紙パ技協誌
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68 巻, 9 号
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製紙技術特集 I
  • 小関 良樹
    2014 年 68 巻 9 号 p. 961
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
  • 江前 敏晴
    2014 年 68 巻 9 号 p. 962-967
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    2013年に筑波大学内に「生物材料グリーンプロセシング研究グループ」を立ち上げた。グリーンプロセシングとは,持続可能な社会(グリーンソサエティ)を築くためのバイオマス(グリーンマテリアル)を加工する環境に優しい技術のことである。
    本研究グループの研究室では,
    1)ろ紙上に微小流路を作製するためにカチオン性のスチレンアクリレート共重合体水溶液をインクジェット印刷して疎水性バリアを設けた紙基板の健康診断チップや環境モニタリングセンサーの開発
    2)試験液体の微小流路内移動速度を上げるために基盤的製紙技術を活用したセンサー機能向上
    3)予め全面疎水化したろ紙上に親水性区画を多数設け,その区画にインクジェットプリンタを使って寒天培地を印刷した,ペトリ皿代替バクテリア培養システムの開発
    4)紙上に設けた平面状の電極と静電気を帯びたエレクトレットの間隔を音や騒音による紙の振動により周期的に変化させる発電機の開発
    5)津波や洪水によって水害被災した紙文化財のカビ発生を塩水への浸漬によって抑制する技術の開発
    6)蔵書の虫や湿気を除くために習慣的に行われてきた曝書の効果の科学的再検証
    などを進めている。
    またグループでは,今後の発展を目指して国際及び産学連携も進めている。
  • ―その体系と歴史,最新技術―
    藤田 和巳
    2014 年 68 巻 9 号 p. 968-978
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    製紙工業の進展とともに誕生した万能原質調成機「ビーター」は1670年の開発から1950年代まで長期間使用されたが,バッチ式であったため生産能力は小さかった。1950年代後半からの急激な紙需要の増加のために連続式コニカルリファイナーが開発された。さらに,広葉樹を原料として使用するために多孔質の玄武岩を叩解刃物としたシリンドリカルリファイナーが,より大規模生産に対応するためにダブルディスク型リファイナーが開発された。ダブルディスク型リファイナーは叩解刃物の構造が単純で,柔軟に設計できたためほとんどの製紙工程に適用され,今日まで広く使用されている。
    しかし近年,叩解工程は地球温暖化対策のための省エネルギー要求,植林材パルプ普及による原料パルプの短繊維化と言った2つの大きな課題に直面し,叩解機の形態変更も含めた対応が必要となった。
    本稿ではこの課題に対応すべく近年開発された新型シリンドリカル,新型コニカル,新型ディスクリファイナーを系統別に分類して紹介する。また,前記の課題への一つの回答となる,ステンレス板を組み合わせて従来にない狭小な刃溝を構成し,Low Intensity Refiningを実現するFinebar刃物の操業実績と,叩解及び省エネルギーのデータを報告する。
    弊社は本稿を通じ,国産初の連続式コニカルリファイナー「スーパーリファイナー」から手掛け,全ての形態のリファイナーの開発,製作に従事させて頂いた経験を踏まえ,皆様とともに,「長短繊維の集合体である原料パルプ繊維の形態や性状を効率よく変化させ,紙力強度を向上させる」叩解機の本質を再度見詰め直し,より良い次世代叩解機の開発の糧としたいと考える。
  • 竹下 陽介
    2014 年 68 巻 9 号 p. 979-985
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    最終段階で抄紙機に原料を送るアプローチシステムは,製品の品質を最後に制御する非常に重要なプロセスである。抄紙機の高速化及び大量生産に伴う技術革新に対して,アプローチシステムもこれに対応するように変遷してきた。本稿の前半で,アプローチシステムの約半世紀にわたる歴史的変遷を説明し,後半で,現在のアンドリッツが提案する最新のシステム「ショートフローコンセプト」についての説明を行う。
