紙パ技協誌
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60 巻, 5 号
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省エネルギー特集 I
  • 大野 (糸宏)司
    2006 年 60 巻 5 号 p. 653-654
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
  • ―高燃料価格時代への対応とESCOの活用―
    大林 茂昭
    2006 年 60 巻 5 号 p. 655-663
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    2005年2月に地球温暖化防止のための国際的取組みの枠組みを定めた「京都議定書」が発効し,いよいよ我が国もCO2削減に向けての新たな段階に入った。
    また,以前から企業の省エネルギーを促すための「省エネルギー法」は逐次内容改正が行われており,この面での企業の絶え間ない努力も要請されている。
    一方,2004年初め頃からの原油値上がりは止まるところをしらず,1990年の湾岸戦争時の1バレル40ドル台をはるかに超える70ドル台をさえ記録するに至っており,今も沈静化の兆しを見せないでいる。
    この燃料高騰の影響を最も受けるのは当然,燃料多消費事業所であり,既に相当深刻な状況となっていると考えられる。とくに,自家発電設備を運用する事業所においては,使用するエネルギー量,率が大きいため,経営上も重要な関心事となっているであろう。
    このような内外の状況を踏まえると,今工場の発電設備に求められるのは,より発電効率の高い,より熱効率の高い設備,システムの導入,転換,あるいは改善ということであろう。ここでは最近の発電用原動機・システムの状況と,これらの効果的な導入について解説し,省エネルギー,CO2削減,引いてはコスト削減の一助に供したい。
    また,こうした発電用設備などの省エネルギー設備導入に際し,最近活用が進んでいる「ESCO(Energy Service COmpanyの略称)」についても簡単に解説する。
  • 永田 浩
    2006 年 60 巻 5 号 p. 664-670
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    王子製紙(株)神崎工場は,塗工機11台を有する月間7,000tの情報用紙,事務用紙,防湿包装用紙等を生産している多品種少ロット型の加工・仕上工場である。
    工場で使用する蒸気と電力は,主にボイラーからの発生蒸気とそれを有効活用する蒸気タービンでの発電および購入電力で賄ってきた。近年,抄紙機等の停止や生産品目の変更などで工場生産体制が大きく変化し,ユーティリティー設備の再構築が急務となってきた。
    また,都市型工場として,より地域への配慮が不可欠な環境対策については,大気汚染防止法に加えて,兵庫県,尼崎市との公害防止協定による厳しい排出基準の遵守が求められている。
    そこで,本稿では,ガスタービンコージェネレーションシステムを導入した省エネルギーとCO2排出削減への取組み事例について紹介する。
  • ―温水温度上昇による蒸気削減事例―
    稲葉 知巳
    2006 年 60 巻 5 号 p. 671-677
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    日本大昭和板紙吉永株式会社は,富士山南麓の静岡県富士市に位置し,首都圏に近いという立地条件を生かし,古紙資源の活用を促進し,リサイクル事業の拡大を図ってきた。またこれに付随して,2002年12月には,ペーパースラッジ(PS)の処理とサーマルリサイクルを目的とした5号焼却炉設備を稼動させ,資源循環型の生産活動をより一層強化した。
    しかしながら,依然として重油使用比率が高い操業体系を打破できず,近年の重油価格の高騰により工場収益が著しく圧迫される状況となっており,さらなる省エネルギーの推進が大命題となっている。
    当社のKP晒設備(1KP晒)は,同一敷地内に蒸解設備及び回収設備を有していない特殊な条件下におかれたプラントであり,黒液に関連する熱回収は一切できず,晒工程には高温水が供給されないため,蒸気原単位が著しく高いという弱点を抱えている。
    本報では,5号焼却炉設備に設置されている排煙脱硫装置の循環液からの熱回収及び温水供給方法の改善による工程白水の熱回収により,温水温度を上昇させることが可能となり,蒸気使用量を削減することができたため,その事例を紹介する。
  • 塚越 博忠
    2006 年 60 巻 5 号 p. 678-682
