紙パ技協誌
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55 巻, 8 号
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  • 飯塚 堯介
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1049-1054,029
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    パルブ製造にとって, 如何にしてより高い収率で十分な品質のパルブを得ることが出来るかが最大の課題であり, そのために各種の蒸解法に関する研究がなされているといえる。パルプ収率およびその品質は, 蒸解過程における脱リグニン反応とセルロースを中心とした多糖の崩壊・溶出に関する反応の間の反応選択性に依存しているが, それには極めて多様な条件が複雑に影響していることは周知のとおりである。本文においてはパルブ収率向上のための方策を考えるための手立てとして, 蒸解過程における木材主成分の挙動を, 原料の性状, 蒸解条件あるいは脱リグニン助剤との関係で総合的に考察した。
  • 宮西 孝則
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1055-1063,029
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    機械パルブは, 化学パルブに比較して収率が高いことから高収率パルブとも呼ばれている。レファイナーバルブ (RMP, TMP, CTMP) の品質は, 樹種, 温度, 圧力, 薬品添加率などによって大きく異なり, 用途に応じたテーラーメードのパルプを生産できる。
    過去5年間のTMPのレファイニング技術開発は, 低濾水度のパルブ製造時における消費電力の低減に焦点が当てられている。RTS法は一次レファイナーを高速操業することによりレファイニング強度を高め, 消費電力を低減する製造方法であり, 薬液含浸及びレファイニング前にチップを150-155℃で10-18秒間予熱を行うことによりパルプ強度を維持している。RTS法は2工場で採用されている。サーモバルブ化法は二次レファイニング時に160-165℃ で5-10秒間加熱することにより省電力化を図る製造方法で, 新聞用紙を製造する7工場で稼働している。
    BCTMPはCTMPを漂白したパルブである。温和な条件で薬品処理をした後にレファイニングと漂白を行い, 高収率 (85%以上) で高白色度 (針葉樹が80% ISO以上, 広葉樹が85% ISO以上) のパルブと定義される。広葉樹BCTMPの伸びは, 特にヨーロッパとアジアで印刷用紙, 筆記用紙に使用されるようになったことに起因している。
  • 岩崎 誠
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1064-1079,030
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    漂白工程をECF化することに直面している我国にとって, 漂白排水を回収工程に回収するクローズド化は, 塩素を用いる現行の漂白法よりも現実味がある技術となってきた。すでにECF化に踏み切っている北欧でも, 官民がプロジェクトを作って, 完全なクローズド化のフィージビリティースタディーを行っている。また, 独自に工場規模でテストを行っている工場もある。ここでは, 我国の漂白排水に関するデータを示した後, 先駆的にクローズド化を手がけたラプソン・リーブ法を簡単にレビューし, クローズド化の際の問題点, 現状のクローズド化に用いられる技術について言及し, さらに, クローズド化を実際に行っている工場の紹介し, 最後に我国でのクローズド化の予測も述べる。
  • 西田 友昭
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1080-1091,030
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    リグニンを高度にかつ選択的に分解しうる白色腐朽菌 (IZU-154株) を自然界から分離し, 本菌株のリグニン分解能力をメカニカルパルブの製造とクラフトパルブ漂白へ適用した。メカニカルパルブ製造プロセスにIZU-154株処理を組み入れるバイオメカニカルパルピングでは, 菌処理を行わない従来法に比べ, リファイニングエネルギーが広葉樹で約2/3, 針葉樹で約1/3低減し, パルプ強度も向上することを見いだした。
    次いで, 未晒クラフトパルブの漂白に用いられる塩素系薬品量の低減を目的として, 本菌株によるバルブ漂白 (バイオブリーチング) を検討し, 従来の塩素系多段漂白法と比べ全晒パルプを得るに必要な有効塩素量を70%以上, 廃水汚濁負荷をCODで50%, 色度で80%低減しうることを明らかとした。さらには, 白色腐朽菌によるバイオブリーチング (脱リグニン) にマンガンペルオキシダーゼ (MnP) が最も重要な役割を果たしていたことから, 広葉樹クラフトパルプのMnP繰り返し処理を試み, 全晒パルブを得るに必要な有効塩素量を70%低減しうることも実証した。
  • 田口 徹
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1092-1099,031
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    水質および大気の環境汚染を複合的に防止することを意図するクラスタールールは, 紙パルプ産業に関して, その第1段が1993年12月に原案が提示され, 1998年4月15日にFinal RuleとしてFederal-Register上に告示された。その内容は, 設備については既存か新設か, 排水放流は河川などに直接か公共の下水処理施設経由か, 対象物質は従来規制項目 (BoD, TSS, pH) だけか, 今回新たに設定された物質 (2, 3, 7, 8ダイオキシン等) を含むか, 測定場所はin-plantかend-of-pipeかなど詳細に亘っている。