    本稿では,抄紙機の抄速の高速化については記述しないが,日本国内においては,もっとも遅い抄紙機のスライスジェトの速度は10m/分程度であり,最も高速の場合が,家庭紙の抄紙機で2,000m/分を超えるジェットスピードで運転されている。スライスの流量の範囲も1m3/分から200m3/分と非常に幅の広い条件になっている。現在,抄紙機メーカーでは更なる高速化の研究が行われているが,スライスジェット速度が50m/秒(3,000m/分)を超えると,スーパーキャビテーション領域にはいることにより,物理的に制御が難しくなると思われる。現在の速度は物理的に限界に近づいていると思われる。
    現在のシステムコンセプトはコンパクト化であり,制御技術の進化に伴い大きなエネルギー効率を改善することができるエリアである。
  • 宇都宮 義仁
    2014 年 68 巻 9 号 p. 986-989
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    大分工場は,1・3・5マシンの3台の抄紙機を有し,ライナー原紙を主に,石膏原紙・白板紙・色板紙・紙管原紙等の板紙を抄造している。
    段ボール古紙の使用割合は8割程度を占めており,段ボール古紙処理系列のリジェクトパルプ削減が大分工場の歩留まり改善に繋がると言っても過言ではない。
    本稿では段ボール古紙処理工程最終スクリーンに,株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー社製コンビソータを導入し歩留まり改善を図ることが出来た事例を紹介する。
  • 河津 徹
    2014 年 68 巻 9 号 p. 990-993
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    製紙用の填料は,紙の基本的な要求品質である不透明度の付与,白色度の向上,印刷適性の改善(高平滑化)を目的として使用され,紙を生産するうえで重要な役割を担っている。填料には,軽質炭酸カルシウム,重質炭酸カルシウム,タルク,カオリンが広く用いられ,紙の品質,品種によって使い分けられるが,紙の軽量化,古紙使用率の向上,コスト削減などの環境によって,填料に対する要求は変化し続けている。
    紙の物理的性質,光学的特性,印刷適性は,填料粒子の形,大きさ,および凝集状態によって変化する。
    PCC填料は,粒子の形状,一次粒子のサイズ,二次粒子(凝集粒子)の状態をコントロールできる特徴を生かし,変化する要求に対応した研究が進められ,品質の改良と新しい機能を付加した新規品の開発が行われてきた。
    本稿では,紙の基本的な要求品質である不透明度,近年多方面に用いられている嵩高紙に対応した嵩高性,および印刷インキの裏抜け抑制をテーマに,PCC粒子の状態がそれらの品質に与える効果とPCC填料の品質の移り変わりについて述べる。
  • 水河 哲
    2014 年 68 巻 9 号 p. 994-998
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    昨今の製紙業界において,抄速のアップ,古紙配合量の増加,抄紙系のクローズ化率のアップによる原料強度の低下,抄紙pHの上昇やアニオントラッシュの増加,高電導度化などにより紙力剤の効果が発現し難い環境へと変化してきている。これらの変化に対応すべく,弊社は紙力剤の設計を様々に変化させてきた。
    特に近年では,原料古紙の品質低下に対応するため,また,より高強度を有する製品の需要の拡大に伴い紙力剤の添加率が高まる傾向にある。これらのニーズに対し,従来は紙力剤中のイオン量を増やすことで対応していたが,凝集性の向上による地合の悪化や,パルプ繊維のゼータ電位(Zp)が上昇し,紙力剤の添加率が高まった時のパルプへの定着量の伸びが見られないなどの問題があった。
    これらの問題に対応する処方として,最近では紙力剤中カチオンの高密度化,及び紙力剤の高分子量化について重点的に検討を行っており,その内容を説明する。今回紹介する技術を導入することにより,従来の分岐型PAM対比凝集性を高めることなく高い紙力剤定着率を示し,さらにパルプ繊維のZpの上昇を抑えることで特に紙力剤高添加条件下でも高い紙力効果の伸びを発現することが可能となった。
総説・資料
  • 近藤 和奈
    2014 年 68 巻 9 号 p. 999-1002
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    日本製紙岩国工場6マシンは1974年に稼動した。2009年以前はコート原紙を生産していたが,生産体制の再構築によりコート原紙はもとより,上質紙,産業用紙原紙など,多種多様な品種の生産を行うこととなった。
    しかしながら,当初生産していたコート原紙と比べ,上質紙,産業用紙原紙は顧客が異なり要求される品質も厳しく,既存設備ではその品質要求への対応が困難であった。
