紙パ技協誌
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66 巻, 12 号
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環境特集
  • 環境技術 委員会
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1305-1306
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
  • ―政治権力と環境ガバナンスの関係から見た製紙産業の将来―
    尾鍋 史彦
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1307-1316
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    現代中国の歴史は1978年の鄧小平による改革開放政策への転換を一つの分岐点とする。転換後急激な経済成長を遂げ,GDPで世界2位,紙・板紙の生産と消費において世界一となったが,経済成長の過程で環境保護の政策順位が低かったのと資金不足のために,環境汚染の拡がりは深刻な状態にある。中国は1972年の国連人間環境会議に代表が出席後,1973年には第1回全国環境保護会議を開催し,その後本格的に環境行政機構や法の整備を行い,1979年には環境保護法(試行)を制定した。そのため現在では中央の行政機関としては国務院が,環境保護の主務官庁としては国務院直属の国家環境保護局があり,地方にはその下部組織が存在し,企業の工場が違法排水などで環境汚染をした場合には監督・管理や違反の告発と是正の要求,処罰など行うための,環境ガバナンスの仕組みはできており,理論上は環境汚染の拡大を抑制できるはずである。しかし問題は工場が立地する地方の環境保護局が違反を告発しても,投資を拡大し地方の経済発展を優先し,GDP偏重に陥りがちな地方政府が,必ずしも環境法規を適用・執行し,強く取り締まろうとはしないという現実がある。さらに中国共産党を頂点に抱く中央の権力機構とその地方組織が環境ガバナンスに直接的・間接的に影響力を発揮するという問題がある。
    本稿では2012年11月の中国共産党第18回全国代表大会後の政治権力の変化が,どのように環境ガバナンスに影響し,さらに製紙産業の将来に影響するのかを,現在進行中の第12次五か年計画やその背後の科学発展観や和諧社会という中国共産党の指導思想,さらに筆者の北京や上海での会議や展示会参加での経験,資料の分析などから考察した。
  • 井上 保雄
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1317-1332
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    騒音防止対策の進め方は,従来の対症療法的な対応から,最近は未然防止の対応へと変わりつつあり,機械・工場等の騒音は計画あるいは設計段階で配慮されるようになってきている。ここでは,騒音・低周波音の基礎,対策の目標,基準・指標,調査・対策の進め方,防止技術,配慮事項等について説明する。
    騒音あるいは低周波音が望ましくない理由は,
    1)人間の聴覚に悪影響を与える(聴力損失)
    2)作業の邪魔になる(作業効率低下)
    3)睡眠等,生活環境に悪影響を及ぼす(生活妨害)
    とされており夫々に対応した規制,基準,あるいは目安が決められている。
    調査・対策の進め方については,下記の2つがある。
    1)既に問題になっている場合は,現地で調査・診断・測定が可能であるので発生個所の確認,対象地点に及ぼす個々の影響度合いを確認することから始める。
    2)未然に防止したい場合は,実際に物が無いのでシミュレーションにより各騒音源の対象地点に及ぼす影響の度合いを知ることから始める。
    対策の検討にあたっては,防音性能のみでなく,(1)美観,景観との調和,(2)本来の性能を損なわない,(3)安全性,(4)保守経費,(5)操作性,(6)環境保全,(7)安全性,(8)経済性,を幅広く留意することが大切である。
    騒音・低周波音防止技術には,(1)距離減衰,(2)消音器,(3)防音壁,(4)防音カバー,(5)防音ラギング(吸音材で覆う手法),(6)固体伝搬音の防止(機械を防振し加振力が床に伝わりにくくする手法),(7)制振処理(振動源から伝わる振動を吸収する手法)などがある。
  • ―凝集剤の特性と効果的活用方法―
    牛山 保
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1333-1339
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    工場建設当時とは工場排水の種類,質・量とも大幅に変化している場合が多く,排水処理の安定化を図るのに苦慮される例が散見される。この様な状況の中であっても,設備の急な改造・更新は難しく,既設設備のまま処理を安定化させる必要があり,排水設備運転管理者においては,凝集処理の原理,薬剤の特性を理解し,最適に運用することが求められる。ここでは,凝集沈殿の基本と実際について凝集剤の特性と効果的な活用方法という観点から述べる。
