紙パ技協誌
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59 巻, 8 号
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総説・資料
  • 安藤 英次
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1123-1128
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    表面品質の向上と共に嵩の維持が求められる板紙分野ではヤンキードライヤが使用されている。しかしながら近年の生産性向上要求に対し, ヤンキードライヤはボトルネックとなっており代替できるカレンダ技術が求められている。ソフトカレンダは表面品質の要求を満足するものの, 嵩の面ではヤンキードライヤを代替できるレベルに至っていない。シューニップカレンダあるいはロングニップカレンダと呼ばれるカレンダは格段に広いニップを形成してニップの滞留時間を増やし, 紙への圧縮力を抑えて嵩を維持するカレンダ技術として注目されている。
    フォイト社はプレスパートで実績のあるニプコフレックスプレスの技術を使用したシューニップカレンダ, ニプコフレックスカレンダを開発し, その有効性について実証テストを行ってきた。そのテスト結果ではシューニップカレンダリングはより速い操業速度で嵩の維持, 表面品質の両面で従来のヤンキードライヤの品質を超える潜在性を有している。本項では従来技術との比較を通してシューカレンダリングの将来性と本年2月に稼働した実機の操業経験について紹介する。
  • ユンクビスト ボーヨハン, 紅谷 智明
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1129-1136
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    本報告は, BTG社が脱墨プラントで何が出来るかを示しており, 特に “フローテーターの最適化” に関係している。また, 同時にBTGが脱墨工程の改善に寄与している事を示し, 違った新聞紙製造及びパイロットプラントでテストをしている。
    脱墨プラントは違った工程の組み合わせで, 基本は回収原料より不要物質を区別する事と, 繊維の組成品質を高める事にある。プロセスの多くの工程は, 繊維の組成の為に必要な設備である。これらの要求は, 製造する紙のグレードより来ており, また古紙原料の混合具合で決められている。
    常にパルプ工程は, 回収原料の分解工程をデザインしる。この工程で, 適切な薬品により, 印刷インクを繊維より分離出来る。パルパー後に, 各種スクリーンとクリーニング工程があり, 不純物である金属, ガラス, 砂, 接着剤の不純物 (“粘着物”) を除去している。プロセスの次工程のフローテーターで, 実際の脱墨を行う。最終工程は, 白色度レベルを上げる漂白工程と, 繊維中の印刷インクを分解して分散させる工程及び, 不純物を粉砕して肉眼では見えない様にする。その他, リジェクトとスラッジ処理のサブーシステムもある。
  • 國岡 貞治
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1137-1142
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    近年のDIP配合率の増大と高白色化により, DIPにおける品質管理が製品品質を左右しかねない状況となり, 更なる厳しい管理が必要となってきた。そこでDIPの品質管理強化のため, ダートカウンタが開発され, 操業の目安として重要な位置を占めるようになった。
    ダートカウンタの試作段階では, 検査管の形状や検出の方法, 設置位置など検討された。採用した透過式光源では濃度の影響が大きく, 検出精度がパルプ地合に左右され, 又, パルプ流速とカメラのスキャンスピードの関係から, 検出精度の低下が確認された。パルプ濃度は, 1%前後であれば安定的な検査が行われる事を確認出来たが, 濃度が著しく低下するとパルプ繊維自身をチリとして検出してしまった。これらを踏まえてのメーカーへの改善依頼と同時に検査仕様の確定により, 現在のダートカウンタが完成された。
    ダートカウンタはDIPとBKPに合計7台設置されている。実操業でのトラブルも発生したが, 現在では, これらのトラブルも解消されている。又, 現場での操業データとの相関値も非常に高く, チリ検出に対しダートカウンタが有効である事が証明出来た。
    今では釧路工場にとって, ダートカウンタは無くてはならない計器であり, 操業の目安として非常に重要視されている。
  • ―トラブルフリーオペレーション―
    山崎 安彦
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1143-1148
