紙パ技協誌
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63 巻, 1 号
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新年のごあいさつ
第51回-2008 年紙パルプ技術協会年次大会
基調講演
平成20年度佐々木賞講演
  • ―革新的低濃度パルパ研究開発の経緯―
    岩重 尚之
    2009 年 63 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    VOITH IHIが販売を開始した「インテンサパルパ」は,従来の低濃度パルパの常識をくつがえす性能をもった新型パルパであり,本年度の「佐々木賞」を受賞するにいたった。
    本講演では,VOITH IHIがこの高性能新型パルパの開発を開始したいきさつと,弊社製紙研究所における開発段階と王子板紙大分工場殿における実機検証段階の検討内容について紹介する。
    また,この最新型パルパの導入によってパルピングシステム以外で得られるメリットについても簡単に説明をする。
  • ―製紙排水汚泥の脱水―
    松本 光司
    2009 年 63 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    排水処理で使用される汚泥脱水機は汚泥の減量化,固形化を行う重要な機器である。汚泥脱水機は排水処理の低コスト化のみならず,近年関心が高まっているCO2排出による地球温暖化現象の防止を実現するために高脱水,省エネルギー,効率性を求められている。これらのニーズに対応するため,巴工業株式会社はロータリプレスフィルタをカナダのフォーニャ社から導入し,改良を加え,製造,販売している。ロータリプレスフィルタの認知度は導入以来,年々高まっているところであり,採用件数は年々増加している。製紙排水汚泥の脱水用途としては13台(チャンネル数としては62チャンネル)の納入実績がある。また最大機種6チャンネル機は8台納入されている。ロータリプレスフィルタは,「高い脱水性能」,「低い消費動力」,「省スペース」,「少ない洗浄水量」,「臭気対策が容易」,「維持管理が容易」といった特徴を有している。これらの特徴が認められ,ロータリプレスフィルタはこの度佐々木賞を受賞した。このことは非常に名誉なことであり,これは製紙業界皆様方の御協力の賜物で,心より御礼申し上げる。
    本稿では,ロータリプレスフィルタの構造,処理性能および導入効果について紹介する。
一般講演
  • 後藤 任孝, 青木 功
    2009 年 63 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    日本製紙石巻工場は,平成19年に最新鋭の高速オンマシンコーターであるN6マシンを建設,同年11月に営業運転を開始した。また当工場ではこれに先立ち,N6マシンへDIPを供給するパルプ設備として,日産400トンの高白色新聞DIP設備(HDIP―2)を稼動させた。HDIP―2は近年の古紙品質低下にも対応出来るよう,異物やインキ除去に関わる最新の技術を導入したが,特にインキ剥離工程に関しては,今後古紙への混入率増加が予想されるUVインキやトナー印刷物にも対処すべく,相川鉄工株式会社と共同でニーディング力に優れた4軸タイプの新型ニーダー(商品名:UVブレーカー)を開発,HDIP―2の粗選工程に設置した。
    UVブレーカーは,従来型ニーダーの代表機器である2軸型ニーダーとの比較においてダート除去率に優れ,特に粗大ダート区分において効果が大きかった。また4軸のそれぞれのローターについて,回転数の違いによるダート除去効果についても実機で確認し,最適な回転数を見極めた。
    本報では,新型ニーダーであるUVブレーカーの開発経緯と石巻工場の実機操業によって確認したダート除去効果について報告する。
  • 木戸 信幸
    2009 年 63 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    王子製紙春日井工場の8号マシンは未晒クラフト紙を生産する設備として1962年から稼動している。現在では包装用紙,クラフトテープ用原紙などを抄造している。未晒クラフト紙は客先加工機の高速化や製品の多様化により,強度,伸び,カールなどの紙質に対する要求が高くなってきている。これら品質要求を満足するために2007年1月に紙質コントロール性の高い,高速ワイヤシェーキング装置であるフォームマスター(メッツォ社製)を導入した。重袋用原紙においては引張強度,引裂強度,透気度が重要品質となる。8号マシンでは横引張強度の余裕がなく,限られたJ/W比調整範囲の中で引張強度,引裂強度双方を満足させ,透気度を加味しながらの操業は,コントロール範囲が限定されたものであった。更に破断伸びの規格を満足するために,プレスのドローを緩めるため抄速を上げることができなかった。また,加工用原紙においても,加工機での耳部カールの問題から両端のシュリンケージを抑えるために,抄速を上げることができなかった。フォームマスター稼動後,最適なシェーキング設定を行うことにより引張強度,引裂強度,伸びのバランスの取れた紙質改善ができた。これによりマシン抄速を上げることが可能になり,更に紙力増強剤の削減も可能となった。