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    古紙を再生利用して,古紙パルプを生産する原料工程には,特に大きなエネルギーを消費するパートとして3つのパートがある。それは,離解工程のパルパー,精選工程のスクリーン,叩解工程のリファイナーの各工程である。エネルギー多消費型の紙パルプ産業においては,省エネルギーを積極的に推進し取り組むことが,コスト低減に直結するポイントとなる。
    今回,取り組んだIDスクリーン導入は,既存の段古紙パルプの精選スクリーンを希釈白水注入型スクリーン(IDスクリーン)に改造し,省エネを図るものである。一般的に,IDスクリーンに改造する基本的な考え方としては,通過効率のアップ(処理量アップ)が図られる事により,1次および2次スクリーンの台数削減,更には付帯機器の削減による省エネ効果を得るところにあるが,名寄工場の場合は3パルプの工程が簡素化されている事からスクリーンの台数を削減しての省エネを図る事が出来ないため,今回はローターの周速を下げることによって省電力を図ることを基本的考えとして取り組んだ。結果としては,スクリーンを改造して86kWの電力削減効果を得た。
    これにより,二酸化炭素排出量を253.8T/年あまり削減できた。また,スクリーン通過後の原料中の未溶解分の増減を評価した所,改造後に少なくなっており,IDスクリーンの離解,希釈機構の効果を確認した。今後も,更なる省エネを目指した取り組みの継続をして行く。
  • 小出 敬雄
    2006 年 60 巻 5 号 p. 683-690
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    京都議定書が2005年2月に発効され,平成17年4月28日に閣議決定された京都議定書目標達成計画では,産業部門の2010年度目標として,基準年比増減率で8.6%を掲げており,工場を所有する各企業は社会的責任として自主的にCO2削減対策を進める必要が有る。
    また,最近の原油価格の高騰は,重油焚ボイラを所有する各工場の燃料費を押し上げる結果を招き,各企業はCO2削減対策に加えて燃料費削減対策も迫れられているのが現状である。一方,天然ガスが従来の中東依存からサハリン等原油価格にリンクしない地域からの供給が可能になったことで,その価格の値上がり幅が原油と比べて少なく,その結果,平成17年春頃よりその価格は逆転している。
    懸かる状況より,当社ではCO2削減対策及び重油焚ボイラの燃料費削減対策として,ガス焚改造を提案している。
    本報では,ガス焚改造の概要と実例を紹介する。また,ガスパイプラインによるガス供給ができない場合はサテライト方式を採用する必要があるが,サテライト基地はイニシャルコストが高いという問題が有り,その解決策として当社が今後提供予定のサテライト基地のファイナンスリースについても紹介する。
  • 高井 聡
    2006 年 60 巻 5 号 p. 691-699
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    近年,環境及びエネルギーの問題が地球規模でクローズアップされる時代となり,その対策が急務となっている中,2005年2月に地球温暖化対策として京都議定書が発効された。それに基づき日本は二酸化炭素排出量の削減が定められ,日本製紙連合においても自主行動計画として下記の目標を定めた。
    (1)2010年までに製品当たりの化石エネルギー原単位を1990年度比13%削減する
    (2)2010年までに製品当たりの二酸化炭素排出原単位を1990年度比10%削減する
    こういった世の中の動向を踏まえ,当社能町工場では省エネルギー,古紙及び木材資源有効利用等を推進し,環境負荷の低減に取り組んでいる。今回は,その中で省エネルギーの一環として平成17年7月に3号回収ボイラー設備の排ガス煙道にガス式低圧給水加熱器を設け,当該ボイラー給水への廃熱回収を実施した。その導入事例について紹介する。
  • 若本 茂
    2006 年 60 巻 5 号 p. 700-706
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    2005年2月の京都議定書発効により,これ迄取り組みを進めてきた地球温暖化対策,及び,省エネルギーの取り組みは益々重要性を増してきている。
    加えて,昨今の化石エネルギー価格高騰対策の面からも化石エネルギー使用の削減,省エネルギーは重要な課題となっている。
    北越製紙新潟工場において,2005年4月老朽更新,環境負荷低減の目的で大型回収ボイラーを導入した。
    この大型ボイラーを中心に,既存のボイラーを最適に組み合わせて運用することによる,環境負荷低減,コスト改善の取り組みをはじめたところである。
    本稿では,この大型回収ボイラーの概要と省エネルギー,CO2削減の取り組みについて紹介する。
総説・資料