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    軸受の損傷は, 軸受と密接に関わる要因により引き起こっている。「世界一の軸受ですら, 永続的に稼動することはないのであろうか?」それとも, 「軸受は永続的に稼動することができるのであろうか?」。何百ものアプリケーションを何十年にもわたって損傷分析を行ない, 軸受の製造工程や材料が進歩してきた。そして, 長い道のりを経てSKFの技術者達は驚くべき結論に到達した。「SKF軸受は, 最適な条件下で永続的に稼動すると言える程の性能や品質を十分に持ち合わせている。」このコンセプトを「新寿命理論 (New Life Theory)」と呼んでいる。
    工業で使用している軸受はしばしば交換を必要とするが, 軸受の寿命は一般に考えられているよりもはるかに長いものである。事実, 軸受の寿命に対し理想的な要素が全て揃った条件下では, 早期損傷や突然の損傷は理論的には起こりえないことである。SKFは, このような分析や経験を基に軸受を損傷させずに稼動させるためのプログラムを作成した。このプログラムを「Trouble-Free Operation™ (トラブルフリーオペレーション)」または「TFO™」と総称している。
  • ラグナー マーティン, 手塚 知行
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1149-1153
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    クラフトパルプ工場において環境保全に対応した操業を考慮した場合, 最も注目すべきところは漂白工程であることは周知の事実である。過去25年間の漂白技術に関して振り返ってみると, その技術開発には目覚しいものがあり, また, 今後も更なる進歩が実現されるものと考えられる。
    2003年春, クヴァナパルピングが開発した最新のファイバーラインが, 南米ブラジルRIPASA工場で操業を開始した。このファイバーラインには, 今日の最新技術すなわち高温二酸化塩素漂白 (DUALD™, D*), 加圧過酸化水素漂白 (OP), コンパクトプレス洗浄機―COMPACT PRESS™などが含まれており, 言わば今日の代表的な最新ファイバーラインであると言うことができる。一方, その基準で25年前の代表的な古いファイバーラインを評価すると, 環境保全及び操業効率の面で遅れているところがあると認めざるをえない。しかし, 継続的な投資を通じて, 最新技術に向かって一歩ずつ小刻みながらも改善のステップを積み重ねれば, Aracruz fiberlineAのように既存のファイバーラインを最新技術の特徴を有するものに改善することができる。
    本稿では, まず最新のファイバーライン技術を簡単に紹介し, 次にこの技術を参照しながら, 制限された予算内での小規模なプロセス改造の実施により, いかに既存のファイバーラインを環境に優しいプロセスへ改良させるか, その方法について考察する。
  • ―老朽排水管のスパイラル・ジェット洗浄, 管路のホースライニング工法など―
    望月 敏也, 浦 悟
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1154-1160
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    老朽化した給排水管, 特に製紙工場の排水管路は炭酸カルシュームや蓚酸カルシュームが硬く堆積したものが多くその洗浄が大変である。超高圧で中水量を利用し, ジェットノズルを螺旋状に移動しながら効率良く洗浄するスパイラル ジェット工法を紹介する。小口径には中和処理の不要な薬品洗浄も合わせて提案する。
    管路の再生は小口径から大口径まで適用できるホースライニング工法を紹介する。ホースライニング工法は, 強靭で水密性を有するシールホースを, 掘削せずにマンホールから空気圧によって管内に反転挿入し, シールホース内に均一に塗布した2液反応型硬化性樹脂を硬化させて管の内面に新しいパイプを形成する工法である。
  • 望月 寛峰
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1161-1166
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    フィルム, 金属箔などに水性若しくは溶剤系塗料を塗布する分野は, 紙に塗布する分野に比較して, 塗工量の変動をより少なくする高精度塗工を要求される。特に塗工量のばらつきがそのまま結果として現れる製品, 例えば感光フィルム, 医療用フィルム, 金属箔等の表面処理塗工は最たるものである。
    高精度塗工は塗工ヘッドの精度はもちろんのこと, 被塗工シートの厚薄精度および幅方向のテンション精度の均一性が要求されるが, 必ずしも要求を満たされていない。
    塗工機のシートテンションは本来巻き出し部のトルクと巻取り部の駆動系により設定されるが, シートを搬送する目的で設置される非駆動ロールの回転抵抗が大きく影響することは広く知られている。
    上述の諸問題に対応すべく数種のロールについて概要を説明する。
  • 島本 勝浩
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1167-1173