    本報では,フォームマスターの概要と操業経験について紹介する。
  • 新野 朋夫
    2009 年 63 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    2004年秋,新潟工場では汚泥焼却炉の老朽更新を行う検討を開始し,単なる焼却炉でなく製紙汚泥と木質系廃棄物及びRPFを燃料としたバイオマス発電ボイラとして構築し,エネルギーコスト削減の一助とする計画を立てた。折しも,バイオマス発電は資源エネルギー庁の新エネルギー事業推進の追い風を受けて翌年に着工し2006年12月に試運転を迎えた。
    導入したバイオマスボイラ設備は,(株)荏原製作所製 内部循環流動床ボイラ(ICFB)であり,設備能力は常用5.6Mpa×460℃ 蒸発量毎時65tを発生するものである。バイオマス燃料は,工場内で発生するPS(Paper Sludge)と建設廃材を破砕した木屑である。その他に補助燃料としてRPF(Refuse Paper and Plastic Fuel)を使用している。
    主燃料である木屑は建設廃材を主体とした構成であって,廃材中にはクギ・ボルト・ナット等の金属異物や砕石・石ころ・砂利等が含まれている。しかしロータリー式の供給装置は噛み込み防止機能を有し,通常サイズの異物であれば,炉内へ供給されていく。
    コンベア搬送能力については種々の改造を重ね,ようやく所定の搬送量は満足したものの,建設廃材である木屑の性状の水分やかさ比重などの変化によっては,いまだ解消されていない問題の一つである。木屑供給コンベアはチェーン部の磨耗が顕著であり,度々チェーンのコマ詰めを実施したりチェーン・スプロケットの入替えを実施している。チュウブフィーダーの磨耗進行も,同様に懸念すべき問題である。円筒の表面をパテ塗りして外部応力による磨耗の進行を防止する対策を実施した。
    バイオマスボイラの導入によって,工場で使用する発電用の重油使用量を削減することが出来た。
  • 滝代 政幸, 小鳥 幸夫, 井上 信一
    2009 年 63 巻 1 号 p. 54-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    新しい紙の光学特性に着目し,紙の内部散乱光特性を紙のMTF(MTF:Modulation Transfer Function)として評価する測定装置を開発した。紙の内部散乱光特性は,印刷における光学的ドットゲイン現象を説明できる物性値であることが知られている。また,紙の質感等にも影響を与えていると考えられる。画像解析や画質評価で確立されたMTFの技術を紙のような反射画像にも適用できると考え,この測定方法としてサイン波像投影法を提案した。本報告では,サイン波像投影法に基づき開発した紙のMTF測定装置を紹介する。この紙のMTF測定装置は,紙サンプルにサイン波像のテスト・パターンを投影する投影装置と,投影されたサイン波像のテスト・パターンの反射光量強度分布を計測するCCDカメラからなる。コート紙サンプルと上質紙サンプルを測定した結果,上質紙サンプルの方がコート紙サンプルよりも低いMTFを示しており,上質紙サンプルの方が光内部散乱が大きく,光学的ドットゲインが大きい現象を良く表している。ここで紹介した紙のMTF測定装置は実験機であるが,機構的には自動化も可能である。今後は更に汎用的な測定手法として確立させ活用していきたい。
  • 助野 真一
    2009 年 63 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    当社では需要が増加する木質資源確保のため,2010年までに海外植林面積を30万haにする目標を掲げている。東南アジアは重要な拠点のひとつであり,ベトナム(QPFL社)とラオス(LPFL社)で合計6万haを目標に植林事業を進めている。当研究所では,これらの植林事業におけるパルプ生産性の向上を主な目標としてこれまで取組んできた。
