紙パ技協誌
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68 巻, 12 号
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環境特集
  • 環境技術 委員会
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1349-1350
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
  • ―あなたの耳で効果を確認しよう―
    青木 雅彦
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1351-1353
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    工場の騒音対策方法の中には誤解されやすい,あるいは間違いやすいケースがある。基本的に壁の遮音性能は重量に比例するため,吸音材として用いられる軽いグラスウールを壁に貼っても,遮音性能を改善する効果はほとんど期待できない。同様に遮音シートを壁に貼っても,壁全体の重量があまり変化しなければ遮音性能の改善効果はほとんど期待できない。また2枚のガラスの間に中間層を設けた複層ガラス(ペアガラス)は,ある特定の周波数で音が抜けやすくなる共鳴透過現象が発生するため,通常は遮音対策には使えない。
    一般に壁を透過して伝搬する騒音を「空気伝搬音」と呼ぶ。これに対して騒音源の振動が伝搬して,ある部位から騒音として放射する現象を「固体伝搬音」と呼ぶ。固体伝搬音の影響が大きい騒音源に対しては,騒音を下げるためには振動対策が必要となる。ある工場に隣接した民家の室内で低周波音が発生し問題となっていた。そこで測定を実施し,空気伝搬音ではなく,振動の伝搬が原因だと判断し,振動対策を実施することで低周波音の発生を低減させた事例を示す。
    環境セミナー当日は,効果の出ない対策と効果の出る対策,あるいは音の聞こえ方や対策効果について,実際に音を出して体感していただいた。当社はこのような騒音対策セミナーを定期的に開催しているので,今回ご参加いただけなかった皆様には,今後もし機会があれば当社のセミナーにご参加いただき,実際に音を聞いて体感していただければと願っている。
  • 片山 正顕
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1354-1357
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    日本における「におい,悪臭」を取り巻く環境は,日本経済の高度成長とともに変遷し,それに伴い苦情件数も増加傾向の一途を辿ってきた。におい,特に悪臭は感覚公害の中でも特に対応の難しい公害であると言える。この「におい,悪臭」に関する法律として悪臭防止法が昭和46年に制定され,時代とともに変化してきた。
    現在,日本においては特定悪臭物質規制から臭気濃度1)規制,そしてより人間の感覚に近いと言われる臭気指数規制へとシフトしてきた。住民の生活環境を守るという観点からは,法整備が十分になされてきたと考えて良い。
    一方で,事業者側の観点では,悪臭対策は永遠のテーマである。生産性も無く,ランニングコストの掛かるマイナス以外の何ものでも無いのである。コストが掛からないにこしたことは無い。工場において「におい,悪臭」が発生する場合は,生産量,排気ガス量と比例している。
    悪臭対策において脱臭装置を設置する以外にもいくつか方法がある。本稿では,においの特性について理解をしながら防臭,消臭対策について紹介する。
    1)臭気濃度:対象ガスを無臭になるまで希釈をした際の希釈倍率であり,においの強さを表現する指標の一つ。
    結論として,工場における臭気対策において,においの見える化は必須項目となる。においを数値化し,視覚で確認可能なように周辺への影響度合いを視覚化し,目標を設定する。法令を順守していても臭気苦情が出てしまうケースも散見される。これは一度気になってしまったにおいは少し感じただけでも気になってしまうという,人間の危険予知に関係している。
    悪臭防止法で制定されている規制値を超過している事業所は多く存在する。一方で,苦情が発生しておらず,行政指導が入っていない事業所は必要最低限の対策で済んでいるケースもある。最悪の状態になる前に,防臭対策,臭気対策を検討することを推奨する。
  • 石渡 正佳
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1358-1360
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    廃棄物処理法による行政処分と刑事処分によって不法投棄などの不適正処理を行う業者を排除しているが,それだけでは不十分なため,産業廃棄物処理業優良化推進事業により,公開情報に基づいた優良業者の認定を行っている。
    不適正処理を行った処分者に委託した排出事業者の責任による撤去指導においては,措置命令を発しないことと交換条件に,撤去費用の拠出を求めることがあるが,この場合,法令違反の確認された量ではなく,処分者に対する委託の「全期間全量未処理推定」により,拠出額を計算することが一般化している。このため,拠出額が数千万円になることが珍しくない。
