紙パ技協誌
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60 巻, 4 号
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新入社員歓迎号
  • 三輪 正明
    2006 年 60 巻 4 号 p. 475
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
  • ―優良木の選抜および試験植林―
    伊藤 一弥
    2006 年 60 巻 4 号 p. 476-485
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    王子製紙では,原材料の安定供給と環境への貢献を目的に2010年度までに30万haの海外植林地を造成する目標を掲げ,2003年度末までに135千haあまりの植林を実施した。森林資源研究所は,主に優良木を利用したクローン植林により植林地の生産性を向上させることを目的に,2002年7月に4つの事業植林会社が存在するオーストラリアに豪州研究室を開設した。豪州研究室ではまず,降水量,土壌条件などが異なる複数の植林地を対象に成長形質(胸高直径,樹高,通直性など)に優れた優良木を選抜した。
    ユーカリのようなパルプ材の場合,単位植林面積当たりのパルプ収量が重要であり,成長形質とともに容積重,パルプ収率などの材質形質についても十分な注意を払う必要がある。そのため,成長性に優れた優良木についてすべて材質調査を行うこととした。これまでに約100本の優良木の材質調査を実施したが,分析した優良木間に容積重で170kg/m3(450~620kg/m3),精選パルプ収率で9%(48~57%)と大きな違いが認められた。優良木の中には,成長性はトップクラスであるが容積重が100kg/m3以上低い個体が見つかっており,植林地の生産性向上を図る上では,成長性とともに容積重などの材質形質に優れた優良木を選抜/クローン化する必要があることが明らかとなった。成長性/材質などの形質と降雨量,土壌タイプなどの環境要因との相互関係を調査するため,降雨量の異なる2箇所の植林地に主に8種類の優良木を用いてクローン試験植林地を設定した。
  • ―最新の取り組みと可能性―
    藤田 和巳
    2006 年 60 巻 4 号 p. 486-498
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    古紙を再生利用する原料調成工程には特に大きなエネルギーを消費する三部門が存在する。すなわち,パルパー,スクリーン,リファイナー工程である。弊社では世界的な省エネルギーのニーズに対応すべく,この三部門においておのおの新しい省エネルギー機器を開発した。
    板紙用古紙処理連続式パルパー工程ではDR型パルパーと新ハイドラパージによるデトラッシュシステム,DIP用パルパー工程ではヘリディスクローター採用の高濃度パルパーとダブルペアーシステムが生産効率を向上させることで動力源単位を大きく引き下げるとともに,スクリーン工程の簡略化を伴う大きな省エネルギーに貢献する。
    スクリーン工程では新開発のMaxFlowとN―GranFlowスクリーンが他に類を見ない縦長バスケットを採用するなどの工夫から従来の50~80%省エネルギーとなる驚異的な成果を挙げている。
    本稿ではこれらの新しい省エネ機器の概要を説明するとともに,この省エネ機器を使用した弊社の設計コンセプトに基づく古紙処理システムがどのように構成されるか,それによってどの程度の省エネルギーが期待できるかについてご紹介する。
  • 村山 哲也
    2006 年 60 巻 4 号 p. 499-504
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    99年より当工場において新たな要員効率化工事がスタート,その他の新設,改造などの大型計画工事から2,000ループに及ぶ計装機器の増設が予想された。
    それに伴い計器用空気の消費量が大幅に増加することからコンプレッサ増設の検討を余儀なくされた。しかし設置費用は莫大であり何とか運転台数を増やすことなく対応ができないか検討し,徹底した配管の洩れ,無駄な消費をなくすことで03年その実現を見た。
    しかし,コンプレッサ運転台数は変わらず電力削減も無いことから表向きには何の変化もなく,成果はさほど評価されなかった。その後,工場の更なるコスト削減対策の推進もあり,これを契機にコンプレッサ運転台数の削減に向け新たな取組みを開始した。その結果,年間200万kWhの電力と7万7千tの冷却水量削減を実現した。