  • 松下 淳
    2006 年 60 巻 5 号 p. 707-711
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    製紙工程中の枠換えでは,枠換え効率向上や収益に直接寄与する損紙の低減が叫ばれてきた。弊社が取り扱うカナダ,パプリマ社のフル自動枠換え装置(商品名「リールジェット」)は,高圧水(1,300~1,500bar/20cc)を使用してシートセンターでテールを切り出す2個のカッティングヘッドを装備し,テールが新スプールに巻き取られると同時にそれらを高速(2m/秒)で全幅方向に展開し,実にスムーズな枠換えを可能とすることにより,著しく損紙を低減し,また巻きむらもなく,スプールの回転バランスを良好に保ち,センターのテール切り出し位置で1本だけ使用する特別設計のグースネックのエアーコアンダー効果利用テール誘導により,テールは確実に新スプールに捕捉,巻き取られて,枠換え開始指令から2個のカッティングヘッドが左右の待機位置に復帰するまで所要時間僅か2秒足らずと言う短時間に失敗のない確実な枠換を行う。欧州,米国を中心に実績を伸ばし,本装置を採用した欧米の顧客からは,その確実な枠換えパーフォーマンスに,そして著しい損紙削減率と生産性の向上に絶賛を博している。
    今回は,その高機能と装置構成について報告する。
  • ―フェルトコンディショニングとドライヤーコーティング技術―
    関山 芳紀
    2006 年 60 巻 5 号 p. 712-717
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    近年,ソフトネス向上対策やマシン改造にともない,従来に較べてヤンキードライヤー(以下,YDと記述する)の表面温度が低く,かつ紙の持ち込み水分が高くなるケースが増えてきている。この場合,YD表面にコーティング皮膜が形成されにくくなるため,ドクターの摩耗が早くなり断紙も発生しやすくなる。当社では,独自のクレーピング技術「超潤滑クレーピング」を開発しており,国内外の家庭紙メーカーにおいて,40台を越えるマシンに採用されている。これは,潤滑性のパウダーを含むコーティング層により,YDの保護を行うと共に,ドクターブレードとYDの間の摩擦を最小限に抑えるものであり,ドクターブレードの交換周期が5倍に延びるなど,生産性と品質を向上する上で有効な手段である。
    一方,原料の質が変化する中で,フェルトのコンディショニングが重要な課題となってきている。当社の開発したフェルト汚れ防止薬品「メンテクリーン」は,フェルト汚れによる小穴,フェルト目詰まりによる水分プロファイルの不均一性といった問題に対し,大きな効果を発揮している。特に,フェルト汚れ防止薬品の選定がYDにおけるコーティング特性に影響していることは,注目すべき現象であり,本報告では,フェルトとYD表面のコンディショニング対策を複合した事例についても報告する。
  • ―MAGNUSプログラムとレマックススパイラルリファイナープレート―
    伊藤 健一, 竹下 陽介, ペーター アンテンスタイナー
    2006 年 60 巻 5 号 p. 718-723
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    MAGNUSシミュレーションプログラムは自然なリファイニング効果の原理により,全ての繊維の種類及び低濃度リファイニングの条件において,シミュレーションすることが可能である。シミュレーションによって得られた理論値は,単に幾何学的な解析と経験論だけではなく,細かな繊維特性とリファイニングの圧縮作用(係数,回数)の相関を示すことができ,より現実的な信頼性のあるシミュレーション結果を導き出せることが可能となった。
    このMAGNUSシミュレーションコンセプトにより,新しく開発されたLemaxX Spiralプレートは,省エネ,強度向上用対数曲線プレートとして,様々な用途の低濃度リファイニングにおいて評価を得ている。
  • 環境技術委員会 , 環境保全委員会
    2006 年 60 巻 5 号 p. 724-739
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    本調査はアンケートの回答が得られた102工場の2002年度の排水処理操業実績を基にして,前回1991年度に実施した調査結果と比較しながら,日本の紙パルプ産業の排水処理の変化についてとりまとめたものである。調査データは2002年度のパルプ生産量(但し,離解古紙パルプとDIPは除く)の98%,紙板紙生産量の89%をカバーしている。
    この11年の間,日本経済は停滞を続けてきたが,この間パルプ生産量は9%減少し,紙・板紙生産量についても10%の増加に止まった。102工場の中で,1/3の工場は年間30万トン以上の製品を製造し,72%はパルプと紙・板紙を生産している一貫工場であり,31%はクラフトパルプ工場である。