    このため,不適正処理を行わない優良業者の選定が重要である。優良業者の選定は,公開情報に基づいた書類審査と,現地調査によって行うのが適当である。
    iMethodは,石渡が開発した産業廃棄物処理業者の「公開情報分析法」である。環境省が制度化した公開情報から「処理能力」,「処理実績」,「売上高」,「従業員数」の基本4情報を抽出し,「施設稼働率」,「平均単価」,「オーバーフロー率」,「生産性」の基本4指標を計算する。完全定量分析によって,個別業者の評価のほか,複数業者の計量的比較,グループ企業の連結分析,業界全体のトレンド分析を行うことができる。
    iMethodによって,産廃業界の標準処理価格は1トン3万円であること,標準生産性は従業員一人当たり年間667トンであること,一人あたり売上高は2,000万円であること,標準処理価格と標準生産性には相反性があること,総資産と総売上高の標準比は1対1であること,一人あたり売上高が1,500万円以下では経営難に陥りやすいこと,標準生産性の2分の1を超えると,生産性と利益率が比例的に増大することなどの法則性を導き出すことができる。
  • 上原 元樹
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1361-1365
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    現在,日本では年間12億900万トンものCO2が排出されているが,コンクリート材料となるポルトランドセメントの生産に起因したCO2排出量は,全排出量のおよそ4%と大きく,その削減が求められている。そこで,鉄道総研では,ポルトランドのセメントを全く使用しないことからCO2削減効果に優れ,かつ産業副産物である石炭灰を使用することで環境負荷低減効果に優れた新しいジオポリマーコンクリートの研究・開発に取り組んでいる。
    セメント原料の多くは石灰石(CaCO3)であり,これを高温で焼成するとCaOとCO2に分解し,直接CO2ガスが発生する。また,1450℃という高温で焼成するためのエネルギーとして化石燃料も多く使われ,ここでもCO2が発生する。一方,ジオポリマーコンクリートとは,石炭火力発電所の副産物である石炭灰をケイ酸アルカリ溶液で硬化させる比較的新しい技術であり,セメントを全く使用しないためCO2削減効果に優れる。なお,ジオポリマーはAlやSiがケイ酸アルカリ溶液中に溶け出し重合して岩石が出来るように硬化することから,「ジオ=地球」+「重合体=ポリマー」からジオポリマーと名付けられた。
    鉄道総研では,このジオポリマーコンクリートを引張力に弱いコンクリートに圧縮力を導入してコンクリートを補強する,いわゆるプレストレストコンクリート(PC)によるジオポリマーまくらぎ,あるいは繊維補強したジオポリマー短まくらぎを試作して,それが所定の基準を満たすことを確かめた。
    現在,ジオポリマーコンクリートは,セメントコンクリートより高コストになりがちであることから,当面は価格に占める材料コストの割合が小さい,あるいは鉄筋組み立て工程を減らすなど低コスト化を図った形での工場二次製品への利用を検討している。ジオポリマーコンクリートの出発材料は,石炭灰以外にも高炉スラグ,下水汚泥など種々の材料が考えられており,また現在ではそれらを混合して用いることが多く複雑である。広く実用化するための課題として,この複雑な体系の中で,種々の出発材料に対応してハンドリングなどを改善するジオポリマー用の混和剤の開発が重要である。また,水ガラスを使用しない方法や,石炭灰に加えて強度が出やすいCa系材料を利用するなど,出発材料の選定による低コスト化も重要であり,現在研究を進めている。
  • 松岡 敬子
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1366-1372
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    我が国の大気,水質等一般環境中の水銀濃度は,環境基準等を達成するレベルであり,また,排水等については排出基準が定められている。
    一方,大気への放出については,人為的排出が大気中の水銀濃度や土壌への堆積速度を高めているにも関わらず,排出基準は定められていない。
    世界的には水銀は様々な排出源から排出され,全世界の環境中を循環する中で生物に蓄積し,人や野生生物に有害な影響を及ぼす恐れが指摘されており,世界的な取り組みによる水銀の適正管理及び排出削減が課題となっている。
    このような水銀を取り巻く状況の下,平成25年10月に熊本市および水俣市で開催された外交国際会議において「水銀に関する水俣条約」が採択されたところである。
    条約では,産出から使用,廃棄にいたるまでのライフサイクル全体にわたって水銀の環境中への排出を削減するための対応が求められている。また,水銀及び水銀化合物の大気への排出を規制し,実行可能な場合には削減する事が求められる。
    一方測定法における国際的な取り組みについて国内外の動きがある。欧州標準化委員会CENでは国際的に認定される水銀測定方法の確立を目標として測定法の規格作成を開始した。米国には,EPA,ASTMなど測定方法が多数あり,これらの方法を参照すべきとの議論がある。日本としては経産省で国際標準化について提案資料作成を進めるとのことである。
    今回は我が国における環境基準・排出基準等と併せて国内外の排ガスの水銀の分析方法について紹介する。