    凝集処理では凝集沈殿槽内でいかに早く,懸濁物質と水を固液分離するかがポイントとなる。凝集剤は通常無機凝集剤と高分子凝集剤が併用される。まずプラス(カチオン)の荷電を持った無機凝集剤を添加し荷電中和(凝結作用)を行い微細フロックを形成させ,その後,高分子凝集剤(アニオン,ノニオン性)を添加し微細フロックを架橋凝集作用により大きなフロックとする。
    無機凝集剤はポリ塩化アルミニウム(PAC)や液体硫酸バンド(バンド)のようなアルミニウム系と塩化第二鉄やポリ硫酸第二鉄のような鉄系が用いられる。これらの使い分けで大切なのは,無機凝集剤には効果を発揮するために有効なpH領域があり,それぞれの金属水酸化物が形成されるpHが有効領域となる。その他に重要になるのは凝集攪拌条件と添加順序である。
    高分子凝集剤は凝結剤によって形成された一次フロックを架橋作用によって大きなフロックにするために使用される。高分子凝集剤の物性のうちで効果に与える影響が大きいものは,分子量とイオン性である。一般的には,分子量は大きいものほど低添加量で効果を発揮する。有効なイオン性はpHおよび無機凝集剤の添加量によって変わってくる。pHが一定の条件で無機凝集剤の添加量が少ない時は,アニオン性の効果が良く,多い時はノニオン性が良好となる。
    現場で凝集不良の問題が発生した場合,手順に沿って現象から原因を推定し,対策を講じる必要がある。
  • ―原因究明と対策―
    富澤 進一
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1340-1349
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    多くの廃水処理施設に於いて処理障害が多発しているが,特に生活系排水よりも産業系廃水がその多くを占めている。
    この根本的原因は,
    (1)負荷算定の誤り
    (2)DO(溶存酸素)の取扱い
    (3)活性汚泥の性質の認識不足
    によるところが多い。
    BOD5日は本当の負荷ではなく,実際の負荷はBOD20日で測定すべきである。これは公共下水道のようにSSの多くが無機質であれば問題ないが,工場廃水ではSSの多くが有機質であり且つ溶解性であることに由来する。施設の多くは概ねBOD5日の1.3倍~2倍のBOD負荷がかかっているのである。
    DOは溶存酸素であり,活性汚泥が利用し尽くした後の余りの,余存酸素ではない。真に酸素が足りているか否かは「酸素消費速度」を測定するか「顕微鏡観察」によるしか術が無い。
    一部の研究者の間では,活性汚泥が粘性物質(アラビノースやマンノース等の高分子多糖類)を異常代謝することが知られており,これがバルキングや発泡など多くのトラブルの原因となっているのであるが,廃水処理の現場では認識されていないのが実情である。
    廃水の性状が活性汚泥に与える影響は無視できないが,前述の三点を解決しない限り処理障害から脱却することはできないので最優先課題である。
    本論文ではこれらの原因解決策と対処法を設計と運転管理の立場から述べる。
  • 坂本 大
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1350-1354
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    東日本大震災以後,企業は保有する資産を大きく占めるCREを,企業価値を向上させる経営資源として,そして自社の成長戦略の一環として最適かつ効率的に運用することが求められている。
    こうしたCRE戦略を展開するに当たっては,阻害要因となる可能性の高い「土壌汚染リスク」を予め把握し,経営へのインパクトを最小化しながら,不動産資産を活用,流動化を図ることが重要となる。
    そのためには,地歴調査,資料等調査などと呼ばれる土地利用履歴を確認する調査などのスクリーニングをかけた上で,ダメージが大きく,リスクが高い可能性があると評価された不動産を,次ステップとして現地調査を実施し,定量的に評価するといった段階的なアプローチが望ましい。
    また,複数の事業所をある評価軸で並列に評価する場合の手法として,リスクレベルマトリクスの概念を紹介する。これは土壌汚染ダメージを構成する「汚染発生のおそれ」と「周辺環境への影響」の2つの評価軸をもとにマトリクス表示したものとなっている。
    こうした概念を踏まえ,企業はまず所有不動産を土壌汚染リスクの観点からスクリーニングしておき,売却を検討する進捗に応じて,より精度の高い調査をしていくこと,そして土壌汚染が顕在化した不動産については,コストの低い土壌汚染対策手法を適用しながら,売却のみならず保有しながら有効活用を図っていくことも念頭に入れて,土地活用を検討することが望まれる。
  • 大西 忠一
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1355-1361
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    廃棄せざるを得ないものが残ったとして,それを如何に処理するかには克服すべき課題がいくつかある。
