紙パ技協誌
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59 巻, 7 号
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パルプ特集
  • 井上 敏雄
    2005 年 59 巻 7 号 p. 947-948
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
  • 高〓 晴夫
    2005 年 59 巻 7 号 p. 949-962
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    日本に於ける古紙の回収と利用はここ数年需給両業界の努力に伴って急速に伸び, 2005年度古紙利用率目標60%は2003年度に前倒しで達成された。
    特に古紙回収量についてはゴミ減対策としての事業系ゴミの有料化並びに「循環型社会形成推進基本法」の制定などにより更に増加し, 2000年には古紙利用率を上回り, 海外への古紙輸出が増大してきている。2001年以降古紙輸出量が紙・板紙を上回る量となり古紙もグローバル商品となってきた。
    反面, 回収量拡大, 輸出量増大に伴う日本に於ける古紙需給と古紙価格の問題, 古紙品質の問題, そして2005年度以降の古紙利用率向上目標等, 現在抱える課題も多い。
    これらの点につき現状を紹介し, これからの紙リサイクル向上のあり方につき述べたい。
  • ―(社)日本印刷産業連合会「リサイクル対応型紙製商品開発促進事業」―
    渡辺 篤史, 杉野 光広
    2005 年 59 巻 7 号 p. 963-978
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    「リサイクル対応型紙製商品開発促進事業」において, 従来古紙のリサイクルを阻害する資材とされてきた「金・銀・パールインキ, UVインキ, 光沢加工, PP貼り表面加工紙」のリサイクル適性を調査した。平成14年度は, ラボによるリサイクル適性試験を行い, その結果を基に, 平成15年度はパイロットプラントで試験を実施して, 洋紙向け古紙としてのリサイクル適性を評価するとともに, 実機使用に向けた今後の展開についての提言を行った。
    調査対象資材として, オフセット金・銀・パールインキ, グラビア金インキ, 金箔, 近年リサイクル適性を改善したと言われるハイブリッド型UVインキ2種類 (UV完全硬化型, 酸化重合とのハイブリッド型), 光沢加工として, UVコート (2種類) とPP貼り表面加工紙の計10資材を選定した
    調査の結果, パールインキ, オフセット金・銀, UVハイブリッド型2種類ともリサイクル適性があると判断し, リサイクルを阻害しない資材であることが判明した。一方, 金箔, グラビア金インキ, UVコートについては粗大インキが残留すること, PP貼り加工紙では細片化したフォルム片が多数残留するため, リサイクル適性はなしと判断した。
    今後, 今回の調査によりリサイクル適性があると判断した資材の普及を推進するため, 1) 調査結果の各基準への反映, 2) リサイクル対応型紙製商品のマーク表示等の整備, 3) 製紙メーカーの設備対応への公的支援, 4) 官民一体となった普及啓発活動の実施, に取り組む必要がある。
  • リンネ・ ユッカ, シレニ・ ミルカ, 竹下 陽介
    2005 年 59 巻 7 号 p. 979-984
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    アンドリッツの新しいModuScreen™ Aは, まったく新しいコンセプトのもとに紙パルプ産業用として開発されたスクリーンシリーズである。もちろん, このModuScreen™ Aはアンドリッツの1950年代から納入した数千台にも上る実績に基づき設計され 高い信頼性をもったスクリーンである。
    このアンドリッツModuScreen™ Aシリーズは, 多くの新しいアイデアを用いて開発された。特に流体力学的要求をハウジングの形状及びローターの形状に取り入れ, 最高の精選効率を安定した運転下で得られることを目的として設計した。
    ModuScreen™ A加圧スクリーンシリーズはスクリーンバスケット比 (スロット幅及びバープロファイル, スクリーンバスケットの内径高さ比率) 及びローター (フォイルもしくはシリンダー型) が正確に正しい組み合わせで設計されており, DIPの精選スクリーンからクラフトパルプスクリーンまでの広い原料範囲に使用することが可能なスクリーンシリーズである。