  •  
    守富 寛
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1373-1377
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    2013年1月にジュネーブで開催された政府間交渉委員会会合において,「水銀に関する水俣条約」が全会一致で決定された。同年10月に条約の採択・署名のための外交会議及び関連会合が熊本市及び水俣市で開催された。
    水銀総排出量は2,269t(2000年)と推定され,そのうちの67%が火力発電施設からの排出とされていた。
    「水銀に関する水俣条約」の条文第8条の「大気への排出」の主な点は以下である。
    (1)石炭火力発電所,石炭焚産業用ボイラ,非鉄金属精錬施設,廃棄物焼却施設,セメント生産施設を対象に,排出削減対策を実施。(2)新設施設:各締約国での条約発効から5年以内にBAT(利用可能な最良の技術)/BEP(環境のための最良の慣行)を義務付け。(3)既存施設:各締約国での条約発効から10年以内に(1)排出管理目標,(2)排出限度値,(3)BAT/BEP,(4)水銀の排出管理に効果のある複数汚染物質管理戦略,(5)代替的措置から1つ以上を実施。(4)各国が自国内の対象排出源の排出インベントリを作成。(5)COPでBAT/BEP等に関するガイダンスを採択。
    石炭中の水銀は硫黄や塩素の化合物として存在し,それら水銀は熱分解や燃焼過程を経て,気相へ移行する。石炭中の灰に含まれる重金属や石炭火力発電プロセスに組み込まれている脱硝装置内の触媒がHg0のHgCl2への酸化触媒と機能する。残存しているガス状あるいは灰付着凝集した酸化水銀化合物は湿式の脱硫装置の溶液に吸収される。排ガス処理として,脱硝(SCR),脱硫(Wet―FGD),脱塵(EP,FF)の3点セットを有する施設では,50―70%の水銀は除去される。
    日本の排出量総量は少ないが,アジア地域での水銀排出量が50%を占めており,日本がアジア地域等にどのように貢献するのかは今後の議論となる。BAT/BEP規制は新たな取り組みとなることから,排ガス処理メーカ,BAT/BEP対象となる電力事業,産業ボイラを有する各種製造業,セメント製造業,廃棄物処理業,対象外の産業も今後の動きに留意する必要がある。
  • ―日本コカ・コーラ(株)とのパートナーシップ―
    石川 学
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1378-1383
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    日本製紙は,日本コカ・コーラ(株)と協働で健やかな森を保つための中長期の取り組みを行う趣旨の基本合意書を昨年10月に締結した。
    両社はそれぞれの事業活動を通じて,持続可能な社会の実現を目指し様々な分野で活動を行ってきた。特に環境分野においては,当社は森林資源,日本コカ・コーラ(株)は水資源の保全に努めてきた実績がある。本協定に基づき,両社は従来の取り組みを生物多様性や水源涵養など森林の持つ多面的機能を高める活動として発展させるため,それぞれの経験と資産を活かし,「森林資源」「水資源」の保全および保護活動に協働で取り組んでいくこととした。
    協働活動の第一弾として,コカ・コーライーストジャパンプロダクツ埼玉工場の水源地であり,当社菅沼社有林の所在する群馬県片品村において「豊かな森・水の保全」をテーマにした「次世代環境教育」や「地域一体型キャンペーン」を協働で行っていくこととした。
    当社は全国400カ所に森林を所有し,コカ・コーラシステムは全国24工場で様々な清涼飲料を製造している。今後,両社の国内における資産・事業の広がりを活かし,協働活動の全国展開に向けた検討を開始する。
  • 林 賢治
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1384-1388
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    KPの蒸解プロセスで副次的に生成される硫黄化合物(主に硫化水素,メチルメルカプタン(MM),硫化メチル(DMS)および二硫化メチル(DMDS)の4物質)のうち,黒液回収やストリッピング処理で除去しきれなかったものが曝気槽に流入し,曝気にともなって直接ストリッピングし,曝気槽周辺で特有のKP臭を形成する。
    活性汚泥処理は,一種の生物脱臭プロセスでもあり,4物質のうち,生物脱臭を受けやすい硫化水素とMMはほぼ除去される。処理性の低いDMSとDMDSは完全に除去されず,後沈以降放流に至るまで残存し,経路で揮散するとともに排水臭気にも影響を与えやすい。
    活性汚泥処理後に残存したDMSやDMDSは,硫化水素やMMに比べ,消臭剤を添加しても十分な除去は期待しにくい。現状では,必要に応じて生物製剤を適用しながら,活性汚泥の処理機能を安定維持し,残存濃度の上昇を抑え,活性汚泥の生物脱臭機能の維持を図ることが対策となる。