    第一は安全確実に無害にでき,長期にわたって信頼できる方法であるべきことである。一旦無害化しても自然環境の中でいつしか有害な状態に戻ってしまっては意味がない。
    次いで,残余や新たな廃棄物を生み出さないことも重要である。廃棄物を処理して廃棄物を生み出したのでは,これまた意味がない。さらには,経済性に優れることも必須である。現代のような経済社会では,捨てるものに投下できる資本量は自ずと限られるからで,良いことだからやるべし,と強制はできない。こうした条件下において,如何にして循環資源化するかが問われる。
    本稿では,焼却灰や煤塵といった廃棄物を無害化しリサイクルするための方法として,MLG・スーパーと称する処理薬剤による化学的不溶化と,セメント固化による封じ込め効果を併用した方策を紹介する。
    処理薬剤は,有害な重金属類を効果的に不溶性化合物に変え,安定固定化する。不溶化した化合物を,セメント固化時の水和反応によって形成される固化ネットワーク構造中に置換固定することで,一層の効果的な無害化が実現できる。
    このような方法によって形成された処理物は,長期の安定した無害化が保証されるので,リサイクル利用に適している。
  • 鑪迫 典久
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1362-1369
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    排水や環境水の生物応答を用いた評価や管理手法である全排水毒性試験に関する。
    WET規制は米国で既に行われており,欧州で行われている国々もある。
    米国で行われているWET規制は,事業所排水に含まれている化学物質を特定せずにin vivoのバイオアッセイの結果を利用して排水規制を行う方法である。
    米国がWET試験を行うに至った理由は,排水中の汚染物質の毒性を,単独の化学物質によって管理することは難しいという基本概念による。
    米国では,WET試験を導入して排水の判断基準を設定した場合,基準を超過する排水における毒性を低減しなければならない。このための一連の手順がEPAによって毒性削減評価(TRE:Toxicity Reduction Evaluation)として定められている。また,TREのなかで毒性原因物質を探索する手法が毒性同定評価(TIE:Toxicity Identification Evaluation)とよばれる。
    2009年から,環境省では米国のWETを参考にして,生物応答を用いた排水の評価管理システムの構築を検討している。
  • 三浦 正史
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1370-1374
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    平成元年の水質汚濁防止法の改正により,有害物質の地下浸透規制が設けられたが,近年においても,工場・事業場が原因と推定される有害物質による地下水汚染事例が毎年継続的に確認されている。地下水は都市用水の約25%を占める貴重な淡水資源である。しかし,地下水汚染は,原因者の特定が難しく,自然の浄化作用による水質の改善が期待できないことなどから一度汚染すると回復が困難であるため,地下水の水質を効果的に保全していくためには,汚染を未然に防止することが重要である。
    工場・事業場からの地下浸透事例の多くが,生産設備・貯蔵設備等の老朽化や生産設備等の使用の際の作業ミスといった,非意図的要因によることが,環境省の汚染事例調査によって明らかとなった。この結果を受け,地下水汚染を未然に防止するための新たな制度が,『水質汚濁防止法の一部を改正する法律』により設けられた(平成24年6月1日より施行)。
    具体的には,
    (1)有害物質貯蔵指定施設を水濁法の届出対象とするなどの対象施設の拡大
    (2)有害物質使用特定施設等に対する構造等に関する基準(構造,設備,使用の方法に関する基準)の遵守義務等の創設
    (3)有害物質使用特定施設等に対する定期点検の義務の創設
    である。
  • 日比野 雄志
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1375-1378
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    王子グループでは,1997年1月に環境憲章を制定し環境経営に取組んできた。
    今回は,特に地域住民との情報交流や社会貢献活動といった環境コミュニケーションに積極的に取り組んでいる都市型工場である,王子製紙春日井工場の取組み事例を紹介する。
    王子製紙春日井工場は,主力のコート紙をはじめ上質紙,中質紙,クラフト紙,ティッシュ,紙おむつ等を生産する総合紙パルプ工場である。名古屋市の北東部に位置する人口31万人の春日井市の中心に位置し,社宅地区を含めた敷地面積は約84万m2と,春日井市の全面積の約1%弱を占める。名古屋市近郊の発展とともに急速に都市化が進み,工場を取り巻く環境が大きく変わってきた。
    環境コミュニケーション活動は下記がある。
    1)地域住民との情報交流として,
    (1)製紙工場周辺地域連絡会(環境情報の説明)
