紙パ技協誌
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67 巻, 7 号
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省エネルギー特集 II
  • 安田 將人
    2013 年 67 巻 7 号 p. 701-705
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    資源小国である我が国においては,新興国によるエネルギー需要の急増や,地球温暖化問題への対応などを背景に,再生可能エネルギーの大幅な導入拡大が急務とされている。
    再生可能エネルギーの固定価格買取制度は,政府が決定する調達価格により,一定の期間再生可能エネルギー由来の電気の調達を電気事業者に義務づけることで,再生可能エネルギーの導入拡大をはかると同時に,コスト削減を促し,我が国の産業の振興,地球温暖化対策を進めること等を目的として,2012年7月に開始した。
    本稿では,再生可能エネルギーの固定価格買取制度の内容を以下の項目に沿って説明する。
    1)基本的なフレーム
    2)電気事業者による調達義務の対象
    3)調達価格及び調達期間
    4)特定契約の申し込み及び接続の請求に応ずる義務等
    5)電気事業者間の費用負担の調整
    6)再生可能エネルギー賦課金の特例
    7)RPS法について
  • 石村 暁
    2013 年 67 巻 7 号 p. 706-712
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    近年の電力業界を取巻く環境の変化により,エネルギーの安定供給の観点から火力発電の重要性が高まっている。しかしながら,化石燃料による発電比率の増加に伴う燃料費の増加が直近の大きな課題となっており,燃料費の削減による費用増加防止と同時にCO2発生量を削減し地球温暖化を防止するためには火力プラントの省エネ(高効率化)が唯一の解決策と考えられる。
    さらに最近では分散型電源への期待も高まっており,既設産業用火力プラントにおける省エネ(高効率化)も忘れてはならない状況下にある。
    以上のことから,本稿では既に産業界の各プラントで適用されている代表的な「産業用火力プラントにおける省エネ技術」として,運転負荷に見合った改造による効率改善,排熱回収による効率改善,最適化によるプラント全体での効率改善,蒸気リークの低減によるタービンの性能向上など,8つのメニュー(事例)の概要を紹介する。
    しかしながら,これら省エネ策の中で,どれが自社のプラントで適用出来るのか,どれが最適なのかなどを見極めるのは難しいものと考える。
    また,建設当初の蒸気・電気バランスにおける設備計画と現状(又は今後)のバランスとの「ずれ」もあり,エネルギー利用のための設備最適化を図るのも容易なことではない。
    従って,今回紹介するメニュー(事例)を参考として,ディスカッションしながら,プラント(システム)全体の最適な改善策を立案し,省エネに貢献していきたいと考えている。
  • 堂阪 敏夫
    2013 年 67 巻 7 号 p. 713-717
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    年々古紙事情が悪化していく中で,この数十年で古紙処理の調成工程は大きな省エネを達成してきた。しかしアプローチシステムはあまり注目されていなかったと言えるだろう。今回はアプローチシステムに着目し,弊社の最新技術と省エネについて紹介させていただく。
    コミックスは,調成工程から送られる原料スラリーをブローク原料,希釈水とミキシングするシステムである。ミキシングチェストへ送る前に配管中でそれらをポンプによる流送エネルギーで初期攪拌させ,ミキシングチェストへ送ることで,ミキシングチェストの容量を減らせるため,マシンへの応答性を向上させることが可能である。さらに,アジテータの設備動力削減にも繋がる。
    エコマイザTMクリーナは,高い異物除去効果を発揮しながらリジェクト濃度を低く抑えることが可能な重量異物用低濃度クリーナである。エコマイザは強い遠心力を与えるリジェクトノズル付近の旋回流を損なうことなく,原料スラリー濃度を下げて閉塞を防ぎながら異物分離効果が得られる。
    MSAマルチスクリーンは,アプローチスクリーンで問題となるスケール,ヨレ,脈動対策で生み出されたアウトワード型のアプローチ専用スクリーンである。スケールやヨレの原因となるスロットの通過流速のばらつきを無くし,さらに出口ノズルをバスケットより低い位置に設置し,脈動の原因となるロータの影響を受けないケーシングを採用した。
    今後アプローチシステムは各機器の性能は当然だが,これらのような地球環境を考えた省エネ技術に加え,さらにアプローチシステム全体の省エネニーズも高まってくると思われる。弊社はその期待に応えるべく精進していく所存である。
  • 宍戸 正弘
    2013 年 67 巻 7 号 p. 718-721