  • 古紙パルプの最新異物除去技術について (Loop 1)
    江口 正和
    2005 年 59 巻 7 号 p. 985-992
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    古紙リサイクル率の目標を上回る進捗は原料の低級化を招き, 一方, 環境負荷軽減対策や製品の高品質化の目標は, 年々厳しくなり古紙原料の異物除去技術は, 従来技術では対応しきれなくなっている。
    特に, DIPは白さ, 色相, 不透明性, 紙力や高速抄紙, 高速印刷性等, 様々な品質要求があるため古紙処理システムの中で最も工程が長く複雑になる。工程が進むに連れこれらの除去は困難となり, 一方では白色度・明度が上昇して行くため微量微小であっても目立ち始める。
    異物除去=見栄え, きれいさの追求は, 機器単体の性能追求だけではなく, 他のサブシステムとの組み合わせを踏まえたトータルシステムとしてエンジニアリングされなければならない。
    DIP中の異物で最も厄介な粘着異物に着目し, Loop 1内のパルパとスクリーンに関する新しいコンセプトと実施例を紹介する。
  • 金澤 毅
    2005 年 59 巻 7 号 p. 993-1005
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    粘着物は板紙, 洋紙脱墨, 家庭紙を問わず, 古紙処理に共通した問題であり, 最も重要な課題の一つである。最高の粘着除去のためには, 種々のSeparation技術を適切に組み合わせることが必要となる。とくに, パルピング, スクリーンニング, ディスパージョン, フローテーションなどの “Separation” 技術やウエットエンドでの脱気などの技術を適切に組み合わせることが必要となる。本稿ではこれらに関連した最新の技術と設備についてご紹介する。
  • 若月 亮
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1006-1013
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    日本の製紙業界では, 2005年の古紙リサイクル率の目標を60%とし, 目標達成に努力してきた。
    目標を達成するためには, 低級古紙の利用は避けられず, 一方脱墨パルプの品質はより高品質化している。低級古紙の高度利用しパルプ品質を維持するために, 夾雑物を除去, そして古紙の選別を実施・強化している。
    このような状況下, 紙・板紙の製造現場では原料古紙中にUVインキが印刷された古紙 (UV古紙) か多量に混入するケースが増加している。従来の油性インキで印刷された古紙に比べUV古紙は脱インキ性が劣るため, DIPの原料古紙中に多量に混入した場合には大きなトラブルを生じている。しかし, 実際には。UVインキの混入量については正確な把握が困難であり, 混入量も大幅に変動している模様で画一した対応が図れていない。
    対策としては, 原料段での選別を強化するか, 混入した場合は調成段における叩解を高め粗大なインキ粒子を微細化するなどの対策を講じおり, DIPの製造現場からはUV古紙に対し優れた脱インキ性を持った脱墨剤の開発要求が高まりつつある。
    我々はUV古紙に有用な脱墨剤の探査を行い, 従来の脱墨剤の疎水基部分に特異な構造を導入することによりUV古紙の脱インキ性が大きく改善されることを見出した。
    本報では, 検討の過程で得られた知見とUV古紙から高品質な脱墨パルプを得るための脱墨剤について報告する。
  • 田中 多加志
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1014-1021
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    近年, 古紙再生技術は, パルパー, ファイバーフローなどの離解機, フィルターなど精選機, ディスパーザー, フローテーター, など設備面での進歩には目を見張るものがある。また, 各製紙工場では, これらの設備をより効率よく使うことに努力しており, 古紙の再生技術はめまぐるしく進歩している。