    (2)庄内川中流部整備問題研究会(庄内川水系の改修計画や環境保全計画等の情報交換)
    (3)環境モニター会(地域住民の方へ依頼している環境モニターとの情報交換)
    (4)かすがい環境まちづくりパートナーシップ会議(市民,春日井市,企業が共同して環境の改善を図る組織)がある。
    2)地域社会活動として,
    (1)工場見学(周辺地区の学校,自治体等による工場見学)
    (2)王子バラ園(工場社宅地区のバラ園を開園し地区住民の方々のふれあいの場を提供)
    (3)少年野球大会開催(工場敷地内の野球場の提供,野球教室)
    (4)社宅地区における桜祭り,納涼祭り
    (5)庄内川・地蔵川清掃
    (6)使用済み割り箸のリサイクル活動
    (7)その他行政主催のイベントへの参加がある。
    王子グループではさらなる環境改善を目的に,2015年に向けた環境への取組み目標として新たに「環境行動目標2015」を掲げた。
  • 芝田 衛
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1379-1382
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    日本製紙足利工場の総合排水は,水質上は全く問題ないが,より近隣住民に対する環境改善を図ることを目的に解析を行い,対策を進めた。結果,放流水の着色が大きく改善され,河川の美観に寄与することが出来たので,改善に向けた取組み内容について報告する。
    排水処理設備は前段の凝集沈殿槽としてクラリファイヤーがあり,その後,表面曝気式生物汚泥処理装置として担体流動床10槽があり,後段の凝集沈殿槽として3連のクラリファイヤーの構成となっている。
    特に後段凝集沈殿槽の構造上の特徴ならびに引抜き汚泥の脱水能力不足もあり,安定的に引抜き汚泥を処理することに操業上の問題があった。水質調査の結果,排水処理系内の嫌気部分で硫酸塩還元菌が活性化し,硫化水素が発生し更に溶存硫化物になった際に酸化が起こることで硫黄の析出,着色が起きていることが分かった。
    そこで操業サイドで検討を重ね,後段凝集沈殿槽での汚泥腐敗防止を図る目的で汚泥脱水能力向上,汚泥引抜き方法の変更を実施した。さらに凝集剤変更による凝集力アップならびに生物汚泥処理槽での最適化によるBODカット率の向上が可能となった。
総説・資料
  • ―2012年6月10日~6月14日ストックホルム(スウェーデン)にて開催―
    嶋岡 隆行
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1383-1386
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    スウェーデン,ストックホルムのClarion Sign Hotelにて,6月10日~6月14日の5日間にわたりInternational Paper and Coating Chemistry Symposium & International Paper Physics Conference(IPCCS & IPPC)が開催された。
    本学会は,IPCCSとIPPCが初めて同時に開催されたこともあって,非常に大きな学会となった。主催者であるInnventiaとスウェーデン王立工科大学によると,出席者総数は約400名,24ヵ国から参加があった。15のセッション,138件の口頭発表,40件のポスターセッションが行われた。
    ナノ材料に関連した発表が多数あり,紙・パルプへのナノテクノロジーの利用が注目を集めていることが伺えた。とりわけ,nanofibrillated cellulose(NFCe)やcellulose nanocrystals(CNCs)といったセルロース由来のナノ材料に関する発表が目立ち,聴講者数も非常に多かった。NFCeやCNCsの製紙用途への利用や,包装資材への利用を見据えたバリア性評価などの発表が行われた。多くの機関,大学にて研究が行われており,今後の急速な進展が期待される。
  • 福田 聖
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1387-1391
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    フランス・グルノーブルにある紙パルプ印刷研究所LPG2(Laboratoire de Génie des Procédés Papetiers)は,紙パルプ及び印刷科学を専門分野とする研究組織としては世界でも数少ない国立の研究機関である。LGP2には,教職員,博士課程学生やポスドク研究員など総勢100名前後が在籍しており,紙パルプ及び印刷科学の基礎研究からセルロース系材料や印刷技術等をベースとした各種応用技術の開発まで幅広い研究テーマに精力的に取り組んでいる。