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    レンゴー八潮工場では,従来からの省エネ活動で2010年度のCO2排出原単位は1990年度比で53%の削減を達成している。埼玉県地球温暖化対策推進条例の施行に伴い,ますますのCO2削減が求められる中,2011年度から新省エネプロジェクトを立ち上げ,省エネコンサルタント会社を活用し,部署間の垣根を越えたメンバー構成で省エネチーム「低燃費八潮」を結成し,省エネ活動を開始した。
    現在までの所,本プロジェクトでは,従来は比較的検討されにくかった蒸気関係の省エネ案や,様々な視点からの機器の停止の省エネ案を集中的に検討・実施して省エネ案件を積み重ねている。
    約2年の活動で,本プロジェクトからの省エネ案件実施数は38件で,削減蒸気量年間約32,000t,削減電力量年間約5,700MWh,工場全体のCO2原単位の1.8%相当の削減を達成した。また,八潮工場の2011年度のCO2排出原単位は,2010年度比で2.4%の削減を達成した。
  • 浦澤 嘉記, 河村 憲作
    2013 年 67 巻 7 号 p. 722-726
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    紙パルプ産業では,収益を確保するために,省エネルギー,操業の最適化,高効率操業への改善などの取組が行われている。
    省エネ活動は,現状を把握し課題を見つけるところから始まる。
    しかし課題を見つけるには生産データとエネルギーデータの正規化など多くの時間と解析技術が必要である。
    横河電機は2005年に,お客様と共有する理想のプラント“VigilantPlantビジョン”を発表した。お客様にとっての理想のプラント,操業を実現するのが,『VigilantPlant ~理想の工場』である。YOKOGAWAは,VigilantPlantをビジョンとして,お客様の最適なプラント操業を実現するためのソリューションを提供する。
    具体的には,「プラント操業に携わる人々に必要な情報が行き渡っていて」,「外部環境の変化にも俊敏にビジネス対応ができ」,「生産活動が滞ることなく回りつづけ」,「設備も人も,将来に向けて着実に進化を続けていくことができる」,明日のための意思決定を行うことができる操業の全体最適を実現しているプラントである。
    本稿では,お客様の操業ノウハウと横河電機の解析ノウハウを用いて,工場における省エネ活動の課題を特定し,理想の工場を実現するコンサルティングサービスのひとつ“エネルギー有効分析サービス”を紹介する。
    また,事例として,コンバインドサイクル発電設備の総合エネルギー効率の変動解析を挙げ,製紙ラインを対象としたデータ解析と省エネ検討における解析ポイントの紹介をする。
  • 向田 德之
    2013 年 67 巻 7 号 p. 727-731
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    王子マテリア岐阜工場では,省エネ事業の一環として,2009年よりコンプレッサの効率的運用を目的とした改善に取り組んだ。
    計画は2段階で進め,1次改善でエアー漏れによる損失を減らす為,エアー漏れ調査と改善を実施し,風量にして50万Nm3/年の削減ができた。
    次に風量・圧力・電力量監視システムの導入,コンプレッサの統合,台数制御盤(MIWAエコノシステム,ハーテック・ミワ製)の導入を行った。これによりエアー原単位が0.144kW/Nm3から0.104kW/Nm3へ改善され,消費電力量も280万kW/年から160万kW/年と,40%の省エネメリットを生み出すことができた。
    また,圧力監視警報の設置,エアー圧力・流量・電力量のトレンド管理,原単位管理を行う事で設備異常を早期に発見し,トラブルを未然に防ぐことができるようになった。
    2次改善では0.65MPaから0.53MPaへと低圧化を実施し,13万kW/年のメリットを生み出すことができた。また,エアー消費量を削減する為,エアブロー等で省エアー機器の導入を進めている。
  • 櫻井 英勝
    2013 年 67 巻 7 号 p. 732-740
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    世界的なエネルギー価格の上昇,とりわけ我が国においては2011年3月の東日本大震災を初端とする電力不足,受電価格の上昇が製紙会社の収益を圧迫し,エネルギー効率が紙・板紙の生産効率に与える影響は増大している。
    メッツォ社は一般的に総生産コストの15~30%を占めるとされるエネルギーコスト削減の可能性を常に追い求め,その実現に関してたゆまぬ研究・開発を続けているが,電力・蒸気消費に関してはまだ省エネルギーが図れる大きなポテンシャルがあると考えている。
    メッツォ社の最新抄紙機コンセプトであるオプティコンセプトM(OptiConcept M)にはその電力・蒸気消費削減に関して有効な機器が採用されているが,今回は既存の抄紙機にも適用可能で省エネルギー推進への貢献が大いに期待できる下記の機器・ソリューションを紹介する。
