紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
60 巻, 2 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
製紙技術特集 II
  • 平田 良彦
    2006 年 60 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    王子製紙(株)呉工場5マシンは,上質紙(酸性・中性)及び中質微塗工紙を混抄しているマシンであることから,DIP由来のプレドライヤー汚れに悩まされてきた。
    フォーム用紙に代表される上質紙では,その用途から厳しい品質要求が求められ,欠陥のワインダーでのパッチ・継手処理により,枠追われ減速操業が問題となり,欠陥削減が重要なテーマであった。欠陥の分類では,その6割がプレドライヤーから発生した欠陥(汚れ・ピッチ)であった。
    本稿では,プレドライヤーの汚れ対策として取組んできた内容・設備について紹介する。
  • ―製紙用表面サイズ剤ポリマロンE100シリーズについて―
    原口 剛士
    2006 年 60 巻 2 号 p. 156-163
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    近年,製紙業界では資源保護や環境に対する関心が高まり古紙の増配が進んでいる。また,コストダウンに向け抄紙機,塗工機も高速化されており,内添薬品の歩留まり低下,表面薬品の操業性悪化など製紙用薬品が有効に作用するには厳しい状況となっている。
    このような状況の中で,紙の表面特性を容易に向上することができる表面処理薬品による紙の高品質化,高機能化が注目されており,今回,最新の表面処理剤の動向ならびに当社の表面処理剤ポリマロンE100シリーズの概要について説明する。
    表面サイズ剤ポリマロンE100シリーズは,従来の表面サイズ剤と対比して良好なサイズ効果を発揮し,特に,中性紙に塗工した場合に高いサイズ効果,良好なペン書き適性,インクジェット適性を示す。また,操業時に問題となる発泡性も小さく,機械的安定性にも優れている。
  • ―嵩高紙への適用の可能性―
    鈴木 節夫
    2006 年 60 巻 2 号 p. 164-168
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    最近の紙業界のトレンドに嵩高紙がある。各製紙会社のホームページ等からは,書籍用紙を従来の10%から多いものでは20%も嵩高にしましたという宣伝がなされている。また,塗工紙においても10%の嵩高紙が流通してきている。
    書籍の世界では,最近の本は文字数が少なくても紙厚みのある嵩高紙の使用で,読者は読後の満足感が得られるとか,厚みがあった方が豪勢にみえるということが嵩高紙利用のニーズと言われている。現在では出版全体の1/3が嵩高紙であり,新刊本では85%までその比率が高まっていると言われている。シューカレンダは,長いニップ通過時間と低いニップ面圧により,嵩高の対応に優れた特徴を有しており,三菱重工(株)もMJカレンダとして開発し,製紙会社のお客様とともに,その性能を確認してきている。操業性も2,000m/minで検証され,用具も開発段階から用具メーカと共同で開発された。
    先駆的な導入をしてきたのはスエーデンのコルスナス社で,1994年に初号機を液体包装用板紙に,2000年にはカートンライナーのマシンに設置している。2005年までに,上記2台のほかに板紙4台,特殊紙1台と合計7台が世界で稼動もしくは稼動予定である。これらの工場でのメリットは,嵩高で原料パルプ使用量が少ない,剛度が高い,印刷のグロス変動が少ないなど様々に報告がなされている。
    パイロットマシンでは,塗工板紙,液体包装用板紙,ライナー紙,A3塗工紙,A2塗工紙,上質紙,新聞紙など幅広いグレードのトライアルが行われ,MJカレンダの設置場所も各グレードで様々に検証試験が実施されてきた。嵩高紙の割合が高まっていく流れの中で,今まで以上にシューカレンダの活用が注目されてきている。
  • 中濃 礼二郎
    2006 年 60 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    直接厚み計測(キャリパ・センサ)は実際のシートの厚みを測定するものであるが,この測定方法には従来から2つの方法がある。