    LGP2の大きな特徴の一つに,紙パルプ及び印刷科学分野の技術専門学校であるPagora―INP(École internationale du papier, de la communication imprime´e et des biomatériaux)を併設している点が挙げられる。特にPagora―INPは,所謂グランゼコールに相当する教育機関であり,3年間の専門教育でフランス国内外を問わず紙パルプ・印刷分野の将来をリードできる人材を育成する役目を担っている。また,LGP2に在籍する学生や研究員の約半数はフランス国外からの外国人で構成されているほか,フランス国外の大学や研究機関との共同研究や人材交流にも積極的である点も特筆に値する。このように,LGP2及びPagora―INPは,フランス国内に留まらず欧州圏内における紙パルプ及び印刷分野の主要な一研究拠点であると言える。
    本稿は,LGP2に2年間研究活動に従事した執筆者の経験を踏まえて,LGP2及びPagora―INPの概要を紹介する。併せて,フランス・グルノーブルの街の様子や当地で生活する上で留意した方が良いポイント等についても言及する。
  • 2012 年 66 巻 12 号 p. 1392-1397
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    (注)「Felt」は,一般的に「フェルト」と呼称されており,当社の製品名もそれに倣っています。そのため以下の紹介文では,当社製品名や一般的なフェルト製品を指す場合は,全て「フェルト」と表記いたします。
    因みに日本フエルト株式会社の社名は,通常「フェルト」と表記される「ェ」が大文字の「エ」となっています。
シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (91)
研究報文
  • ―ダイオキシン類の排出量および発生量の減少―
    川崎 和人, 寺田 勝一, 豊田 和昌, 金子 令治
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1401-1407
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    当研究所では王子製紙,日本製紙の二社工場のパルプ製造工程の無塩素(ECF)漂白転換によって排水がどのように変化するかについて,ECF転換前後の各種排水やパルプに含まれるEOX,AOX,有機塩素化合物(クロロフェノールなど)やダイオキシン類などの塩素関連化合物の調査を行ってきた。前報までに,漂白剤を塩素から二酸化塩素に置換するとパルプ漂白工程からの吸収有機ハロゲン(AOX)と抽出有機ハロゲン(EOX)の発生・排出量が大幅に減少したことを報告した。本稿では,ダイオキシンおよびジベンゾフラン(ダイオキシン類)について最近の調査結果について報告する。
    日本では国内で大規模な研究となる14晒クラフトパルプ工場でのECF漂白によるダイオキシン類の減少効果を調査した。漂白パルプ,漂白工程水および工場総合排水についてECF転換の前後にダイオキシン類濃度を測定し,発生・排出レベルを比較した。
    ECF漂白プロセスが導入された後は,ダイオキシン類の生成がすべての工場で大幅に抑制され,漂白パルプのダイオキシン類の発生レベルは転換前の1/50未満まで減少した。同様に,漂白工程水のダイオキシン類濃度は,ECF漂白プロセスに転換後に効果的に抑制され,転換前の1/20未満まで減少した。
    ECF転換後の工場総合排水のダイオキシンレベルは,日本の公共水域の環境基準である1pg―TEQ/Lを下回った。さらに,塩素漂白プロセスで特異的に生成するダイオキシン類の異性体は,ECF転換後に工場排水から検出されなくなり,ダイオキシン類の環境への排出が効果的に抑制されたことが確認できた。
    このように,既に二社14工場の総合排水からダイオキシン類はほとんど検出されず,漂白工程からの発生も認められず,世界的にも優秀なレベルとなった。
  • -Reductions of Emission and Generation of Dioxins in Bleached Filtrates, Bleached Pulps and Whole Mill Effluents-
    Kazumasa Toyota, Reiji Kaneko, Kazuhito Kawasaki, Katsuichi Terada
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1408-1415
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    We have reported effect of elemental chlorine free (ECF) bleaching for mill effluent in previous paper. As a result of change chemical substances for pulp bleach, the amounts of absorbable organic halogen (AOX) and extractable organic halogen (EOX) decrease to significant lower level when substitution of chlorine dioxide is used. A more recent survey for polychlorinated dioxins and dibenzofurans (Dioxins) are also studied.