    ベトナムではアカシア雑種の選抜・植栽により生産性が飛躍的に向上し,現在は材質も加味した優良クローンの確保に取組んでいる。また採穂園におけるクローン管理や植林地における優良クローンの鑑定などにDNAマーカーによる識別技術を使用し,精度の高いクローン管理を行っている。
    一方,ラオスにおいては当初Eucalyptus camaludulensisを植栽していたが,試験地調査の結果,ユーカリ雑種クローンおよびアカシアの成長性が良いことが判明した。このため,これらの樹種による植林をおこなっている。ユーカリについては事業植林目標に見合う生産性を示す樹種はないことから,種間雑種の創出を目指している。このため既存および新規導入遺伝資源から順次優良木の選抜を開始する計画である。
  • ―竹林からの紙作り―
    川田 正人
    2009 年 63 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    森林保護や地球温暖化対策として古紙やケナフなどに代表される非木材原料が注目され始めており,ケナフやバカス,タバコ葉まで調査していた。一方,中越パルプ工業(株)川内工場がある鹿児島県は,全国一の竹林面積を有し,たけのこの産地でも有名である。竹林の管理には伐採が欠かせないが,伐採された竹は有効活用がなく放置されていた。
    鹿児島の竹という地域特性を活かした原料で紙を作ることができないか調査・研究し,地域の環境や森林保護,地域経済へも貢献できると考え竹からの紙作りをはじめた。
  • ―PPC用紙のカール品質の向上―
    弥冨 秀徳, 藤山 道博, 山辺 義貞, 山本 准司, 轟 英伸, 小野 克正, 越智 隆, 佐々木 尚史, 佐野 博文
    2009 年 63 巻 1 号 p. 66-69
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    これまでPPC用紙における繊維配向の調整は,オンラインやオフラインの繊維配向計の測定結果を基に熟練オペレーターの経験や感覚により操業条件や各アクチュエーターなどを調整していた。特に,オフラインの測定結果を用いる場合には,サンプリングから測定,その後のマシン条件の調整までのタイムラグがあるために迅速な対応は困難であった。
    今回,我々は横河電機(株)と共に繊維配向角を整えるための新しい自動制御システムの共同開発に成功した。このシステムは,オンライン繊維配向計のデータを基に,ヘッドボックスのスライスリップアクチュエーターとエッジフローバルブをフィードバック制御させることで,表面と裏面の配向角差を極小化することができる。また,スライスリップアクチュエーターの状態変化に伴う坪量等の幅方向プロファイルの乱れを修正することができる。
    2007年から実機において本システムの有効性と安定性を確認するためにフィールドテストを実施した。その結果,これまで抄出し直後や銘柄変更の際に,オペレーターが繊維配向角プロファイルを収束させるのに約1~2時間要していたのに対し,本システムを導入することでオペレーターによる操作の介入が皆無となり,プロファイルの収束時間も大幅に短縮することができた。さらに,連続的に制御させることによりねじれカールの小さいPPC用紙を安定的に生産することが可能となった。
総説・資料
  • ―2008年8月24日~29日ポートランド(米国)にて開催―
    後藤 至誠, 大島 玲子, 永谷 宏幸, 岡田 比斗志, 豊福 邦隆
    2009 年 63 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    TAPPI主催の2008 Engineering, Pulping, Environmental Conference(EPE)とInternational Bioenergy and Bioproducts Conference(IBBC)が5日間連続して米国のポ―トランドで(8月24日~8月29日)開催された。二つの会議を連続して開催するのはTAPPIでも初めての開催であろう。参加者の便利さと参加者が増えることを期待してのことと考えられる。EPEで98の講演,IBBCで30の講演が行われた。IBBCは今,バイオリファイナリーとして製紙産業でも注目されている分野を取り上げたものである。全体の参加者は約600名である。日本からは紙パルプ技術協会代表としての豊福専務理事を含め5名が参加した。日本からの発表はEPEでの1件である。
    大会の前後で,Weyerhaeuser社の植林地とTAPPIの本部を訪問したので併せて報告する。
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