    これら背景から,顧客からの品質要求への対応と他社製品との競争力を得る事を目的として2010年12月にシェーキング装置を導入した事で,地合改善,T/Y比低減の効果を得ることができた。
    また,日本製紙には高速シェーキング装置の導入経験が無いことから,中・高速マシンにおけるシェーキング技術の確立と,多方面への展開,新規品種への展開を視野に入れた研究開発機としての側面も担うこととなった。
    本報ではシェーキング装置の設備概要と操業経験,品質変化について報告する。
  • 福島 洪輔
    2014 年 68 巻 9 号 p. 1003-1007
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    1980年代後半,ヨーロッパで最初のロッドメタリングサイズプレスが設置され,現在では,200台以上が世界中で運転され,過去20年以上にわたり設計上の多くの開発,改良が行われた。
    「スマートサイザー」は,米国のベロイト社と三菱重工業株式会社によって共同開発されたMJサイザーの経験を生かした,新しいロッドメタリング方式のサイズプレスである。ベロイトの研究開発部門に従事した主席研究員らによる独自の改善で「スマートサイザー」として完成した。
    本機器の開発コンセプトは,よりシンプルな構造で,周辺の汚れ防止,そして安価な機器の提供を目指して開発され,高濃度塗工の高品質上質紙からスターチ塗工のライナーボードまで,様々な品種を製造するために使用されている。
    本報告では,「スマートサイザー」の特徴と,平成25年1月より稼働を始めた日本初号機の「スマートサイザー」を紹介する。
  • マイケル オーバィアン, 加藤 一樹
    2014 年 68 巻 9 号 p. 1008-1011
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    ハーコボンド®6000シリーズは新しい技術の高カチオン水溶性ポリマーである。この機能は紙・板紙製品のグレードを選ばず,ウェットエンドの化学システムの必要性等に応じて組み上げる事ができ,多くの抄紙条件で広範な機能性を創り出している。
    この製品シリーズは例外なく乾燥紙力を高めると同時に,濾水と歩留りを大幅に改善し,アニオン物質・疎水性物質の定着を高め,サイズ剤をシート中に定着させる力を発揮する。これらの薬剤は従来のウェットエンド添加物に比べて極めて高いカチオン性を持っているため,様々なカチオン性添加剤の使用を削減し,ウェットエンドを最適化する幅広い可能性を持っている。
    また,ハーコボンド®6000シリーズは,内部・圧縮・破裂・耐折・引張り強度などの乾燥紙力において明らかにプラスの影響を与える。特に,リサイクル原料をより多く使用する製品に対しては有意な紙力の向上が認められている。目標の強度を保ちながらシートの低坪量化,シート中の再生繊維の増配,そして同時にマシンスピードを上げることが可能になるという副次的効果がある。
    海外での多くの実績の中にはカチオン澱粉の置換え,カチオン凝集剤の不要,アニオン濾水助剤の不要,及び高分子量の歩留り助剤使用削減等々が記録されている。湿潤紙力剤とサイズ剤の使用も好影響を受け,高い湿潤紙力とサイズ性を持った紙で両剤の削減を得ている。同時に澱粉を使わないことによりスライムコントロール剤などの殺菌剤の使用量を相当程度減少させ,トータルコストの大幅な削減が可能である。
  • Yong Quan Dong, Qing Qing Yuan, Jin Hai Xiao, 佐藤 慎太郎
    2014 年 68 巻 9 号 p. 1012-1017
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    ハイブリッドポリマーは,1990年代より使われてきた合成ポリマーの一種であり,そのユニークな特性により,疎水性異物制御や歩留り濾水プログラムに効果的なポリマーである。
    最近の製紙産業の原材料は,リサイクル繊維の使用が進み,また新興国での製紙産業の発展がリサイクル繊維の需要と供給のバランスに変化を及ぼしている。このような状況下ではより低グレードのリサイクル繊維の利用が進み,従来のハイブリッドポリマーの適用においても様々な課題が報告されていた。
    ナルコはハイブリッドポリマーの設計を見直し,従来の製品プラットフォームに,最近の適用ノウハウを組合せてポリマーを設計した。ポリマーの分子量と電荷密度は今日の繊維の状況に合せて,最適化された。ハイブリッドポリマー種の範囲内であっても,歩留り濾水用と,疎水性異物制御,それぞれで最適なスペックを見出した。