    本稿では空気源の最適管理に向けリスクの回避を含めた取組みについて述べる。また,消費空気量削減に大きな役割を果たし,耐振構造や安定制御に向け共同開発を行ったSP研究所製のバルブポジショナも合わせて紹介する。
  • ―ヘッドボックス,フォーマ,プレスの最近のトピックス―
    山崎 秀彦
    2006 年 60 巻 4 号 p. 505-515
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    メッツォ社では1999年に最初のオプティコンセプト抄紙機を市場に送り出し,以後,さまざまな紙品種の製造において,その高速での生産性・走行性・紙品質・自動化・メンテナンスの点で好評を博している。高速マシンの製造で培われたメッツォペーパーの長年の経験は,大型高速抄紙機の信頼性と品質を備えた最もコスト有効性のある小型及び中型抄紙機のための解決策を生み出すためにうまく利用された。本稿では既存の抄紙機のセクションのうち,ウェットパート,とりわけヘッドボックス,フォーマおよびプレスの性能の向上を図るために用いられる最新の解決策を紹介する。
    ヘッドボックスの改造として,「バルフロー」,「シムフロー」,「レトロディリュー」,「オプティフロー」,「オプティフローII」など,低速から最高速までのあらゆる抄紙ニーズをカバーしているメッツォペーパーの製品群を紹介する。
    フォーミングセクションの性能は地合に大きな影響を及ぼす。抄紙機全体の脱水の約97%~98%がフォーミングセクションで行われることから,フォーマの脱水能力はきわめて重要といえる。そこで,メッツォペーパーの代表的なフォーマである「シムフォーマMB」,「バルフォーマ」,「オプティフォーマ」,「ベルベV(ファイブ)」について,その特性と改造技術を紹介する。
    プレス後のウェブのドライネスは,高い運転速度,運転効率および高い生産速度の達成を求める抄紙機にとって非常に重要な特性であり,シュープレスはこのような目的に対しきわめて有効なツールであることが既に証明されている。シュープレスの改造として,メッツォペーパーの「オプティプレスI」,「シムプレスB」,「シムプレスコンビB」,「オプティプレス」の特徴を紹介する。
  • ―水・スラッジ・リジェクトのサブシステム紹介―
    鈴木 隆之, 三浦 淳一
    2006 年 60 巻 4 号 p. 516-522
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    製紙工場における用水原単位の削減,産業廃棄物の適切な処理は重要な課題である。用水原単位の削減のためには再利用水の使用が欠かせない。品質の高い再利用水を得るためには水ループの最適なアレンジメント,灰分やマイクロスティッキーの除去等が必要になってくる。また,産業廃棄物を削減するためにはリジェクトの適所での除去,水分の除去,粕のコンパクト化が重要で,そのハンドリングに至るまでが工場全体のコストに影響するのは言うまでもない。
    今回は世界各国に多数の実績を持つフォイトグループの水・スラッジ・リジェクトシステムとそのユニークな機器を紹介する。
  • 岡田 憲幸
    2006 年 60 巻 4 号 p. 523-529
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    中性条件での抄紙が増えてきている。pHの上昇は,サイズ性や歩留りの低下,白水の泡やピッチの増加といった悪影響を伴い,従来硫酸バンドに頼っていたウエットエンド薬品をみなおし,中性抄造条件に最適化した薬品システムに再設計する必要がある。
    本報においては,カチオン改質でんぷんと特殊なカチオン性高分子の混合物を保護コロイドとして持ち,マシン汚れや滑りの問題を解決したAKDディスパージョン「PMD」,多様なニーズに対応する歩留り・ろ水システムでポリエチレンイミンとポリアクリルアミドを併用する「ポリミックスシステム」,中性条件下で効果的にピッチの削減を図るための,ポリエチレンイミンやポリビニルアミンといった強カチオン性高分子を使用した定着システムを紹介する。
  • 中川 弘
    2006 年 60 巻 4 号 p. 530-536
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    製紙業界では資源保護や環境に対する関心の高まりから古紙の配合が増加し,また海外への古紙輸出が増加しており,国内向けの古紙品質の低下も進んでいると考えられる。さらに,抄紙機の高速化によるOPRの低下や乾燥条件の変化,白水のクローズド化が内添・表面サイズ剤の効果発現には厳しい状況となっている。