    個々の工場における対策の実現を可能とする技術について, 大気にはMACTが, 水質にはBATが提唱されている。更に, 水質では高度の環境対策の普及を目指して, 自主的により進んだ操業技術の導入を図る事も業界に求めている。
    今回の規制対象分野は製紙用化学パルプ (KP, SP, SodaPulP) 中心であったが, 今後, 同様の規制が他の分野についても拡大されることになっている。但し, 現時点ではその時期については明らかになっていない。
  • 鋪迫 典久
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1100-1109,031
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    紙パルプ工場からの排水量は多く, それゆえその環境に与える影響を正確に把握することは重要である。しかし現行の法規制は有機物含量 (COD, BOD) によるものであり, 必ずしも実際の排水の環境影響を反映しているとは限らない。
    諸外国においては, すでに排水の環境影響評価にバイオアッセイが用いられており, 近い将来日本もバイオアッセイが導入されると考えられる。各国で用いられているバイオアッセイの種類は似通っており, 多少の条件の違いがあるものの, 魚, ミジンコ, 緑藻を用いた亜急性毒性試験が主流である。
    バイオアッセイは排水のモニタリングに使われるばかりではなく, 排水の毒性同定評価 (TIE) や, 毒性削減評価 (TRE) にも効果的である。TIE/TREの手法を上手に活用することにより, 環境への影響をより削減できることが期待される。
    環境中に排水を出さないシステムが最も理想的ではあるが, すぐには実現が難しそうである。そこでリスクと利益のバランスを考慮しながら, 持続的発展が可能な社会を構築していくべきであると考えられる。
  • パレオログ マイケル, 泥谷 直大
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1110-1128,032
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    紙の購入基準, 環境規制, 及び経済諸要素は益々, 少ない排水量で排水を循環利用するクローズドサイクル紙パルプ工場への前進を重視する方向にある。顧客の満足, 利用資源の節約, 水資源がない地域への工場立地の可能, 今後予想される排水規制強化によるコストアップの回避等は, クローズドサイクル操業によって得られるメリットの例である。システムクローズ化への前進は, 排水を更に減少させ, 環境保護コストを減少させるための手段の一つとして, カナダにおいて支持を得つつある。
    本稿は, カナダの紙パルプ工場におけるシステムクローズ化に対する過去及び現在の取組の状況を要約提供している。またそれは, Papricanのシステムクローズ化法開発計画における, 次の分野での研究開発活動の若干のハイライトについて述べている。即ち用水量の減少, 予測と設計のためのツールの改善, 動力学と制御, 腐食防止, 化学的な分離と再生, 木材抽出成分の除去または抑制, 添加剤, エネルギーコスト低減, 固形廃棄物及びガス排出の抑制の各分野である。
  • エステプロセス
    長谷川 進
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1129-1135,032
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    現在, 家庭などから排出される下廃水は, 主に細菌などの微生物を利用した生物学的処理法で処理されている。この方法は, 確実に良好な処理水質が得られるため最良の方法といえるが, 余剰汚泥を発生するという欠点がある。著者らは, 好熱性細菌の作用で余剰汚泥を可溶化処理することにより余剰汚泥の発生を大幅に削減できる技術を開発した。使用する汚泥可溶化好熱性細菌は60-70℃ の高温条件で生育するもので, 体外に汚泥を可溶化する酵素を分泌して余剰汚泥の生物細胞を可溶化する。可溶化された汚泥は, 既存の活性汚泥曝気槽に戻され, 通常の活性汚泥微生物群により無機化される。人工廃水を用いたペンチスケールテストの結果, 従来発生していた余剰汚泥量の約3倍量の汚泥を可溶化処理し, 曝気槽に返送して無機化することにより, 余剰汚泥の発生量が大幅に削減され, 最終的には, 余剰汚泥の引抜をしない運転が可能であった。さらに, 石油化学工場における1年間にわたるパイロットスケールテストにおいても余剰汚泥の引抜をしない運転を実証した。本法は, 生物の作用で汚泥を減量するため, 運転経費は従来の脱水, 搬出に要した経費に比べて半分程度に低減される。また, 好熱性細菌を培養するための温度制御を除いては特別な維持管理を要しないため, 廃水処理設備の運転管理経験者であれば容易に維持管理が可能である。
  • ソルベントレス系シリコーンの技術動向
    長田 正
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1136-1141,033
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    剥離紙用シリコーンとしては, 今まで有機溶剤を使用したソルベント系が使用されてきたが, 環境問題に関する意識の高まりの中で, 溶剤を全く使わないソルベントレス系が使用され始めており, 既に欧米では80%以上がソルベントレス系となっている。一方, 剥離紙に対する要求品質が厳しく多様である日本では, ソルベントレス化に取り組まれているものの, 現時点ではまだ70%以上がソルベント系のままである。