    1)低リファイニングエネルギーでの操業が可能な最新鋭コニカルリファイナー,オプティファイナー プロ(OptiFiner Pro)リファイナー
    2)低真空・低風量で高い脱水能力を発揮する,プレスパートのユールボックス用多孔型ユールボックスカバー
    3)真空システムの再構築による真空省エネルギーの実現
    4)より効率の良い真空使用,クーチロール後のドライネス向上を実現するストレート穴仕様サクションクーチロールシェル
    5)サクションクーチロール表面の効果的な水除去によりプレスセクション前のドライネス向上を実現するコンビドク(CombiDoc)
    6)シュープレスのベルト表面の効果的な水除去によりニップ脱水性向上を実現するベルトドク(BeltDoc)
    7)既設ノズルと交換することによりエアドライヤの乾燥能力向上を実現するパワーフロート プラス ノズル(PowerFloat Plus Nozzle)
    8)ドライヤ表面にパワーフロート プラス ノズルを配した高効率乾燥エアドライヤ パワードライ プラス(PowerDry Plus)エアドライヤ
    9)コンパクトな乾燥レイアウトと良好なシート走行性を実現する非接触方向転換/高効率乾燥エアドライヤ ターンドライ(TurnDry)
    10)ドライヤセクション前段向け高効率インピンジメント乾燥装置 オプティドライ(OptiDry)
    11)プレート型白水専用熱交換器 AHRF熱交換器
総説・資料
  • ―高効率リファイニングによる省エネルギーの実現―
    石川 義典
    2013 年 67 巻 7 号 p. 741-745
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    GL&V/川之江造機の最新型ダブルディスクリファイナー“DD6000”は独自のスプライン構造であるEqua―Flo™技術によって,高効率リファイニングを実現している。既存のDDRにこのEqua―Flo™技術を適用するアップグレードが提案実施されており,高い省エネ効果が実現されている。従来DDRであるDD4000に比べてDD6000は,40%の省エネ効果と50%の処理量向上が実現可能である。この高い性能は以下のDD6000独自の技術により達成されている。
    Equa―Flo™技術は,ローターではなくハブに原料流路となる穴を設ける構造となっており,これによってローターの圧力不均衡が解消し,ローターが精度良くセンタリング可能となる。そのため,効率の良い叩解ができ,省エネ性能が向上する。
    また,リファイナープレートにおいては,有効叩解面内にボルト穴を有しない取り付け構造とすることで,叩解効率および処理量を向上させている。また,“Milled Bar”と呼ばれるプレートは,モールド鋳造した後に機械加工により刃を形成しており,抜き勾配が0°となっている。そのため,プレートのライフタイムにわたって刃幅が均等であり,均一な叩解品質を提供可能である。
    さらに,インレット・アウトレット部が,原料の流れのタンジェンシャル(接線)方向に配置されており,処理量向上および無負荷動力低減に寄与している。
    DD6000はこれらの独自技術によって原料調成設備の省エネおよびコスト低減を実現する最高性能のDDRである。また,Equa―Flo™技術やリファイナープレートは既存のDDRに対してアップグレード適用可能である。
  • ―LemaxX Spiralリファイナープレート―
    伊藤 健一, Peter Antensteiner
    2013 年 67 巻 7 号 p. 746-750
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    アンドリッツは,パルプ・製紙産業,水力・潮流発電,鉄鋼産業,環境,エネルギー・ボイラー,バイオ燃料製造に関わるプラントの世界的なサプライヤーであり,マシン前調成用低濃度リファイナー,機械パルプ用高濃度リファイナー,MDF用リファイナーについても広範な技術,製品を開発,提供している。
    1)アンドリッツの開発した“MAGNUS”シミュレーションプログラムは,実機低濃度リファイナーの叩解度を数値化して分析,かつ予測する。現状の実機データとシミュレーションの分析・予測数値を用いて,最適の叩解条件(最適刃物の選定)を高い確度で推測することが可能となった。
    2)シミュレーションによって得られた理論値は,単に幾何学的な解析と経験論だけではなく,細かな繊維特性とリファイニング作用(繊維圧縮係数,繊維処理回数)の相関を示すことができ,より現実的で信頼性のあるシミュレーション結果を導き出せるようになった。
    3)“MAGNUS”シミュレーションプログラムは,従来のトライアル&エラー方式では困難であった消費エネルギー,品質の改善の潜在的な可能性を予測し,15,000種に及ぶ刃型から目的にかなう最適なプレートを選択し,工場の実機においてその潜在的改善効果を再現できるようになった。
    4)さらにこの“MAGNUS”シミュレーションコンセプトにより,新しく開発された“LemaxX Spiral”リファイナープレートは,省エネ,強度向上用対数曲線プレートとして,様々な用途の低濃度リファイニングにおいて高い効果を実現している。本稿で,国内における実例を紹介する。
