製紙業界では,生産性向上のため抄紙機械が大型・高速化し,それにともないプレスパートでは,搾水用のプレスロールに耐久性と安定性が求められるようになる。その結果,天然資源である花崗岩を用いた「ストーロール」からセラミックへとプレスロール表面材質が転換した。
弊社では,いち早く,この製紙業界のニーズに応えるためプレスロール用セラミック皮膜へ溶射技術を適用し,「KX ROCK」溶射皮膜を開発し,現在まで,100本以上のプレスロールを国内外を問わず製紙メーカへ納入させて頂いている。
花崗岩ロールの代替品としてのプレスロール用セラミックス皮膜には,安定操業を達成するための機械的強度,耐摩耗性あるいは耐食性が要求されるとともに,製造紙の品質を向上させるために,ロール表面への粘着物が付着しない非粘着性や最適ドロー特性,いわゆる良好な“紙離れ”性が絶対条件となる。
弊社が開発した「KX ROCK」溶射皮膜の最大の特徴は,天然花崗岩と同等あるいはそれ以上の“紙離れ”をその表面に有することである。優れた紙離れ性は,セラミックの材料選択,溶射条件,機械加工による表面性状調整によって達成される。その結果,ドロー特性が飛躍的に向上し,抄紙機械の安定操業に貢献することが可能となった。加えて,「KX ROCK」皮膜は,耐摩耗性と耐食性にも優れ,長期間のメンテナンスフリーを達成し,ロールを長寿命化することでランニングコストの削減でも評価されている。
そこで,本報では,弊社における「KX ROCK」溶射皮膜の開発過程で得られた知見と実機でのその効果について紹介する。
抄録全体を表示