    このような状況下で, 当社は, 日本の市場に適合したソルベントレスシリコーンを開発し環境改善に寄与するべく,(仏) ローディア社と協力し, 溶剤を使用しない熱架橋型, UV硬化型それぞれのシリコーンで個々のユーザーニーズにマッチした新しいソルベントレス系シリコーン処方の開発, 使用方法の改良を行っている。本報では, その開発状況につき概説する。
    先ず, シリコーン硬化塗膜の性状と剥離紙の最も重要な性能である剥離力との関係を明らかにし, 次いで, 熱架橋型シリコーンのマルチコンポーネントシステムでの処方において, 剥離力をいかにコントロールするかという点について基本的な考え方を説明する。また, こうして組み立てた剥離紙用シリコーンの性能を最大限に活かすことを目的に開発したオンサイトでのシリコーン供給装置「シリコリースマシン」について, その特長などを述べる。
  • 鈴木 孝典
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1142-1150,033
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    ステンレス繊維およびポリテトラフルオロエチレン (PTFE) 繊維を用いて湿式抄造法でシート化し, さらに焼結して100%のステンレス繊維シートおよびPTFE繊維/ガラス繊維混抄シートを開発した。この2つの多孔質シートの応用として, 高周波数に対応した電子材料への商品化の例を紹介する。
    まず, ステンレス繊維シートは, 電磁波シールド材に応用した。本シートは, 電磁波シールドなど電気特性だけでなく, 薄さ, しなやかさなど優れた特長をもつ。そこで, 本シートに導電性・難燃性の接着剤を付け, ノートパソコンのFPCタイプのインターフェイスケーブルに組み込んだ例を取り上げた。
    また, PTFEは電気特性, 耐熱性, 耐薬品性, 難燃性, 化学的安定性などに優れた絶縁材料である。湿式抄造法による薄くて地合いが均一なPTFE/ガラス繊維混抄シートを開発した。ここでは, 絶縁基板の低誘電率化と薄葉化を目的に, 主にプリント基板芯材への応用例を述べる。本シートは, 従来のガラスクロスを芯材にしたものに比べて銅張り表面が平滑になり, 微細な回路に適した特徴がある。
  • 太田 節三
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1151
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 吸水剤の性質と構造
    肖 月華, 飯塚 尭介
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1154-1161,034
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    現在, 生理用品, 生活用品から農業用資材まで, 多様な種類の高吸水材に対する社会的要請は, 極めて大きなものがある。なかでも乾燥土壌, 劣悪土壌における農業生産性の回復, 緑化の推進のための高性能吸水材の開発は, 地球環境保全の観点からも焦眉の課題となっている。本研究では, 広葉樹漂白クラフトバルブを出発物質として, これをカルボキシメチル化したのち, エチレングリコール・ジ・グリシジルエーテルで架橋し, 生分解性を有する高性能吸水材の開発について検討を進めている。通常のセルロース系吸水材の保水量が自重量の100倍程度に留まっているのに対し, 本研究においては500倍以上の水を保持する能力を有するセルロース系吸水材の開発を目標とし, そのための基礎的知見として各種処理条件と保水性能との関係の解明に努めている。本報告では前報に引き続いて架橋反応条件と保水性との関係について明らかにするとともに, 架橋構造が保水性に及ぼす影響について検討した。直接的な架橋度の測定が困難なため, 架橋反応前後のカルボキシメチル基の置換度を一定として, カルボキシメチル基含有量から架橋剤の結合量を算出した。なお, カルボキシル基量測定法として原子吸光分析法 (Na+を測定), 銅沈殿法, 1H-NMR法について比較検討し, 原子吸光分析法が最も信頼性ある値を与えることを見出している。架橋剤結合量の増加とともに保水性が急速に失われることは, 反応の進行とともに架橋密度が急速に増大していることを示している。また, この結果は疎な架橋構造の形成が高い保水性の発現には不可欠であることを示している。
  • 松島 成夫, 矢野 忠, 松島 理
    2001 年 55 巻 8 号 p. 1162-1171,034
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    一様引張り変形荷重下における複両面段ボール異方性弾性変形表示の導出をおこなった。両面, 複両面段ボールの応力解析を議論し, 両面段ボールの各素材の応力についての異方性特性を明らかにした。
    複両面段ボールの中芯の応力分布は両面段ボールと同様になり, 応力の大きさは両面段ボールの6割程度である。両面, 複両面段ボール中芯CM1の流れ方向および横方向の垂直応力σax1およびσay1は中芯の波長L1の増加によって増加し, σay1はCM1の波高h1によって増加する。また, ジュートライナーKL1の厚さTk1の増加によって, 垂直応力σkx1, σkx2, σkx0 (中央のライナー) は減少する。σkx1およびσkx2はKLの流れ方向および横方向の縦弾性係数の増加によって増加する。
  • 2001 年 55 巻 8 号 p. 1172-1177
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 2001 年 55 巻 8 号 p. 1178-1181
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
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