    古紙再生薬剤のメーカーとして弊社は, 設備面の進歩に併せて, 開発, 改良を行い細かい技術を提供することで, 各製紙工場に対応してきた。今後もさらなる努力が必要である。
    現在, 環境問題, パルプの不足, 高騰の懸念から, さらに古紙の利用率を上げる努力がされている。しかしながら, 最近の古紙事情は極めて厳しく, 古紙の供給に不安がある。そのため, 雑誌古紙などの再生に支障をきたす恐れのある古紙を原料として使用するケースが増加している。このような古紙の対応には, 極めて浸透性が高く, 離解性, ピッチ分散性の良好な脱墨剤が必要である。この問題に対応するため, 起泡作用, 浸透作用, 凝集作用 (吸着作用) など, 活性剤の作用をハイブリッド化することが有効な手段と考えられる。今回この脱墨剤について報告する。
    さらに, インクなどの再付着防止, ピッチ凝集の抑制, 及び温度の変化など操業状況の変化による, 脱墨剤の活性剤としての機能への影響を緩和する効果を有する特殊なアニオン活性剤を開発するに至った。この脱墨助剤について報告する。
    一般に, 古紙再生における過酸化水素漂白において, 過酸化水素安定剤として, 珪酸ソーダが使用されている。しかしながら, この珪酸ソーダは不溶化して堆積し, 漂白系内の設備汚れ, 配管の詰まり, 製品の異物付着など珪酸塩障害を発生させる。このような問題のない非珪酸系過酸化水素安定剤として特殊高分子化合物を使用することにより, 珪酸ソーダ以上に過酸化水素の安定効果が得られ, 漂白効果を向上し, 白色度の高い再生古紙が得られる。この非珪酸系過酸化水素安定剤についても報告する。
  • 池田 康司
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1022-1028
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    古紙のリサイクルは従来から行われているが, 近年環境保全・資源保護に対する意識の高まりもあり, さらなる古紙利用率の向上が期待される。紙向け古紙原料は主として新聞古紙が利用されてきたが数量面での限界もあり低級古紙の利用が望まれる。低級古紙は安価であるため経済性に優れ, 利用量増大は資源保護の点でも大いに貢献する。しかし低級古紙を利用するには解決しなければならない課題も多い。本稿では低級古紙として雑誌古紙を取り上げる。
    雑誌古紙を利用するには脱墨処理を施すことはいうまでもないが, 避けて通れない課題に粘着物問題が挙げられる。筆者等はまず粘着物発生のメカニズムについて検討し, 次いで粘着物除去のコンセプトを考えた。粘着物はその挙動によりマクロ粘着物とミクロ粘着物に分類することができる。
    実操業で問題を起こすのはマクロ粘着物であるが, ミクロ粘着物が集塊化してマクロ粘着物になることからミクロ粘着物をいかに除去するかが重要であることがわかった。粘着物は古紙由来成分が多いので抄紙工程ではなく脱墨工程での除去が効率的であると考えた。
    具体的にはインキ排出工程であるフローテーション工程に着目した。フローテーション工程では粘着物を気泡にいかに効率よく付着させるかが鍵となる。そこで界面科学現象を利用しミクロ粘着物の表面を改質し, 粘着物同士の凝集及び粘着物と気泡とのアフィニティーを高めることを試みた。その結果, 本コンセプトで粘着物を効率よく排出できる可能性を確認した。
  • 中野 忠
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1029-1035
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    印刷市場も2000年辺りから環境に関する「基準」が整い始め, その代表として
    ・日印産連 (日本印刷産業連合会) : 「グリーン基準」
    ・グリーン購入ネットワーク (GPN) : 「オフセット印刷サービスガイドライン」
    ・日本環境協会エコマーク事務局 : 「紙製印刷物のエコマーク Ver 2.0」
    があり, クライアントや印刷会社からも判断基準が分かり易く, 徐々に普及し始めている。
    各基準とも「グリーン原則」として以下の5項目を挙げている。
    (1) 体に危害を及ぼす物質を使用していない
    (2) 塩素系樹脂を使用していない
    (3) PRTR指定物質を考慮している
    (4) VOC発生を抑制している
    (5) 古紙再生阻害要因の改善に配慮している
    特に(4) についてはインキの開発・設計に大きく関係しており, 近年の「環境対応設計」は「VOC対応」と言っても過言ではない。