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    製紙業界においては, 抄速の向上, 古紙配合の増加, 抄紙系のクローズド化率のアップによる抄紙pHの上昇やアニオン夾雑物の増加により, 従来タイプのPAM (ポリアクリルアミド) 系紙力剤では, その効果が発現し難い環境になっている。このような環境の中で, PAM系紙力剤に対する要求も, 操業性 (凝集性), 紙力効果, 地合の更なる向上と厳しさを増している。
    本報では新規重合方法により分子量分布をシャープにしたPAM系紙力剤と, その新規紙力剤で凝集性の異なる二種類のPAM系紙力剤を使用した二液併用処方について紹介する。
    新規に開発したPAM紙力剤は, 紙力効果への寄与が低い低分子量ポリマーと, 地合乱れを誘発し易い超高分子量ポリマーの両方を, 従来のPAM系紙力剤対比, 少なくすることで分子量分布をシャープにしたものである。また, 二液併用処方はパルプフロックの大きさをより均一にすることで濾水性と地合を両立させ, それにより紙力効果を高めることを目的に開発した処方である。
    この二つの新規処方を抄造系に応じて適正に使い分けることで, 従来処方対比, 凝集性, 紙力効果, 地合について良好な結果を得ることができた。
  • ―ポリビニルアミンをベースにした定着剤―
    エッサー アントン, 小林 千益, 日向 敏
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1174-1180
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    木材ピッチ, ホワイトピッチ, 粘着物質のような疎水性物質が, 使用される原料によって抄紙系に混入されてくる。一般的にこのような疎水性物質による操業性の問題を低減するため, カチオン性定着剤が使用されている。
    新規のポリマーであるポリビニルアミン (以後PVAmと略す) が開発され, 疎水性物質の処理法を改善するその大きな可能性が期待されている。PVAmによる繊維と粒子の結合力, つまりはPVAmの定着力は, その分子量, カチオン化度及び疎水性官能基によって広範囲に調整が可能である。
    可溶性アニオン性物質に比較して, 疎水性粒子のアニオン電荷はかなり低い。それゆえに, アニオン電荷の相殺ということは最重要な方法ではない。つまりは, 繊維と疎水性粒子間の結合力をできるだけ最大にしなければならない。せん断力によって結合が切れる場合は, 粒子の不安定化と凝集作用を防ぐために, 繊維と粒子間のポリマー移転量をできるだけ小さくしなければならない。分子量, カチオン化度及び疎水性官能基を適度に調節したPVAmは, 凝集を起こさずに粒子を繊維に定着させる効果が最適化される。
  • ―新しいマルチ有機/無機マルチコンポーネント歩留りシステム―
    レッダー ジョー, フォード フィリップ A, 宮崎 竜太, 長谷川 正司
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1181-1187
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    従来のマイクロパーティクルシステムやマイクロポリマーシステムでは, 全ての要求を同時に満たすことは出来ない。つまりリテンションを向上させれば, 地合の悪化や蒸気使用量の増加が起こる。また地合を優先すればリテンションが低くなることを意味する。しかし, 有機マイクロポリマーと無機マイクロパーティクルを組み合わせた次世代のマルチコンポーネントシステム「Ciba® TELIOFORM® (チバ テリオフォーム) システム」は, 地合を維持したまま歩留り性を改善することを可能にした。
    いくつかの事例の中で, 印刷適正を落とさず歩留り性を向上することができた。本システムは従来のマイクロパーティクルシステムの持つ高い効果を維持しながら, 「脱水性」, 「歩留り濾水性」, 「地合と印刷適正」の独立したコントロールが可能であることを実証した。
  • ―導電率, 溶存酸素, 濁度, 酸化還元電位について―
    渡辺 泰生
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1188-1193
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    著者は昨年の広島年次大会において「紙パルプ工業における最新のpH計測技術」という演題で, 主にインラインpH計測に絞って話題を提供する機会を得られた。しかし, 「紙パルプ業界」ではpHだけでなく, その他にも重要なインライン計測パラメーターが存在する。即ち導電率, 溶存酸素, 濁度, 酸化還元電位などである。これらのパラメーターのインライン計測もpH計測の場合と同様, その極めて過酷な環境条件下において正確かつ信頼性ある計測データを得ることは「至難の技」といえる。