    一つ目は2つの接触子で対象物をはさみ込んでその間隔を測定するものであり,もう一つは固定された2つのセンサヘッドの距離を測定し,それぞれのヘッドから対象物までの距離を測定することによって対象物の厚みを算出するものである。最初の方法は一般的にもっとも精度が高く繰返し性が良いとされているが,一定の間隔で固定された接触子で物理的に接触させる必要がある。又,接触型センサは特に軽量紙,高速マシンやスーパーカレンダーのアプリケーションでしばしばマーキングや傷,異物によるスパイクなどの問題を起こす場合があり,キャリパセンサの接触子自身の摩耗や汚れの堆積なども保守上の問題としてあげられる。
    2番目の非接触測定方法は長年にわたって開発が続けられてきたが,非接触式はスキャニングするオンラインセンサとしては上下ヘッドが分離していることから精度の面で問題視されていた。ハネウェルはこの2つの分離しているヘッドを物理的により正確にアライメントし,シートスタビライザで測定点のシートを固定する方法で問題を解決し,非接触レーザーキャリパを発表した。各ヘッドからシートまでの距離はレーザーを用いた三角測定法を使用し2つのヘッド間隔はZセンサを用いている。
    本稿ではハネウェルが開発したNCレーザーキャリパについて紹介する。
  • 下須 嘉行
    2006 年 60 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    近年,紙の市場は急速にニーズの多様化が進み,多品種小ロット化が要求されるようになってきた。このような状況下においては,生産品種の切替時に発生するロスを最小限に抑え,かつ素早く高品質を実現する事がきわめて重要である。
    川内工場4マシンでは,一部の銘柄変更において,制御を使用せず,オペレータの経験に基づく「手動操作」での変更が行われていた。手動操作による銘柄変更の弊害として,自動化に当っての問題点の見出しが不十分になったこと,オペレータ間の経験の差が操業効率に影響するようになったこと等が挙げられる。生産現場で経験をつんできた熟練者が次々と定年退職を迎える状況で,手動操作に頼る銘柄変更では,今後,4マシンの操業効率を維持,向上させることが困難になるとの危機意識があった。
    そこで,「銘柄変更の自動化と性能向上」を主眼に置き,2004年8月に老朽化した横河電機製のBM計を同じく横河製の「B/M9000CS」へ更新した。ここでは,銘柄変更の終了判定基準を「リール前の水分が目標値に整定すること」と定義し,BM計更新後の数ヶ月間の銘柄変更における自動化と効率向上の達成度及び,今後の問題点について報告する。
  • 田頭 弘章
    2006 年 60 巻 2 号 p. 183-190
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    抄紙機の高速化が進み,新聞用紙やLWCの運転実績では1,900m/min,上質紙で1,600m/min,板紙で1,500m/minを超え,年間生産量も数十万トンの規模に達している。このような高い生産能力を持つ抄紙機では,断紙やグレードチェンジに伴う生産ロスを如何に減らすか,熟練したオペレータの代替として自動化をどう進めるか等が生産効率を上げる上で非常に重要な問題となっている。そのような中で,通紙作業はロスタイムの削減と熟練したオペレータの代替という両面で効果のある重要な課題である。
    メッツォ社では,通紙作業の改善策として,プレスパート用にベルト式通紙装置プレスフォース,ドライヤパート用通紙装置として,シングルカンバス用にシングルフォース,ダブルカンバス用にベルト式通紙装置ダブルフォースワン,サイズプレス・カレンダ等用にフォイルフォースワンを開発し,また超高圧水を用いた新しい枠替え装置を開発した。これら一連の新しい通紙装置によりマシン全体での通紙作業が改善される。
総説・資料
  • ―漂白プラントの設備費の低減提案―
    ラグナー マーチン, 梅村 謙二
    2006 年 60 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    パルプの漂白技術には,その工程で使用される薬品のみならず,そこで使用される洗浄機や漂白システム全体の設計も関係してくる。漂白工程でのパルプ洗浄機は従来使用されていたドラムフィルター,大気圧型ディフューザーなどから,今日ではプレス洗浄機の使用が主流へと変わってきている。プレス洗浄機は,その出口パルプ濃度が高いことから,多くの利点を有しており,その利用技術を新たに開発することで,漂白設備に対するさまざまな操業要因に関して,その低減・削減効果が期待できる。
