焼却前のPSに約50%含まれる有機物 (セルロース) に着目し, 有機物の炭化とゼオライト合成を行った。炭化物の共存が, PSを構成するカオリナイトのゼオライト合成に与える影響を検討するために, 試薬の活性炭とメタカオリナイト及びゼオライトAについて, ブレンド及び混合合成を行い, 合成前後における鉱物組み合わせ, BET比表面積, 細孔分布パターンの変化を詳細に検討した。この結果をもとに, 炭化PSを構成するメタカオリナイトからゼオライトAへの生成条件について, 固/液比, アルカリ濃度及び反応時間の関係を整理し, 炭化PSを原料とする炭素一無機複合体 (炭化PSゼオライト) の可能性について検討した。
その結果, 以下の結論が得られた。(1) 大気雰囲気下でのPSの炭化焼成は, 有機物の部分的な燃焼に伴ない二酸化炭素分圧が上昇するため, カルサイトの分解を阻害すると推定される。このため, 反応性の高いCaOの生成を抑制することから, ゼオライト合成にとって有利な焼成方法である。(2) メタカオリナイトと活性炭の混合合成結果と, PSの灰化物及び炭化物のアルカリ水熱合成結果から, 炭化物の共存はゼオライト生成に影響を与えない。(3) 炭化PSを構成する炭化物は, アルカリ水熱合成により腑活化される、今回の実験からは, 比表面積が約4倍に増加した。(4) 炭化PSのアルカリ水熱合成では, メタカオリナイトのみの合成に比べてゼオライトAの生成速度が速く, 細粒のゼオライトが生成する。(5) 炭化PSのアルカリ水熱合成において, NaOH濃度, 固/液比, 反応時間をコントロールすれば, 比表面積がコントロール可能な炭素一無機複合体 (炭化PSゼオライト) が合成できる。(6) 炭化PSゼオライトは, 炭化物表面を鋳型として細粒のゼオライトが結晶化した組織を有することから, 吸着剤としての用途が有望である。
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