重油価格,エネルギー安全保証,地球温暖化対策に対する関心が高まり,バイオマス燃料の工業化に対する需要は強い。しかし,実用化しているのは米国のトウモロコシとブラジルのサトウキビだけである。
ノースカロライナ州立大学は,様々なバイオマス原料と変換技術の組み合わせを総合的に評価し,南部広葉樹と家畜用トウモロコシ飼料をバイオマス原料とし,既存のクラフトパルプ工場設備を利用して緑液蒸解を行い,酢酸発酵でエタノール収率を上げる方法が最もコスト競争力が高いという結果を得た。
非木材繊維は安価だが収穫が年数回しかなく,嵩張るので年間を通して利用しようとすると貯蔵のための膨大な敷地が必要である。また長期間保存すると収率が低下するのでバイオマスの単独原料として使用することは困難である。しかし,木材チップと併用して非木材繊維を収穫時だけ配合すればコスト競争力が出てくる。
緑液前処理法は,木材中の炭水化物歩留まりが90%と高く,酸素脱リグニンと磨砕により酵素の加水分解率を改善できる。反応阻害物質が除去され,高濃度で処理することによって高い糖濃度が得られる。
酢酸発酵は,エタノール発酵よりも設備投資金が高額だが,収率がエタノール発酵よりも50%高い。酢酸バクテリアで糖を酢酸に分解し,精製した後,水素を付加してエタノールを生成する。
この技術はまだ開発の初期段階であり,工業化するためには,科学,技術,経済の分野で幾つかの課題があるが現実的で有望だと考えている。
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