重包装袋用紙袋(重袋)は,強度保持,破袋による内容物漏洩防止のために,クラフト紙を2層以上重ねて製造しているが,近年はコストおよび環境対策による省資源化が進み,重袋用クラフト紙の減層化およびクラフト紙の低坪量化が浸透してきている。しかし,既に省資源化は強度面で限界となっており,更なる省資源化のためには高い破断強度をもつ原紙が必要である。
今回紹介する新規製袋用伸張紙は,原材料が主に間伐材であり,100%針葉樹クラフトパルプを使用しているため,リサイクル可能であり,環境にやさしい素材である。
紙質上の特徴として,クラフト紙や従来の伸張紙よりも格段に破断伸びが大きく,落下や突き刺し等の衝撃に対して伸びることによりエネルギーを吸収するため,破壊が発生しにくい。従来のクラフト紙やクルパック紙と比較すると,引張エネルギー吸収量は縦:約3~10倍,横:約1.5倍,衝撃穴あけ強さは3倍以上と製袋用原紙として各段に優れた特性を持つ。
新規製袋用伸張紙を使用した重袋については,破袋強度を落とさずに従来のクラフト紙3層袋を2層袋(外層:製袋用伸張紙1層,内層:クラフト紙1層)とすることが可能であり,その場合全体の原紙の使用量を27%減らすことが可能であった。また,傾斜試験,実機によるフレキソ印刷・製袋・充填適性の点でも問題なく,現在一部粉体製品包装用に使用されている。
このように,新規製袋用伸張紙は,原料として主に間伐材を使用してリサイクル可能である上,破袋強度を維持したまま重袋の層数を減らすことができる。これらのことより,環境問題に対応する次世代の製袋用伸張紙であるといえ,今後様々な分野での利用拡大が期待される。
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