    DIP系排水の流入する前沈槽や,マシン系排水の流入する凝沈槽内では,澱粉系のバインダー等から分解生成された有機酸と硫酸バンド等の薬品に由来する硫酸イオンが供給され,かつ嫌気的に滞留するため,容易に硫酸還元が進行する条件が整っているが,上澄み部分よりも沈澱汚泥内部で反応が進行しやすく,槽内に汚泥を溜めこんだ状態になると,より強い硫化水素臭が発生する。この硫化水素は,流入ラインから消臭剤を混入させることで容易に抑制可能である。引抜汚泥を原料として回収する際の臭気対策にもなる。
    各プロセスで発生した余剰汚泥や凝沈汚泥は,引抜きから脱水に至る経路の滞留時間が長くなるほど,腐敗が進行して臭気が強くなるため,滞留時間の短縮を図ることで,腐敗の程度を抑制することができる。臭気が問題になる場合には,問題となる箇所の上流側から消臭剤をライン注入し,発生源である汚泥スラリー自体の消臭を図る。
  • ―抄紙プロセスから排水処理まで 傾向と対策―
    小島 英順
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1389-1392
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    製紙工場におけるニオイの問題は,単に悪臭苦情というだけではなく,工場の「環境負荷」や「安全性・安定操業」,さらには「生産性」にまで悪影響を与える深刻な問題である。プロセス水や排水では,水中に存在する微生物の代謝により硫化水素や低級脂肪酸といった悪臭物質が生成される。硫化水素はCOD上昇や,放流水部の白藻・白濁といった環境負荷の原因となる。さらに,コンクリート腐食や金属腐食の原因となるため,構造体劣化や制御機器故障を引き起こし,工場の安全性や安定操業に悪影響を与える原因となる。一方,低級脂肪酸をはじめとした有機酸がパルプスラリー中で増加すると炭酸カルシウム溶解を引き起こし,結果としてピッチ増加や抄紙薬剤の使用量増加の原因となり,生産性の悪化につながる。
    ニオイ対策としては,1)生成したニオイ物質の除去,2)ニオイ物質を生成する微生物の殺菌・代謝コントロール,3)ニオイ物質の生成原因となる基質物質の使用量削減,が挙げられる。許容される対策コストが限られる状況では,単なる悪臭対策という視点ではなく,ニオイ物質が引き起こす様々な悪影響のメカニズムを踏まえたうえで,工場の「環境負荷」や「安全性・安定操業」,「生産性」の改善メリットも得られるような方法を検討することが有効である。
  • ―国内森林とREDD+―
    今井 靖晃
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1393-1396
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    森林には,生物多様性保全機能,地球環境保全機能,土砂災害防止機能,水源涵養機能,快適環境形成機能,保健・レクリエーション機能,文化機能,物質生産機能といった多種多様な公益的機能があり,人類の生活は森林から多くの恩恵を受けている。
    しかし,人間社会が発展するにつれて,世界の森林は減少の一途をたどっており,地球温暖化問題と相まってその保全が声高に叫ばれている。とくに,熱帯地域の森林は急速に減少しており,その対策としてREDD+が提唱されている。
    一方,我が国は,国土の約7割が森林に覆われた世界有数の森林国であるが,林業の衰退が深刻な問題になっている。戦後の拡大造林政策によって生み出された多くの人工林が伐期を迎えているにも関わらず,材価の低迷,担い手不足等によって多くの森林が放置されており,林業の再生が喫緊の課題である。
    今,世界の森林と日本の森林を取り巻く課題の解決に向けた共通の切り口は,「計画的・効率的に森林を守り,育て,使うこと」であろう。そのためには,森林の過去・現在・未来を的確にモニタリングすることが重要である。
    国内森林に対しては,最先端の測量技術である航空レーザ測量とそのデータを活用した地形解析や森林資源情報解析が広がりつつある。一方,REDD+に対しては,衛星画像と地上調査の組み合わせによる炭素モニタリングが推奨されている。森林モニタリング技術は時代とともに進化しており,目的に応じた最適な手法を選択することが求められる。
総説・資料
  • 第1回 歴史的に使用された植物と中国での技術開発
    飯田 清昭
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1398-1407
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    中国で発明された紙とその製法が,東へは日本へ,西へはサマルカンドからダマスカスを経て北アフリカからスペインに伝わり,その後ヨーロッパに広がった。別に,ギリシャからヨーロッパへ入ったルートもあるようである。そのヨーロッパで,産業革命による種々の技術革新を取りこんで,近代製紙産業に生まれ変わり,それが全世界に広がっていった。本稿では,2000年前に発明された紙が,近代製紙産業の誕生に如何につながっているかを追ってみた。
    歴史的には,植物が普遍的な構造単位として持っている繊維が,紙の構成原料(パルプ)として利用されてきた。しかし,産業革命以前では,利用できる薬品は木灰(炭酸カリウム)と消石灰で,処理温度は100℃までである。また,繊維をフイブリル化させる叩解動力は,人力か水車(木造)動力までである。これでは木材は到底利用できず,靭皮植物(大麻,楮,亜麻)や竹を手間暇かけてパルプ化した。結局,各地域で入手できる植物を,工夫を凝らして利用し,求められる品質になるように改良してきたのがその歴史である。
