第2報において, 熱による紙層構造変化の検討を目的として, 熱による巻紙の熱的変化を計測するシステムを用いて, 加熱処理巻紙の紙層構造および, 細孔比表面積を測定した。
その結果, 巻紙の加熱処理に伴う脱水や残留応力によりネットワーク構造が変化し, バルブの熱分解に伴う繊維の収縮により紙層構造が変化すること, 特にパルプの熱分解が著しい270-350℃ の範囲における紙層構造の変化が著しいことが明らかになった。
熱分解に伴う巻紙物性や紙層構造の変化は, 熱による巻紙の収縮挙動として現れることが予測され, シガレット用巻紙の開発においても, 熱による巻紙の収縮挙動の把握は重要と考えられる。また, 加熱による巻紙の変形は, 表面性状の変化として現れることも予測される。
そこで, 本研究では熱による巻紙の熱的変化を計測するシステムに, 熱機械特性 (Thermomechanicalanalysis: TMA) を導入し, 熱重量測定 (Thermogravimetry: TG), 示差熱分析 (Differential thermalanalysis: DTA) の熱分析測定結果を併せて検討を行い, 併せて, 加熱処理を行った巻紙表面を観察した。さらに, 製品シガレット用巻紙に塗布される有機酸塩が, 巻紙の熱収縮挙動に与える影響についても検討を行った。
以上の検討より次に示す結果を得た。
巻紙は常温から100℃ の範囲で加熱温度の上昇に伴い収縮し, 200℃ から300℃ の範囲で膨張し, 300℃ 以上の温度で急激に収縮する。
巻紙の有機酸塩塗布量の増加に伴い, 300℃ 付近のTMAの収縮開始温度は低下し, 収縮の変化が緩やかになる。また, 320℃ における収縮率は, 有機酸塩塗布量4.2%までは増加し, 8.3%では低下する。巻紙の加熱に伴い, 巻紙の表面は320℃ 付近で外部フィブリルの変質と繊維間空隙の増加が開始し, さらに高い温度領域で, 繊維の幅方向の収縮と, 繊維間の空隙の増加と繊維表面やフィブリルの著しい分解が生じる。
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