東日本大震災により,石巻工場は大きな被害を受けた。速やかに復旧,復興を進めていくため,各種組織を設置し対応を進めた。
(1)救援対策本部
従業員の生活基盤を確保するため,総務・人事本部が中心となり「救援対策本部」を本社に設置し,被災地が必要とする物資の確認とその調達,補給を進めた。
(2)災害復興対策本部
被災工場に設置された「災害対策本部」と共に本社にも「災害復興対策本部」を設置し,本社と工場が一体となって復興を進めた。自宅が被災した従業員の住居確保やライフラインの確保等,生活基盤の確保を重点に進め,その後に設備の復旧,復興を進めた。
(3)復興支援チーム
工場内に流入した大量の瓦礫を速やかに撤去するため,被災工場以外の工場に「復興支援チーム」を編成し,重機と重機オペレーターを派遣して工場内の瓦礫撤去を進めた。
(4)電気・計装設備の復旧
抄紙機等がある工場の中心部には2~3mの津波が押し寄せ,1階にある設備が海水に浸かった。DCS及び各種制御機器類については高圧洗浄も活用し,機器類の約50%を復旧させた。
(5)地域貢献
石巻市の水産業,造船業などの主要産業が地震,津波により甚大な被害を受け,発生した瓦礫は830万tを超えた。石巻工場ではこれらの瓦礫のうち,木質系瓦礫を燃料として年間約12万トンを受け入れ,1号バイオマスボイラーで焼却処理する取組みを開始した。発電した電力の一部を東北電力に最大4万キロワット(一般家庭約10万世帯相当)供給し,地域に還元する取り組みを開始した。
(6)自然災害に強い工場を目指して
今回の災害を教訓にして,企業の社会的使命をどのように果たすのか,従業員の生命をどのように守るのか,製品やサービスの供給を如何に継続していくか,危機に直面したときの企業経営のあり方を考え直す機会となった。『復興』という一つの目標に従業員が一致団結し,震災半年後で抄紙機を稼動することができた。本報告が,今後の業界各社の防災対策検討に,少しでも参考にして頂ければ幸いである。
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