静岡県富士市内のPS協同処理組合から排出された炭化PS(CPS)を原料とする炭化PSゼオライト(CPSZ)の量産可能性を検討した。具体的には,同組合から排出されたCPSについて,(1)300mL三角フラスコを用いた実験室スケールでのCPSZの合成基本条件の確立を行い,その条件にて,(2)50L煮沸式反応槽を用いたセミプラントスケールでのCPSZの合成実験を行い,スケールアップの可能性を検討した。さらに,それらの結果をもとに,(3)CPSZの用途を提案した。詳細を以下に示す。
1)300mL三角フラスコ(溶媒容量20mL)を用いた実験室スケールでのCPSZ合成実験から以下の3点の結論を得た。(1)流入空気を抑制する炭化焼成は,通常の焼成に比べて酸素分圧が低下し一酸化炭素及び二酸化炭素分圧が上昇するため,PSを構成するカルサイトの脱炭酸分解が抑制される。その結果,ゼオライト合成を阻害するCaO生成が抑制されるため,炭化焼成はゼオライト合成に適する焼成方法である。(2)炭化PSと灰化PSのゼオライト合成物の鉱物組み合わせは基本的に同じであることから,炭化物の共存はゼオライト合成に影響を与えない。(3)供試体のCPSの場合,人工ゼオライトの最も一般的なゼオライト種であるNaP1を結晶化させるためには,3MNaOH水溶液を用い,沸点維持2時間の条件で,Siを0.5M添加する水熱合成条件が最適である。
2)50L煮沸式反応槽を用いたセミプラントスケールでのCPSZ合成実験から以下の2点の結論を得た。(1)300mL三角フラスコ(溶媒容量20mL)の実験室スケールで合成したCPSZと,同一の合成条件で50L煮沸式反応槽を用いたセミプラントスケールで合成したCPSZは基本的に同じ鉱物組み合わせを有することから,溶媒容量で2,000倍(40L/20mL)にスケールアップが可能である。(2)CPSを構成する炭化物の比表面積は,ゼオライト転換を目的とするアルカリ水熱合成により55.2m
2/gから170.5m
2/gと約3倍に腑活化された。
3)以上の実験結果から,CPSZを構成するNaP1の高いイオン交換能と賦活化された炭化物の吸着能を利用して,水溶液中で各種陽イオン,極性有機分子等に対する吸着材(製紙排水処理剤)としての用途が有望である。
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