    報告では,COMPACT BLEACHING™と名づけられた最新の漂白プラントを紹介する。この中で新しく開発されたパルプフィードシステムや希釈システムである「DiFeed™」,「DynaDil™」について紹介し,洗浄機のろ液システムの簡便化や漂白プラント全体の設備容積の削減についても考察する。これらのシステムは,現時点での問題点にことごとく取り組んでいることから,漂白プラントの設計におけるパラダイムシフト(設備の標準的な考え方の移行)を起こすものと言っても過言ではない。COMPACT BLEACHING™は,電力消費を約25%削減できるだけでなく,パルプ繊維をより丁寧に取り扱い,また,設備の設置スペースを25-50%削減することが可能となる。
  • 川村 英昭, 西 馗夫
    2006 年 60 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    製紙工業の各プロセスでは硫酸,二酸化塩素,オゾン等腐食性の流体を取扱う。腐食性流体に対するバルブにはステンレス鋼に代表される耐食性を有する金属材料を用いる場合がある。
    弊社ではメンテナンスフリーおよび定修延長によるトータルコストダウンを目的とした高耐食性・高合金のプラント部材ニーズに応え,バルブのボデー等に使用される高耐食性鋳物材料(スーパー二相ステンレス鋳鋼,純ニッケル鋳物等)を種々製品化している。また,開発にあたり高耐食性を得るための合金成分の働きを調査した。
    本稿では水溶液腐食(湿食)に分類される孔食,すき間腐食,全面腐食の腐食形態およびそれぞれの腐食形態で有効に働く合金成分を紹介する。また,製紙工業で使用される腐食媒体の硫酸,二酸化塩素,オゾン中での鋳物材料を用いた腐食試験結果を報告する。
  • 横井 裕明, 茨木 英夫, 那須 健司
    2006 年 60 巻 2 号 p. 204-211
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    感熱記録用紙の用途拡大などに伴い,優れたポリビニルアルコール(PVA)耐水化処方の要求が年々高まってきており,これまでにさまざまな処方が提案されている。従来から用いられているPVA耐水化処方のひとつとして,アニオン変性PVA(A-PVA)とポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(PAE)との組み合わせがある。我々は,この処方にポリエチレンイミン(PEI)を併用するシステムが,A-PVA/PAE処方と比較して非常に優れた耐水性を発現することを見出した。さらにPAEとPEIを併用することで,A-PVA/PAE処方で問題となりやすい塩化物イオン量を低減することも可能となる。弊社では,この新規なPVA耐水化システム用の耐水化剤として「PVA耐水化剤CPシリーズ」を上市している。
    本報告では,PVA耐水化剤CPシリーズを用いるPVA耐水化システムの特徴,および本システムを感熱記録用紙のオーバーコート層に応用した例について述べる。また,本システムによる耐水性の発現機構について議論する。
  • 小野 健太郎, 任田 英樹, 葛西 潤二
    2006 年 60 巻 2 号 p. 212-219
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    近年,インクジェット方式による印刷の普及が進んできたのは,家庭やオフィスでカラー印刷物を手軽に作成できるようになってきたことと,従来問題であった保存性が改良されてきたためである。
    インクジェット紙は,カチオン樹脂の配合量が非常に多く,この理由としてアニオン性のインクジェットインクの定着をより向上させるためである。耐カチオン安定性が求められるインクジェット紙のバインダーはポリビニルアルコール(以下PVA)が主に使用されている。インクジェット紙でアニオン性の乳化剤を使用しているSBRラテックスが使用されないのは,カチオン安定性が劣るためである。
    我々は,耐カチオン安定性に優れたPVAを保護コロイドとして用いた新規ラテックス(PVA-グラフトラテックス)の重合に成功した。本研究では,PVA-グラフトラテックスの特性を紹介し,適用例の一つとしてインクジェット紙用バインダーの検討を紹介する。
  • 種田 英孝, 浅田 修, 村田 雅広, 飯嶋 夕子, 門間 孝英, 塗木 豊, 小野寺 勇雄
    2006 年 60 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    製紙工場の排水は主に好気的(活性汚泥)に処理されているが,処理にエネルギーが必要となる。日本製紙勇払工場では生物的排水処理の導入に際し,排水を処理するのみならず,排水中有機物をメタンに変換しエネルギー源として活用できる,嫌気性処理を選択した。KP黒液エバポレータで生じるドレン水を処理するが,実施例が少なくパイロットプラントテストを行い,続いて実機を使用した長期試運転を開始した。ドレン水中に含まれるメタノールは分解されメタンに変換され,CODは85%以上カットされることが示された。今後,工程の変動に対する安定性を長期に渡り点検していく。