    中国では,蔡倫の発明とされる時代(105年)より数世紀前から紙が作られてきたとされている。その紙は木簡・竹簡に代わって使用され始める。さらに,中国社会の発展により,需要が増え,それを満たすことで(楮の利用)社会の発展を促した。そして,紙は,文章の媒体であるのみならず,生活に密着した必需品となっていった。それを支えたのが,大麻,楮に続く竹のパルプ化で,豊富な原料を手にしたことで,福建省を中心に大型の生産拠点が生まれ(大量生産によるコストダウン),唐代から明代までの中国文化の全盛期を支えた。
    中国の製紙技術は,イスラム地域との交流を通して,独自のイスラムの製紙技術になっていった。
  • 2014 年 68 巻 12 号 p. 1408-1413
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (102)
研究報文
  • 武井 俊達
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1418-1423
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    近年,重油の高騰,地球温暖化対策などエネルギー源の転換に対する関心が高まり,バイオマス燃料への転換の取り組みが注目されている。王子グループは,化石エネルギーの削減策として新エネルギー燃料への転換を推進しており,2004年度から新エネルギーボイラーを稼動させ,現在,6工場でRPF(Refused Paper & Plastic Fuelの略)の利用拡大に積極的に取り組んでいる。RPFは再生困難な古紙,プラスチックなどから作った固形化燃料のことで,化石燃料の使用を削減し,地球環境の温暖化防止に貢献できるという利点を持っている。反面,RPFがボイラーに与える問題点として,過熱器に付着堆積した低融点塩化物により過熱器が腐食することがあげられる。この腐食問題はRPF中の塩素が原因と言われ,各工場では受け入れ基準を塩素濃度0.3%以下に管理している。
    塩素分の分析方法はJIS法(JIS Z7302―6)にあるが,精密分析でかつ操作が煩雑となるため多数のRPFを毎日迅速に測定することは難しい。そのため,各工場では塩素を簡便に測定する方法として蛍光X線分析法を採用し,受け入れ管理を行っている。納入した同じRPF中の塩素量を工場で測定し比較すると,差異が認められることがあった。この原因について調査した結果,前処理法,検量線標準板の2つの問題があることが分かった。
    本報告ではRPF中の塩素含有量を,蛍光X線分析装置で適正に分析する「RPF標準板法」を開発したので紹介する。
  • Toshitatsu Takei
    2014 年 68 巻 12 号 p. 1424-1429
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    Oji group has been expanding the usage of RPF as a heat source to reduce the fossil energy consumed in mills. RPF is made of paper, plastic, wood and tire waste that is not recyclable as a material source any more. The expanded usage of RPF has sometimes caused serious problems due to corrosion of the thermal boilers by chlorine elements in RPF. Mills that take advantage of RPF have been conducting the chlorine analysis by the X-ray fluorescence spectrometry (compenndium method) every day to ensure that the accepted RPF contains less than 0.3% chlorine element to avoid the corrosion problems. It was found that there have been unacceptable deviations in the measured chlorine values and these values sometimes do not match well with those obtained by the JIS method. Introduction of both new pretreatment of RPF samples and a new standard plate to draw a calibration curve has effectively diminished these deviations, and greatly improved the correlation between the locally measured values and those obtained by the JIS method.
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