    ここでは「クラフトパルプ (KP) 工程」における, 導電率計を用いたアルカリ溶液の濃度管理, 濁度計を用いた回収緑液の管理の実例と, ボイラー用水の管理として純水用導電率計と超微量溶存酸素濃度計を紹介する。また, 「晒し工程」における酸化還元電位 (ORP) の応用例と, プロセスの流れを中断することなくpH電極, ORP電極, 酸素電極などのインラインセンサーの洗浄, メンテナンスを可能にする着脱式ホルダーも紹介する。
  • ―品質保証型の防虫活動―
    黒田 芳弘
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1194-1197
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    製紙関連工場における品質保証型の防虫管理では, 次の点が重要である。
    1) 外部クレームのみでなく内部クレームについてもクレーム分析を実施する。具体的には, クレーム昆虫の種類の同定, 混入日時, 混入ラインや工程を記録書に記録し, 保管する。
    2) 捕獲されている昆虫のモニタリングデータを調べ, 工場オリジナルな危害昆虫図鑑を作成する。そして, クレーム昆虫とモニタリングデータとの相関関係を解析, 評価する。最後に, 昆虫の生態的な特徴を踏まえ, 予防対策を構築する。
    3) 工場の環境条件として, 昆虫モニタリングのみでなく, 光, 風向, 風速, 温度, 湿度, などを定量的にモニタリングする。
    4) 品質保証型の防虫管理では, 仕組み自身を定期的にバリデーションし, その効果の確認を行う。また, 活動自身が機能するように, ルールが正しく守られていることを確認し, 教育, 訓練を定期的に実施すること。
    以上について報告する。
  • ―粘着テープの水溶性 (水分散性)―
    堀川 幸稔
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1198-1201
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    現在, 製紙工場では様々な用途に粘着テープが使用されている。粘着テープでは貼り付けた直後に接着強度を発現することから, 作業の自動化, 作業時間の削減などに有効である。製紙工場で使用される粘着テープは, 損紙としてパルパーに投入される可能性があることから, 水溶性 (水分散性) という他の業界, 用途にはない特殊な特性が必要とされている。
    水溶性 (水分散性) 粘着テープを設計する際には粘着剤の設計が最も重要である。水溶性 (水分散性) は他の多くの特性と相対する関係にあり, 例えば耐熱性を向上しようとした場合に水溶性 (水分散性) は低下する場合がある。製紙工場で使用される粘着テープは, その用途に要求される特性と水溶性 (水分散性) を両立させなければならない点でその設計が非常に難しい。
    水溶性 (水分散性) については各テープメーカー, 各製紙会社にてそれぞれの評価方法が実施されているが, 今回はこの一例をあげるとともに, 水溶性 (水分散性) を中心とした製紙工場で使用される粘着テープの技術について説明する。
シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (48)
技術報文
  • 直原 孝之, 田原 江利子, 唐 晨瑩, 外崎 英俊, 宮川 孝
    2005 年 59 巻 8 号 p. 1206-1213
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル フリー
    蛍光染料は, 食品衛生法で食品に直接接触する包装容器には使用が認められておらず, 検査法としては環食第244号が定められ運用されてきた。02年から03年にかけて, 保健所の検査で「蛍光物質の溶出 (食品衛生法第18条第2項 : 器具又は容器包装の規格・基準違反)」により回収命令および回収指導を受けた紙製品があり, この中には, 蛍光染料を意図的に添加していない古紙製品も含まれていた。
    これら紙製品の蛍光物質溶出試験 (環食第244号) を複数の登録検査機関に依頼したところ, 公定法にもかかわらず, 登録検査機関により検査結果が異なるという問題があることがわかった。調査により原因は蛍光染料をガーゼ染着するときのpH条件が不適切なこと, 判断基準が曖昧であるためであった。この点について, 厚生労働省に製紙連合会を通じ申し入れした結果, 04年1月7日付で課長通知が出され, 染着pHの変更, 参考事例として写真の提示等の改善が行われた。
    しかしながら, 新通知後も依然として検査登録機関間で検査結果が異なることがわかった。検査者によらず同じ結果が出る検査法に改善するため, 判定基準や具体的な検査条件, 手順, その他検査結果に影響を与える因子について詳細な検討を行った。その結果, 検査ガーゼ調製時の光と染着pHが検査結果に大きな影響を及ぼすことを見出した。ガーゼ調製条件や実験環境を厳密に規定し, 判定時に参考となるガーゼを用意することにより再現性のある検査法を確立した。
研究報文
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