  • ―On-line RQP―
    松田 光彦
    2006 年 60 巻 2 号 p. 225-231
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    製紙工業においては,紙ロールの状態で大口ユーザに供給している製品の巻き取り硬度の不均一性がユーザ側での高速印刷時の紙切れ事故,印刷品質事故などの重大事故の原因のひとつとしてクローズアップされている。このために,従来の勘だけに頼る打音法や精度,操作方法に課題の多いシュミットハンマー方式に取って代わるものとして,フィンランドのTAPIO社は2003年にTapio Roll Quality Profiler“RQP”の販売を開始した。
    野村商事株式会社はRQPの日本国内での販売契約をTAPIO社と結び,2004年2月より日本国内での製品紹介と販売活動を開始し,昨年度の年次大会でも紹介した。
    Tapio社では2004年末にポータブル式RQPのノウハウを基に姉妹機としてのオンライン自動測定が行える,「Tapio On-line RQP」の開発を行い販売開始し,野村商事では早速このオンライン型RQPの国内販売も開始したところ,多くのお客様よりお問い合わせをいただき,すでに1台を納入させていただいた(2005年12月現在)。このオンラインRQPにより,出荷紙ロール全数の自動検査が行え,R値判定ソフト(オプション)を付加すれば不合格品の自動摘出も可能となり,品質管理の向上が図れる。
    On-line RQPの概要,機能,導入事例,携帯型RQPとの測定結果の比較,詳細仕様などを報告する。
  • 筧 明洋, 山本 拓也, 加納 直
    2006 年 60 巻 2 号 p. 232-240
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    2005 TAPPI エンジニアリング・パルプ・環境会議が2005年8月29日~31日に米国ペンシルバニア州フィラデルフィアで開催され,日本からは3名が参加した。
    参加登録者数は457名で,内訳は,アメリカ357名,カナダ67名,ブラジル・フィンランド各6名,フランス・スウェーデン各4名,日本・イギリス各3名,インド・ニュージーランド各2名,及びオーストラリア・中国・ドイツ各1名であった。
    3日間の講演セッション数は70で,6~9セッションの講演が常に並行して行なわれた。
    日本の参加者3名は,筧・山本の両氏が主にパルプ関係を,加納が環境関係をそれぞれ聴講したので,別々に報告する。
シリーズ:大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (51)
研究報文
  • 大草 優子
    2006 年 60 巻 2 号 p. 245-255
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/17
    ジャーナル フリー
    近年,古紙配合量の増加,用水原単位の低下により,白水循環系中のピッチ,アニオントラッシュが増加し,内添薬品の効果低下や,原料歩留の低下,断紙トラブルなど,生産性,操業性に関わるトラブルが発生している。この問題に対し,有機凝結剤によるアニオントラッシュ処理が重視され,その適用が広まりつつある。一方,繊維への定着不良や過剰添加によって系内に濃縮した内添薬品は,新たな阻害物質となり,様々なトラブルを誘発していると考えられる。そこで今回,内添薬品であるロジンサイズ剤の定着に着目し,サイズ剤の定着とサイズ発現効果に与えるカチオン性ポリマー物性の影響について検討を行った。
    その結果,高いカチオン荷電を持つポリマーを定着剤として用いると,良好なサイズ定着効果を示すものの,カチオン荷電の低いポリマーに比べてサイズの発現効果が低く,サイズの発現性は,シート中のサイズ剤含有量だけでなく,定着剤として使用するポリマーの物性にも依存することや,サイズ発現には最適な分子量域があることがわかった。
    また,定着剤の添加場所について検討を行ったところ,填料の有無や,定着剤添加からサイズ剤添加までの攪拌時間がサイズ剤の定着量に影響を与えることから,定着剤は,サイズ剤の後に添加する方が望ましいことがわかった。
工場紹介 (54)
Coffee break
パピルス
feedback
Top