    本報告では,抄紙条件の変動に対しても良好な効果を発揮する内添サイズ剤と表面サイズ剤の薬品設計を紹介した。内添サイズ剤ではロジン系エマルジョンタイプに注目し,「分散」「定着」「発現」をキーワードとして改良設計を行った。抄紙マシンの高速化に伴う乾燥温度低下や抄紙pH上昇による硫酸バンドの低活性化がサイズ効果発現不良の原因であり,それらに対応した樹脂組成と乳化剤設計を行う事で安定したサイズ効果を得られる事が判った。一方,表面サイズ剤は親水基と疎水基を最適化した素材と特殊乳化剤を用いる事で,サイズ効果や発泡性に優れた新規エマルジョンタイプを開発する事が可能となった。
  • 石井 充, 角井 寿雄, 石黒 正雄, 佐藤 清夏
    2006 年 60 巻 4 号 p. 537-544
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    近年,インクジェットプリンターの高速化・高画質化と共にインクジェット用紙の高品質化も進み,限りなく銀塩写真に近い画質の印刷が一般家庭で容易に行えるようになってきた。更に,印刷後の保存性(耐光性・耐ガス性)を向上させる目的で顔料インクタイプのプリンタが登場し,顔料インク適性が良好な光沢紙が要求されている。顔料インクは平均粒子径が約80~140nmのアニオン性粒子で,メディアの最表層に堆積し定着する。従って,光沢紙の最表層は光沢性やインクの印字品質に大きな影響があり,様々な材料が使用されている。
    本報告では,顔料インクがアニオン性であることから,一般的に最表層に用いられているアニオン性のコロイダルシリカに対して,2種類のカチオン性コロイダルシリカを光沢紙コート剤として検討した。特に,我々が開発した,コロイダルシリカをアミノシランによって表面処理してカチオン化した「シリカLGT―1000」と市販品のアルミナ修飾されたカチオン性コロイダルシリカとを比較検討した。その結果,アミノシランでカチオン化した「シリカLGT―1000」は,光沢紙の白紙光沢やインクの滲み抑制効果に優れていた。そして,インクの滲み抑制効果の発現はアニオン性の顔料インクとカチオン性コロイダルシリカとの静電的な相互作用によるものであると推察した。
  • 服部 芳彦, 中森 弘, 北村 典子
    2006 年 60 巻 4 号 p. 545-554
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    高品質化が進んでいるA2塗工紙では,印刷光沢の向上は重要な項目であるが,インキセットが遅くなる方向であり,インキセット―印刷光沢バランス向上が重要なテーマとなっている。
    本報では,ダブル塗工紙でのインキセット―印刷光沢バランスの向上を目的に,アンダー塗料の顔料形状・粒度,アンダー・トップラテックスの耐溶剤性レベルおよびアンダー層の塗工量を変更してダブル塗工紙のインキセット,印刷光沢への影響を確認,ダブル塗工紙の印刷光沢発現機構について検討した。
    従来,ダブル塗工紙のインキセットは,トップ塗工層表面の影響が非常に大きいと考えられていたが,インキビヒクルの塗工紙への浸透状態を観察したところ,ビヒクルはトップ塗工層を通過してアンダー塗工層に達していることがわかった。このことから,トップ塗工層表面の影響以外にも,アンダー塗工層の耐溶剤性(インキ吸収性)が,直接ダブル塗工紙のインキセットに影響を及ぼしていることが確認できた。
    また,印刷光沢は,インキがセットした後の印刷表面の平滑性により決まるが,アンダー塗工層の平滑性を高め,かつダブル塗工紙の平滑性を高めることにより,印刷光沢を高くできることがわかった。
    具体的には,アンダー塗工層に微粒顔料を使用して,トップ塗料に耐溶剤性の高いラテックス,またはアンダー塗工層の塗工量増量を組み合わせることにより,ダブル塗工紙のインキセット―印刷光沢のバランスが向上することが確認できた。
  • 古川 勝也
    2006 年 60 巻 4 号 p. 555-563
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    従来,当工場のエネルギー供給設備は重油ボイラーとディーゼル発電設備であり,それらは化石エネルギーである重油に依存していた。エネルギーコストの削減及びCO2排出抑制の観点から,バイオマスエネルギーの利用を検討及び計画し,2004年9月からバイオマスボイラーの営業運転を開始した。
    勿来工場としてはボイラー・タービンセットの操業経験は無く,木屑を燃料とする工場のメインボイラーとして社内的にも未経験であり工程も厳しいものであったが,オペレーター及びプラントメーカー各位の協力により予定通りに立上げる事が出来た。