    50%の工場が排水を河川に放流し,41%の工場は海域に放流している。閉鎖性海域(東京湾,伊勢湾,瀬戸内海)には30%の工場の排水が流入している。
    近年の日本における環境保全意識の向上を背景にして排水規制は一段と強化され,SSとBODの排出規制値の日間平均濃度はSS,BODが20%,CODは10%低下した。
    これに対応するため各社の弛まない削減努力の結果,製品あたりの排出原単位はSSが29%,BODは42%,CODは30%低下し,新水原単位についても16%減少した。2002年度の平均排出原単位はSSが2.6kg/t,BODが2.8kg/t,CODが7.4k/t,平均新水原単位は88m3/tである。
    排水処理方法は依然として凝集沈殿処理が主流ではあるが,いつくかの生物処理を含めた多段処理が普及してきた。活性汚泥処理では空気曝気処理から酸素曝気処理への転換が進み,工程排水のBODやCODの50%以上は活性汚泥処理によって除去されている。
    排水処理の平均要員は4.7人であり,1991年度と比較して1/3にまで減少した。
  • ―第5回ヨハンガリクセン討論会(フィンランド)に参加して―
    江前 敏晴
    2006 年 60 巻 5 号 p. 740-747
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    2005年11月17日に,フィンランドのヘルシンキで開かれた第5回ヨハンガリクセン討論会に参加した。この討論会は,現在ヘルシンキ工科大名誉教授であるJohan Gullichsen氏が,若手技術者や研究者に発表の場を提供するという趣旨で始めたものである。第5回を迎える今回は,“原料と製造工程―製品の視点から”というテーマで開かれ,5つのカテゴリーと8つの口頭発表が行われた。大規模ではないが,北欧だけでなく世界中からの発表が網羅されている。これらの発表の概要を報告する。
  • 平井 健二
    2006 年 60 巻 5 号 p. 748-750
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    2004年9月から2005年8月まで,アメリカ合衆国メイン州立大学に留学する機会を頂き,化学工学科内のPaper Surface Science Program(PSSP)に1年間に渡り研究員として在籍し,研究活動を行った。本留学を通して,紙パルプ分野の研究者たちと触れ合い,塗工分野の知識を学ぶことができたのに加え,1年間の海外生活の中で,異文化に身を置き,異なるバックグラウンドを持つ人々と交流することができた。本報告ではメイン州立大学の研究活動及び,留学を体験した著者の感想を記す。
  • 木材科学委員会
    2006 年 60 巻 5 号 p. 751-759
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
研究報文
  • 眞柄 謙吾, 池田 努, 杉元 倫子, 細谷 修二
    2006 年 60 巻 5 号 p. 761-772
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    高温,低pH条件下でクラフトパルプを二酸化塩素漂白した場合に,AOX生成量が減少すると報告されているが,その原因について検討した。
    初段二酸化塩素漂白の温度を70℃から95℃にした時,顕著なAOXの減少が確認された。AOXは,二酸化塩素の還元により生成した塩素のリグニンなどへの置換反応によって生成すると考えられる。リグニンの塩素化には,この置換反応と酸化反応があり,温度が上昇すると置換反応に比べて酸化反応がより促進されるとの知見がある。よって,高温二酸化塩素漂白では,生成した塩素が酸化反応に迅速に消費されることにより,見かけ上置換反応を抑制し,AOXが減少したのではないかと推定する。
    次に,初段二酸化塩素漂白の漂白時間を15分から90分に延長した場合にも,漂白温度の上昇と同様にAOXを減少させる効果があることを確認した。この二酸化塩素漂白では,同時にヘキセンウロン酸の加水分解を行うため低pH条件に設定されているが,その条件ではリグニンの一部も加水分解される。しかしながら,この条件下で,AOXが減少するために必要となる脱ハロゲン化反応が同時に生じているとは考え難い。そこで,二酸化塩素漂白で生成するとされる数種の有機塩素化合物を酸性水溶液中,95℃で90~120分間加熱したが,AOXの減少を説明できるような脱ハロゲン化や著しい分解は認められなかった。それゆえ,AOX減少のメカニズムを解明するためには,さらなる検討が必要である。
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