であるが, ガス圧力1Pa以下では仕事量の増加とともに増大し仕事量240J/cm2で約+3を与える。以上のようにスパッタリング処理による有彩色染色紙の濃色化 (負の明度差および正のクロマ差を与える) 傾向は大略無彩色染色紙と同様であり, スパッタリングにより生じる繊維表面の微細構造がもたらす濃色化と, 一方染料に富むと考えられるパルプ繊維表面層の削除および熱変性に基づく淡色化の相反する作用に左右されていると考えられる。有彩色染色紙において負の明度差と正のクロマ差が同時にかつ最も大きく生じて, さらに色相差がほとんど無い最適な濃色化条件はガス圧力10Pa, スパッタリング仕事量20J/cm2程度と考えられる。
  • 1999 年 53 巻 9 号 p. 1227
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
feedback
Top