    このバイオマスボイラーの仕様は石炭と木屑の混焼がベースとなっているが,試運転以降徐々に石炭の比率を減少させ,現在のところ木屑のみの運転を行っている。また,バイオマスボイラーの導入により当初の目的は十分達成され,現在のところ設備的には特に大きな問題も無く操業している。
    今回導入したバイオマスボイラーに係る設備概要と操業上経験した点などについて報告する。
総説・資料
シリーズ:大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (52)
研究報文
  • スウィナルティ ウィウィン, 鮫島 一彦
    2006 年 60 巻 4 号 p. 575-585
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    2003年5月に植栽したケナフ2品種(Tainung―2とEvergrades―41)を播種から80日,116日,153日目に収穫し,農耕学的な指標を測定した後,靭皮繊維を,茎の高さ位置を明確にしながら分離した。分離した靭皮繊維はシュウ酸アンモニウム,苛性ソーダ,亜塩素酸の順に処理するA法と亜塩素酸,シュウ酸アンモニウム,苛性ソーダの順に処理するB法でパルプ化し,パルプ収率,粘度,繊維長,農耕学的な指標との関係を調査した。
    その結果,パルプ収率,粘度,繊維長は収穫時期に影響を受け,播種153日後のパルプでは,80日と116日後のパルプに比べて高い収率と,高い粘度を与えたが,繊維長は逆に短くなった。茎の高さ位置では,パルプ収率と粘度は茎の高さ位置が高いほど小さく,繊維長は逆に高い位置ほど長くなった。全体的には,A法はB法に比べて粘度が高く,B法はA法に比べて繊維長が長く,パルプ収率も高いという両者の特徴を再確認した。
  • 松島 理, 松島 成夫
    2006 年 60 巻 4 号 p. 586-604
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    上下辺中央に一様集中荷重を受ける正方形胴(異方性胴)の段ボール箱型容器(幅L:高さh)の弾性応力表示の導出をした。そして,その表示によって応力解析をおこない,幅,高さ方向の垂直応力σx,σy,せん断応力τxy,主応力σ1,主せん断応力τ1の最大値(σxmax,σymax,τxyma,σ1min,τ1max)を求め,σxmax,σymax,τxyma,σ1min,τ1maxの特性を議論した。
    異方性容器のσx,τxyは各等方性のもののνxyEx/Ey倍,σymin/(σymin-σxmin)倍程度である。Ex, Eyは幅,高さ方向の縦弾性係数,νxyはポアソン比(高さ方向垂直ひずみの幅方向垂直ひずみへの寄与)である。σxmin,σymin,σ1minの位置は荷重位置にあり,容器の形状変化に無関係であるが,Lおよび荷重幅2Δxの増加によってτxymax,τ1maxの位置は上下辺の隅からL/2±Δx3の位置に留まるように変化する。
    側板(原点は1隅,x,y軸は幅L,高さ方向h)上下辺中央に分布幅2Δxの一様分布荷重py0(=-1N/mm2)を受ける異方性正方形胴段ボ―ル箱型容器の上下辺のx方向の変位および側辺のx方向の垂直応力σxを零として,側板の応力表示を導出し,諸応力成分および主応力σ1,主せん断応力τ1の状況を議論した。ただしL=300mm,h=300mm,Δx=20mm,x,y方向の縦弾性係数Ex=2.91×103N/mm2,Ey=1.53×103N/mm2,ポアソン(x方向の垂直ひずみのyひずみへの寄与)νxy=0.1とした。
    異方性容器のσx,τxyは各等方性(ポアソン比ν=νxyのとき)のもののEx/Ey倍,(1+σxmin/σymin)である。σxmax,σxmin,σymin,σ1maxの位置は形状変化によって変化しないが,L,xの増加によってτxymax,τ1maxの位置は位置x=L/3また2L/3,y=0またhから位置x=0,y=0またhへの移動する。
    x方向の垂直応力σxの最大値はσxmax=0.113N/mm2,最小値はνxyppy=-0.193N/mm2である。y方向の垂直応力σyの絶対値最大値はσymin=-1N/mm2であり,せん断応力τxyの絶対値最大値はτxymax=0.487N/mm2である。主応力σ1の絶対値最大値はσ1max=-1.014N/mm2,主せん断応力τ1は絶対値最大τ1max=0.605N/mm2である。異方性容器の諸応力分布状況は等方性のものと同様である。
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