  • ―未利用のフラッシュ蒸気を高効率で昇圧・再生し,ボイラ燃料を大幅削減―
    垣内 豊嗣
    2013 年 67 巻 7 号 p. 751-753
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    (株)神戸製鋼所は,2007年のスクリュ式小型蒸気発電機の発売以降,更なる蒸気エネルギーの有効利用・省エネルギーの促進を目的に,スクリュ技術を軸とした蒸気利用関連の高効率・高性能な省エネルギー機器の統一シリーズ名を「スチームスター」として商品化を進めてきた。
    工場プロセス等で使用後のフラッシュ蒸気や余剰となった低圧の蒸気は,相当量のエネルギーを持っているにもかかわらずこれまで再利用が困難であった。
    今回,神戸製鋼から発売されたMSRCは,工場で湯気となってしまっている少量の蒸気をスクリュ式圧縮機で効率よく昇圧,プロセス側に戻すことにより蒸気を再生し,ボイラの燃料費を大幅に削減するものである。
    機種は,MSRC37L,MSRC160Lの2種類があり,MSRC37Lは吐出蒸気量240~420kg/h,MSRC160Lでは吐出蒸気量1,000~1,450kg/hとしている。また,高効率・高速IPMインバータモーターを採用し,吸込蒸気圧力を一定制御し,フラッシュ蒸気量の変動に追従しながら安定運転を続けることができる。
    従来,大量のフラッシュ蒸気を遠心式で再生する大型圧縮機や,エジェクタ方式の昇圧機器はあったが,0.2~1ton/h程度の少量の低圧・フラッシュ蒸気を昇圧・再生出来る汎用製品はなく,MSRCによって少量蒸気の領域で大幅な省エネルギーが可能となった。
  • 吉本 康秀, 吉川 和秀
    2013 年 67 巻 7 号 p. 754-757
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    近年の製紙業界では,地球環境問題に対する配慮が必要不可欠になる中,板紙において環境負荷低減を目的とした軽量化(低坪量化)が進められている。しかしながら,板紙に要求される圧縮強さや破裂強さは坪量に依存するため,従来の内添薬品を重視した抄紙方法では強度確保が難しくなっている。そこで,紙力低下への対応を行いながら,段ボールへの加工適性にも配慮した「内添PAMと新規塗工PAMとの併用による薬品処方」と「罫線割れ防止剤の適用による薬品処方」を提案した。
    内添PAMと塗工PAMを併用することにより,内添PAM単独で問題のあった高添加領域の強度向上の鈍化を改善でき,新規に開発した塗工PAMを適用することで,貼合適性に配慮した板紙の軽量化処方を設定した。新規塗工PAMは,従来の塗工PAMに対して紙への浸透性を高めた薬品であり,紙の内部に浸透することで塗工後の透気性上昇や液体の浸透性低下を抑制できる。また,板紙の軽量化が進み,強度低下を補うために紙力剤を添加しているが,そのことが原因で紙が硬くなり罫線割れが発生する場合が見られる。その対策として,罫線割れ防止剤「ハリコートHSB―100」の適用を紹介した。
    板紙の軽量化は,今後ますます進んでいくと思われ,紙力低下への対応が必要となる中,段ボールへの加工適性にまで配慮した今回の提案は有用だと考えている。
  • 2013 年 67 巻 7 号 p. 758-757
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    The history of Miura began with the development of the Z boiler in 1959.
    Our motto states, “Miura airms to be your best partner for energy, water and environment with our Tecno-service Revolution”. Our competence is grounded in the expertise gaind as the market leader for small onse-throuth boilers in Japan.
    Miura provides new products and services that satisfy the requirements of customers in the fields of heats energy, water treatment, and environmental solutions.
    Today, as the leader in the fields of energy, water, and the environment, we aim to grow into a trusted global company.
    Tecno-service means : To become the most respected and trusted name with cutting edge service and technology.
