スポンジ状担体を用いた流動床型生物膜処理法は高いBOD負荷で処理が可能であり,活性汚泥法で問題となる微生物のウォッシュアウトがなく,また,固定床の生物膜法で問題となる閉塞が生じないなど維持管理も容易である。本法を製紙工場排水処理に適用することを目的として,パイロットプラントよる現地実験を行った。また,既設排水処理設備の一部を本法に改造し,実設備の性能調査を行った。
パイロットプラント実験の結果,COD容積負荷4kg/(m
3・d)以下の条件でS―COD除去率65%以上,BOD容積負荷3.5kg/(m
3・d)以下の条件でS―BOD除去率90%以上という高い除去成績が得られた。また,流動床型生物膜処理水を対象に凝集沈殿処理試験を行った結果,硫酸バンド添加量200mg/L,凝集pH=6.0,アニオンポリマー添加量1mg/Lの条件でCOD成分は約80%除去され,処理水CODは約20mg/Lまで低減できた。流動床型生物膜処理と凝集沈殿処理を組み合わせることにより,SS性のCODも含めた処理が可能であることが明らかとなった。
実設備における性能は,S―COD容積負荷2kg/(m
3・d)以下でS―COD除去率70%以上,3kg/(m
3・d)付近で約60%であった。また,S―BOD除去率はS―COD容積負荷2.5kg/(m
3・d)付近まで90%以上であり,高い除去率を示した。設計の条件はS―COD容積負荷2.5kg/(m
3・d)以下でS―COD除去率60%であり,設計の性能を十分満足する結果が得られた。
以上のように,スポンジ状担体を用いた流動床型生物膜処理法は製紙工場排水処理において高負荷処理が可能であり,また,既設の躯体設備を利用して能力増強が可能である。
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