    歩留り濾水の例では,開発されたポリマーの性能は,デュプレックスと石膏ボード原紙で検証された。新しいハイブリッドポリマーは高分子凝集剤と併用する時,良く機能し,従来のハイブリッドポリマーと比較して,歩留り改善,効率的な脱水,蒸気使用量低減等が観察された。新しいハイブリッドポリマーの典型的な添加率は0.3―0.5kg/tonで,既存の歩留り濾水プログラムに競合できるものであった。(英文)
  • 島本 周, 岡田 静, 中村 敏和
    2014 年 68 巻 9 号 p. 1018-1024
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    溶媒可溶性の酢酸セルロースは,セルロースをアセチル化し,次いでこれを部分脱アセチル化することで調製され,膜分離,写真フィルム,液晶ディスプレイ,衣料用およびその他繊維として広く使われている。本稿では特に,酢酸セルロースの特異な表面物性に焦点を当て,最近の用途展開を紹介し,また,今後の展開を議論する。
    酢酸セルロースの最近の用途展開として浄水用中空糸膜を紹介する。際立った負のゼータ電位を理由として,酢酸セルロース膜は他素材の膜に比べて,河川水懸濁物による膜細孔の目詰まり(ファウリング)に対して高い抵抗性を示し,安定的に高い水質の浄水を提供している。河川水懸濁物は一般的に負に帯電しているので,酢酸セルロース膜との間で反発力が作用すると予想され,これが素材としての酢酸セルロースの訴求点となっている。
    巨視的系の相互作用に関するvan Ossらの理論(VCG理論)によれば,酢酸セルロースは一つには,他の汎用高分子化合物に比べて高い電子受容性(ルイス酸性)を有することで特徴付けられる。電子受容性の酢酸セルロースは,電子供与性の金属やカーボン材料と高い親和性を示すことが予想される。リチウムイオン電池などの電極は,金属材料とカーボン材料を結合させることで製造される。このような結合材(バインダー,のり)として酢酸セルロースは優れた特性を発揮することが期待される。
    酢酸セルロースとカーボン材料の親和性を検証する一環として,多層カーボンナノチューブ(MWNT)を含む酢酸セルロースフィルムを調製し,導電率を測定したところ,他の汎用高分子を用いた場合に比べて高い導電性を示した。これは,期待した通り電子受容性―供与性の相互作用により,MWNTが酢酸セルロースマトリクス中で高度に分散していることを意味している。弊社は,このような酢酸セルロースの特徴を踏まえ,新しい用途展開を提案している。従来の溶媒溶解性酢酸セルロースに加え,水溶性酢酸セルロースも準備している。
  • 2014 年 68 巻 9 号 p. 1025-1032
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
総合報文
  • ―インクジェット印刷物の脱墨性―
    髙橋 広通
    2014 年 68 巻 9 号 p. 1033-1040
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/06
    ジャーナル フリー
    脱墨工程は,インキをパルプから剥離する工程とフロテーションによって剥離したインキを系外へ除去する工程から成っている。インキ剥離工程では,脱墨剤には浸透,剥離,再付着防止といった機能が求められており,インキと馴染の良い高級アルコール系脱墨剤が主に使用されている。フロテーションでは4μm以下の細かいインキが除去され難く,この工程では脱墨剤には微細分散されたインキの凝集と,その気泡への吸着を助ける働きが必要となる。現行の脱墨剤で微細インキを除去する能力に最も優れているのは脂肪酸であるため,インキをきちんと剥離し,その除去を強化したい場合には高級アルコール系と脂肪酸を併用するなどの工夫がなされている。
    商業印刷分野では,少量多品種印刷が可能なオンデマンド印刷への移行が進むと考えられており,中でも印刷速度を稼げるインクジェット印刷に注目が集まっている。これまで脱墨というと新聞・チラシ古紙(オフセット印刷古紙)を中心に考えられてきたが,インクジェット印刷物が古紙として大量に市中に出回る日も遠くない。そこで,顔料インクジェット印刷物の脱墨性を検討したところ,インク剥離は問題なく,剥離した微細インクがフロテーション工程で除去できないことが問題であることが判明した。
    顔料分散剤組成,使用メディア,印刷方法,脱墨方法からインクの除去効率向上を検討した結果,インク剥離時の剪断力を弱め,除去時に脂肪酸のようなインク凝集剤を併用することが有効であった。しかしながら,この方法で電子写真印刷物の脱墨が難しく,今後は混合古紙を脱墨するシステムや使用脱墨剤の最適化,再生まで考慮したインクジェットインクの改善が求められる。
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