    VOC (Volatile Organic Compounds) とは揮発性有機化合物の略語で, オフセットインキの組成では「石油系溶剤」がこれに該当する。溶剤の種類もそのスペックから様々であるが, 含有量を抑えるばかりでなく, できるだけ環境にやさしい種類を使用するような内容となっている。
    特に「エコマーク」に関しては02年に改定され, 溶剤の種類や含有量まで基準値を設けた厳しいものとなっている。
    インキ業界としては1995年に有害物質である芳香族成分を1%以下に抑えた「アロマフリー溶剤」を採用し, 98年には植物油として大豆油を使用した「大豆油インキ」が開発された。大豆油インキは単に大豆油を使用しているというだけでなく, 含有量の基準値 (例 : 枚葉インキは20%以上) を設ける事で, 石油系溶剤の含有を抑えるという効果により「やさしさ」を表している。
    現在究極の環境対応は「NonVOCインキ」であり, VOC成分の石油系溶剤を全く含まないインキである。しかし, 従来の「溶剤を含むインキ」に比べ, 印刷適正 (乾燥性等) が追い付いていないのが現状で, 今後の課題となっている。
  • 山下 宏
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1036-1041
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    国内の古紙利用率が着実に上昇するなか, 近年, 八戸工場においても古紙パルプの使用量は増加し, その重要性が増しつつある。一方, 古紙パルプ製造工程では生産量の増加にともない夾雑物とくに粘着異物に起因するトラブルが増え, 時には生産を阻害するようになっていた。古紙パルプの利用拡大, 生産確保の観点から夾雑物の除去技術の確立が必要不可欠であった。
    粘着異物の効果的な除去にはその微細化をいかにして防止するかが鍵となる。われわれは離解条件を従来に比べ大幅に緩和することによって粘着異物の微細化の防止を進めた。この結果, スクリーンでの除去効率が高まり製品古紙パルプ中の粘着異物の個数を安定的に低いレベルに保つことができるようになった。また, スクリーンを通過した微細な粘着異物に関してはディスパーザーの機能を生かしさらに微細化を進めるた結果, 粘着異物の面積の減少を得ることができた。
    その他に白水中へ洗い流された粘着異物の除去など, 品質トラブルの撲滅にむけて日々取り組んでいる。
  •  
    角 幸嗣
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1042-1048
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    古紙回収率および中国への輸出量の増加に伴なう古紙品質の低下や, UVコートを始めとする印刷技術に伴なう異物の多様化により, 粘着物やインキ片によるダートトラブルが急増している。スクリーンやディスパーザーの技術進歩によりダートを選択的に除去する事が可能になったが, 未だ完全に除去することは困難である。
    ダートトラブルの解決を図るためには, ダートに関する認識を深め, 適切な対策を講じる必要がある。オンラインダート計は, 工程中のパルプスラリーを直接測定することができるため, ダートの常時監視と迅速な対応を可能にする装置である。日本製紙 石巻工場では, 3系列のDIP工程において, 段階的にオンラインダート計の導入を図り, ダート管理に活用している。
    本稿では, ダートに関する最近の動向とオンラインダート計を用いたダート管理について, 実例を交えて紹介する。
  • 野村 英幸
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1049-1053
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    1975年に稼働した関東工場 (勝田) は, 主に古紙原料 (DIP) を配合した白板紙を生産している。
    古紙処理工程については工場立ち上げより共に稼働しており, これまで品質改善, 多種原料処理, 増産などの諸課題を克服するため幾度に渡る設備改造を実施してきた。現在は2系列の古紙処理設備で抄造銘柄による仕込み古紙の変更, 処理量変更を実施し操業を行っている。近年では古紙の品質悪化, 消費者の低塵指向から古紙処理工程における除塵効率の改善が課題として挙げられ, 操業の中で改善・検討を行ってきた。しかし, 雑誌古紙に対する除塵能力が既存設備では限界であった事から, 2003年に粗選スクリーンの更新, 2004年には前段脱水機, 精選スクリーンの更新を行い夾雑物の減少に取り組んでいる。