    Effects of ECF bleaching on reduction of dioxins were investigated for 14 bleached kraft pulp mills in Japan, which is a largest study in domestic. Dioxins concentrations in the bleached pulps, bleached filtrates, and whole mill effluents before and after the ECF conversions were measured and compared.
    After the ECF bleaching process was introduced, the generation of dioxins was dramatically suppressed in all of the mills, and the dioxin levels were decreased by less than 1⁄50 after the ECF conversion. Similarly, the concentrations of dioxins of the bleached filtrates after the conversion also decreased by less than 1⁄20, strongly indicating that the shift of bleaching process to the ECF bleaching effectively suppresses the generation of dioxins.
  • ―白紙光沢の空間周波数解析―
    井上 信一, 小鳥 幸夫, 滝代 政幸
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1416-1424
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    光沢感は反射光量のみならず,その表面が鏡のように写しだす反射像の鮮鋭さに影響を受けることは経験的に知られている。このような評価は,画像工学では,鮮鋭さとして解析技術が確立されている。代表的な鮮鋭さの解析技術は,MTFを用いた空間周波数解析である。しかし,光沢のような印刷用紙の鏡面反射現象についてMTFを用いた解析はほとんど知られていない。
    著者らは,鏡面反射現象の物理特性として,鏡面反射点拡がり関数(SR―PSF)を提案し,この測定装置を開発し,印刷用紙を中心に鏡面反射点拡がり関数の測定とその解析について報告した(第1報)。本研究では,鏡面反射点拡がり関数から,鏡面反射MTF(SR―MTF)を求め,白紙光沢の空間周波数解析を試みた。
    SR―MTFを定義し,印刷用紙のSR―MTFを測定した。75度の鏡面反射において,SR―MTFは光の入射方向に解像力が低く,幅方向に解像力が高い扁平な2次元分布を有する特徴を明らかにした。印刷用コート紙では光沢が高いものでも空間周波数約1.0程度までしかSR―MTFが値を持たないことを明らかにした。
    像鮮明度(JIS―K7374)とSR―MTFは基本的に同じ物理特性を測定しているが,現状の像鮮明度が測定する空間周波数の範囲が高周波すぎるため,低い空間周波数でしか値を持たない印刷用紙の測定には向かないことを明らかにした。提案したSR―MTFは,少なくともコート紙のような白紙光沢の空間周波数解析には像鮮明度より利点が多い。
    PSFとMTFは画像工学の基本的な解析ツールである。SR―PSFとSR―MTFを導入したことにより,鏡面反射現象を物理的に解析できるようになった。今後は,これらの情報から新しい反射モデルの検討を行い,コンピュータグラフィックスへの展開を進めたい。
  • -Spatial Frequency Analysis for Paper Gloss-
    Shinichi Inoue, Yukio Kotori , Masayuki Takishiro Masayuki Takishiro
    2012 年 66 巻 12 号 p. 1425-1434
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル フリー
    It is known experientially that a feeling of gloss will be affected by sharpness of the reflected light image which is not only the amount of light. In image science, analysis technology is established as sharpness. The typical analysis technology of sharpness is the spatial frequency analysis using MTF (Modulation Transfer Function). However, MTF about specular reflection phenomenon is not well known.
    Authors have proposed a concept for Point Spread Function of Specular Reflection (SR-PSF), and have developed this measuring apparatus. Measurement and its analysis of the SR-PSF have been reported (part I). In this study, a concept for Modulation Transfer Function of Specular Reflection (SR-MTF) is proposed, and the spatial frequency analysis of paper gloss by SR-MTF is reported. SR-MTFs of the printing paper are measured. The feature of SR-MTF has low resolution in the incidence direction of light and high resolution in a width direction. In the coated paper for printing, it became clear that SR-MTF has a value only up to spatial frequency about 1.0 (cycles⁄mm).
    Image Clarity (JIS-K 7374) and SR-MTF measure the same physical characteristic fundamentally. Because the range of the spatial frequency is too high in Image Clarity, so it is not fit for measurement of the printing paper which has a value only with low spatial frequency. Therefore, the spatial frequency analysis by SR-MTF is fit for paper gloss.
    In this study, SR-PSF and SR-MTF of the specular reflection phenomenon were discussed. PSF and MTF are fundamental analysis tools in image science. By having introduced SR-PSF and SR-MTF, a specular reflection phenomenon can be physically analyzed. Moreover, I would like to examine a new reflection model and to apply it to computer graphics.
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