研究報文
  • 山本 学, 若狭 浩之, 岡田 比斗志
    2013 年 67 巻 7 号 p. 769-777
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    多孔性填料と称される沈降性シリカは,近年では,その比重の低さを特徴として,紙の嵩高化を目的とした充填剤としての使用量が増えてきている。多孔性填料の使用には,機械パルプのような褪色,および嵩高剤として使用される脂肪酸系誘導体,特殊界面活性剤のような抄紙機を汚すといった問題もなく,パルプの使用量を減らせること,また,抄紙機での乾燥負荷を低減できることによるコストメリットがある。しかし,紙力の低下をもたらすといった問題が残っている。
    前報にて,珪酸ナトリウムと鉱酸を直接反応させる直接分解法を基本原理として,反応時に耐アルカリ性微小粒子を用いて,多孔性填料の粒子物性を最適化することで,紙力低下の小さい多孔性填料が得られたことを報告した。そこで我々は,本多孔性填料について,実験室スケールからパイロットスケール,工場スケールとスケールアップを試み,各スケールにおいて,反応条件の粒子物性への影響を調査,最適化を行い,得られた多孔性填料が紙質に与える影響について述べ,本多孔性填料の工業レベルでの有用性を明らかにした。
    すなわち,以下に示す知見が得られ,工業レベルで有用な高品質多孔性填料を製造できることが示唆された。
    1)珪酸ナトリウム濃度および反応温度を調整することで,粒度分布をシャープにすることができる。
    2)硫酸ナトリウムの濃度を調整することで粒度分布に影響を与えずに一次粒子径および二次凝集粒子径を調節することができる。
    3)反応温度および硫酸ナトリウム濃度を調整することで,一次粒子径,二次凝集粒子径および粒度分布を最適化することが可能となり,パイロットスケール,工場スケールにおいて嵩高性および不透明性に優れ,紙力低下の小さい多孔性填料を製造できる。
  • -Scale-Up Trials at Pilot and Mill Plant for High Quality Porous Fillers-
    Manabu Yamamoto, Hiroyuki Wakasa, Hitoshi Okada
    2013 年 67 巻 7 号 p. 778-787
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    Precipitating silica which is also called porous fillers has a low specific gravity and has frequently been used as a filler to increase paper bulkiness. Uses of porous fillers do not cause problems such as discoloration which occur with machine pulps and staining paper machines which often occur when using fatty acid derivative and special surface-active agents as a bulking agent. Rather, they are advantageous in terms of cost such as that they reduce the drying load of paper machines by decreasing the amount of pulp to be used and decreasing the amount of pulp while maintaining the same paper thickness. However, they still have a problem of degrading paper strength. Therefore, we explored ways to develop high quality porous fillers which have high paper-bulking properties and great opacity. In the last report, we reported that having alkaline-resistant microparticles available during reactions enabled a control of primary particle diameter, secondary coagulation particle diameter, and particle size distributions which were particle properties, resulting in high quality porous fillers with a low level of paper strength degradation.
    In this report, we studied a scale-up of this process and achieved low level of paper strength degradation with controlled particle properties in an industry level.
  • 福垣内 暁
    2013 年 67 巻 7 号 p. 788-794
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    愛媛県内の製紙工場から排出された製紙スラッジ焼却灰(PS ash)を原料に機能性粘土鉱物である層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)の合成を試みた。
    PS ashのCa/Alモル比を2,5,8及び11.5に調整し,共沈法により30℃で合成を行った。得られた各試料のX線回折分析結果から,いずれの試料にもCa―Al系層状複水酸化物(ハイドロカルマイト)を示す回折ピークが確認された。得られた試料のSEM観察結果より,粘土鉱物に特徴的な,板状形態の微粒子が確認された。TG―DTA分析結果から,層状複水酸化物に特徴的な2つの転移点が確認された。
    色素除去能を検証するために,アニオン性染料であるRemazol Violet5Rの吸着試験を行った。さらに,各試料の30℃における吸着等温線を作成した結果,Ca/Alモル比5(LDH(5))及びCa/Alモル比8(LDH(8))で合成された試料がI型の吸着等温線を示した。得られた吸着データからLangmuir式を用いて,最大吸着量を算出したところ,LDH(8)のRemazol Violet5Rの吸着量が最大となり13.9mg/gであった。
  • Satoru Fukugaichi
    2013 年 67 巻 7 号 p. 795-801
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    A functional clay mineral (Layered Double Hydroxide : LDH), whose main components were calcium and aluminum, was prepared by a co-precipitation method at 30 degree from PS ash. The resulting materials were investigated by XRD, SEM, EDX, TG-DTA and N2adsorption observation and were used to remove an anionic dye (Remazol Violet 5 R) from an aqueous solution at 30 degree. Adsorption isotherms showed convex upward and the adsorption data were fitted to Langmuir equation. LDH (8), which was synthesized under the condition of Ca⁄Al molar ratio=8, shows maximum adsorption ability of an anionic dye.
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