    本報では, これらの改造による設備, 操業及び品質改善について報告する。
  • 永田 健二
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1054-1060
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    地球温暖化防止, 資源保護を背景としたリサイクル運動の高まり及びコスト低減対策から, 全国的に古紙の利用促進が図られてきた。特に昨今この傾向が強まり, 古紙需給バランスにも影響が及び古紙中の禁忌品を始めとする異物混入レベルも悪化してきた。
    中越パルプ工業, 二塚工場では新聞用紙を主に生産しており, これまでDIP配合率を年々高めてきたが, 前述のような状況下, ピッチトラブルによる抄紙機操業性の低下や, また稀に客先の新聞輪転機で粘着物による穴あきが発生するようになった。
    これらの問題を解決するため, チリに対する評価方法の見直しを進めながら, DIP製造工程の粗選, 精選スクリーンの強化, 軽異物クリーナーの増強等のこれまで取り組みを進めてきたDIPチリ低減・品質向上対策について紹介する。
  • 田中 泰斗
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1061-1065
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    2003年の古紙利用率は60.2%に達しており, 今後, 更なる利用率の向上を図るには, 洋紙への利用率拡大が必要である。これには, コストをかけずにDIP品質をバージンパルプ品質レベルにいかに近づけるかがポイントとなる。
    高品質化には, フローテーターの効率化が必要となるが, ここではロータリーミキシング方式のOKフローテーターについて説明する。このフローテーターは, 古紙やフロー全体の運転条件によって左右される様々なインキ粒径に対して, 安定した脱墨性能が得られる様, G/Lや散気管周速の運転レンジが広い点が特徴である。
研究報文
  • 韓 允熙, 柳澤 正弘, 江前 敏晴, 磯貝 明, 石井 忠
    2005 年 59 巻 7 号 p. 1067-1076
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    日本および韓国の伝統的手すき紙製造においては, 靱皮繊維の分散性を向上させるためなどを目的としてトロロアオイ, ノリウツギなどの根から水抽出して得られる粘質物をパルプ分散液中に添加する。この粘質物の化学構造および水溶液の物性等については, これまで多くの報告があるが依然として未解決な研究課題が多い。
    本研究では, 日本および韓国産のトロロアオイ, 日本産のノリウツギの根から水抽出した3種類の粘質物を化学分析し, それらの構造的差異の有無を検討した。中性糖および酸性糖分析の結果, 3種の粘質物中の多糖は明らかに異なった糖成分を含有していた。日本産トロロアオイおよびノリウツギの粘質物中の主要金属元素はナトリウムとカルシウム, 韓国産トロロアオイ粘質物中の主要金属成分はカリウムであるのが特徴的であった。また, オンラインメチル化法熱分解ガスクロマトグラフィーによって得られるピークパターンから, 3種の粘質物の区別が可能であった。
    多角度光散乱検出器を用いた溶質排除法クロマトグラフィー (SEC-MALS) を粘質物の0.1M塩化ナトリウム溶液に適用したところ, 粘質物中の多糖成分の分子量および溶液中での分子鎖コンフォメーションに関して3種の粘質物で差異が見られた。特に, 日本および韓国産トロロアオイの重量平均分子量は類似しており, 230万~250万であった。一方, 日本産トロロアオイとノリウツギは溶液中で類似したランダムコイル状分子鎖コンフォメーションを有していた。上記のように3種の粘質物で明瞭な差異が見られたが, 本研究で得られたこれらの粘質物の差異が, 全ての日本および韓国産のトロロアオイ, 日本産のノリウツギに適用可能かどうかはさらに検討する必要がある。
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